【──自分より不幸な人はいません。そう言いたげな顔だな】
物乞いの少女「・・・?」
【勿体無いとは思わないか?せっかく自分だけの貌があるのに、浮かべるのが絶望だけなんて】
「・・・でも、わたしはこれしか・・・しらない」
【そうか。・・・なぁ、この世界には楽しいオモチャがたくさんあるって言ったら信じるかい?】
「おもちゃ・・・?」
【たまには子育ても面白そうだ。ついて来なよ。今日から君は、■の新しい貌だ──】
~
ナイア「・・・はっ(゜ロ゜)転た寝していましたか。いつぶりの気の弛みか・・・」
ヒロインXX「ゴージャス!繰り返しますゴージャス!応答願いますゴージャス!ゴージャス!」
ギル『──えぇい喧しい!聞こえておるわ!貴様がいるにしては通信が遅いわ、たわけ!』
「キターーーーー!!やりました!これでしみったれた郷土料理からはおさらばです!ごはん!ごはん!」
ナイア「おぉ、通信が。いよいよ、作戦の本格的な始動ですね」
ギル『何?芝居のセットと人員を寄越せ?それが為すべき事?報告は詳細にせよ!』
「その前にご飯ください!お願いします!」
「リッカ様は情報収集です。今しばらくすればお戻りになられるかと」
『む、貴様は現地の協力者とやらか?語れる範囲で所在を告げよ』
「はい、私はシスター・ナイア。邪神ニャルラトホテプに拾われ育てられし、外なる者共を狩るフリーの狩人にございます──」
「ここは・・・ここが、ラヴィニアの家・・・?」
ラヴィニアに連れられ、村の外れの屋敷へとやってきたリッカ。村人からの話を聞くに、ラヴィニアはそのアルビノの見た目と怪しげなまじないに精通していることから、村の人々達と距離を置かれていたという。そして最近、父と叔父が亡くなってしまったとも。本来ならば独り暮らしなどできる筈も無さそうな年齢ではあるが、予想に反して生活基準ははっきりしており、きちんとご飯や生活は出来ているようである。そして・・・
「不気味でしょう。でも、ちゃんと意味がある事なの。ま、待っていて。御茶を出すから。そして、見せたいものを取ってくるから」
辺りには様々な魔方陣や紋章の書かれた紙が落ちており、紫色の照明に緑色の灯りなど、異様な雰囲気を醸し出している空間を作り上げている。一般常識の通用しない空間、と言うべきだろうか。
「わっ!?」
席を外したラヴィニアが部屋を出た瞬間、何も無い虚空から『お茶とケーキ』が現れ、机の上に音もなく置かれる。完成品が現れた・・・というより、どこか別の空間から現れたかのようだ。粒子が新たに形を成したかの様子から、それはまるで、レイシフトの様で。試しに食べてみたら物凄く美味しくて・・・
「・・・これスイーツじゃんぬの味だ・・・!」
『スイーツじゃんぬ』から取り寄せられたそのケーキ・・・或いは、異世界のケーキの味が余すこと無く再現されたのか。不思議な事が起こりすぎ、首を捻るばかりのリッカの前に、とあるものを持ってきたラヴィニアが戻ってくる。
「これを、見て。これは象牙の書と呼ばれる魔導書・・・虚構の大魔導士【エイボン】が書き記したと言われる【エイボンの書】よ。元本、らしいわ。とあるページ以外、まるで読めないけれど」
──かつて、虚構の存在を言い当てた男の著書曰く。これは古代ヒューペルボリア時代、およびそれ以前の暗黒の知識を集めた書であり、エイボン自身が崇拝していた神の一柱、並びにツァトゥグァの家系に連なる神々のほか、盲目と白痴の神アザトース、遥か地球の始まりより在る生命の祖ウボ=サスラ、遥か金星の民達に信仰されしファロールなどに関する秘密や儀式、呪文、伝承などが記されている禁断の書物であり、かの『ネクロノミコン』にも欠落している禁断の知識が数多く含まれるという魔導の中の魔導書であるというのだ。その文はラテン語よりも遥か以前の言語で書かれており、写本ではない源本である事を圧倒的な存在感で示している。──この世に、あってはならない書物であるという事が一目で解るほどに
「そ、そして。私が読める唯一のページに記された者が、彼よ。全にして一、一にして全たる、全てに繋がる有り得ざる神・・・【ヨグ=ソトース】」
