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覗き込む深淵の住人
【やぁ。常に日頃楽しい旅路をありがとう】
そんな、友好的なような砕けた声が自分にかけられた事を認識し、はっと顔を上げる。自分は眠っていたらしい。どうやらここは、またどこかの、いつかの夢の中なんだろう。自分はそう理解し、空を見上げる。星が散りばめられた天の川に、夜の闇が満ちている。幻想的で、とても綺麗だと所感を漏らした
【こっちこっち、こっちをみてくれ。安心してくれよ。取って食べたりもしないし何かしたりもしない。ここは⬛の御気に入りの空間でね。単純に挨拶に君を招いたんだ。名前を口にしてみな?霞のかかった頭がマシになる筈だ】
「・・・藤丸、リッカ!龍に華って書いてリッカ!」
正解。そう⬛は笑った。黒いスーツに紅い街灯、寂れて朽ち果てた廃墟の残骸にいつの間にか座っていた彼・・・いや、彼なのだろうか?近くにいる筈なのに、すぐ近くにいる筈なのに。『輪郭がよく解らない』。誰なのだろうか?
【800話の節目の話を奪うのも悪いしね。このタイミングでの御挨拶を許してくれ。直接お邪魔したかったんだけど、銀河警察に見つかると面倒くさいんでね】
「あ、警察とか怖いんだ」
【そうなのよ。邪神だ無貌だとおだてられるのはアレなんだが、どうにも無敵と言うわけにはいかなくてね。盲目のボケ老人の介護や、過保護な親バカの伝令、使い走りに警察と来た。なんとも生きにくいなぁ。こっちはただ、
姿が解らないのに、男か女かも解らないのに、何故か会話がよく弾む。彼、あるいは彼女に敵意は無かった。リッカの中の人類悪が感じるものは・・・【よく解らないこと】ただ一点のみだったのだ。だが、意思はある。会話の疎通は図れるのである
【姫様や王様はこれからやる異星の神との全面対決の準備中だろう?なら休息を邪魔するのも悪いと思ってね。君という最高最悪の人間にコンタクトを取ってみた。こちらの頼み事を、聞いてほしくてね】
「頼み事?いいよ、なになに?」
【・・・⬛が誰かとか聞かないの?】
聞いても知らないんでしょ、とリッカは告げた。知らないときたか、と⬛は笑った。・・・ますます楽しげに、⬛は会話に興じ始める。
【いいね、凄くいい。君みたいな頑丈で物分かりのいい人間だな、サーヴァントとして仕えるのなら。・・・まぁでも、何も教えないで手伝ってくれは不親切だな。──よし。なら・・・教えてあげよう】
外套の何者かは立ち上がり、外套をそっと下ろした。
「──!?」
其処に逢ったのは、『リッカの顔』だった。リッカの褐色の顔が、其処にあり。自分自身の声が、自分自身の耳にはっきりと聞こえる。
何処からかフルートの音色が聞こえてきた。・・・酷く、眠くなるような旋律が辺りに響く。
【そちらの世界のとある人間・・・まぁ仮に、愛蔵と仮称しようか。そいつはとある論理を提唱した。【この宇宙に遍在する最大の恐怖と、形ある理解できないものが存在する】とな。その男は開けたという。狂気の扉を。彼は立ったという。深淵の淵にと。見つめたという。正気を喪った果てにある宇宙を】
彼の口調は一貫しない。嘲っているような、嘲笑っているような、驚嘆しているような、呆れているような、感涙に咽んでいるような。でもその口は、ニタリと笑い続けている。リッカと同じ顔で。紅く輝く三つの瞳を
【この世界は盲目で白痴の神の見ている夢だと言った。あらゆる時空と次元に繋がる者がいるといった。遥か世界が在る前から栄える文明が在るといった。それらを信仰する、黒きファラオが抹消されたと伝えた。数多の神殿が、怪物が、何処かに常にいると宣った。・・・勿論、これらを創作ではなんというかな?】
「フィクション?」
【あったりー。そう。それらは実際の人物、団体、事件とは関係のないものだ。──関係の、ないものだ。関係のないものであったはずだった。関係のないものでほしかった。関係のないもので──】
フルートの音色が聞こえてきた。影が高く立ち上ってきた。三つの光が、こちらを見ている
【───【関係があったのさ】。それらは総て、⬛たちの事を一時一句違わず言い当てていた。いるのさ、いたんだよ。いたのさ、いるんだよ】
ぐるり、と振り返ったその者の顔には──三つの光が灯っていた。深淵の様な黒さに、ぼうっとギラギラと浮いている。こちらを、見ている。紅い瞳で見詰めている
