世界が燃えている。
文明らしきものは全て踏みつぶされた。
知性あるものは隷属さえ許されなかった。
早すぎる、と予言者はおののいた。
戦うのだ、と支配者はふるいたった。
手遅れだ、と学者たちはあきらめた。
でも、少しぐらい残るだろう、とアナタたちは楽観した。
──それが、姿を現すまでは。そして・・・
【ほーん。ゼットンってブリーダーによって個体の強さが変わるんだな。成る程成る程、ショゴスみたいなものか】
(・・・ショゴスも似たようなモノだし、暇潰しがてら育成をしてみるとするか。土壌は何処を選ぼうかな・・・よし。あそこにしよう)
【最新の楽園の年代から逆算して1万4000年前の巨人をラーニングさせよう。アンチセルや文明破壊は真似できないだろうが強度は強くなるだろ多分】
(放逐開始。立派に育つんだぞ~)
ナイア「何をしていたのですか?」
【ペット育成】
~
「・・・・・・」
リッカ「大丈夫!?ナイちゃんしっかり!」
「はっ。・・・いえ、なんでも・・・あります」
【あるの!?】
『テケリ・リ!テケリ・リ!』
遥か昔、地球に降り立ち文明を破壊し尽くした白き巨人、月にてその所在を巡る戦いの記録が残りしセファールと呼称される姿になったショゴスは、その足取りをセイレムへと定め進行を開始した。ショゴスの理性と思考は、セファールの理念と行動を学習し再現している。すなわちそれは文明の破壊。この特異点にて構築されている文明の集落たるセイレムに進行を開始するのは当然と言える。ただ歩くだけで地響きが起き、踏みならされた大地が陥没する。ショゴスの持つ質量の全てを以て再現されたそれは、姿形にわずかなりとも差異は存在しなかった。その闊歩は、まさに巨人の名に相応しき偉容に他ならない。
「銀河警察のデータベース・・・あ、ありました!やはりあれはセファール・・・宇宙に飛来している遊星と呼ばれる存在の尖兵です!」
『何でもよい、食い止めるぞ!これ以上進まれては魔女どころの騒ぎでは無いのだからな!』
当然、その進行を阻むためにリッカらは行動を開始する。持てる火器を使い、アーヴァロンを飛翔させ、弓矢やガンド、剣戟や魔力放出といったあらゆる手段をショゴス・セファールに叩き付ける。夜空を彩る真紅の爆炎や魔力の軌跡が、一斉に白き巨人に叩き付けられた。その波状攻撃を受けたショゴスは、僅かなりとも苦慮する素振りを見せるが構わずに進行を続けていく。文明を吸収する機能は備わらぬ代わりに、圧倒的な強度を突き詰めて成長した個体に変化したことは明白であると言えるだろう。
「なんとも出鱈目な生物に進化したものです!これだけの力が在るくせに根無し草の野生だなんて嘘だと信じたいですね!」
「攻撃が効くだけ温情と言えるものでしょう。本来のあの巨人はあらゆる文明を吸収し、巨大化し肥大していくと聞きました。流石にショゴスにはそれらは再現できなかった様ですね」
劣化、更に言えばデッドコピーと言えるとはいえ、その巨体が脅威で在ることに変わりはない。セイレムに脚の一踏みでも許せば粉々に壊滅するだろう。単純明快な質量の脅威として、かの白き巨人の再現は由々しき事態に変わりは無いと言える。
【通信、やっぱり繋がらないか・・・!ロマン辺りなら、或いははくのんなら絶対何か知っている筈だと思うんだけどな・・・!】
変わらぬ通信、楽園との断絶への苦慮をリッカが洩らす。力尽くにするにしても、搦め手を使うにしてもその案が無ければどうにもならない。だが、手をこまねいている場合でもない。ならば──
【NG召喚、ゲッターロボ!竜馬さん、物理で足止めお願いします!】
リッカが選んだ力、それは進化を司るエネルギーを有するロボ、ゲッターロボであった。漆黒のロボ、ブラックゲッターの巨体が時空より飛来し、白き巨人を食い止める
