人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ラヴィニア「テケリ・リ・・・あった、このページね」

ショゴス 

大昔に地球に来た『古のもの』が創造した生命体。奴隷として狂気山脈などの建築に駆り出されていた。水陸両生。

俗に言うスライムのような不定形の体をしており、その外見通り姿形を自由自在に変えることができる。牙の覗く口や目玉が至るところに付いている姿がよく描かれる。
自身の身体にどのような器官も自由に形成できる。このため主人が望めばいかなる形でのコミュニケーションも問題なく行うことが出来る

他の生物と同じように身体を作り替えることも出来る。
テレパシーや呪文などを使えば操ることも出来るが、知能は低い為、必ずしも従順に従う事は無く、基本的に危険な生物である事に変わりは無い。
また、このショゴスの細胞を元に、人類を始めとする様々な動植物が地球上に誕生する事になったとされている。

およそ十億年前、生まれたばかりの時は不定形の姿で知能も非常に低かったが、脳を自ら固定化する事で知能が進化していく事になる。
やがて「ショゴス・ロード」と呼ばれる上位種族も生まれるようになった。
このショゴス・ロードは、物を製作する事が出来る等、現代の人類に引けをとらない非常に高い知能を誇っていたが、古のもの達に奴隷として飼われている事を自覚していくようにもなり、古のもの達が旧支配者であるクトゥルフと激戦を繰り広げた後、その知能故に自らの扱いに不満を持って反逆を起こした。
結果的に古のものを駆逐することに成功したものの、自分達も封印されてしまい、現在は地底奥深くや狂気山脈に蠢いているという。
ただし、全ての個体が同じ選択をしたわけではなく、作られた奉仕種族として本能的に主人を求めるものもいたらしく、現在でも何かしらの種族に奉仕していることが多い



「間違いない、今日の夜の相手は、ショゴス・・・頑張って。死なない相手はいないのだから・・・」

(そして、私も・・・きっと、儀式を完遂するだけではいけない。魔女を【呼ばない】だけでは、きっと、いけない・・・)

「・・・アビー。どんな存在でも、何があっても。私は、あなたの・・・だから──」


夜 ショゴス

「テケリ・リ!テケリ・リ!テケリ・リ!」

 

奇妙で奇怪な鳴き声が夜のセイレム、海付近の広場に響き渡る。夜の狩りの時間に訪れし異形なるもの、その鳴き声であることは明白だった。それを聞き付けたリッカ、アル、そしてナイアにXXが急行した際に見たもの。それは海より来る『よくわからないもの』であった。

 

【・・・メタモン?】

 

リッカがそう漏らした通り、其処にいたのは奇妙な鳴き声と共に蠢く不定形、形の定まらないスライムのようなうねうねとした塊が、テケリ・リと聞こえる鳴き声を発し続けている。その輪にかけて奇妙な、としか云いようがないそれの正体を、ナイアとアルは把握している。

 

「そうですか、ショゴス・・・奉仕種族が相手でしたか」

 

『テケリ・リとだけ書かれた紙をよこしたのはヒントのつもりであったか。真偽解らぬ短絡的なアドバイスとは小癪な真似を』

 

【えっと、クトゥルフ的なメタモンみたいな感じなのかな?】

 

リッカの予想はあながち間違ってはいなかった。ショゴスはかの作家に曰く、遥か太古に外なる存在が持ち込んだ原初の生物ですべての生物の素であり雛形。奉仕種族として使役していた存在であると記されている。それらは使役されるだけの存在であったが、使役される中で知性を獲得し、主に反逆し封印されたという来歴が語られている。それらは山脈や地底の奥深くにて蠢いているとも、本能に従い主人に仕えているとも伝わっている存在であった。かの作家の連れ合いの一人は、この生物の存在を頑なに否定しているとの記述も残っている。それほどこの生物が恐ろしかったとの推察も行われている。現に今の見た目も、牙と目玉が至る所についているといった不気味な形をもっており、可愛いとは言いがたき姿を晒しているのだから信憑性は高いだろう。

 