【旧神はいる。支配者はいる。闇に吼えるものはいる。這い寄る混沌は──世界の外にいるものは、実在し、存在していた。非日常の壁の向こうに、宇宙の暗闇の中に。お前たちはそれを、狂気と呼ぶ】
何処からか声が聴こえる。誰かを讃えるような声が聴こえる。望んでもいない、礼賛と賛美の声が聴こえる
【それが──宇宙的恐怖。虚構が言い当てた理解できない根源的な深淵。お前達の世界を害し滅ぼす、
「あなたもしかして、ニャル子さん?」
【はぁあぁ・・・愛蔵最悪の誤算だよ。なんだって宇宙的恐怖を可愛くしようと思うかな・・・全宇宙規模でもいないよそんな物好き・・・】
降参したように手を上げ、フルートと賛美の声を掻き消す⬛⬛⬛。知っててくれてありがとう、これ名刺ねとリッカに手渡す。文字化けしかしていない、不可思議な名刺を
【仮に私をニャル子さんと仮定しよう。そうするなら私の頼みは見えてくる筈だよ。・・・ヨーグルトソースみたいな名前のヤツが、私に要請をしてきてね。『未だ囚われし娘を、かの楽園に招け』ってね】
過保護な事だよ、と呆れたように宙に逆さまに浮く。無視するわけにもいかないのが辛い、と付け加え、彼、もしくは彼女は告げる
【要するに、そちらで預かってほしい相手、解決してほしい事件がある。『その為に、私は特異点を作成しようと思うんだが、どうかな』?】
「それを解決して、その娘さんをカルデアで保護すればいいって事?」
【・・・君さ、なんでそんなに物分かりよくスムーズに会話できるの?分かっていたつもりでも怖いんだけど。久し振りだよ、人間怖いって思ったの】
やっぱり人間愉しいなぁ・・・そんな事を告げながら、外套を⬛は被り直す
【そうなんだ。未だ土地に囚われている彼女と仲良くして、『出たい』と思わせてほしい。それが⬛の依頼だ。頼まれてくれるかい?】
「いいよ、カルデアの皆に相談してみる」
【ん。それは嬉しい。退屈させないように作るから、いっぱいコズミック・ホラーを堪能してくれ。事態を面倒臭くはしない、今回は珍しいハートフルな申し出で、⬛としても興味深かったりするんでね。勿論──私の知り合いを現地に派遣しよう。私が特異点を造ったって、ナイショだよ?】
そうして⬛は、リッカにとあるものを手渡す。夜闇の中に煌めく宝石箱と・・・
【君達の物語はマジで面白い。【⬛も真似していくつか転生させてみたが、見るに堪えない駄作で終わったよ】。やっぱり面白くなるように作るのはダメだな。人間はやっぱり諭すよりたぶらかすに限る。どうやれば転生先と共存なんて思い付くのかなぁ・・・やっぱ伊達に全能に選ばれてないって事かぁ・・・】
「???」
【あ、ごめん。三次元の話だよ。ともかく私は特異点を製作すること、そして君のサポート以外をするつもりはないよ。だから安心して楽しんでくれ。⬛、毎日更新をたのしみにしてるからね。マナーだよ、マナー】
瞬間、空がひび割れ、星が砕けていく。世界が砕けていく音を、目覚ましとして──
【じゃ、近い内にまた逢おう。『君が君である事を祈っているよ』。ばいびー、ばいびー】
⬛⬛⬛⬛と名乗る何者かに、とんと背中を押され。リッカの意識は、ふわりと宙に浮き───
【あ、あの牙の抜かれた後輩モドキは話にならないから、直接行くんでよろしくね──マスターさん?】
微睡みの淵は、此処に閉ざされた。
リッカ「・・・・・・ふぁあぁーぁ・・・」
なんだか、夢を見ていた気がする。内容は、何も思い出せない。なんだから頼み事をされていたようなされてないような・・・?
リッカ「・・・?」
ふと、手に握られていたものに目を落とす。其処には──黒と朱の、百面ダイスが握られていて
「・・・01、でいいんだよね?これ」
浮かび上がる文字はそれを指し示し、そのまま消え去った。一体なんなのかと、首を捻り・・・
「よし、今日も頑張るぞー!あれ、昼寝してたんだっけ?」
どこかに行った違和感もろとも、リッカは部屋を出た。確か次は、マスター同士でカドックの歓迎パーティーで・・・
【SAN値直葬したらごめんね】
と未知の言語で書かれた書体と、謎の宝石箱もまた、誰の目に止まることなく消え去った。
・・・──彼女が何を見、何を知り、何を交わしたのかは。今はまだ、誰も知らない
XX「むっ!?何処かに邪神反応・・・!?」
一人の、刑事の勘を除いては、だが。
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