「・・・」
「お疲れさまでした。いまはゆっくり休みましょう?麻婆も作りました。きっと身体に効きますよ」
「・・・」
「さ、こっちへ。大丈夫です。エミヤさんの監修ですから」
「・・・」
『――絢爛にして貞淑!豪華にして華美!その美しさはヴィナスもうつむき、その輝きはアポロンも越える!至高の美が形を成せし芸術!それがそなたの目の前にいる皇帝!ネロ・クラウディウスであるっ!誉めてよいぞ?称えてよいぞ?ん~?』
「…………」
うんざりと言わんばかりに閉口している器。無理もない。聞いてもないのに語ってくるのだから。呼ばれるまで声を出さないジャンヌがましであったと痛感しているみたいだ。
都市ローマへ向かう最中、現地のネロとマスターとマシュが交流を深めるなか、シークレット回線でこちらに通信を飛ばしてくるのはセイバー・ブライド。カルデア所属、ネロ・クラウディウスだ。
そのうち聞こうと思っていたが、向こうからもう軽く20回は聞き語らせてくれたので大分ネロという存在の来歴をつかみとれた。
ネロ・クラウディウス。本名ネロ・クラウディウス・アウグストゥス・ゲルマニクス
父は第4皇帝のいとこであり、戴冠を望むべくもない身分の子としての出自を持つ。
しかし、彼女の母が皇帝と再婚し、母の奸計と暗殺にて皇帝が死し、養父からの相続にて帝位を継承した。齢16。激動の即位だ。
その出自の影響か、彼女は身内より民を愛した。即位したのち総ての間接税を廃止し、減税し、国民一人一人に即位祝いの金を与えた。
気前よく、朗らかな政策は民からの絶大な支持を獲得する。その手腕は即位前から発揮され、裁判官としても彼女は慕われていた。
若年だからと禁止されていたにも関わらず、公正と有能なる手腕を振るい、彼女を頼るものは数多くいたという。
皇帝になってもその冴え渡る手腕は衰えず、西暦64年の「ローマの大火」への対処は、彼女を批判する者でさえ絶賛するほどのものであったらしい。
「なるほどな。勤勉にして有能。民草に愛されるのも道理と言えような」
感嘆する。これが皇帝、これが英雄の絢爛たる栄光の歴史……
『そうであろう!そうであろう!余は民を愛し、民は余を愛した!激しい炎がごときローマの愛が!そこにあったのだ!』
――解る気がする。強引で一方的でも、彼女の明るさ、人懐っこさには、思わず頬が緩んでしまうような可愛らしさを感じてしまう。
――興味が湧く。民を愛し、民に愛されたこの皇帝が統治せしめるローマとは如何なる場所なのだろうと言う関心が。
総ての道は、ローマに通ず。ネロが幾度も口にしていた言葉が胸に去来する
そこまで豪語する土地に、今自分達は向かっているのだと思うと。僅かながらも胸が高鳴ってしまう
『ローマについたら思う存分に散策するがよい。断言しよう!ローマには!すべてがあーるっ!英雄王、きっとそなたも気に入るぞ~?』
「フン。税と楽で肥太った豚共の楽園なんぞにさしたる興味はない――が。見知らぬ町をそぞろ歩くのは我が愉しみの一つ。よかろう!このギルガメッシュが、貴様のローマを味わい尽くしてくれる!」
『よくぞいった英雄王!余は嬉しい!こうして、ローマは拡がっていくのだな!』
「ハッ、ウルクを懐柔できると思うな?我と我の宝が進む道に、ローマなどという中継地点はいらぬわ!」
『ローマを、中継地点ときたか!言うではないか金ぴか!ますます気に入ったぞ!』
「無論だ!我の言葉は真理しか紡がぬ故な!だが忘れるな花嫁擬き!最高の都市とは――ウルクを置いて他ならぬ事をな!」
『ぬぬっ!譲らぬぞ!ローマだ!』
「ウルクだ!」
『ローマ!』
「ウルク!!」
「なんの話をしているのだ、アレは」
虚空にて話しかけるようにみえるギルガメッシュを見て、哀れむような目線を向ける
「さぞ苦労しような、マシュにリッカよ……」
「いいえ、助かってます!」
「はい!」
「そうなのか?しかし余は、ヤツをなんとなく気に食わぬ……余とキャラが被ってるではないか!」
「たわけめ!我を差し置いて起源を主張するか!我が起源だ!」
「聞こえておったか!油断ならぬやつよな!」
――歓談の進軍は、唸りにて打ち消される
『みんな警戒してくれ!サーヴァント反応だ!凄い勢いでそちらに向かっているぞ!』
「!」
『間もなく接敵――来たぞ!』
「――余の、振る、舞い、は。運、命、で、ある」
真紅のマント、金色の鎧。爛々と光る眼差し
「バーサーカーだな。嗜虐と暴虐の帝……真名なぞすぐに割れようさ」
「――伯父上……!」
愕然と呟く赤きネロ。叔父上?そう言ったのか?彼女は?
