人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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リッカ「流石に私はエドモンは無理だよ!?」

ぐっちゃん「ヘラクレスをやったあんたが今更何言ってるの!あんたに出来ないものなんて無いわよ!」

リッカ「いやほら、私が恨みとか憎悪とか語ると割りと深刻な影響が起きちゃうかもだから・・・」

カドック「心配するな、リッカ。こっちで出来るくらいには煮詰めた。たまには休まないともたないだろ、お前も」

リッカ「カドック・・・!」

「話はつけてある。・・・見ておけ、たまには趣の違う劇をしなきゃな」


三日目 モンテ・クリスト伯──復讐するは我に在り──

三日目の公演へ脚を運んで下さった皆様方。此度で我等が一座の劇は三回目を迎えます。皆様への反響、そして御愛顧。とても嬉しく喜ばしく思います。その期待と願いを、決して裏切らぬ様な公演を御届けしたいものと切に願います。それでは早速、皆様を物語の世界へと招き入れましょう──

 


 

厳窟王~モンテ・クリスト~

 

虎よ、虎よ!待て、しかして希望せよ──

 

 

エドモン・ダンテス(演・カドック)「さぁ、出港しよう!僕らの道行きは、きっとこの青空の様に輝いている!」

 

1815年、マルセイユの若くして優秀な航海士、エドモン・ダンテスは船主から次の船長に任命され、恋人のメルセデスとも婚約が決まり、まさに人生の絶頂にいました。彼の目には、全てが輝いていたことでしょう。隣にいる、最愛の人と共に見る海原さえもが

 

メルセデス(演・オルガマリー)「落ちてはダメよ、ダンテス。そんな時こそ、冷静にならないと」

 

「それは無理な相談だ。逸る心が独りでに歌うのさ、僕らの幸せを喜ぶ歌を!きっと僕らを、世界が祝福してくれている!」

 

・・・しかし、彼は知りませんでした。若き彼は知らなかったのです。世界には、善意と喜びばかりがあるのではない。理由なき悪意が満ちていると言う事を

 

彼は亡くなった船長の遺言からエルバ島にて体制の革命派、ノワルティエという人物宛の手紙を預かりました。・・・そして、それを知った三人の男達より、悪意と妬みの牙を剥けられてしまうのです。

 

ダングラール(演・ガストン)「あの若造に目にものを言わせてくれよう。さぁ、この密告状を渡してやるといい」

 

ファラオン号の会計士、ダングラール。彼はフェルナンに『左手で筆跡を偽装した密告状』を見せ、それを提出するよう仕向けました。

 

フェルナン(演・ムニエル)「これでヤツは終わりだな。・・・メルセデスは私のモノだ。あんなヤツより私こそが相応しい・・・!」

 

メルセデスの従兄であり、彼女に横恋慕していたフェルナン・モンデゴ。ダングラールが書いた密告状を提出してしまうのです。

 

カドルッス(演イアソン)「ダンテスのヤツ、しっかりやっているのか・・・?」

 

カドルッスが巡り合わせたことにより結託した二人の罠により、ダンテスは言われも知れぬ罪により政治犯の疑いをかけられてしまいます。

 

「待ってくれ、これは何かの間違いだ!僕が革命軍だなんて、そんな事あるはずがない!誰か、誰かそうだといってくれ・・・!」

 

「あぁ、ダンテス・・・!」

 

「メルセデス・・・!僕は・・・!」

 

彼は連行され、尋問を受けました。ジェラール・ド・ヴィルフォール検事は訳も分からず連れてこられたダンテスに同情し、自宅謹慎で済ませようとしていたのですが・・・

 

ジェラール(演モリアーティ)「この手紙は私の父への宛先。ナポレオン軍の上陸を示すもの。私の父が革命軍だと知れたら私も破滅するだろう。・・・『此処に、手紙など無かった』。そして彼も生きていられたら困るのだ」

 

そうして彼は手紙を焼却し、ダンテスを口封じの為に最悪の監獄、シャトー・ディフに投獄してしまうのです。彼には何一つは覚えの無い、悪夢としか言い様の無い事態でした。

 

「何故だ、どうしてだ。僕が何をしたと言うんだ。こんな事がどうして起こる・・・!?どうして・・・!?」

 

全てを奪われ、絶望の最中に叩き付けられるダンテスへの拷問、尋問、刑罰の数々。そして死にかけの政治犯による命乞いの合唱による一睡も出来ない日々。ありとあらゆる苦痛と破滅は、希望に満ちた若者から光を奪うに十分でした。

 