『久しぶりの再会にしちゃ随分と慌ただしいじゃねぇか。そんなに切羽詰まってんのか?』
【打開策を見つける!だから、時間を稼いでください!】
『成る程な。上等じゃねぇか、クラッカーやケーキのもてなしより、こっちの方が誂え向きだ!』
黒きゲッターロボが身を翻し、両手にトマホークを装着し巨人に飛び掛かる。猛烈な速度で飛び掛かられた巨人が同時に身体を引き裂かれるが、即座に再生し黒きゲッターに質量を重ねあげた拳を振るい上げる。ゲッターロボの巨体に合わせて瞬時に適した大きさに変化する程の柔軟性と適応力。痛烈な反撃と攻撃を、物理法則を無視した制動飛行で縦横無尽にゲッターは回避していく。倒しきれるとはいかぬまでも、確実に時間を稼げる戦い方・・・殺し続ける事により釘付けにする戦い方であった。粗暴ながらもしっかりとした戦術に、リッカは頼もしさと感謝にて頭を下げる。
「ゲッターロボでは無いですか!銀河における特級の危険エネルギーの一つを使ったロボット!ゲッターエンペラー艦隊は何処にいるんでしょうかね?」
「喜んでばかりもいられません。・・・リッカ様、そしてXX。かのショゴスは『消滅』そして『昇華』させるしか無いと提案します」
ナイアの提案に耳を傾ける一同。巨人にまで再現したショゴスを、これ以上進ませないためには一撃の下に葬るしかないと。そしてそれはダメージを蓄積させる討伐ではなく、一撃の下存在規模を消失させる・・・或いは、この世界より退出させるレベルの概念攻撃を要すると言うのだ。
「確かに銀河警察アーカイブによれば、インフレの極致に至った聖剣の一撃でセファールは致命傷を負ったとありますが・・・ロンゴミニアドで代用しましょう!」
『リッカ!昇華魔法・・・いや、汝の世界では魔術が適切か。それに誂えた術式は備わっておる!更に託された巨人の力があればやってやれない事は無いであろう!』
ナイアの見立ては机上の空論ではない。人類の脅威に対する特効を持つ彼女の最古のアーティファクト・ロンゴミニアドなどならば外なる者に連なるものならば問答無用で消し飛ばせる。セイバーであっても消し飛ばせる。エクスカリバーの役割は充分果たせるとXXは結論付けた。そしてそれはアルが所有するデモンベインにも搭載されている武装『レムリア・インパクト』にも該当する。無限の熱量を叩き付け文字通り昇華させる鬼械神の必殺技。それを使用すれば、或いはと
【迷っている暇は無いよ!見て、ゲッターにボコボコにされながらセイレムに向かってる!このままじゃ夜明け前にセイレムが終わっちゃう!】
一歩一歩、歩くのに全霊を懸けているが故にショゴスの歩みは確かであった。ゲッターロボの攻撃の被弾を意に介さず、修復を繰り返しながらセイレムへと迫る。僅か一端でもかの村に入った瞬間、村は混乱の内に滅び去るだろう。リッカらの敗北は、すぐそこに迫っている。
『その通りだ!ナイア、汝はどうするのだ?』
「万が一に備え、私も準備を始めます。・・・考えたくはありませんが、皆様が失敗した際への最終防衛ラインを形成する、という事ですね」
【──うん!もしもの時は、宜しくね!】
「言っておきますけど、あなたは私とどのカップラーメンが一番か決着をつけていないことをお忘れなく!死ぬのは許しませんからね!」
ナイアに後を託し、力強く頷くリッカ。そしてXX。覚悟を決め、翼を広げ、エーテルを噴出し二人は巨人に向けて飛翔していく。最早セイレムはすぐそこ、僅か目の前へと攻め込まれている。失敗は即ち、特異点攻略の敗北に他ならない
「──ご武運を、皆様」
ナイアは所感とと共に言葉を溢し、自らの胸を抑えた。──彼女の身体に託された最後の光輝、輝く宝石の形を取る父からの贈り物たる力の発動を覚悟して
