人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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三蔵「前の劇、すごくよかったわ!でも、連続で長い劇をやったら見ている人も大変だと思うわ。子供達も疲れちゃうだろうし!マスターも疲れてるみたいだし・・・ここはギャグで分かりやすく劇をやっちゃいましょう!」

ロマン『確かにリッカ君達もまだ眠ってるし・・・たまには僕たちだけで、彼女達も休ませてあげなくちゃね。頼めるかい、法師殿?』

「まっかせて!もしかしたらさっくり終わるから、二本立てだってできちゃうかも!よーし、トータ!ダビデ!モーセー!」

『・・・ん?』

『閲覧履歴 ギャグ漫画日和』

『・・・大丈夫なのかな・・・?』


昼 劇演目──西遊記 旅の終わり──

皆様は、三蔵法師とそのご一行を御存じでしょうか?御仏の導きを、声を聞き遥か西へ西へと徒歩で進んでいったありがたいお坊様、三蔵法師。その旅路にお供する三匹のお供、孫悟空、沙悟浄、猪八戒・・・彼等と共にありがたい教典を授かりに旅立った三蔵法師は、数多の苦難、そして困難に挑み、立ち向かい、やがて天竺と呼ばれる西へと辿り着きます。その功績を認められ、三匹のお供は新たな名前を与えられ、三蔵法師はその遥かなる旅路を未来永劫語られる事になりました。世界的に有名なこのお話は、世界の東の果ての島国、ジパングにすら轟く程の知名度を得ております。今回は三蔵法師の旅の終わりを描いた一幕を、劇としてお送りしたいと思います。・・・ですが東の果ての島国、ジパングは不思議な場所。なんだかそれは妙な伝わり方をしたようで・・・?

 

 

西遊記~いざ西へ!~第一回 旅の終わり~

 

 

天竺を目指して長い長い旅を続けてきた三蔵法師一行。その旅も遂に終わりの時を迎えたようですが・・・?

 

孫悟空(演 俵藤太)「ここが天竺か?ゴールと書かれた幕が一つ。随分と地味で侘しいものなのだな」

 

三蔵法師(演 三蔵ちゃん)「そうね!でも、此処が私達の旅の最果て!全てが報われるんだわ!」

 

「そうだな・・・む?法師?どうしたのだ法師?」

 

「わーい!一番乗りもらいー!御仏様教典ちょうだーい!!」

 

「「しまった──!!」」

 

なんと三蔵ちゃん、あまりの喜びに猛烈ダッシュ。お供を放り出し真っ先に走って行ってしまったではありませんか。これはあんまりだと、お供達は法師を呼び止めます。

 

沙悟浄(演 モーセ)「悟空。如意棒だよ。頭辺りを小突いて上げて止めてあげよう」

 

「うむ!南無八幡大菩薩!この如意棒を伸ばしたまえ!ぬぅん!!」

 

「ぎゃてぇえぇえ!!?」

 

放たれた如意棒に直撃した三蔵法師、これにはたまらずバタンと倒れてしまいました。しかし暴力に訴えた弟子達を、彼女は厳しく然り立てます

 

「何をするの全くも~!いい?悟空!沙悟浄!無闇な殺生、無闇な暴力はダメだって何度も何度も言ってきたじゃない!」

 

「いや、御主が抜け駆けと早駆けするからであろう」

 

「並みいる敵にまずは如来掌してた人がなんか言ってる」

 

「とにかく!天竺は目の前なのよ、こんな場所で私達の絆を崩している場合ではないの!思い出して、御仏になった猪八戒の最後の言葉を・・・」

 

そう、ここにはいないお供猪八戒。彼は旅の中、様々な理由で命を落としてしまったのです。彼の志を、遺志を胸に、彼女らは天竺を目指してきたのです・・・

 

 

猪八戒(演ダビデ)『え?仏罰テキメンだなんてそんな。あ、ごめんぼく天竺いけないや。多分輪廻の果てに並んでると思う、ごめんねちょっ──』

 

 

「じゃあもう一斉にゴールしようよ。それが一番正しい選択だよきっと」

 

「勿論そのつもりだったわ!三、二、一、で一緒に脚を出してゴールよ!それが一番なんだから!」

 

「ふぅ、漸くおさまっ・・・む?沙悟浄御主・・・なんだその杖は!?」

 

