人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ロマン「できたぁ~!出来たよ皆!ジルと協力しつつ、渡された魔本をなんとか膨大な魔力リソースとして扱えるようになったんだ!これでリッカ君に『狂気』の耐性を付与できる!彼女の鎧と魔力にね!」

ギル「よし、でかした!流石は魔術の王。怪しげな魔術にて右に出るものはおらぬな!しかし忌々しい事に、今カルデアの通信は阻まれているのが現状でな」

「そこら辺もシバが予想してくれた!もうこうなったらこっちも意地だ、リッカ君の為に、『特注の令呪』を作ってきた!」

──特注の令呪・・・!?

ロマン「カルデア共用じゃない、真っ先に最前線に行くリッカ君の為にボクが編んだ特注令呪・・・カルデアスの炉心、シバの眼、トリスメギストスの演算に直結させ、カルデアの魔力をダイレクトに使える逸品ってことさ!使うときにボクが承認して指輪を使うから、魔法以外なら三回だけなんでもできるって感じかな?」

フォウ(ガチ過ぎるぞコイツ!?)

「ふははははははは!!貴様もやれば有能であったな!よい、XXの魔力を辿れ!邪神の戯れ、我等が全力で受けて立ってくれる!!」

スタッフ「「「「「「了解!!!」」」」」」

オルガマリー「朝に夜。・・・ハードな作戦ね。でも、やってやれない筈は無いわ・・・!」


魔をアレする私に、限界はねぇ!

「まさか発狂とは一番無縁そうなリッカ君が毒牙にかかるとは!よりにもよって殲滅と虐殺が推奨されるグールどもの時に!」

 

キョトンとし、呆けている一時的な発狂を受けたリッカ、そしてウェイトリー宅を護るため、一時休戦しナイアとアルトリアが背中合わせに奮戦する。一匹一匹を、ただの討ち漏らしの一つも無いように戦い、見事な防衛戦線を展開する。そう、グールは一匹も逃してはならない理由が存在する。それは、クトゥルフ系列に属するグールは、理性なき死体ではないれっきとした『種族』であるのだ。

 

「ただの一匹でも逃してしまえば、逃亡したグールは人間社会に溶け込んでしまう。人間への擬態程度はこなせる知恵がある以上、見分ける事も駆除も遥かに困難になる。討伐ではなく『駆除』と呼ばれる理由が此処に存在しますものね」

 

とあるルートで知り合ったデビルハンターの借金の肩代わりに売り飛ばされた魔具、氷のヌンチャクや遠隔投擲剣を使い、問答無用で大量のグールを始末していくナイア。そう、彼等は確かな知恵を持つ。人間社会に取り入り、潜み、そして裏からグールに都合のいいコミュニティを作り上げるのも可能なのだ。それ故に銀河警察も狩人も、グールを相手取るにはどのような規模であれ迅速な抹殺と殲滅、駆除を推奨しているのだ。一匹討ち漏らした結果、街の一つが丸々グールに牛耳られるという事態も存在するのだ。ヒロインXXは銀河警察対策マニュアルと経験から、ナイアもまたグールの集落に暇潰しに紛れ込んだ父たる神の存在と体験から実感しているのである。強さではなく厄介さ、という意味で何より面倒な相手なのだ。このグールという存在達は。

 

「わぁ、凄い・・・!二人とも凄いね!女の子なのに強いなんて!」

 

耳を疑うような感嘆を浮かべながら、目を輝かせ声をあげるリッカ。健忘症を受けている今、自分も彼女らに負けず劣らずの武力を持つ事を忘れてしまっており、自分は戦えない存在と定義してしまっているのだ。ヒロインXXは愕然と目を見開き、ナイアは魔のアタッシュケースを叩き付ける

 

「XX、迅速な精神分析をリッカ様に。単純に、彼女が自分を見失っているというのは・・・」

 

「辛いと言うんでしょう!皆まで言わずとも、分かっていますよー・・・──だ!!」

 