「ヨグ=ソトース・・・」
其処に記されている書に曰く。ヨグ=ソトースとは、冒涜的神話にて言及される外なる神の一柱。『時空そのもの』ともされる存在。
「「門にして鍵」「全にして一、一にして全なる者」「原初の言葉の外的表れ」「外なる知性」「混沌の媒介」などの異名を持っているとされる、宇宙の外の存在よ」
冒涜的神話における最高神『アザトース』の産物『無名の霧』から生まれた神性。男の作品において他の神性より数多の言及がされる存在。ページに書かれたイラストは、虹色に輝く球体の塊の姿をしており現在では『全てに繋がり、どこにも繋がっていない場所』に追放されているという。
「ちゅ、注目すべきは、その能力。この神は、移動や転移に関して絶対的な力を持つの」
いかなる時間・空間にも自らを接続できる存在、または常に全てに隣接している存在であると書には書かれていたとラヴィニアは言う。
「さ、さっきのヨーグルトソースという発音で呼んで。正確な発音をすれば、それだけで死んでしまうから」
このヨグ=ソトースにかかれば、矛盾を無視して空間を拡大縮小したり、時間を永久的に逆に流れるようにすることも容易い力すら得られるという。虚構の存在がいい当てたソレは、レイシフトの魔術を極端に昇華した様な存在である、とも。
「この、ヨーグルトソースさんが、アビーを助ける鍵になる・・・そゆこと?」
「そ、そうよ。この神の力をアビーに与えて、あらゆる時空と次元に繋がる神の巫女とする。そうすれば、彼女は自由になれる。そうすれば、彼女はもう・・・自分を責めなくても・・・」
な、なんでもないわと目をそらすラヴィニア。彼女自身がまずかの神を降ろす儀式を試みたが失敗し、その時に肌の色が変わり角らしき突起が生えたという。試しの儀式で済んだのは、本当に幸運だったと。
「ぎ、儀式に失敗した時、私は一瞬、ヨグ=ソトースを見たわ。緑色の、不定形の存在を。私はそのまま、発狂して終わるかと疑わなかった。でも・・・その神が、言ったの」
【娘を解き放て、銀の鍵は七日の夜明けに来る】。──その神託の後、彼女は元在る世界、このセイレムへと戻ってきていたという。ラヴィニアがポケットから、錆び付いた鍵のようなものを取りだしリッカに見せる
「かの神は、アビーをこの場から出し、旅をさせる事を望んでいる・・・この鍵は【銀の鍵】と言われる、ヨグ=ソトースの力を引き出すための大事な触媒。かの神と出逢った後、いつの間にか握っていたもの」
この銀の鍵が正しく力を取り戻し、かの神の力を宿すのが7日後だと言う。それまでに儀式を続け、銀の鍵をこの世に繋ぎ止めるのが、ラヴィニアの託された使命だと神に告げられたのだと。
「で、でも。この儀式の間の七日間、このセイレムはおぞましきものを招き入れる擬似的な【門】となってしまう。儀式を始めたら、七日までおぞましき怪物を退けなくてはならないと、私は言われたわ」
「言われた・・・?それは、誰に?」
「流れの、黒い牧師さん。顔はよく思い出せないけれど、病に倒れた父と祖父を手厚く弔ってくれたわ。その時に、この鍵の鋳型と、エイボンの書を渡されたの。『友の事を思う君に、細やかな力となりますように』って」
何処からかやってきた漆黒の牧師に託されたという知恵と力。それこそが、罪悪感に縛られる友を救う手段である、と。同時に彼女は見たのだ。異なる時空で、彼女が魔女を巡る凄惨な現場の中心にいた次元を、同時に自分が、招かれただけの架空の人物に過ぎない偽物だと言うことを。そして・・・
「わ、私は・・・一度、彼女の前で死んだの。此処ではない時空、逃げ出した魔なる神の用意したセイレムの事件の果てに。彼女がどうなったかは、私には解らないけれど」
「ラヴィニア・・・」
「過去は、変えられないけれど。今は必ず未来に進む。犯した罪に囚われて、前に進めないのは・・・おかしいわ。偽物でしかない私を、友達と呼んだあの子を、魔女のままにはさせておけない。・・・ぼ、牧師さまが言っていたの。【あの娘が悪い、回りの大人が悪い。皆が悪い。なのにあの子だけが罪に怯えている。何とかしてやらなくちゃと思わないかな】って」
