人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ハワイ

──ギル、良かったのですか?このタイミングで、セイレムから離れてしまい・・・

《構わぬ。我等がおらねば何もできぬ未熟さはとうの昔に駆逐した。我が財ならば鮮やかにやってみせるだろうよ。王が甲斐甲斐しく磨かずとも、真の財は自ずと輝くという事だ》

──はい!ただの一人も雑種はいない、ですものね!

フォウ(それはいいけど、なんでハワイ?ベンチャービジネスするのか?)

《目敏いな、珍獣。だが行き先はハワイだけではない。ベガスにて口座を開き、カジノの胴元とななりハワイの土地を抑え、カルデアハワイ支部を起動する。数日でこなすには中々のスケジュールよな》

(・・・まさかオマエ、夏のイベントを・・・!?)

《フッ、愉悦は遥か未来の先を見て行うものよ。──無人島の買い取り、レース土地なども見繕う。用意はいいな、エア!》

──はい!奮闘する皆様の為にも!ホテルを片端から買い取り、あるいは生やし!ベガスにて億万長者となりレース私有者となり無人島の権利者となりましょう!

(今年の夏は・・・熱くなるぞ・・・!!)

《・・・そして、呪いの効力を振り切るには我が離れねばならん。最後の挽回の機会だ。ものにしてみせるがいい、邪神など及ばぬ質の悪い善神よ・・・!》

──フォウ、ギルと口座は一緒でいい?

(キミの為ならボクはいつでも質に入ろう!!虹色に輝く毛並みのカワイイペット!高くつくはずさ!!)

──そんなことしないよ!?大丈夫だよ!?

《バカめ、まずは宿からであろうが!一から私財を積み立てるのだ、気合いを入れよ!そしていざというときには貴様がラッキービーストとなるのだ!》

(は?なんでオマエにラッキー渡さなきゃいけないんだ。全裸でもいいだろ、オマエ得意だろそれ)

《たわけ!それでは獄中エンドであろうが──!!》



昼 劇演目──モンテ・クリスト伯 ダングラール──

「・・・年代物のワインを口にしても、誰もが羨む豪奢な服に身を包んでいても。贅を凝らした食事を摂っても。募るのは虚しさだけだ」

 

【ならば、どうする?味と、色と、輝かしき未来を奪われたお前は何をしようというのだ?】

 

(──今更問われるまでもない。神が我が人生を、復讐を赦したもうた。ならばその様に──)

 

【───復讐の、時間だ】

 

(虎の様に、吼えるまでだ・・・!)

 

モンテ・クリスト。またの名をエドモン・ダンテス。貴族ですら買い与えられぬ様なワインの注がれたグラスを握りつぶし、今宵もまた復讐の機会を、断罪の焔を燃やし待ち続けます。最早彼を癒すものは復讐の完遂のみ。我が身を絶望に陥れた者達の死のみが望みと化していたのです。娯楽も快楽も、彼を止めることは出来ませんでした。そうして彼は、また一人見つけ出します。我が身を裏切りし、罪を犯し忘却を貪る者を──

 

ダングラール。彼はかつてモレル商会の会計士でありました。ダンテスと同じ船に乗っていたかつての同胞。・・・ですが彼は清廉潔白とは程遠い人物であり、帳簿を不正に改竄し横領、詐称は当然のようにこなす悪辣な人物。ダンテスは彼の不正を糾弾した事もある顔馴染みの人物でありました。そして、フェルナンが提出した虚偽の密告状を作ったのも、また彼・・・

 

【小銭勘定の頭角を表したか、小賢しきダングラール。浅ましき会計のお前がなんとも不相応な地位についているものだ。──貴様に味わわせてやろう・・・!如何な虚飾、華美など!地獄の底において!何の価値も無いことを!!】

 

フランス有数の銀行家に登り詰めていたダングラールに牙を剥くモンテ・クリスト。まずは彼に近付き、永遠の繁栄を誓い合う隣人として手を取り合い、取引相手として付き合う事を約束したのです。ダングラールは、最高の取引先にして商売の安泰が確約されたと飛び上がるように喜びました。・・・しかし。束の間の繁栄は、即座に崩される事となります。

 

「ゆ、融資した先が次々に破産してゆく・・・!?何故だ、いやまずいそれどころではない、私の、私の財産が・・・!」

 

モンテ・クリストの財産は、現代価値に換算して総額60億から数千億とも言われる莫大なもの。それを所持したダンテスからすれば、経済の流れなどまさに自由自在。ダングラールが贔屓にしていた融資先を容赦なく破産させ、また彼が所持する有益な公績を誤報にて手放させるなどといった無慈悲な手段を使い、ダングラールの銀行の経営を傾けさせていきました。

 

「貧しさは悪だ、貧しさは罪だ、なんとか、なんとかしなくては、なんとかしなければ・・・私の富は私のものだ、私だけの・・・」

 

それにより、元来の守銭奴にして強欲な性格が更に悪化。金の亡者と化した彼は娘のユージェニーを、『幼くして行方不明となった高名なる貴族の嫡子』として社交界に現れたアンドレア・カヴァルカンティと婚約させ、彼の実家から送られる結納金を元手に再起を図ろうとします。ですが、人の心・・・そして、子の思惑は決して親の思うままにはいかないもの。

 

「この遺書を御覧ください。アンドレア・カヴァルカンティという男の立場は嘘偽りのもの。彼はガスパール・カドルッスという男を殺めし罪深き男!おぉ、なんという。ダングラールは人殺しの者と娘を結託させようとしたのです!」

 

