人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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マルドゥーク『Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)』

エレちゃん「御兄様が慌てているのだわ!大丈夫?増援がイシュタルで大丈夫!?そう言っているのだわ!」

シドゥリ『なんとかなるでしょう。負けはしない筈です。フォローやアフターケアは確実に必要になるでしょうが』

エル「溺れるものは藁をも掴む、だっけ?はぁ・・・もろともに死んでくれないかなぁ」

(端的にエルが怖いのだわ・・・)

「まぁいいや、マスターを信じよう。来るなら来るで部員の皆と一緒に麻婆投げるんだ、僕。よろしくねエレシュキガル」

「だからー!私は麻婆神では無いのだわー!というか、楽園に来たら喧嘩はダメなのだわ、楽園は仲良くする場所なのだわ!」

「解ってる。僕は平気だよ?」

エレシュキガル「えっ?本当?」

「へーきへーき。『兵器だけに』、平気。なーんちゃって♪」

エレ(あ、あんまり大丈夫そうじゃないのだわ・・・エルがギャグを言うとき、それは心からリラックスしているか本気でイラついているとき・・・!)

「はぁ、早く死なないかな。寿命あとどれくらいかな」

マルドゥーク『FUAN』

「・・・信じるしか・・・信じるしか無いのだわ・・・!リッカ、無事でいて・・・!」


夜 女神の意地

地上にて人が戦いを繰り広げるならば、天空には神が舞う。雲を遥か下に見るほどの空にて、金星の邪神と邪神・・・いや、女神が超高速の空中戦を繰り広げ夜闇を切り裂き光を瞬かせていた。その輝きはまさに明けの明星が如く、星の輝きを足蹴にし誰よりも先に煌めく壮麗さと傲慢さを如実に現している。余談だが、かのルシファーと同一視されているのが金星である。誰よりも先に空で輝く、と言う概念が傲慢さに結び付けられたので、という解釈が為されたようだ。

 

「私は正真正銘の金星の女神──作られたポンコツロボットになんて遅れを取る筈が無いのよ!」

 

〔───〕

 

その言葉の通り、二柱の戦いの情勢は五分以上にイシュタルが勝っているという結果を示していた。イシュタルは美の他に戦いの女神。メソポタミアにて数多の逸話を残した正真正銘の神であり、それが本気にて『後先省みず』に全力を叩き込んでいるが故の驚異的な戦果であった。

 

「出し惜しみなし。私についた悪評も全部叩き返す為にわざわざ私は此処に来たのよ!」

 

貯蔵していた宝石を全て持ち出し、また足りない分はウルクの民達から徴収し一発一発にありったけの魔力を込めて叩き込む。己の全霊を懸けた一撃が山を削り取る程の魔力放射弾丸がファロールの攻撃を押し込み跳ね返し吹き飛ばしていく。それほどまでにイシュタルは全身全霊を掛けており、名誉挽回に力を込めて来たのである

 

そう、かのウルクの一件以来彼女の評価は散々であった。ウルクの危機にグガランナをどこかに忘れ、大急ぎで作りあげたグガランナマークIIはあろうことか暴走しマスターを襲う始末。数々の失態から他の女神達からは散々に馬鹿にされ、神性ネットでは絶え間なくアカウントが大炎上。賢王からは笑いを通り越して細やかな施しが与えられるほどに叩き上げられ、おまけに御機嫌王からは離別の呪いを押し付けられる有り様。あらゆる意味で女神イシュタルの面子と面目は丸潰れとなり屈辱に歯噛みする日々を送ってきたのだ。

 

「でも、そんな屈辱の日々も今日でおしまい!女神イシュタルが今度こそ、華麗なる勝利の女神であることを証明するわ!見ていなさい、もう頭は残念身体は貧相だなんてぜーったい言わせないんだから!!」

 

