カドック「アルコールを分解する魔術なんて出来て当たり前だ。・・・だけど、それは毒物への手段で酔いの対策じゃない」
アナスタシア「私のマスターはサーヴァントの浸食、分解も出来るのよ」
カドック「は?」
アイリーン「まぁそれはともかく、アレクを呼んで話を聞きましょう。あ、会話の主導はカドックに任せます」
「僕に・・・?何故だ?」
アイリーン「このおじさん、胡散臭いからです」
ジェームズ「哀しい事にネー・・・」
カドック「・・・了解だ。じゃあ、呼んでくる」
アナスタシア「ファイトよ、カドック。私はラーメン食べるのに忙しいからいけないわ、残念ね」
「手伝う気概が微塵も感じられない・・・!」
ジェームズ「お酒の作り方はレクチャーしてある。さぁ、行ってきたまえ!」
「酒?・・・よく分からないな。この状況で酒を飲んでほしい、だって?」
アレク・・・小さい魔術師が切り出してきたカドックに怪訝げに聞き返すのも無理はないだろう。オークション、聖杯戦争の勝者を決定付ける戦いの前に、『これから一杯やっていかないか?』だなんて怪しすぎる誘いを疑わない方がむしろどうかしているといっていい。このタイミングでの飲酒など『酔って口を滑らせてください』と企んでいると他勢力の介入を疑われてもおかしくないのだ。あまりにも怪しく胡散臭い。
「怪しいのは分かってるし、信頼されないのも覚悟の上だ。でも、貴方は個人的に僕が応援したい勢力だからね。景気付けで、一杯奢らせてほしいんだ」
カドックは切り出す。あなたの気持ちは解る。歴史が浅い、歴史が新しいと侮られてきた者の苦悩はよく分かるが故に貴方には負けてほしくないと。どうか痛快に勝って勝利してほしい。魔術師の優劣の概念を覆せるのなら、是非そうしてみてくれと、実感の籠った誠実なお願いと共に頭を下げたのだ。・・・魔術師という存在に人情や感傷は備わっていなくとも、自らに向けられた言葉が嘘かどうかは理解できる。
「・・・なら、奢られようかな。虎穴に入らずんばとやらだ。歴史が浅い僕は、危険だろうと飛び込むしかないのさ。君達が情報を握っていると信じて、ね」
返事は了承であった。同じ歴史浅い同士が功を奏し、無事に約束を取り付けた。効くか解らない認識改編魔術に頼る手もあったが、一先ず真正面から当たってみる作戦が正解であったと、カドックは頷く
「あぁ、後悔はさせない。さぁ、バーで振る舞わせてもらうよ」
その様に告げ、細やかな戦いの勝利をカドックはひっそりと噛み締めるのであったとさ。・・・どうにも調子が狂うと、非道な作戦をする気にならないのが不思議だと、手段を選ぼうとする自分の贅沢さに、どこか首を捻りながら。カドックはバーへと向かっていった──
~
「いらっしゃい。それではどうぞ。私のバーの見習い、カドック君が作ったカクテル、ドライマティーニです」
「どことなく王様っぽいあなたにはピッタリだと思ってな。飲んでみてくれ」
バーカウンターに腰を据えるアレクに、カドックがそっとグラスを寄越す。カクテルの王、ドライマティーニ。この時代にはまだ発明されていない美酒を振る舞うという反則技を、躊躇いなく振るうのである
「あ、意外に美味しい・・・」
「やっぱり御酒は行けるクチみたいだな。時間を遅らせて未成年の姿を取っているだけで、見た目通りの年齢じゃ無いんだろう」
魔術師はそういう事が出来る輩もいる。求めるものに対し、人の寿命は短すぎるからだ。どうあっても足りない年月の対処は大まかに、自分が永く生きるか次代に託すかだ。そういった魔術師のアプローチは、少ない訳では無いことは分かっている
「詳しいじゃないか。君も魔術師なのかい?」
「あ、いや、僕は只の魔術使い、崇高な目的があるわけではないただのバーテンダーかぶれだ」
「だろうね。君からは風格や気品は感じないし。僕と同じ歴史が浅いタイプだったんだろ?」
疑われないだけマシな対応であったが、割と危ない橋である。ここで潜入していた第三勢力とバレたら一戦が始まるところであった。冷たい視線がカドックに刺さる。もう少し自然に出来ないの?といった無言の抗議だ。誰かなど語るまでもない