「どんな存在だろうとボーナスと飯の種な事には変わりありません。徹底的に仕留めてやっちゃいましょう、リッカ君!」

 

物怖じしないXXの啖呵と同時に、ショゴスと呼ばれる存在に変化が起こった。その形が大きく変わり、戦闘と敵対の意志を見せたのである

 

「テケリ・リ!テケリ・リ!」

 

【来るよ!避けて!】

 

その不定形の形が一瞬にして変化し、強靭な四肢と鋭利な角を持つ魔獣、バイコーンへと変化し一直線にリッカらに狙いを定め突撃を行った。その突進をナイアはステップ、XXは飛翔、そしてリッカは──

 

【ふんぬっ!!!】

 

真正面から受け止める。突き付けられた角を掴み、首を掴み踏ん張る形で突進を食い止めた。その咄嗟の力業にも問題なく新たな力は応える。みなぎる力と魔力は、確かな生存をリッカに約束してくれた。努力と筋肉はけっして裏切らないのである。そしてリッカは素早くバイコーンの頭に手を回し、180度首をへし回して叩き折った。グラリとよろめき、倒れ伏すショゴス・バイコーン

 

【これくらいで終わり・・・なわけ、無いよね・・・!】

 

「テケリ・リ!」

 

リッカの言葉を理解したか否かは不明だが、再びバイコーンの形が崩れ去り新たな形態へと変化する。強靭な四肢は大きな翼に変わり、そして牙は口に集中し雄々しきフォルムへ変化する。亜種にして幼体の竜・・・ワイバーンへと姿が変化したのだ。そのまま空へと飛び立ち、飛翔したXXに食い付かんと牙を光らせ迫っていく。

 

「私のアーヴァロンに空中戦を挑もうと言うのですか、小賢しい!アーヴァロンは最新型、前時代的な飛行運動に遅れはうわっと!?」

 

言い終わる前に、ナイアのアタッシュケースが変化したガトリングガンが火を吹き、ショゴスに痛烈な弾幕を叩き付けた。魔力にて生成されたその弾丸をいくつか直撃しながら旋回するショゴス。それは彼女なりのサポートでもあったのかもしれない。

 

「当たるところでしたよ!ハワイに行って銃の腕を鍛え直して来なさいナイア!」

 

「むしろ当たらなかった事実に落胆ですわ。当てるつもりで放ちましたのに・・・」

 

「そういえばそういうことやりましたねあなた!いいですよ、其処でばらまいていなさい!一気に片付けます!」

 

そう告げ、蒼きエーテルを噴射しXXは夜空の流星となる。重力の軛を無視する超絶高速移動。そして状況予測にて動きを洗練させ、追いすがるワイバーン・ショゴスを振り切りあるいは翻弄する。

 

「遅い!其処ですっ!」

 

追い縋り、噛みつこうと大口を開けたワイバーンの停止した一瞬、局地的ワープにて自らをワイバーンの真後ろに転化させ、槍の一撃を突き立てうなじから口に槍を貫通させ討ち取った。痛烈な一撃に、大地へと墜落していくショゴス・ワイバーン。

 

「あなたの敗因はたった一つ。私の上昇志向を侮った・・・──まだ死んではいないですね、しぶとい!」

 

そう、ショゴスはまだ死んではいなかった。墜落していく最中にも姿を変える。鱗に満ちていた皮膚は彫刻のような鈍色に。小さかった四肢はまたもや勇壮かつ二足歩行に。顔面は厳つい形相を浮かべたものに、右手には巨大な石塊を所持したものへ。強大にして彫刻がごときその姿・・・スプリガン、と呼ばれるモノへと再び変化したのである

 

「テケリ・リ!テケリ・リ!」

 

その太い幹のような腕を振り上げ、手にした石塊を叩き付けんとする。受け止めようと踏ん張るリッカであったが、狙いはリッカではなく、外なる狩人、ナイアであった。

 

「いいでしょう。お相手致します」

 