ツインロンゴミニアドにエネルギーをチャージするヒロインXX。厄災の魔力を喰らい溜め込んだアタッシュケースを蹴り飛ばすナイア。辺りに群がるグール目掛け、一直線にそれらが放たれた。蒼い奇跡の円が鬼を蹴散らし、全てを呑み込む光に晒され問答無用で消失させる。リッカや自分等の近くにいるグールを、問答無用で消滅させクリアリングを計る。そのコンビネーションは、長年の激闘の中で培われた背中合わせの見事なものであった。

 

「XX。リッカ様をよろしくお願いいたします。私は墓に向かったグールを殲滅しに向かいます」

 

「えっ!?あなた精神分析しないのですか!?」

 

「私はその技能を振っていません。そちらの銀河警察の方が・・・カルデアの皆様の方が上手く出来る筈です」

 

うわわわわわわ!と言いながら独りでに宙に浮き、近付くモノを切り裂き続ける刀に驚くリッカをヒロインXXに託し、ナイアは翼を生やし協同墓地へと向かう。此処にはいないグールは、墓に根付き食料を手にするために徘徊しているのだろう。墓暴きもまた、疑念と疑惑を生む。ただの一匹も逃がしてはならないという初志を、完遂しなくてはならないのだ。

 

「これを貴女に託します。私の大切な友達を、どうかよろしくお願いいたしますわ」

 

「ナイア・・・!」

 

それだけを告げ、飛翔していくナイア。彼女とはそれなりに長い付き合いではあるが、これほど真っ直ぐに自分を頼ってきたのは記憶に無い。基本的に互いが互いを邪魔だと思っていた筈だと、そう思っていたが・・・

 

「わわわわ!XX!この刀鎮めてー!護ってくれるのは解るけど怖い~!」

 

「──どうやら、とっておきをすぐ使うことになりそうですね・・・!」

 

迅速にリッカを正気に戻さなくては。マスターとしての彼女を含めたゲームバランスを想定しているのなら、彼女にデバフがかかったままでクリア出来る筈がない。こちらにある程度の自由と猶予を許しはするが、パワーバランスは極めて緻密に調節するのがあの邪神なのだ。リッカのパワフルさを失っては、ミッション遂行困難は明白であるだろう。

 

「落ち着いてください、リッカ!今全部思い出させてみせますか!いいですか、あなたはカルデア最高戦力であり女体化ヘラクレスと名高い──」

 

精神分析を始めた瞬間、ヒロインXXの刑事の勘が冴え渡り、瞬間的にリッカを背にとり槍を構える。地面が隆起し、そこから新たなるおぞましき来客が現れたのだ。

 

「エルダーグール・・・!こんな時に・・・!」

 

蒼白き肌、ギョロリと無造作に蠢く一つ目、四つの腕、口から伸びる細長き舌、裂けた口から生え散らかる鋭い牙。・・・冒涜的なグールの上位に位置する、言わばボスエネミーのエルダーグールが真っ先にリッカを襲いに来たのだ。ぐちゃり、ぐちゃりと耳障りな足音を響かせ、リッカ目掛けて歩み寄ってくる。

 

「くっ!戦闘と分析を両立しなくてはならないと言うことですか!──リッカ!よく聴いてください!!」

 

「な、何あれ・・・怖い見た目してる・・・え?な、何?」

 

ともかくなんとしてもリッカの正気を取り戻さなくてはならない。それを早く出来るかどうかで勝負が決まる。決心したXXが、エルダーグールを阻みつつ、精神分析を開始する。問い掛けにて、己を取り戻させるのだ。

 

「よく聴いてください!──リッカ君!君はいいところの御嬢様であり!筋金入りの博愛主義者で虫も殺せぬ乙女です!!」

 

「えっ、うぇえ!?」

 

「いいですか、あなたは一般的な家庭に育ち何不自由なくすくすくと成長し、カルデアの一般枠に選ばれ凡人代表として頑張ってきたマスターです!そう!あなたは女子の化身的おしとやかマスターなのです!!

