人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
3000文字近く打つのに1時間かかるのはひどい・・・明日からはしっかりやりますので、どうかお許しください!
ですが更新は欠かしません!体調不良の皆様方、どうか無理をなさらず!エタるなどとは無縁でありますから!
私情、すみませんでした!どうかお楽しみください!
「・・・あと、一人か」
【そうだ。あと一人だ】
エドモン・ダンテス・・・そして、モンテ・クリストの痛烈な復讐劇。その終わりはすぐそこまでやって来ていました。そう、残す一人は自らを政治犯として地獄に落とした外道、ジェラール・ド・ヴィルフォールを残すのみ。彼に復讐を果たすことにより、ようやく自らの本懐を遂げる事が出来る。彼はそう、確信していました
「私は、正しかったのだろうか」
復讐するは、我にあり。彼は自らの復讐を疑わず成し遂げてきました。その傍らに、いくつもの不幸を積み重ねようと。ですが彼は、決して民や人々を憎みはせず、可能な限り対象以外の相手を巻き込まぬように配慮してきたつもりでありました。そして、ここまでやってきた・・・今更、と彼は首を振ります。ここまで来て、止まることなど許されない
「・・・我が往くは、恩讐の彼方」
そう。モンテ・クリストは其処のみを目指し進む。ならば・・・最早迷うことなど無いのだから、と
【・・・】
そして、彼の中の復讐鬼も、うっすらと感じていたのです。───自らの、役割の終焉を。どうか皆様、最後まで見逃すことのありませぬよう・・・
~
「「「「・・・」」」」
~
ジェラール・ド・ヴィルフォール。硬直なまでの王党派。権力欲の塊。出世の為なら、人を犠牲にすることを厭わない。ダンテスの無実を知りながら、地獄に落とした様に。彼は着実に出世し、法曹界の頂点についていました。妻エロイーズ、そして息子であるエドゥワールも授かり、まさに幸せの絶頂と言えるでしょう。彼もまた、他者の幸せを踏みにじった一人であったのです。
【今は笑うがいい。生を謳歌するがいい。貴様を歓待する酒には事欠かぬ。・・・些か口にするには憚られる毒酒がな・・・!】
彼はまず、妻であるエロイーズに目をつけました。彼女はヴィルフォールの前妻より低い爵位の家の出。前の妻の娘であるヴァランティーヌ、そして彼女が相続する財産に酷く嫉妬していたのです。そしてそんな彼女に、彼は諭すのです。
【人は何が起こるか分からぬもの。明日にも知れぬ旅路を行く迷い子。・・・そう。いずれ死ぬ者がどのように、どんな場所にて死ぬかは誰にも分からぬのです。・・・そして、死した後もまた】
彼は薬を渡しました。それはファリア神父が服用していた薬。・・・用途を間違えば猛毒となる薬を、気付けと睡眠薬として、それとなく。モンテ・クリストは、やがて彼女が何をするかを見据えていたのです。
エロイーズ(演・セミラミス)「ヴァランティーヌに財を相続させ、そしてヴァランティーヌを葬る。そうすれば、財産は全てエドゥワールが握る事になる・・・」
欲に目の眩んだ人間の目は曇りながらも足取りは早く。彼女は前妻の両親、サン・メラン公爵夫妻、使用人、娘、身内を次々と毒殺していきます。そう、自らの欲望のままに。息子への愛のままに。
【フン。人はこうも容易く悪徳に堕ちる。背中を押し、囁く悪魔の言葉のなんと心地よき事か。いずれ、ヴィルフォールに気付かれ断罪されるだろうよ。案ずるな、夫妻まとめて地獄に招いてやるのだから・・・!】
モンテ・クリストの予測通り、聡明なヴィルフォールはそれら全てが毒殺だと気づき、犯人が妻だと見抜いたのです。そして彼は言いました。・・・告発され家名を汚す前に、自殺せよと
「君の事は残念だ。だが、君の命より家名と面子の方が何十倍も重いのだよ」
