人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ゴルドルフ「うーん、中々に香ばしいクズが出るものだが・・・あんまり楽園に演じてほしいような人はいないものだねムニエル君」

ムニエル「そりゃそうですよ。横恋慕の役なんか誰にでもやってほしくないから立候補した訳ですし、俺」

ガストン「ドクターも何かやれないかなとはいってくれたが、こういう非人道的な役割は俺達が請け負った方がいい筈だ。子供のサーヴァントもいるし、イメージは引き摺るものだしな」

ムニエル「あぁ、しかし楽園にも上映されてるんだよな。コンちゃん・・・多分嫌われたよなぁ、俺・・・フェルナン生々しいクズだし・・・」

オルガマリー「舞台裏にいたのねムニエル。コンラちゃんからメッセージよ」

「嫌われる覚悟はできてます!ごめんねコンちゃん!!」

「『お疲れさまでした!素敵でしたよ、ムニエルさん!また、是非とも頑張ってください!』・・・だそうよ、良かったわね、ムニエル」

「ヌッッッッ!!!(絶命)」

「良かったなぁムニエル!」

「いい子だねぇホント・・・私、石投げられないか不安なんだけど・・・」


幕間 ガスパール・カドルッス

エドモン・ダンテスを陥れた3人の男達。それらはモンテ・クリストの永遠の復讐対象となり一切の慈悲も向けられぬ存在であるのは皆様も御承知の事と思われます。・・・しかし、彼等の他にもう一人、悪党とは言えずとも小心者で、ただひたすらに間が悪かったとされる男がいることに、皆様はお気付きの事でしょうか?既に名前は出ており、既に死去していた、準復讐対象とも言うべき男・・・

 

カドルッス(演ゴルドルフ・ムジーク)「私は彼の復讐のきっかけを作った様なものだ・・・そうだ、人は呆気なく悪逆に落ちることができるのだよ。いや、本当にね・・・」

 

ガスパール・カドルッス。大幅に簡略化し、最低限の描写のみにて皆様に送り届けし此度の公演。それでも大いに波瀾万丈にて長き復讐の旅路の、ちょっとした出来事でもあるこの男の遍歴と最期を、息抜きと一息がてら紹介すると致しましょう。しかし、これは寄り道であれ道草ではなく。彼をとりまく人物の中に、確かに最後の標的に届く鍵となる人物は存在しているのです──

 

 

「休憩だって!トイレ行く?」

 

「ダメだよ、最後の標的を見逃しちゃう!」

 

「誰なんだろう、その人って?」

 

(もうすぐこの劇も終わる・・・気になるのは、アビーの状態・・・)

 

「どんな人なのかしら・・・」

 

(・・・魔女を降臨させないようにするだけでは、不充分・・・?)

 

 

彼はダンテスの隣人、仕立て屋の男。決して悪人ではありませんでしたが、小心者で日和見主義者。かつて彼は、ダングラールとフェルナンの悪逆を止められる立場にありました。実際の取引を、目の前でたまたま見てしまったのです。

 

「き、き、君達!?ダンテスを陥れようとするのはよ、よ、よくはないんじゃないかね!?大変な事となるよ君達!?」

 

悪逆を見逃すことの出来なかったカドルッスはそう告げ、悪逆を思い止まらせるように告げました。・・・が、悪逆が露呈したならば、お前も決して他人事では済まされない。共犯者として確実に実害を被ると説き伏せられてしまい・・・

 

「え、ぁ・・・・・・じゃ、じゃあせめて、私、何も見なかった。私は此処にいなかったということでいい・・・?」

 

彼は悪逆を糺せる勇気を、自らを犠牲にするという選択を選べませんでした。彼の矮小さは、実に我々に近しいと言えるのでは無いでしょうか。そして止まらぬ針は進み、ダンテスは投獄され、彼もまた没落し、郊外にて小さな旅館を営む日々を選んだのでした。

 

「この処遇は当然だろう。勇気を出せなかった臆病者・・・そんな輩が華々しく大手を振っていいはずないからね・・・」

 

ですがそれを悔いたが故に彼は懺悔の選択肢を選び、とある教会にて自らの罪を告白したのです。悪逆を止めることが出来なかったという事を、ダンテスを見殺しにしてしまったという事実を、彼は深く悔いたのです。

 

「私はやらなかったというだけだ。やるべきことを、やらなかったというだけだ。あの二人となんら変わらん。私は、ダンテスに顔向けができんよ・・・」

 

しかし、彼の言葉を聞いていたブゾーニ神父・・・変装せしモンテ・クリストはその懺悔を聞き届け、彼にダンテスの遺品として、ダイヤモンドを託しました。踏み越えず、悔いたその心への報いとして。

 

「いいの!?ホントに!?ありがとうダンテス!ごめんね本当に!!」

 