なんと沙悟浄、自らの靴に杖をくくりつけ大幅に自らのリーチを伸ばしていたのです。これでは、脚を出した際に沙悟浄の脚・・・杖・・・脚が真っ先に入ってしまうでしょう。三蔵法師がそれに気付き、カンカンに怒ったのも無理はありません。

 

「杖は脚の変わり、三本脚の一つって言うじゃない?」

 

「ダメダメ認めないんだから杖なんて!一緒に!三人一緒にって言ってるでしょう!?」

 

「御主真っ先に抜け駆けしたではないか!鏡を見よ法師!」

 

「ここまで来て絆がバラバラになったら死んだ猪八戒が哀しむわ!思い出して、彼が死の前日に言っていた言葉を!」

 

 

『え?僕宛の催促やツケの請求の矢文や電話?僕は遥かなる西へ旅立ったと伝えておいてくれ。言葉わからんブヒよ法師様』

 

 

「じゃあ普通に脚じゃなくて拳でいいよね?僕真ん中で二人は僕の左と右で」

 

「ダメよそんなのなんで拳握ってるの!?絶対あなた割るつもりでしょう!割ってバカッと大地をやるつもりでしょう!?ダメよ認めないわ!そこまで仲間を出し抜こうだなんて!死んだ猪八戒が聞いたら哀しむわ!思い出して!彼が死の三日前に言った言葉を!」

 

 

『ふぅ、今日もたくさん食べて遊んだブヒ。え?そりゃあ宿に出店にいろんな場所ブヒよ。踊り子さん可愛かったブヒ。豚肉も美味しかったブヒ』

 

 

「ふむ、さすれば尻と言うのはどうか?不格好ではあるが・・・」

 

「そうね、そうするしか・・・悟空!?お尻に矢が刺さっているわよ!?其処までリーチを伸ばしたいの!?いい加減にしなさい!自分の事ばかり考えていては、死んだ猪八戒が哀しむわ!彼が死の10日前に言っていた言葉を!」

 

 

『妻はガンガン作るべきで強気の資産運用が身を助けるブヒよ。やっぱり毎日お肉は食べないと力が出ないブヒね。豚肉とか』

 

 

「こうなったらもう頭からいくしか無いわよね!よーし!いっくわよー!!」

 

御仏オーラ(演 グドーシ)『コンニチハ』

 

なんと三蔵法師、背中から溢れる功徳にて仏様を再現したではありませんか!これではお辞儀をした際に、パワーあるビジョンが真っ先に入ってしまう事でしょう。当然ながら弟子達の猛烈な反論が突き刺さります。

 

「なんだそれは!?ずるいぞ法師!そんなものが出せるなら旅路の九割はなんとかなったではないか!」

 

「だって今やったんだもん!これが私の御仏体よ!」

 

「御仏体!?」

 

「悔しかったらあなた達も仏になればいいのよ!悟りを開いて!」

 

「それが出来たなら輪廻転生なぞ誰も行わん!苦しみの輪廻を提唱したのは仏であろう!」

 

「とにかく、パワーあるビジョンは普通に反則だよ。認めるわけにはいかないかなぁ」

 

「そんなことないわ!仲間と言うのは認め合い、支え合う事から始まるのよ!猪八戒が最初に言った事を思い出して!」

 

 

『僕は猪八戒。僕はやるよ、かなりやる。夜遊びとか。なーんちゃって♪』

 

 

「そもそも法師、三人同じく足並み揃えると言うのは無理があるのでは無かろうか?皆違って皆いいというのが我等だった筈」

 

「そうかな・・・そうかも・・・ぎゃてぇ」

 

「じゃあいっそ競争しようよ。何事も競争と闘争から和平や和解が生まれるものさ」

 

そんなわけで競争する事となった三蔵一行。ゴールから大きく離れて三人同時に並びます。先に駆け抜けたものが天竺へと入ることが叶うのです。最後の戦いといっていい、最後の行軍でした

 

「じゃあここら辺からよーいドンでスタートね!負けないんだから!」

 

「誰が勝っても恨みっこなしだからね。ずっと泣いてるとかも無しだよ?」

 

「勿論!でも私が一番になれなかったら・・・一番になった子に読経一億文字やらせちゃうんだから!」

 

「恨みっこありじゃん・・・で、だれがよーいドンっていうのかな?」

 

「勿論私!」

 

「うわっ、まるで信用できない。悟空やってよ信用できないからこの人」

 

「失敬な!大丈夫です!位置について~・・・ぎゃてぇ!!