それを見計らい、彼は布石を打ちました。ベネデット・・・かつてヴィルフォールが赤子の際に不義の隠匿として生き埋めにした彼が、ヴィルフォールの子である子ということを裁判にてベネデット自身に告げさせたのです。その為に、カドルッスとベネデットを泳がせていたモンテ・クリストの暗き叡知と発想が実を結んだのです。彼は自らの不義を暴露され、事実上失脚という破滅に脚を踏み入れました。
「私はなんという事をしたのだ・・・!自らの罪を棚上げし妻を詰るなどと・・・!」
【ククッ、懺悔ならば存分にするがいい。──物言わぬ妻の死体にすがりながらな・・・!】
屋敷に戻るヴィルフォールを追うように、そして彼もまた屋敷に戻ります。復讐の完遂を告げる、自らの正体を告げる為に。そして、絶望に叩き込むために。
・・・──しかし、絶望が口を開け待ちわびていたのは、ヴィルフォールだけではありませんでした。そう。因果は巡るのです。モンテ・クリストは、神ならぬ身。彼もまた、裁きを待つ者にしか過ぎなかったと突き付けられる現実が待っていたのです。
『良き母は、子を遺してはいかないものです』
そう、書き置きが残されておりました。妻は、エロイーズはヴィルフォールの言うままに自殺しており、死体と成り果てていました。・・・何の罪もない、エドゥワールともろともに。心中自殺、ということとなります。彼は慟哭しました。妻と、そして息子を、同時に喪ったその事実そのものに。そして、その事実は・・・モンテ・クリストすら予測しておらぬ結末でした
【バカな・・・!何故、何故こんな真似を!子には、子に罪など無かった筈・・・!我が復讐に、かの子などが巻き込まれていい筈が無い・・・!】
「復讐・・・!?まさか貴様、エドモン・ダンテス!エドモン・ダンテスなのだな!この悪魔め!見ろ!お前は、罪なき子すら手にかけた!何の罪もない、健やかな子だ!」
【馬鹿な・・・馬鹿な・・・!馬鹿なっ・・・!!】
「お前は復讐者などではない!罪なき命を奪った時点で、貴様はただの血に飢えた殺人鬼だ!狂人め!返してくれ!我が息子を・・・返してくれ・・・!!」
【っ・・・・ぐっ・・・・!!】
逆上したヴィルフォールの糾弾。最早手遅れであるエドゥワール。喪った大義名分。狂人、殺人鬼。それら全てから逃げるように、モンテ・クリストはエドゥワールの蘇生を試み引きこもった間、最早全てを喪ったヴィルフォールは、精神的な限界を迎えました。鍬を持ち、庭に飛び出し・・・
「私の息子、私の息子はどこにいるのだ。私の息子は、ここに埋めたのだ。私の息子、私の息子、私の息子、埋めたのだ。見つけなければ、見つけなければ、見つけなければ。私の息子・・・」
延々と、いない息子を探し続ける狂人・・・図らずとも、彼の復讐は果たされたのです。ヴィルフォールの全てを奪う事により。・・・罪なき命を、地獄に落とす事により。
【・・・・・・・・・・・・・・】
しかし、復讐の完遂に喜びは無く、その目に光が射すことは無く。・・・延々と庭を掘り返すヴィルフォールに止めを刺す事もなく。ふらふらと、膝から崩れ落ちたのです──
エドモン・ダンテス「こんな・・・こんな結末が僕達の行く先か!罪のなき子供を手を掛けた!殺した!僕が!この手で!」
【何を言う、何を言うエドモン・ダンテス!決意した筈だ!決心した筈だ!その手を何のために汚した、何のために吼えた!我等は復讐を成し遂げる為に──】
「幼き命を無慈悲に奪う事が虎か!何も知らぬ子を死に追いやる事が復讐か!違う、違う!振り上げた牙の行き先を選べない虎は虎じゃない!ただの血に狂った獣だ!僕たちがそうだ!今の私達がそうなんだ!モンテ・クリスト!!」
【・・・・・・・・ッ・・・・・・】
「・・・僕たちは、復讐の領分を越えてしまったんだ。・・・もう、何処にもいられない・・・消え失せよう。何処へなりとも・・・」
彼には何も残ってはいないのか?最早彼は狂人になってしまったのか?
・・・次なる場面が、復讐の果て。皆様、どうかお見逃しなきように──