 

・・・ヒロインXXの告げた印象は、どれもリッカを知る者が聞けば一様に首を傾げるものでしかない。あまりに違和感まみれで、齟齬とズレしか存在しない認識。──だが、だからこそ。

 

「そ、そっか!私はか弱くて、乙女で、いいトコで育って虫も殺せない、おしとやかで、おしと・・・おしと・・・」

 

その印象は、リッカの根源、魂を叩き起こす起爆剤となる。・・・彼女は、決して都合の良い嘘を受け入れない。自分だけに都合のいい未来を、与えられた役割や耳障りがいいだけの信実を受け入れる事がない。口にした言葉そのものが、自分を縛る鎖であるのならば──

 

「───そんな訳あるかあぁあぁ!! 皆が言ってくれる私の魅力は、ぜーったいそんなんじゃないッ!!私はおしとやかじゃない・・・リッカ系女子だあっ!!!」

 

「よっし!成功です!!おかえりなさい、リッカ君!」

 

力尽くで己の存在を取り戻したリッカ。ヒロインXXの『逆に考えるんだ精神分析』は完遂し、狂気を無事はね除ける。・・・同時に・・・

 

『うむ!やはり逞しき女傑に間違いなかったな、リッカよ!待っていたぞ、この時を!』

 

「えっ、あれ?私・・・あれ、その声どこかで・・・?」

 

今こそ好機。そう確信した『魔導書』が満を持してリッカに、カルデアに力を貸すために高らかに声を上げる──




(なれ)は忘れても、妾は決して忘れぬ。汝の手厚い礼節の態度、その苦難を蹴散らす痛快な旅路!今こそ我等も助力しよう!!』

リッカ「・・・!あ!もしかしてあの時のブックカバーの!?」

『妾の事はアル!アルと呼べ!そして汝に、魔を断つ剣の力を授ける者!──唱えよ!汝の為に、妾が徹夜で考えた祈りの句を!』

リッカ「あ、え、はい!」

『──人理の空より来たりて!』

アル、そう名乗る存在に言われるまま、祝詞を告げるリッカ。意味も解らず、しかしけして悪ではないと確信が持てる本に導かれ──

『ヒロイン先輩!今だ!俺が渡したアレを投げ込め!』

ヒロインXX「解りました!頼みましたよ、『ゼロくん』!」

それに呼応するかのように、ヒロインXXがリッカ目掛けて『カプセル』を投げ付ける。紫色と白色に彩られた、限界を越える白きカプセルを

『正しき未来を願い!我等は──何ッ!?』

詠唱の最中、想定外の事態に声を上げるアル。猛烈に飛来する邪気──【漆黒のクラスカード】が飛来して来たのだ。カプセルはともかく、それは間違いなく宿敵たる邪神の──

ロマン『──よし!通信がなんとかなった!リッカちゃん聞こえるかい!?』

リッカ「ロマン!?あ、えっと今大変な事に・・・!」

『だろうと思ったよ!というわけで速急だ!『君専用の令呪』を作った!これで君を見失いはしないぞ!時間が無いんだよね!今すぐ送るから大丈夫!詳しい話は、また後で!』

「え?え!?新しい令呪!?え、えぇえぇえ──!?」

アル『な、なんだこの混沌は!?おのれナイアルラトホテプ!妾の見せ場を奪う嫌がらせか──!?』

・・・本来の想定されていた、魔を断つ剣とは余りにも違いすぎていた。龍の鎧、そして魔を断つ剣たる最弱にして最強の機械神。狂気を切り裂く光の巨人の限界を越える力、邪神の力たるクラスカード。そしてそれらを強引に束ねる、カルデアが作り上げた令呪。それらが全て結集し生まれた、混沌の七日を乗り越える希望の姿──

アル『──汝!!無垢なる人龍、デモンベイン・ゼロビヨンド・ナイアー!!(やけくそ)』

リッカ『なんか凄い事になったぁ──!?』

フルアーマータイプから、装着式バトルスーツタイプの鎧に身を包むリッカ。白と黒、差し色に紫。胸にカルデアの令呪を懐く新しき力が、未来を拓く──

リッカ『わ、私どうなってるの!?大丈夫なの!?なんか凄い事に・・・!』

アル『知らんっ!』

『えぇ!?』

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