人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ラン「馴れ馴れしいな。分を弁えろ。バーテンダー風情が無礼だぞ」
カドック「・・・あぁ、悪かったよ・・・」
アナスタシア「はぁ~ぁ・・・」
カドック「その明らか様に落胆しましたな溜め息は止めてほしいんだが・・・!」
アナスタシア「無理もないわね。気品も何もかも足りないもの。・・・仕方ないわね。私が代わりに呼んであげるわ」
「ふん、遊びに来たようにしか見えない弛んだ皇女様に靡くわけが」
アナスタシア「大丈夫だったわ。ぶい」
「あいつぅ!こいつぅ!」
「教養の差ね(ムフッ)」
「生まれなんて、教養の差なんてだいっきらいだ─!!!」
カルデア
孔明「全くだ!!・・・はっ、私は何を?」
イスカンダル「なんだ軍師よ、お前も誰かに噂されておるのか?わはは、我がマスターならともかく貴様を噂するのはアレだ、生徒ではないか?」
「・・・また妙な名前をつけているのだろうか。グレイと連絡してみるか・・・」
「こちら、シルバーブレッドになっております。魔術師同士の戦いに身を投じる貴方にはぴったりかと」
「・・・酒、か」
情報収集ターンは続く。更なる優位性と情報把握の為にジェームズ率いるバーテンダー連盟は笑顔と美酒を武器に少しでも有益な情報を獲得しようと四苦八苦し、僅かでも目的に近付くために手練手管を尽くす。全てはオークション当日に流れるであろう血と犠牲を少しでも減らす為に。カドックもまた、その為にジェームズとアナスタシア、アイリーンと共に難題とカクテルブレンドに挑み続けているのだ。
「怖いのか?アルコールの分解くらい正統な魔術師なら出来ると聞き及んでいるんだが」
「その通りだ、バーテンダー。片手間にすらならない。これを飲んで情報を得られるなら喜んでそうしよう」
「素敵ね。そうでなくてはあらゆる事で上には立てないわ。危険は敢えて飛び込んで乗り越えるものだもの」
呼び出したアナスタシアがグラスを寄せ乾杯を促す。カドックでは取り付く島も無かったランを見事に招いたが故のアフターサービス代わりだ。気品と、風格と気概において彼女とカドックは比べるべくもない。魔術師として、そこが着目されたのである。色仕掛けは別のサーヴァントの方が上手いと言ってはいけない。やらないだけだとむくれるだけである。
「あぁ、・・・しかし、銀の弾丸・・・?」
「怪物を倒すのに銀の弾丸はお約束と言うものでしょう?」
「縁起物、という事か。・・・たしかにアレクはともかくとして、ヴラドは強敵だ。二百年の歴史の差は如何ともしがたいものがあるからな・・・」
百年も差が開けば歴然にして絶対的な差が生まれる。それが研鑽を旨とする魔道なら尚更だ。どうしても個人ではどうしようもない歴史という高い壁に、ランは仮面の美貌を潜め酒を煽る
「アレクと手を組むというのはどうかしら。みそっかすで未熟かつまだまだな相手でも、本当の意味で協力できたならきっと活路は見えるはずよ」
(こっちを見ないでくれアナスタシア、全部刺さるんだから・・・)
(刺してるのよ)
(こいつぅ!)
メンタルにボディーブローをかますのを忘れないアナスタシアに憤慨しつつグラスを拭くのを忘れないカドックに気付かず、ふむと考え込むラン。合理的ならば、それを試さないことが愚かであると言うことだ
「いいアイデアだと思う。アレクとてヴラドより最後に戦うのが私ならば勝機が見出だせると言うものだ」
「ふん。あんたらがいいと言ってもギャング連中が納得するかは別の話だ。・・・まぁ、言わないと始まらないのは事実だろうけどさ。ヴラドはどう考えても手段を選んで勝てる相手じゃないだろ」
七百年の歴史は魔術師の中でも正統かつ由緒正しい血統と言ってもいいだろう。カドックが知るキリシュタリアの千年は別格としてゼムルプス家二つ分を足しても足りない程の力を受け継ぎ残している。何をどう足掻いても自分に勝ち目はない。自分だったら技術でも戦術でも策謀でもなんでも、死に物狂いで巡らせなければやってられないと思わなくちゃ戦う意思すら湧いてこない程なのだ。数百年の開きとは、そういう理不尽なアドバンテージなのである
「口は悪いが酒と戦術眼は確かだな。・・・彼は血液を触媒とした魔術を操り、魔術刻印も魔術回路も一級品。戦闘向きではないとしても遅れを取ることは無さそうだ」
「まぁ。どんな魔術を使っても遅れを取りそうな底辺魔術師が聞いたら涙を流して地団駄を踏みそうな情報ですわ。よく調べ上げておりますのね」
(・・・カドック君)
(分かってるさ)
会話の中で渡されたパス、魔術師の情報。アイリーンに目配せし、情報を記録し整理してもらう。シェイカーを振りつつカドックの頭に記憶と記録として直接届ける魔術を使用してもらう。・・・これで、ヴラドの手の内の一部は把握できた。きっと此方に有利に働いてくれるだろう。高慢な魔術師を蟻の一穴でなんとかできれば、の話だが
「それではそちらに有益な情報を。アレクの魔術はケンタウロスの集中力を再現する魔術の様ですヨ。ローカルだけに予測はつかないでしょう」
(躊躇いなく情報を売るなこのおじさん・・・)
仮にもコンタクトを取った顔見知りの魔術を躊躇いなくバラし提供する。にこやかなれど目的を果たすために手段を選ばぬ老獪さと狡猾さを垣間見せたジェームズの一幕に、カドックは苦笑いをこぼした。もしかしてこのおっさん、此処の誰よりも悪どいんじゃないか?