偽物でも、ほうき星を見て鯨を見た思い出がまやかしでも。それは大切な記憶だとラヴィニアは言う。偽物が、本物の気持ちを懐いておかしい事はなんにもないと。
「で、でも。私だけの力だけじゃ問題があるし、とても乱暴だわ。もしかしたら、アビーは優しいアビーではいられなくなるかもしれない。だから私は、迷っていたの。牧師さまに言われた言葉を考えていたの」
【ただし、君が彼女の心と魂を救いたいと願うなら、ただ一人、信頼できると感じた旅人に告げなさい。『あなたは何処を旅してきたのか』と。こう答えるだろう。フランス、ローマ、大海原、ロンドン。アメリカ、聖地、そしてメソポタミア。それらを巡って来た者がいるのなら、その者を助け、助けられなさい。彼、あるいは彼女らこそが。完全無欠の叙事詩を描く『楽園の使者』である】と。
「わ、私の考える手段は、力しか与えられない。人間一人が、誰かを救うなんて烏滸がましい。でも・・・牧師様が言ったわ。【力を合わせ、愛と希望を謳う。それが未知の恐怖を切り裂く無垢なる翼】だと。・・・だから、私は、あなた達を見ていたの。・・・力を、貸してください。楽園の使者。アビーを、私の友達を、助けるために」
心からの嘆願を、ラヴィニアは言った。・・・正直リッカには、新しい神話を語られているようでほとんどピンと来なかったが・・・一つだけ解った事がある
「──任せて。一緒に、アビーの罪を数えてあげようよ。そしたら、彼女もきっと外に出れる。絶対ね」
それは、彼女が心からアビゲイルを想っている事。それが間違いの無い確かな事実。ならば・・・
「必ず、ハッピーエンドを迎えよう!アビーと、あなたと、私達で!」
「・・・は、はい。必ず、皆で、夜明けを迎えましょう」
自分は、信じて伸ばされた手を取る。それだけが、自分の為すべき正しさであると信じているから。リッカは此処に、未知の恐怖に立ち向かう決断を下したのだった──
リッカ「と言っても、私達はお芝居をやり通すしか手段が無いんだけど・・・」
ラヴィニア「それで、いいの。アビーの心を湧き立たせ、楽しませ、『自分もこんな旅をしてみたい』と心から思わせる。それが出来れば、きっと自分で飛べる。誰の力を借りなくても。七日間で、アビーがそう思うか、銀の鍵が出来上がるかすれば、きっと私達は報われるわ」
リッカ「そして、夜に出てくる怪物からラヴィニアや村の皆を護ればいいんだよね?」
「えぇ、そうよ。本来なら、この時代に船の港は在るはずがない。あそこが門よ。未知の恐怖は、海の神殿からやってくる・・・七日間、私と皆を、護ってほしいわ」
リッカ「任せて!よーし、勝利の法則は決まった!芝居と戦い、全力でやるぞー!」
「ま、魔術の王が楽園にいると聞いたわ。このエイボンの書と、銀の鍵を持っていって。私は、儀式をするわ。頭に入っているから。その・・・アビーと、お芝居を楽しみにしてるから」
リッカ「うん!任せて!早速情報共有しなくちゃ!またね、ラヴィニア!教えてくれて、ありがとう!」
「え、えぇ。あなたが、藤丸龍華で、良かったわ。・・・」
~
【確かに外なる神に頼れば彼女は巫女になり、力を得て、窮極の門へと至るだろう。だが、君はそれでいいのか?】
「え・・・?」
【大事な友達の命運を、神の生け贄にすることが友情か?君にはもっと、出来る事があるんじゃないか?】
「・・・牧師様・・・」
【私の与えた知識と力は、君の友達をただ救うだけだ。其処から先は知らない無責任なものだ。簡単ではあるが・・・、もし、君が困難だけれど、『再びほうき星を一緒に見たいなら』。信じてみなさい。いつか来る、楽園の使者を】
「楽園の、使者・・・」
【私は信じているよ。七日後にまた来よう。君が掴む答えを見にね。──元気でね、ウェイトリー君】
~
「・・・私は、信じるわ。信じてみたい。・・・あのほうき星に、いつか手が届く事を・・・」
(・・・七日後に、全てが決まる。私は、やるべき事をやる。それが・・・と、友達だから。でしょう、アビー・・・)
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