結婚式の最中、ブゾーニ神父・・・モンテ・クリストが扮した禿頭の神父によって用意された告発状にてアンドレア・カヴァルカンティの正体を暴かれ、殺人鬼を歓待していたダングラールの面目は丸潰れとなります。更に娘は婚約に興味など微塵もなく、学友にして音楽の教師たるルイーズ・ダルミィーと共に家を捨てて何処へなりとも消えてしまうのです。

 

ユージェニー(演・カーミラ)「ごめんなさいね、私、男と結婚なんて考えていないの」

 

ルイーズ(演・スズカ)「はやくはやく!音楽を追求してビッグになるし!」

 

娘に捨てられ、経営する銀行もまたモンテ・クリストとその協力者に残る預金を無慈悲に同時に引き出され、不渡りを出したダングラールは家族を捨て、夜逃げを選びました。全てを捨てても、財への執着は捨てぬままに

 

「伯爵の受領書を換金しよう・・・この500万フランで、新たな人生を送るんだ・・・」

 

しかし、彼の行動を完全に把握していたモンテ・クリスト。すぐさま抱えの山賊、ルイジ・ヴァンバの一味を差し向け彼を拉致し、断食に断水の牢屋に叩き込み飢餓をひたすらに煽ります。食事をとりたければ、金を寄越せと突き付けられ。

 

ルイジ・ヴァンバ(演・黒ひげ)「パン一つ5万フラン。スープに水をつけて20万フランなんてどうだい?」

 

「ふ、ふざけるな!法外、法外だ・・・!あまりにも・・・!」

 

「そうかい。じゃあさっさと餓え死ぬんだな」

 

初めは拒否するものの、牢屋のどぶ水をすすり、なけなしの藁すらも喰らう程の餓えに、すぐさま彼は音を上げます。髪が真っ白になる程に憔悴を極め・・・

 

「め、めし、めしを、みずを、くれ、しぬ・・・かね、かねならいくら、でも、はらう、はらう・・・!」

 

「毎度あり!」

 

餓えに敵わず、500万フランを払い続け切り詰めるダングラール。最後に残りし5万フラン、それだけは護ると決意し、しかし飢えによる死はすぐ其処に。彼は悩み、悩み、苦しみ。最後に・・・

 

「・・・わたしは、わるいことを、しました・・・ダンテス・・・ゆるして・・・ください・・・」

 

自身の悪行を心から悔いた瞬間・・・とうとう、かつての悪行にて生まれた鬼がやって来たのです。

 

【随分と疲弊しているな。だが、温い・・・貴様の餓えなど、我が身に降りかかった絶望と苦痛に比べればあまりにも温い!!──俺を覚えているな、ダングラール!!】

 

「・・・だ、ダンテス・・・!?なんで、しんだ・・・」

 

【死ぬものか。貴様らへの怒り、世に蔓延る理不尽への怒りが我を地獄より引き摺り出した!貴様の罪を、貴様への断罪を果たすためにやって来たのだ!選べ!!その金を懐いて死ぬか!再び小賢しき策略にて!我を再び地獄に落とすか!!】

 

「ひ、ひぃいぃいぃぃ・・・!たすけ、ゆるして、ゆるしてください・・・!とらないで、うばわないで、これだけは、この、かねだけは・・・」

 

【・・・・・・・・・・・・・・・フン。乞うものが命でなく、折れそうな身体で庇うのが金だとは。お前は筋金入りだよ、ダングラール】

 

「ぁ、あ・・・」

 

【解放してやろう。何処へなりとも消え失せろ!そして知るがいい。金は笑いかけぬ、金は労らぬ、財は己に手を差し伸べぬ!肩を貸さぬ財を懐き生きて行け!己が最期を看取らぬ金と共に生きるがいい!その重さにてその身がへし折れるまで!!それが貴様への、浅ましき欲を貪り続けた報いと知れ!!】

 

最後の希望たる5万フランを奪わず、ダングラールを彼は解放しました。もはや介護無しには生きられぬ程に衰弱した彼が突き放された先でどうなったかは、最早語るに及ばずといったところでしょう。

 

【瞼を閉じ、眠るがいい。その程度の慈悲はくれてやろう。二度と目覚められぬやもしれん恐怖に怯え、脇に立つ死神に媚びを売るがいい!!・・・後、一人・・・後一人だ・・・!必ずや地獄へ落とす!我が身、復讐の化身なり!神もまた!我の行いを赦したもうぞ!!クハッ、クハハハハハハハハ───!!】

 

(・・・後一人。後一人で全てが終わる。終わるんだ・・・)

 

後一人、残るは自らを投獄したヴィルフォールのみ。・・・やがて彼は復讐の焔を燃え上がらせ、全てを地獄へと引き摺りこむのです。

 

全て。・・・そう。彼の揺るぎない大義を根底から覆す、彼自身の矜持もろとも。モンテ・クリストもろとも──




アヴェンジャー(物語としてならば、魔術や神秘を駆使した我が神父の敵は語る必要はあるまい。しかし、こう改めて演じるとなると・・・つくづく悪趣味な事をしてくれたものだ、デュマ。・・・ン?)

公会堂入り口

猫「ナーゴ」

(・・・猫だと?)

「ニャー」

スタタタ

(・・・・・・・・・・・・リッカ)

(ほい?どったの?水?)

(いや。・・・銀河警察と魔本にあの猫を追わせろ)

(ぬこ?どこに・・・あ、あの猫?──解った!)

(・・・創作神話に曰く。ランドルフ・カーターは猫を我が友としていたという。・・・偶然ではあるまい)

カーター「・・・・・・」

(貴様は何を伝えんとしている?邪神と共に我等を謀る者か?それとも・・・?)

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