「なるほど。・・・ご馳走さま、美味しかったよ。アレクに渡りをつけてみることにする」
「御粗末様、ラン。また御一緒しましょう?・・・あなたの魔術はなんなのかしら?」
(ストレートすぎる!さっきの然り気無さはどこにやった!?)
「知りたいわー。凄く知りたいわ私。ランの魔術が知りたいわー」
(交渉下手か!飽きたのか!もっと頑張れ!どうして其処で止めるんだ其処で!諦めるな、諦めるなお前!)
「カドック君グラスグラス。ミシミシ言ってるヨ落ち着いて」
やる気と馬力が長続きしない気紛れロシア皇女に思わず炎の言葉を投げ掛けるカドック。美少女に迫られ困りながらも、ランはやんわりと追求をかわす。
「申し訳無い。魔術は秘匿が原則なのです、お嬢さん。相手方の不利は歓迎ですが、自らの破滅に繋がる一因は潰しておきたいというのが魔術師の狡い所なのです」
「ぶー」
「・・・とはいえ、酌をしていただいた貴女に無礼を働いては品格が問われる。そうですね、・・・魅了系統で調べて御覧なさい。きっと解るでしょう」
それだけを告げ、ランは席を立つ。アルコールにやられた形跡は無い。文字通り片手間でできる程度の分解だったのだろう。
「明日のオークション・・・大事にならないといいのだけどね」
「無事を御祈りしていますわ、仮面のあなた。いつか素顔を見たいものね」
フリフリと手を振り笑顔で見送るアナスタシア。チラチラとカドックに目線を送るのは、きっとこういう事なのだろう。
「どう?あなたよりずっと上手なお手前でしょう?」
という、ロシア・ツァーリ・マウントポジションである事を、カドックは呆れながら理解し両手を上げるのでしたとさ──
アナスタシア(ドヤァ)
カドック「やっぱり可愛いって得だな・・・クソ、僕も魅了の魔術とか覚えられたらなぁ」
「止めておきなさい。取り繕いのまやかしなんて貴方には似合わないわ。その平凡で凡庸な頑張りやな所を磨けば、きっと素敵になるわ」
「・・・素敵になったところで、見てくれる相手なんかいないさ」
アナスタシア「そうかしら?じゃあ、そうね。もし貴方が魅力的だと私が思ったら・・・」
カドック「思ったら?」
「・・・もし貴方が撃たれそうになった時、身を呈してあげるわ。それくらいしてあげたくなるような貴方を目指して頑張りなさいね」
「・・・君、スパイ映画の見すぎじゃないか?」
ジェームズ(彼、気付かないかー。彼女の相当なアプローチなんだけどネー)
アイリーン「さて、次はヴラドさんですね。私が呼びましょう」
ジェームズ「おぉ!行ってくれるかネ我が最愛の助手よ!」
「カドックでは更に相手にされなさそうですので。カドックの知る所長とは違うという所を見せてやります。ヒステリーで癇癪持ちで慢性的に吐き気に襲われていた所長とは違うという所を見せてやりますとも」
ジェームズ(根に持っているんだネ、アイリーン・・・)
カドック「くそぅ、マウントポジションが取られてばかりだ・・・!」
アナスタシア「流石は負け犬カドックね。可愛いわ」
「嬉しくない!くそっ、こんなんで僕はカルデアのマスターに追い付けるのか──!?」
カルデア
リッカ「はっくしゅ!おかしい!やっぱり風邪かな!?」
オールマイト(カプセル内)『ゴボボボ、ゴボボボ!ゴボボボ・・・ゴボボボ!!』
「ごめんなさいワンフォーオール!なに言ってるか全然分かりません!」