そう告げ、アタッシュケースを静かに持ち上げ、手を叩き付けると三連の刃を有した巨大なブーメランブレードへとかの魔具が変化する。それを身体を捻り、攻撃を回避すると同時に放り投げた。叩き付けられた塊が眼と鼻の先に落ち、一歩間違えれば即死のダメージであろうそれをなんともなきように受け流し、フォークを取り出し素早く目を潰す

 

「テケリ・リ!」

 

たじろいだ隙を見逃さず、シスター服の中から素早く対戦車ライフルと四連装ミサイルランチャーを取り出し、ランチャーを構え素早く頭部に叩き込む。豪快な爆発音と共に爆炎が吹き上がり、スプリガンの顔面の彫刻が粉々に吹き飛んだ。同時に先に飛ばしたブーメランブレードが、ショゴスの四肢を切り刻む。それと同じくしてバックステップにてライフルを構え、地面に接地し狙撃体勢となりスコープを覗き──

 

「宇宙CQC・・・『目玉射的』」

 

素早くトリガーを引く。対戦車に使用されるライフルを魔改造に次ぐ魔改造にて仕上げた漆黒の一品。特殊銀弾を装填された一発が火を吹き、頭部ごと粉々に粉砕し弾丸が遥か彼方へと飛んでいった。その一撃はおおよそ大型の獲物に向けるものなので、それはうってつけと言えるだろう。

 

【わぁ・・・!見た目通りの重火器タイプだねナイちゃん!胸にミサイルクラスの弾薬二つあるし!】

 

「射撃の腕はドリームランドにて父に教わりました。携行できる火器ならば御手の物です。ビューティフォーですよ」

 

これで討ち果たしたのは三度目・・・しかし、ショゴスは討伐されたとは言えず、また不定形の身体を蠢かせている。また次の姿へと変化するようだ。

 

「・・・これってもしかしてですよ?一度や二度では死ななかったりするんですかこれ」

 

「見ての通りです。どうやら活きのいいショゴスの様ですので、死ぬまで殺すしか無いのでしょう」

 

【長丁場だね・・・気合い入れてこ!】

 

──その後、ショゴスは様々に姿を変え、リッカらがそれらの対応を繰り返し、戦い続けた。ナイアが言うには、このショゴスは下級でありながら何者かに品種改良を加えられた特注品であるがゆえにこれ程強靭であるのかもしれない、と

 

手を変え品を変え、姿を変えるショゴスを撃破し続けるリッカ達であったが、その生命を奪うまでには至らず。──戦いは、夜明け前の早朝。三時近くにまで及んだ──

 




ショゴス「テケリ・リ!テケリ・リ!」

リッカ【タフだなぁあの怖いメタモン!テケリ・リが頭から離れないテケリよ!】

アル『!?恐らく夜明けを迎えれば死すというバランスなのであろう、でなければ生命の範疇を越えた生存力の説明がつかぬ!或いは・・・』

【或いは?】

『或いは、跡形もなく昇華するしか無いのかも知れぬ。聖剣や、昇華魔術。或いは単純に膨大なエネルギーと言った攻撃にて・・・む!?』

瞬間、ショゴスが更に蠢き始めた。更なる変化を遂げ、再び姿を変える予兆。三人は素早く身構える。

「見てきたエネミーに粗方変化しましたよね!次は何になるんです!?」

「アレは私達の世界では生物の原型。逆説的になんにでもなれます。何になろうとも不思議では、な・・・」

その言葉と予測は、速やかに覆された。最後に変身したドラゴンより、尚もショゴスは変化していく。見上げるほどに巨大な二足歩行。見たこともないような、白き身体

【何この・・・見るからにヤバそうな白い巨人!?】

身体に刻まれた謎の紋章。かつて地球に飛来した破壊者に刻まれた遺伝子レベルの畏怖を再現し、敵対者を滅ぼすためにショゴスが変化した姿は、一万数千年前に神々を凪ぎ払った白き巨人──

『テケリ・リ!テケリ・リ!テケリ・リ──!!』

「・・・セファール・・・」

ナイアが父より聞き及んでいた、文明の収穫者。地球の神々を、文明を食い荒らした破壊の巨人。セイレムに再現された戦慄の巨人が、奇怪な鳴き声を轟かせた──

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