しかし彼を取り巻く環境は美談としては終わりません。彼の得たダイヤモンドに目が眩んだ妻は、諭して買い取りに宝石商を差し向けます。足元を見た宝石商にダイヤモンドを渡すまいと彼は・・・

 

「私のダイヤモンドだ!これは誰にもやらん!私だけのものなんだからね!」

 

なんと、宝石商を殺害してしまいます。また返り討ちにあった妻もまた死に、幼馴染みたるベネデットを捕らえにきた憲兵に見つかり、共に投獄されてしまうのです

 

ベネデット(演・燕青)「あんたも縁がないな、カドルッス。まぁほら、悪いことは出来ないって言うだろ?」

 

「今更何を・・・ともかく、このまま死にたくなんて無いからね私は!」

 

二人は後に、ウィルモアと名乗る者の手引きにより逃走、脱獄を果たします。その後はアンドレア・カヴァルカンティと名乗り貴族の生活を送るベネデットに、正体を知っていることをネタにたかるようになっていきます。

 

「ほら、お互い秘密があるのは解るだろう?上手く付き合って行こうじゃないか、ね?今、持ち合わせが私厳しくてさ・・・」

 

そんな事をすれば、いかに幼馴染みといえど疎ましく思われるのは自明の理。彼はベネデットに『モンテ・クリストを殺せば財産が俺に渡る。それを山分けしよう』と諭され、彼はモンテ・クリストを殺すために屋敷へと侵入します。・・・ですが、そこにいたのはブゾーニ神父。彼は神父に諭され、これではあの懺悔が偽りのものとなると思い止まるのです。

 

「私は・・・結局のところ悪人にも善人にもなりきれない、中途半端な男だな・・・」

 

彼は今度こそ自分自身に落胆し、もうこのような行いは止めようと屋敷を出ました。ですが・・・

 

「ベネデッ、・・・──!?」

 

「悪いねぇ。色々知られたお前に生きていられると面倒なんだわ。というわけで、いい感じに死んどいてくれよ」

 

彼はそもそもカドルッスを生かしておくつもりなどなく。彼は凶刃にさされ、致命傷を負いました。最早助からぬ虫の息の中で・・・

 

【・・・みすぼらしい姿だな、カドルッス。お前は確かに悪人では無かったが・・・哀れ、灰色の蝙蝠は物珍しく狩られる運命だったか】

 

「ぶ、ブゾーニ神父・・・」

 

【この告発状にサインを書け。お前を刺した男は、確かに処理を約束してやろう】

 

雰囲気の異なる彼に驚きながらも、ベネデットの告発状にサインを行うカドルッス。そして彼は・・・人の運命の数奇さにうちひしがれました。

 

【確かに。・・・お前の処遇はどうするか決めあぐねていたが・・・そうなったのもまた、神の思し召しなのだろう、カドルッス。──冥土の土産に、一つの真実を知っていけ。私は・・・お前の隣人。エドモン・ダンテスという名の男だよ】

 

「・・・ば、バカな・・・まさか、こうして私は、お前に裁かれたと・・・」

 

「・・・数奇なものだよな。・・・じゃあな、カドルッス。瞼を閉じて、静かに眠るといい」

 

「・・・運命からは、逃げられない・・・誰も、誰も逃げられんのだ・・・フェルナン、ダングラール・・・お前たちも、必ず・・・必ず・・・!!」

 

戦きながら息絶えるカドルッスを、静かに見下ろすエドモン・ダンテス。彼は、結局命を狙ってきた彼を諭したままで・・・

 

「・・・・・・間の悪さでここまで来るなんて、大した男だよ、お前は。・・・殺す気にもなれないくらい、ちっぽけな男で。──嫌いじゃなかったけどな」

 

・・・彼は静かに、その場を後にしたのでした。──最後の相手の心臓を穿つ槍となる、告発状を手にしたままで

 

ジェラール・ド・ヴィルフォール。彼が不義にて作り、幼児の際に生き埋めにした子・・・ベネデットの告発状を、手にしたままで。

 

 

 




「ナーォ」

アル(探偵ものの定番では、あるが、何故猫の尾行などをやっておるのだ妾等は・・・眠いのだぞ・・・)

XX(大事な調査です!ほら、餡パンありますよほら)

(むー・・・むぐむぐ・・・)

(些細な情報も見逃さない!猫が導くままに情報をゲットです!・・・あれ、どこ行きました?)

(村の外れに走っていくのぅ。確か向こうには・・・)

(・・・丘がありましたよね。絞首台と・・・牢獄・・・?)

猫の鳴き声「ナーォ」

「・・・怖くなってきたんですが大丈夫ですかね?」

「なるようにしかなるまい・・・リッカが死ぬよりましじゃろう。ほれ、行くぞ」

「・・・理不尽デッドエンドとか、なりませんように・・・!」

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