人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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リッカ(大丈夫かな?二人とも大丈夫かな?)

XX(信じましょう!二人の絆が、カーターさんの心を動かすと信じて!)

ナイア(・・・迅速にして鮮やかな物語の進行ですが、あまりにも鮮やか過ぎて些か気になります)

アル(?どうした、ナイア?)

ナイア(・・・楽園の手腕は勿論ではあります。そして、全力で挑んだ結果だとも納得もできます。ですが・・・)

(──あまりにも、アビゲイル様の心の動きが鮮烈に過ぎるような・・・そんな気が、するのです)


朝 分岐となる言いくるめ

「おじさま。私・・・私は外に出るわ。このセイレムを飛び出して、劇団に入って、皆と一緒に生きていきたいの。そして、いろんなものを見に行きたいわ。たくさんものを・・・」

 

時刻は九時を回り、ウィリアムズ家にて向かい合うアビー、そしてラヴィ。彼女の叔父であるランドルフ・カーター、そしてティテュバ。その経緯を陰から見守るリッカ、ナイア、アル、そしてXX。アビーの決心と決意を見守り、応援と激励を送る四人。更にそれを、一番近くで見守るラヴィ・・・無論、割りと忌避されがちだったラヴィニアはがちがちに固まっている。勿論緊張でだ。

 

(頑張れー、ラヴィ!アビー!)

 

(正念場ですよ!ファイト、ファイトです!)

 

(御赤飯は此処にあります。どうか皆様と一緒に、旅に出ましょう)

 

そんな激励を受け、アビーは懸命に説明を行う。どう生きていきたいのか、どんな未来を見たいのか。劇を見て、どんなものを感じたのか。そしてこれから、どのようなものを見ていきたいのか。それをラヴィニアと一緒に、アビーは伝え続ける。

 

「この海の向こうには、まだまだ見たことが無い世界がたくさん拡がっているの。空も海も、色んな場所に繋がっていて、世界は私達の想像もつかないくらいに広がっているの。それを知ったら、もう私はいてもたってもいられなくて。だから私は、行きたいの。あの海の向こうへ、あの空の果てへ。・・・ラヴィや、皆と一緒に」

 

そうして、アビーとラヴィは顔を見合わせる。その想いに偽りが無いことを示す。二人でいられたら、どんな事も乗り越えられると。

 

「おじさま。私は・・・」

 

「旅と言うのは、夢や心踊るものばかりではない。辛いこと、投げ出したくなるような厳しい嵐もその道行きを阻むだろう」

 

しかしカーターは、少女の夢が持つ危うい一面を自覚させ、指摘する。夢を見るのは素晴らしく、希望に溢れるものばかりではないと冷静に告げていく。彼女達の事を思えばこそ。旅は、決して楽しい事ばかりではないのだ。

 

「路銀や寝床、生きていくための糧を稼ぐ術を持っているか?きちんといくべき場所、向かうべき場所は見えているか?どのような旅をしたいのか、どんなものを見たいのか、どんな答えを得たいのか、本当によく考えたのかな?」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

「友達との旅をするのはよろしい。だがアビゲイル、そのラヴィニアと過ごす中で、君は本当に彼女を失望させないと誓えるのかな?」

 

夢物語は、旅人を奮い立たせる力ともなり穴を開けて待ち受ける闇ともなる。その危うさと迂闊さをしっかりと理解しなくては、とても少女達だけを旅に・・・このセイレムより出す訳にはいかないと厳しく断ずる。ともすれば閉鎖的な言葉だが、そこには心配と、溢れんばかりの愛があった。娘を思いやる、愛があるのだ。

 

「お嬢様、お嬢様は本当に覚悟は出来ておりますでしょうか?御主人様は、それを訪ねているのです。どうか意地悪や嫌がらせとお受け取りになりませんよう・・・」

 

「・・・大丈夫、大丈夫よ。ティテュバ。きちんと、分かっているわ。・・・でも・・・」

 

それでも、到底諦めきれるものではない。劇を通じて、色んな世界を見た。最早胸を、心を満たすロマンを抑える事は不可能だと誰よりもアビーが理解していた。自らを罰する心も、想いすらも熱く燃える輝きを止める事は出来ない。一度知った想いは、けして嘘では欺けないのだ。

 

「ラヴィ・・・あなたも、きっと・・・」

 

「・・・」

 

静かに頷くラヴィニア。そう、彼女の心はしっかりと理解していた。何故なら楽園の使者は、カルデアの者達はその心を育ませる為に劇に勤しんで来たのだから。彼女が前に進めるように、彼女が旅立ちたいと願えるように、懸命に生きていけるように後押ししてきたのだから

 

「か、カーターおじさん。た、確かにその心配はごもっともです。確かに、旅は大変で、辛い事もたくさんで、そして・・・困難な事が沢山待っていることも事実だと思います」

 

「・・・そうだとも。それでも君は、私の娘に寄り添ってくれると言うのかね?」

 

勿論、とラヴィニアは頷いた。それこそが自分の本懐であり、それこそが自分の役割だと語る。──作られ、異世界から流れ込んできた異物であり、自分を友達と呼んでくれた者へと返せる恩返しであり、自らのこのセイレムでの役割だと信じているから

 

「そして、私だけではないのです。彼女も、私も、もう一人ではなくて。──私達には、もう。心強い仲間と、友達がいるのです」

 

そうしてラヴィニアは、リッカ達に目線をやった。セイレムを楽しませ、心から尽力し、全力を注ぎ込んできた信頼できる隣人達。最早セイレムへ滞在できる時間も残り少ない中、それでもアビゲイルへと気持ちを込めてくれた、劇団の仲間達を。物陰で笑顔にてサムズアップを返してくる者達を、自信をもって紹介する。

 

「だから、おじさま。どうか心配を・・・いえ、しないとはいいません。ただ、信じてほしいです。・・・わ、私は力はありませんが・・・それでも、最後まで・・・」

 

そうして、ラヴィニアは告げた。どうか祝ってほしいと、暖かく見守ってほしいと。自分は決して離れないから、絶対に見捨てないからと。

 

「・・・最後まで、アビゲイルと一緒にいるわ。だって、何処までも共にする。それが、友達というものだから。きっと二人なら、皆なら・・・どんな困難も、乗り越えられると、思うから」

 

その言葉を、この日までの公演を経て得た全ての答え。そしてこれから歩む答えを聞かされたカーターは静かに目を閉じ・・・一言

 

「そう、それでいいのだ」

 

呟くのであった。──まるで、それを待ち兼ねていたかのように。

 

 




ランドルフ・カーター「いいだろう。君達の道行きを信じよう。三日後・・・8日目の朝に船が来る。それに乗ってセイレムを出なさい。そして、劇団に迷惑をかけることをしないよう、ついていきなさい。ラヴィニアと共に」

「!あぁ、おじさま!」

「「「やったー!!」」」

ラヴィニア「よ、良かったわね・・・アビゲイル・・・」

「えぇ!やったわ!本当にありがとう、皆様!」

ティテュバ「やりましたね、皆様!」

カーター「船が来るまで、まだ時間がある。劇も、明日のパレードも期待しているよ」

リッカ「はーい!」

ナイア「・・・明日の、パレード?」

ティテュバ「どうやら明日にやってくる、とのお達しがありました。皆様がお呼び致したのですか?」

「・・・・・・」

【近いうちに会いに行く】

「・・・・・・まさか・・・」

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