その気合いと気迫は尋常ではなく、ファロールを防戦一方に押しやり続けながらもガードの上からダメージを与え外装を削り続けていく。宝石を破産覚悟で注ぎ込み、依代の肉体が持っている肝心要で招き寄せる『うっかり』という呪いを捩じ伏せる意味での蹂躙撃。絶え間無く眼は金色に光りマアンナは常にアクセル全開。ことそこに至って戦闘にて勝る存在は指折りと言うほどの荒々しき神の姿が其処にあった。少しずつ、ファロールの機体にヒビが刻まれていく。真正面からねじ伏せるという戦法を比類なき力で行えば其処に駆け引きの余地はない。イシュタルの戦いはまさにそれであった。

 

「そこ、動かないっ!」

 

離脱すらも許さない退路を断つ追尾弾、そして反撃を正確無比に跳ね返す迎撃弾、数多無数の炸裂弾。最早ばらまきといっていい程の大盤振る舞いに絶えず飲み込まれ、ファロールは遂に破損が目立ち始める。何かをする度に何倍にもなって返ってくる神の横暴、純然たる神威に晒されファロールは何も出来なかった。──何も、である

 

「そろそろ終わらせてあげるわ。偶像で私を愚弄した罪、たっぷりと償わせてあげる!」

 

いよいよ勝負をかけにいくイシュタル。金星概念を手中に納め撃ち放つ最強の宝具を展開せんとし、マアンナの機能、ワープゲートを開かんとする。

 

「見ていなさい、私さえいれば邪神の一つや二つ・・・──」

 

・・・だが、イシュタルは忘れていた。かの場所は神代、大気に満ちたマナや魔力は現代に比べて無尽蔵と言っていい。その場で神として振る舞うならば、今回の戦法は最適解だろう。そして最大火力の蹂躙もまた然り。それらを神の力で行使したならば、それは確かに堪えられはしないだろう。

 

 

・・・──だが、現実としてここは現代で、更に彼女は今、サーヴァントとして召喚に招かれている。ならばマスターからの魔力を必要とせず、自らの魔力のみを一度に大量に吐き出せば待っているのは一つである。・・・ファロールが勝負を急がない理由が此処にあった。何故ならば・・・

 

「魔力切れ・・・!?ウソ、配分間違えた!?だってまだ全然・・・──!」

 

消費効率から考えて、勝手に自滅するからである。甚大な被害を受けはしたが、最後の一手さえ撃てればこちらの勝ちと、ファロールは早々に拮抗を放棄した。適当に耐え、勝手に金星が墜落するのを待っていたに過ぎないのである。邪神に組み込まれた戦闘理論は、それほどまでに効率的かつ機械的であった。

 

〔───〕

 

そして畳み掛けるように反撃は行われた。魔力切れを起こし、動きが鈍くなったイシュタルに叩き込まれる無数の攻撃。本来の神体でもやや痛打になるようなそれを、サーヴァント状態で受けたイシュタルは瞬く間に瀕死となる。サーヴァントとしての身体は、それほど頑強ではない。全てにおいて性急過ぎた。躍起になりすぎ形振り構わず走り続けた事が、イシュタルの犯した過ちであった。

 

「あっちゃぁ・・・サーヴァントって、こんなに脆いんだ・・・」

 

瞬く間に戦闘不能レベルの傷を追い、墜落していくイシュタル。邪神もあと一撃クラスしか撃つ事が出来ないほどに傷がついていたが、その一撃さえ撃てれば十分であった。・・・──そして、邪神は同時に効率を考えた。イシュタルの落下の先に、セイレムが重なる様に調整を行った。真上からイシュタル諸とも、セイレムを焼き払えるだろう

 

〔────〕

 

無感情にエネルギーをチャージするファロール。その目に感動も喜びもない。ただ破壊と破滅を行う邪神としての使命を全うするのみだ。

 

「らしくないこと、しちゃったからかぁ・・・やっぱり、人助けとか気まぐれでやるものじゃないわね・・・」

 