「あ、あぁ」
(さっき整理した情報を活用したまえ、カドック君)
「そ、そうだ。ついでに情報を整理していくといい。この街の三つの組織は・・・」
有益な情報にて興味を逸らす。単純だが効果的な手段で追求を交わす事にしたカドックはアレクに情報を流した。三つの完全に膠着した組織の展開する、戦力の情勢と模様を。情勢を制すもの、戦いを制す。敵を知り己を知ればというヤツである
「うーん、参ったな。ディルムッドの組織が一番大きいからコンタクトしたけれど、思いきった行動は取れそうにない、か」
「地元と密着し過ぎているから、か。・・・歴史の浅い魔術師が手段を選べないことを理解してくれればいいんだけどな、ディルムッドも」
「ははは、だね。ランは五百年、ヴラドは七百年の歴史持ち。家が築いた時間は小手先じゃどうしても、ね。僕の魔術は戦闘向きだから違うのかもだけど」
「戦闘向き?そうなのか?」
「うん。ケンタウロスって知ってるだろ?人馬一体の種族・・・物凄く速かっただろうけど、彼等の強さはそれだけじゃない。そんな凄まじい速度で意識を集中させて矢を放ち当ててくる。魔術であれなんであれ、集中力は重要だ。ケンタウロスの集中力があれば、人間はあらゆる能力が上昇する。乏しい魔力を一滴残らず絞り尽くして魔術回路に浸透させる」
「・・・少ない魔力を全力かつ効果的に運用する集中魔術、か・・・確かに実戦ではアドバンテージが大きそうだな」
それを何くわぬ顔でグラスを拭いていたアイリーンが記録し、記憶する。深淵は計れないものの、おおまかな手段と手練手管さえ見抜いてしまえば対処は容易い。──此処に、障害としてのアレクの存在は盤上から消え去った。手の内を読まれる、情報を漏らすということはそういう事である。
「それじゃ、君はどうせ他の魔術師からも話を聞くんだろ?」
「・・・まぁ、な。こっちも胡散臭い師匠に言われて、カクテル作りの腕をあげなくちゃいけない。頑張ってくれよ、アレク。僕個人としては、君を応援している」
「あぁ。君も、後で得た情報を僕に教えてくれ。それなら、君の応援も信じられるからさ」
お酒、美味しかったよ。それを言い残しアレクは退出する。飲み干されたグラスを片付けながら、カドックは呟く
「・・・歴史が浅いだなんて、僕たちにはどうしようもない。無いものねだりしたってどうにもならない。それを分かっていて、成すべき事を為そうとする・・・」
あのアレクという魔術師は、立派なのだろう。そしてそれこそが、僕に足りない雄々しさなのかもしれない。カドックは静かに、自らの卑屈さに自嘲した。そして・・・
「・・・意外とバーテンダーの才能あるのかな、僕」
御酒は美味しかった。その言葉が・・・なんとなく、嬉しかったのもまた、カドックの本音でもあったのである
アナスタシア「お疲れ様。弱者は弱者をしる親近感溢れるトークが光っていたわね」
カドック「少しは容赦してくれよ、アナスタシア。そうじゃなきゃ僕はやってけないんだ」
アイリーン「ややディルムッドとの相性は悪いですね、ジェームズ」
ジェームズ「うんうん。勝つためにあらゆる手段を尽くすアレク君と、王道を以て堂々と勝たねばならないディルムッド。序盤はともかく終盤この食い違いが致命的になりそうだネ」
アイリーン「集中魔術というなら、一言の呪詛を仕込めば自滅するでしょう。魔術回路に浸透する類いの呪いを検索しておきます」
カドック「・・・オルガマリーと顔は同じなのに、有能さは段違いなんだな。あっちは控えめにいって立場に似合わぬ手落ちが目立っていたし」
アイリーン「はうっ・・・!!」
「!?」
ジェームズ「アイリーンをバカにしたネ!法廷で会おう!!」
「待て、僕はオルガマリーの所感をだな!」
アナスタシア「口は災いの元。ね、ヴィイ。次は誰に災いをもたらしに行きましょうか──?」
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