 

「「ぎゃてぇでスタートしやがった──!!」」

 

まさかまさかのぎゃてぇスタート。あまりにも有利すぎるそのスタートダッシュにお供二人が凄まじい速度にて追いかけます。当然ながら、三蔵法師は微塵も脚を緩めません。抗議もどこふく風でございました。

 

「待って三蔵法師さま、話し合おうか!よーいドンとぎゃてぇって一文字も合ってないよね!?」

 

「ぎゃてぇはぎゃてぇよ!仏教においてよーいドンの意味を持つ言葉!全然ずるくもないわ普通よ!」

 

「初耳過ぎるんだよなぁ・・・!悟空、如意棒でいこう!」

 

「うむ!伸びろ如意棒!!──いかん、僅かに届かぬ!!」

 

あまりに距離が離され、如意棒が僅かに届かぬ孫悟空。このままでは三蔵法師に抜け駆けされてしまいます。切羽詰まった悟空は──

 

「仏よ!如意棒を届けたまえ!刺され如意棒!!」

 

「ぎゃてぇえぇえ!!?」

 

思い切り投げることにより事なきを得ました。背中に如意棒が突き刺さった三蔵、二人を厳しく窘めます。

 

「全くあなた達は!いい加減にしなさい!人の痛みを考えなさい!とにかく悟空は如意棒を少し離れた所に起きなさい。仕切り直しよ!位置について~~」

 

再びの仕切り直し。今度こそ正々堂々と戦い、競争しようとする三蔵法師・・・

 

「よぎゃ!!」

 

「「よぎゃ!?」」

 

なんとあまりの読経の早さにスタートコールまで省略されてしまったではありませんか!これには大きく遅れをとった二人、直ぐ様三蔵法師の後を追います!

 

「いい加減にしろ法師!!よぎゃとはなんだよぎゃとは!!」

 

「高速読経よ!!御仏powerだわ!!」

 

「おのれぇ、如意棒があればなんとしてでも諌めるモノを・・・!」

「こうなったら地力で追い付くしかないさ!」

 

妖怪の脚力は人間を遥かに凌駕します。あっという間に三蔵法師に追い付き、三者は横並びになり覇を競い始めました。天竺は最早すぐそこです!

 

「嘘!?今までで一番脚速くない二人とも!?私が浚われた時より速くない!?」

 

「僕が一番だ!」

 

「あー杖出したズルい!!なんで置いて来なかったの!?」

 

「おのれさせん!負けんぞ一番弟子パワー!!」

 

「え!?悟空あなたどうやって杖出したの!?持ってたの!?」

 

「深く気にするな!成せばなる!」

 

「なら私も・・・!ファイナル如来掌ーーーーー!!」

 

「ゴールを目前にして命を捨てるヤツがあるか馬鹿者!?」

 

それぞれの意地と気迫が交差し、天竺へ一番乗りを果たそうとする三人。あと少しで手が天竺に届く、その瞬間───

 

「「「───!?」」」

 

小石がふわりと浮き、三人を追い越しゴールの看板を潜り抜けました。その小石はそのまま、宙へと浮き何処かへと消えていってしまったのです。

 

・・・それは、霊だったのか。それとも、幻だったのか。誰よりも天竺を楽しみにしていたそれは、青空の中へと溶けていきました──

 

 

『天竺についたら?お嫁さんをたくさん作って牧場経営したいなぁ。富も嫁さんも、あればあるだけいいからね!天竺って、そういうものなんだろう?』

 




アビゲイル「あはははは!あははははっ!」

カーター「日本、やはり彼が好むに相応しい作品だ・・・」

ティテュバ「あ、あのお嬢様?どうかお気を確かに・・・」

ラヴィニア「ぷっ、くくっ、ふふふっ・・・ふふ・・・」

村人の皆さん「「「「「・・・・・・?」」」」」

リッカ(いけないいけない!ナイちゃんが気持ちよすぎて寝過ごしちゃった!三人寝るとか絶対寝坊するやつ!お願い皆、なんでもいいから場を繋いでてー!)

「おまた・・・ん?」

子供たち「「「「「あははははははは!!」」」」」

大人たち「「「「う、うむ・・・」」」」

リッカ「・・・え?何この空気・・・」


・・・日本の文化のハチャメチャぶり。子供には爆笑を、大人には若干の困惑を生みましたとさ・・・



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