アイリーン「戻りまし・・・」
カドック「帰ってきたか!なんとかしてくれこれ!ジェームズが氷付けだ!」
アイリーン「あぁ、明日までにはなんとかなるでしょう。きっと、多分」
「ふわっとしすぎじゃないか!?」
「大方アナスタシアを怒らせたのでしょう?カドック、あなたは最後の推察を煮詰めなさい。ここは私に任せて」
カドック「・・・アイリーン」
「あなたの正念場、アナスタシアと乗り越えてみせて。期待しているわ」
カドック「・・・あぁ。結果はどうあれ・・・」
アナスタシア「すぅ・・・」
「・・・──全力を尽くす事を、誓うさ」
「・・・よし、じゃあ。この一連の事件と騒動にケリをつけるとしよう。手は抜かない、この果てには街の全てがかかっているんだからな」
屋敷のジークの私室にて、全員が集められ一同に介する中カドックが声を上げ啖呵を切る。バーテンダー陣営も同時に集っており、其処で明かされる真実の信憑性を高めている。この場所で、盗んだ犯人が突き止められるという確信と凄みが、確かに提示されていた。
カドックに突き刺さる視線に友好的なものはない。バーテンダーの抱えの小僧が分を弁えず粋がっている・・・そう見られているのだろう。侮られていると言っていい。勿論、それは当然だし仲良くなろうとも思っていない。此処にカルデアのマスターがいて、カルデアのマスターがこの場全員で一致団結するというのなら。自分は『この場全員の関心を、滑稽さと無様と真実で纏め黙らせる』。孤独であれど強く在る。それが自分が選んだ道筋だ。・・・隣で立つ皇女に失望されるより、世界を敵に回す方が気が楽だと、カドックは自嘲する。ならば後は、破滅か総取りかの戦いに飛び込むだけだ。
「この屋敷で触媒となる聖遺物が盗難にあった。主のジークに依頼を受け、見落としが無いか尋ね調べた。・・・まぁ、魔術師にギャングだ。怪しくないヤツなんか誰もいなかったよ。皆、一律に問題を抱えてるみたいでね」
「ディルムッド氏は引退を、燕青氏は部下達の行く末。以蔵氏はこれから先、より大きくなるであろう海運業へ割り込まれる事の不安。──共通しているのは、迂闊に動けない・・・という部分です」
「『動けば喰われる。だから待つ』。そこにやってきたジークの聖遺物。これを切っ掛けに、あんたらは期待した筈だ。『何かが動く筈だ』と。ここまでは合っているだろ?」
慇懃ながら、事実を突き付けられて腰を上げては沽券に関わる。ギャング達は、カドックの言葉に一様に肯定を返す
「・・・そうだな。燕青と以蔵辺りは気付いていただろうが。私は引退を考えている。無論、無責任に仕事を放る気は無いが」
「そして、ここでひとつポイントがあります。現状を打破したい、聖遺物を手に入れる。これは決してイコールでは無いのです」
カドックの推察に、ジェームズが更なる補足を挟む。目指す目的や行き先は、決して全員が同じではない、と。
「カビ臭い伝統の魔術師や、あぶく銭くらいしか誇れない三流魔術師が死ぬ思いで手に入れたい勝利のチケット。でもギャング連中には『なんでもいいからこの息詰まりを解決してくれ』程度のもの。だから盗む理由が何処にもない。むしろ、盗んだら事態は最終戦争まっしぐらだ。街が消える様な判断を、街を好むギャングは取らないだろうさ」
「じゃあ、容疑者から外れたみたいだから尋ねるがよ。なんでそう思うんだ?クソガキ」
「黙って聞いてろよ、今話してやるから。この状態であんたらのどれかに大金が入ったらどう思う?」
それは問うまでもなく怪しいだろう。何か高額なものを売り飛ばし、元手に大金を得たのでは、と勘繰られるのは避けられない。それが一体・・・
「・・・あぁ、成る程な」
「分かってくれたみたいで何よりだ。つまり、現状が続く限りは大金が動かせなくなるんだ。売買であれ、別の手段であれ。・・・ミソッカスのちっぽけな組織には辛いよな、以蔵さん?」
「・・・おまん、後で覚えちょれよ。まぁ、秘密にしちゅう気は無かったが。近々別口で大金の目処がある予定じゃった。あの聖遺物を盗んでしまえば、余計な疑いがかかるきに」