そしてそれは最後の手段──躊躇う間もなく、最後の駆け引きが始まろうとしていた──
XX「私は上から行きます!手筈通りに!リッカ君!」
リッカ【解った!ビシッと決めてよ、XX!】
それだけを告げ、リッカはショゴス・セファールの眼前に降り立った。ゲッターロボに押さえつけられながら、じりじりとセイレムに向かう巨人は目と鼻の先にいる。だが、恐れている理由も、暇も無い。やるしかないのだ、自分達が
『準備は出来ている!やれ、リッカ!我等の力を浅ましきショゴスに見せ付けよ!』
【うん!──ナアカル・コーラス──】
バトルスーツを纏うリッカの周囲に、八つの白き光球が出現し浮かび上がる。両手を広げ、上に掲げる度に輝きは増していき、臨界寸前のエネルギーが瞬時に充填される。その輝きは、まさに地上に落ちてきた星が如くに。
『光射す世界に、汝ら邪悪の住まう場所なし!乾かず餓えず、無に還れ!』
アル=アジフの言葉に呼応し、一際輝き熱と光を放出する光球。ゲッターロボがそれを感知し、蹴り飛ばし離脱する。──それが、合図だった
【『
八つの光球から放たれる、魔力変換にて叩き付けられる無限熱量の奔流。四つの白、四つの黒による必殺の光線が、一息にショゴス・セファールに叩き込まれる──!
『テケリ・リ・・・!テケリ・リ・・・!』
ショゴス・セファールはその膨大を越えた無限大の熱量に焼き尽くされ、叩き付けられながらも、驚愕すべき毎に堪えている。身を焼き尽くされながら、突き動かされるように歩を進めようとする。後一歩さえ踏み進めれば、こちらの勝ちだとばかりに。
『なんという執念か・・・!此方の大技にすら堪えようとするとは、余程育成が上手かったのか、忌々しい!』
【ぐぅうぅうっ・・・!!ぉおおぉおおぉおお!!】
魔力を限界まで絞り尽くす一撃、バルキー・インパクト。通常の魔力消費の八倍という燃費の為、これを堪えられてはいよいよ後がない。いや、正確には昇華を堪えているに過ぎないショゴスではあるが、僅か一手の差で、足を踏み込まれる──!
【ぉおおぉおあぁあぁあぁ!!】
こうなったら身体が壊れようとも。そう決意しかけた時──その一手は仲間たちにより埋められる
『ゲッタァアァ!ビィイイィイィイム!!』
放たれたゲッターロボからの援護。ゲッタービームにより勢いが力強く後押しされる。その二つの波状攻撃により──遂に、変化が起きる
『テ・テ・テケリ・・・』
許容範囲以上の衝撃を叩き込まれた事により、熱量昇華により末端から消え去って行くショゴス・セファール。そして──
『リッカ君の頑張りをサポートします!最果ての光よ、私にボーナスを!そしてギル!私が主役の特異点を!ダブル・エックス──!!』
ロンゴミニアドのセーフを解除し、出力を上げて放たれる渾身の一撃。敵は喰らえば一撃で惑星ごと爆発させる最終裁決──
『ダイナミィイィイィイィイック!!!!』
エーテル宇宙然るに秩序。ダイナミックセイバー斬りにより、X字に切り捨てられしショゴス・セファール。そして、生命力を落とした身体で、最早それを止められる道理はなく。
アル『──昇華ぁあぁあぁっ!!』
【なのはさん、お願いします!ワールドエンド・ブレイカーーーッ!!!】
なのはのクラスカードをインストールした、だめ押しの火力ブースト。ワールドエンド・ブレイカーにより光に完全に飲み込まれしショゴス。アルの言葉と共に、セファール・ショゴスは完全に昇華し抹消され──
【はぁっ、はぁっ、・・・やった・・・!】
『相も変わらず、婿の貰い手に難儀しそうな娘だぜ。お前は』
日の出と、朝焼けが満ち。リッカ達の勝利を告げたのだった──
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