「・・・・・・このパンを口にすれば、僕はあと一日生きてしまうだろう。此処で飢えて牢の虫に喰われた方が、僕はきっと幸せな筈だ・・・」

 

絶望の最中、餓死すらも自らの救いとし自殺すら考えたダンテスでありましたが、偶然にも彼に幸運が舞い降りたのです。それは、地獄の中に輝く尊き出逢いでありました。

 

ファリア神父(演・ゲオルギウス)「貴方は・・・どうやら老い先短き私にも、まだやれる事が残っているようだ」

 

彼はファリア神父。彼もまた冤罪からシャトー・ディフに収監され、脱獄を試みる老人。しかし持病の発作により、先が短き神父でありました。

 

出逢った彼にダンテスは知識と技術を教わり、あらゆる術を学びました。聡明なる神父はダンテスの無実を信じ、後継者として自らの技術を、そして諦めぬ決意を学ばせたのです。そんな最中・・・彼は推理により知らされるのです。ダンテスを妬み、愚かな行いにて破滅させた者達がいる事を。

 

「何故だ・・・?何故こんな事ができる?何故、人を平然と奈落へと突き落とすような真似が出来るんだ・・・?」

 

そして彼は、知られざる自分。燃え盛る焔のような怒りの焔、心よりの声を聞くのです。

 

厳窟王(演・エドモン・ダンテス)【それはお前が知らなかった無知だ。世には理不尽が蔓延り、お前はそれの食い物にされたにすぎん】

 

「そんな・・・!破滅をもたらされ、それを仕方ないと、間が悪いと済ませるのか!?彼等が大事な自らの欲に、悪意に沈めというのか!?」

 

【ならばどうする?お前は全てを奪われた。死ぬのを待つが何よりの救いだ。──だが、お前には赦されているぞ。何かを為す権利がな!】

 

「僕は・・・だが、それは・・・」

  

【今更躊躇うか!全てを奪われておきながら自らの手は汚したくは無いと!そんな甘さは次なる悲劇を招くぞ!奴等はまた第二、第三のお前を生む!悲劇を招く!直視しろ!この世には糺さねばならぬ者がある事を!世界が見てみぬフリをするのなら!我等が糺すしかあるまい!吼えろ!虎のように!】

 

「・・・奪い返す。欲望と、悪徳の報いを・・・!」

 

【そうだ!偽りの希望を鮮やかに引き裂こう!我等が往くは──恩讐の彼方!】

 

「・・・ダングラール・・・フェルナン・・・ヴィルフォール・・・!待っていろ、必ず、必ず・・・!」

 

【復讐を!!そうあれかしと願うなら、ただただ吼えるがいい!貴様らに我が怒りがなんたるかを教えよう──我が心のままに!!】

 

・・・こうして、監獄の中で生まれし世界で最も有名な復讐者、厳窟王は誕生したのです。

 

やがてファリア神父は自らが長くないと悟り、ダンテスにモンテ・クリスト島の財宝の在処を教えます。それは、再び新しい生を手にする為の新たな始まりのものでした。

 

「行きなさい。あなたが為すべきと思った事を為すために」

 

【ファリア神父・・・我が身は貴方の導きのままに駆けましょう。そして、貴方に尽きぬ無情の感謝を・・・】

 

亡くなりしファリア神父。外へと遺棄される死体と入れ替わり、ダンテスは海へと投げ入れられ、死にかけはしましたが遂に脱獄を図るのです。

 

【げほっ!ごほっ!あれほど欲した水に溺れるなどとは贅沢な経験だ・・・!】

 

近くを通った船に救助され、14年もの時間が経った事を知ったダンテス。そして彼はファリア神父の導きのままに、モンテ・クリスト島の財宝を探し当てたのです・・・




・・・そうして資金を手にしたダンテスが始めに行った事は、復讐ではなく『恩返し』でした。

ダンテスが乗船した船主が破産の危機に陥り、頼みのファラオン号すらも沈んだ際には死を覚悟しましたが、『船乗りシンドバッド』と名乗る人物の援助により借金が帳消しになり、同じ見た目のファラオン号とダイヤモンドが送られ

ダンテスの無罪を信じ続けた父は亡くなってしまい、弔いすら出来なくなってしまいながらも建物ごと家を買い取り、彼の生きた証を残し

そして・・・モンテ・クリスト島に、ファリア神父の人知れぬ墓を建てた、とも。

【我が身に起きた悪意は忘れぬ。だが、己が身にかかった優しさと幸福もまた、忘れてはならぬものなのだ】

・・・彼が世界中で喝采を呼び、愛されるのは。こうした心の所作もあったのやもしれません。そしてこれよりは、語るもおぞましき復讐の幕開けとなるのです──

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