ナイア「・・・・・・(ズルル)」
XX(そう言えば、彼女とはそれなりに長い付き合いでしたね。初入隊の初任務からの付き合いだというのに、全く話はしていませんでした)
ナイア(銀河警察などという場所にいる相手と仲良くできる筈はないと決めつけていましたが・・・共同任務につくとは、分からないものです)
XX(仕方ないですね!こうなればお姉さんとして私が歩み寄ってあげましょう!ほら、友達になりたいと言いなさい、分かってるんですよぼっちな事は!)
ナイア(頭を下げれば話をしてあげないこともないです。・・・でも・・・こんな感じで、私は友達を作ることができるのでしょうか・・・?)
~二時間経過~
「・・・・・・」
「・・・・・・」
カルデアの劇を見て、影響を受けるのは何も現地人ばかりではない。トムとジェリーめいたやり取りを繰り返す二人、ナイアとXXの心にもきちんと伝わっていたのである。彼女らもまた大人の女性。私情を優先してチームワークを乱すことがどれだけ愚かかしっかりと分かっている分別ある大人。きちんと公私は分けるものとして夜に備え共に非常食(とんこつカップラーメン)を食べているのだが・・・
(・・・・・・会話が続きません・・・・・・)
そう、XXとナイアは本来ならば仕事中に何故か鉢合わせする互いにニクいあんちくしょう以外の何者でもなく、セイレムに来るまで歩み寄ろうとした事は皆無。たまたま居合わせ互いに利用しようとする意味での休戦は何度もあったが・・・共に戦う、チームワークといった概念は生まれずお互いに見かけたら舌打ちは当たり前、もしかしなくてもたーの死ーなアマゾンズ状態。それによって生まれた軋轢は大変深く同じ席に座っている状態が奇跡といっていい。互いにカップラーメンを仏頂面ですすり続けズルズルという音が空しく響くのみ。互いに話しを振ることもなく時間が過ぎていく気まずい空間が過ぎていくという有り様にXXはラーメンを啜りながら懸念を漏らす
そもそも互いの立場が秩序の警察、混沌の狩人。水と油もかくやな二人がいきなりクラスメイトめいた馬鹿話に興じられる弾もなし。リッカという『私の友達』がいなければ単純に友達じゃない微妙な雰囲気が残されるのみである。私とあなたは友達じゃないのだから。故に会話などに華が咲く筈もなく。
「つ、次は何が出るのでしょうね?」
「夜になれば解るのでは。・・・最近調子はどうですか」
「まぁまぁ、ですかね」
「「・・・・・・」」
こんな風に会話が絶たれ互いにカップラーメンに逃げるばかり。共通の話題も特に無く。仕事の話など振ろうものならやれあそこで脚を引っ張った、あそこで邪魔をしたといったもので食事処では無い。殺し合い待った無しの導火線に火を入れるほどに愚かではなく。やっぱり口を閉ざすしか無いのである
(くっ、社会に出たら仲のいい友達なんか疎遠になって当たり前、仕事付き合いの社交辞令ばかりうまくなるばかりで交遊関係が広まることなど稀も稀、社会的に浮いている方ならなおのこと・・・!)
「・・・(ズルズル)」
(仏頂面でカップラーメンをすすってばかり!辛いとかしょっぱいとかそういった事を言ってくれればいくらでも語れるというのに!御願いですから会話を広げてください!)
肝心な所でチームワークの不義を招きマスターを窮地に陥れさせればサーヴァント失格。楽園追放即ちクビも充分にあり得る、それでもカップラーメン美味しいから手は止まらないよねと忙しいXX。やきもきしながら視線をかますもナイアは我関せずと取り合わない。
(あーもうリッカ君!なにか、なにかきっかけを下さい!コミュニケーションドラゴンの助けが無かったらただの微妙な時間ですこれ!何か、何かきっかけを・・・!)