「まぁこんな感じで、三人はオークションをやってもらわなきゃ困るんだ。ディルムッドは負けたとしても責任を取る形で引退でき、燕青は部下連中を街の住人にするのが目的だからな。其処で盗みなんか働いてみろ。ディルムッドは地位どころか組織が危ないし、盗人になった連中を誰が迎え入れる?」
金銭では解決できない問題が生じるのだ。ギャング達には盗む理由など自殺か自滅目当てでしかない。ならば、魔術師連中の仕業であるのか?カドックが導いた推理と理論はそれもまた違うものだ
「何故、違うと言い切れる?」
「解らないのか?『誰も自分が勝つかなんて解っていなかっただろ』。アレクはディルムッドと自分の資金があればオークション自体で勝てる。ランは資金が半端でも、後から魅了すれば十分にお釣りがくる。・・・ヴラド、あんたに至ってはオークションに負けようが奪う気満々だろ」
「当然だ。魔術師たるもの時には非道になる事も必要だ」
(最低ね)
(僕も最近そう思うようになってきたが、今は顔にも口にも出さないでくれよ、アナスタシア)
その会話を聞き、オルガマリーとジェームズはニヤリと笑ったのだが気づくものはいない。同時に、ヴラドの言葉にはだが、と続く。
「同時に合理的な思考は有している。『合理的に考え、盗むメリットがない』。ならば、盗まぬ」
「いや、待たれよ。盗むも奪うも同じだろう?」
「解らぬかディルムッド。盗めば盗賊、奪えば貴族。『重要なのは其処だ』」
「そういう事だ。『メンツがかかってる』と言い直せばあんたらも理解出来るだろう。・・・だが、犯人は盗む事より『引き渡す』事を恐れた。一度でも引き渡せば、脈々と受け継がれてきた、受け継いできたものが水の泡だからな」
後から奪い返したからといって、他者の手に渡った事は変わらない。手元から消えること。それが何よりも、堪え難かったのだ
「昨日、僕の先輩にギャングの襲撃があってな。それはどう見ても、『あんたらの内の誰かが殺した』ように見せかける類いのものだった。──どうあっても、犯人にとってあんたらは自滅と食い合いで死んでほしい相手だったんだよ」
オルガマリーへの襲撃でそれは確信となり、ジェームズの『御膳立て』で全てが繋がった。この場全員が倒れて得をし、そして受け継いできたモノを護る伝統を所持するもの。最早問う迄もない
・・・──今、負け犬の牙は確かに・・・
「そうだよな?『ジーク』」
「「「「「「「────」」」」」」」
──真実へと、喰らい付いたのだ。
ジーク「・・・まぁ、そうだな」
カドック「この中で、盗賊呼ばわりされようが護りたいものがある。そうだろ?聖杯戦争なんてもののせいで。英雄を示す大切な歴史と伝統が、レアなキャラを呼び出すガチャのチケットなんてものに成り果てた。サーヴァント、ジークフリートを呼び出す触媒にな」
ラン「・・・名誉な事では?」
「我々一族は本人に敬意を払う。召喚された模造品に興味はない」
アナスタシア「・・・──やっぱり、リッカ以外の魔術師なんて最低ね」
ディルムッド「では、あなたは最初から・・・!」
ジーク「あぁ。最初からこうするつもりだった。そして可能であれば・・・」
そう。初めからそうするつもりだった。纏めて全員・・・
「【殺し合い】になってほしかった。そうするだけの、材料があったからな。【犯罪コンサルタントの男にはやりすぎないように言われたが】」
アイリーン「ジェームズ」
ジェームズ「~♪」
ジーク「見事だ、カドック・ゼムルプス。正直、平凡な君には絶対にバレないと侮っていた」
カドック「間違っていない。僕は正直、誰が死のうとここにいるギャングや魔術師がくたばろうとどうでもいいからな。・・・だが」
そう、だが──
「『この街が死ぬ』のは見過ごせない。これは、証明なんだ。『僕でも確かに救える命がある』ってな。──悪く思うなよ。僕の価値を示すための生け贄になれ」
ジーク「・・・フッ。餓えた狼は、何よりも恐ろしい、か。ならば一つ付け加えよう」
ジークが立ち上がり、『魔力』を練り上げる。アナスタシア、カドック、そしてアイリーンが構える
「俺も、実は魔術師なんだ」
「───だろうな」
蜘蛛の糸の果て。この街を巡る戦いの、最後の幕が上がる──
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