「ネロ……ネロ……!美しき姪……アグリッピナの、子……」
『叔父上・・・どう言うことだ!?時代を生きる人間が、サーヴァントと血縁・・・!?』
「特異点だ、何が起ころうとおかしくあるまい」
「……いや、いいや!あえて、あえて今はこう言おう!如何にしてか迷い出て、偽りの連合に加担せし亡霊――カリギュラよ!!」
カリギュラ・・・名君から暴君へと堕落し、最期は暗殺にて散ったローマ皇帝
『カリギュラ……!?バカな、そんな!な、何かの間違いではないのか!?そうであろう!?』
動揺を表すネロ
「貴様は存外揺らぐな。霊基が花嫁の意識に拠っているからか?」
『動揺してなどないっ!びっくりしただけだっ!まさか、まさか叔父上が、余を害さんと立ちはだかるなんて……!』
声の震えから、十分なほど気持ちが伝わってくる
「ネロ……ネロ……捧げよ、総てを。その美しさを、その身体を……――」
「フォウ!(情熱的なアプローチだ。ボクも見習いたいな!けれど慎みに欠ける、男女はお互いが尊重しあい敬意を払うのが長続きのコツだよ!)」
「フォウさん!?」
「マスター!戦闘体勢を取れ!」
『その時代初めてのサーヴァント戦だ!やれるかい!』
「もちろん!マシュ!……陛下」
「――解っている!余は躊躇わぬ!ローマを護り、ローマを救うため!」
赤き剣を、突きつける!
「誰が相手でも――貴方でもだ!カリギュラ――!!」
「捧げよ――総てを、捧げよ!!ァアァアァアァアァア!!」
狂乱の拳と、絢爛の剣がぶつかりあう!
「――……」
「先輩……!?」
「……ギル!ここは私とマシュに任せて!」
――なんだって?
「ほう?秘策あり、か?」
「うん!私に、いい考えがあるから!そこで見てて!マシュ、行くよ!」
「はい!守護はお任せください!英雄王!」
自信と確信に満ちた瞳を見つめ返す
「――良かろう。お前たちの力のみで、あの狂気を相手取ってみるがいい!」
『む、無理はするでないぞ!絶対だぞ!?』
「うん!――力押しだけが、戦いじゃないもんね!」
「・・・(もぐもぐ)」
「・・・」
「・・・(もぐもぐ)」
「・・・もっと」
「はい」
「・・・もっと、上手くやりたかった」
「はい」
「やれるってところ・・・アイツに見せてやりたかった」
「はい」
「・・・出来なかった」
「えぇ」
「・・・いつか、絶対アイツを助けてみせる。私にしか、できないやり方で・・・」
「はい」
「・・・なによ、辛いじゃない・・・食べれるくせに、辛いわよ・・・」
「はい。うんと辛くしましたから」
「なによ、なによ・・・なによ・・・」
「辛いから・・・涙が出るのは、仕方ないかもしれませんね」
「なによ・・・う、ううっ・・・ぐすっ・・・」
「えぇ。麻婆は、辛いのです・・・」
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