汗をカップラーメンの熱さでごまかしながら助けを求めるXX。だが決して、ナイアもXXを拒絶しきっている訳ではない。こちらもこちらで、考えていることは似ていたりするのである。
(どうやって仲良くなればいいのでしょう・・・)
ナイアは友達が(ほぼ)いない。狩人として殺す相手、依頼人、父である神に仕込まれた事以外に一人でいることが多すぎたナイアも適切な距離感が分からなかった。そしてそれは、彼女の優しい気質も相まって極めて消極的な態度になってしまう
(うっかり傷付けてしまったらどうしましょう。自分にとっては何気無くても、相手にとっては深く傷付く事かも・・・)
自分の発言が相手を傷つけないか、距離感は適切か。そして相手が鬱陶しく思わないか、自分の想いをうまく伝えられるか。ナイアの人生の中でそういった会話を行う事はほぼなく、任務や契約履行の約束かビジネストークしかやってこなかった。父との会話を参考にしようにも、基本的に彼との付き合いを参考にしてはいけない事くらい理解できる。だって基本的に彼には諫言しか伝えてない。やらかしが多すぎるから。
(リッカ様のように仲良くなるにはどうすれば・・・例えXXであろうと、今は仲間なのですから)
共に困難に立ち向かう。そんな関係を夢見ては諦めていた。それをリッカに叶えてもらったのだから、今度は自分から何かをしてみたい。きっと、するべきなのだから。でも、やっぱり狩人としての罵倒しか浮かんでこない。友達に告げるべきではない言葉しか浮かんでこない自分にやきもきしている中、カップラーメンが無くなってしまう。このままではまた微妙な立ち位置のままでいつか必ずリッカ様の脚を引っ張ってしまう。私情を挟むなど狩人失格だ。どうすればいいのか・・・シスター服に身を包んだ狩人は思案する。友情という種の蒔き方が分からないのである
「・・・・・・!」
そんな中、彼女は思い出す。リッカの立ち振舞いを、そしてアビー、ラヴィの二人を。そして、父の言っていた言葉を。リッカは自分を信じて、信頼してくれた。そこには確かに、自分を見つめてくれたという事実があった。アビーとラヴィは、真っ直ぐ互いに目を見て話していた。自分の気持ちを、しっかり見つめて話していた。そして、自分に生命と自己を与えてくれた父の言葉を・・・
・・・──別に■は、他者を破滅させるのが趣味なんじゃない。単純に人が好きなんだよ。磨き甲斐のある60億の宝石・・・好きなものは、好きな宝は磨きたくなるのが当たり前だろう?
覚えておいて損はない。何かをしたい、してあげたいと思ったのなら、それは既にその相手が好きだって事だ。好きな相手にしか、人も神も関心は持たないものだからな。自分が嫌いな相手だと思う相手が、一番驚く言葉を選んで告げてみろ。きっと・・・素敵な何かが始まるさ。まぁ、■は大抵磨きすぎて壊れるんだな──
「・・・──XX」
・・・自分はXXをどう思っているか。当然、邪魔者であり目障りであり、喧しく鬱陶しいものだと思っている。でもそれは、つまり誰よりも意識しているという事ならば。
「は、はい?」
「私はリッカ様に迷惑をかけたくありません。あなたの事は嫌いです。嫌いですが・・・」
「・・・」
「・・・仲良く、なりたいと思うのは・・・もう、手遅れでしょうか」
歩み寄るのは、きっと不可能じゃない。だって、嫌いということは・・・意識しているということだから。あの三びきのこぶたのように仲良く、力を合わせられるなら。自分も、そうしてみたい。
友達を作りたいなら、自分からも何かをしないと。自分を友達と言ってくれる方に貰ってばかりの自分でいたくはない。きっとそれが・・・自分と友達になってくれた彼女を、喜ばせる事が出来る変化だと思うから。
「私は友達を増やしたいです。・・・あなたともそうなりたいと思うのは、手遅れでしょうか?」
嫌いなものを、嫌いなままにしない。それがきっと・・・楽園の皆と一緒に戦う資格だと、思うから。
──狩人は、血や肉では決して満たせない空虚を埋める方法を見つけ、一歩踏み出したのである。
XX「・・・条件があります!」
ナイア「処女や純潔でしょうか?貞節は護っておりますが・・・」
「違いますよ!・・・これから先、絶対にセイバーにならないこと!」
ナイア「・・・?」
「セイバーじゃないなら、抹殺対象にはなりません。あなたは邪神に育てられただけて邪神ではありませんから!だから・・・その」
「つまり?」
「・・・友達になるのも、吝かではないということです!プライベートではそんなに邪魔されてませんし!最低でも、セイレムを突破できるくらいには仲良く出来るはず!」
ナイア「・・・そう、ですか。・・・では、その・・・」
XX「は、はい」
「今まで、酷いことばかり言って申し訳ありませんでした。XX・・・さん。これからも、宜しくお願いいたします」
「い、いえいえ。私も目の敵にし過ぎたといいますかなんといいますか・・・。二人で、マスターくんを支えて行きましょう!」
「はい。一緒に頑張りましょう。XXさん」
「ちゃんでいいですよ!セイバーじゃないならフレンズです!早くリッカ君、帰ってきませんかね?」
「ふふっ、そうですね。赤いきつねを食べて待つしかないのでは?」
──此処に、劇に影響を受けた娘は新たな友達を自分から作り、確かに一つ変われたのでありましたとさ。
・・・そして。
『角度無き真球』
新たな夜の、狩りが始まる。
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