そして、深く反省した。人間に力を貸す以上、自分だけでなんとか出来る、するのではなく力を合わせなくちゃならないと。それが出来ることが人間の力であるのだと、女神は己の独断を珍しく反省した。後の祭りと解っていながら

 

「うぅ、せめて一回くらいは駄女神の印象を払拭してから逝きたかったのに!これじゃ正真正銘の道化、ただの駄女神じゃないの私の馬鹿ー!!」

 

〔────〕

 

叫びに叫んだイシュタルの懺悔と、ファロールのエネルギーが臨界に達したのは同時であり──勝負は決した。

 

「・・・──!」

 

・・・だが、勝負は最後の最期まで何が起こるか解らないもので。

 

「この魔力──もしかして・・・!?」

 

切り札は、誰だって一枚は持っているものなのである。或いは、それは借りだけを作らない絶妙の塩梅を狙ったが故、なのかも知れない──




リッカ『───生きる事を、諦めないでってビッキーがいつも言ってた!!』

空間を切り裂き現れたのは、規格外のマスター藤丸リッカ。ワープにて空間を越えイシュタルを助けにきたリッカ系女子である。

イシュタル「えっ、あなたどうやって・・・!?それより後ろ後ろ!巻き込まれるわ、助けにきてくれたのは嬉しいけど!」

リッカ『ふぁ?』

くるりと後ろを向くと、其処にはファロールが今まさに止めを刺さんと唸りを上げている瞬間であった。このままでは地表全てが焼き尽くされてしまうというレベルの魔力を感知し──

「いいから逃げなさい、こうなったらマアンナを自爆させてでも──」

そう告げたイシュタルであったが、目を見開くのは次の瞬間であった。『目の前の邪神が瞬く間に斬り刻まれ』、ズタズタにされていく光景が飛び込んできたからである。

「え?は?」

『──雷位開帳・龍吼一閃!緊急時につき短縮版!』

いつの間にか刀を抜いていたリッカが、目にも映らぬスピードにてファロールの背後に回り、そのまま一瞬にて真っ二つに斬撃を叩き込んだ。イシュタルにより限界寸前であったファロールに、人間の極限に至った攻撃を防ぐ道理はなく。体の正中線から切り裂かれたファロールは、速やかに爆発四散する。

「え、それ、何それ!?今の人間の動きじゃ無かったわよリッカ!?」

リッカ「色々あってね!それより、大丈夫だった?信じてたよイシュタル!」

イシュタル「え・・・?」

「あなたは、ぜーったいやらかしてピンチになるって!」

そう。だから予め雷位を開帳していたのである。必ず行く頃にはピンチになってるだろうな、と猛烈に減らされていく魔力からも、性格からも把握し、すぐに奥義を使えるように用意していたのだ。恐らく、詰めを誤るだろうと確信していたが故に

「・・・・・・」

「?イシュタル?」

無論、ここまでに至っては、イシュタルも虚勢など張れよう筈もなく。助けにきたつもりが助けられた、などという恥のコーティングをやらかしリッカにお姫様だっこで保護されるなどという醜態を晒したイシュタルは・・・

「・・・ごめんなさい・・・」

真っ赤になった顔を覆い、消え入るようにそう呟いたのでありましたとさ。──そして。


ハワイ スイートホテル

御機嫌王「ふはははははははははは!!ごめんなさいの処を再生せよ!カルデアにてフリー素材として活用せねばなるまい!!所詮貴様ではその程度よ!深く恥じ入りマスターの為に尽くすのだな!ふはははははははははは!!!」

──イシュタル様!格好良かったですよ!さ、最初の方は!

フォウ(無駄に強いくせに肝心な時に役に立たないとか前のマコト兄ちゃんみたいだ・・・)

ハワイにて見守っていた王の腹筋を、イシュタルは粉々に破壊しましたとさ。

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