アビゲイル「パレード・・・どんなものなのかしら?素敵なものかしら?ラヴィニアと、一緒に見れたら素敵よね。早速誘って・・・」
【もしもし、そこのお嬢さん?】
「?はい──・・・?」
褐色の男【是非、パレードは友達と見るといい。きっと、楽しいよ?】
「あなたは・・・」
【ふふ・・・この物語を、誰よりも楽しんでいる者さ。そして・・・懺悔も、聞いてあげようじゃないか】
「──!」
【自分の事、まだ赦せていないんだろう?】
「・・・それは・・・私は・・・」
「というわけで、残りの日にちをサポートすることとなりました、イシュタリンです・・・家事や身の回りと夜にはサポートを行いますので、どうかよろしくお願いいたします・・・」
夜明けを迎え、もう終わりが眼前へと迫ったセイレム攻略戦、ラヴィニア邸に配置されたメイドはそう名乗り家主のラヴィニアはひたすら目を白黒させた。割とガチめな失態と尻拭いを受けてしまった事と宝石をほぼ使い果たしてしまった事から、数日は暫く労働に甘んじることを決心した様であるイシュタリンと名乗るメイドはせっせと働き始めた。メイド服はハワイから送られてきたもので、背中には『私は肝心なときに役に立たない女神です』との渾身のプリントがしてある。しかし猛省中のイシュタリンには、それらに突っ込む気概も抗議する気力も財も残されてはいなかったので。ひたすら死んだ目でモップを動かしている。
『ありがとう、リッカ。もし開き直っていたなら殺していたよ。ギリシャの輝きの神も奴隷を体験したらしいし、存分にこきつかってあげようね』
「わかっていたけどエルってイシュタルだけには無慈悲だし寛容の欠片もないよね!無理も無いけど!」
『いいや、慈悲深いよ?首を脊髄ごと引っこ抜いて目玉をくりぬいて硫酸やウジを流し込んで晒し首にしないくらいにはね』
ヒェッ、となるリッカ。イシュタルが絡まなければたおやかで穏やか、兵器として力を貸してくれたり僕はギルの友だ凄いでしょ、とマウントを取ったりフォウのお腹をさすっている優しき緑の人なのだが、イシュタルが絡めば殺意しか漏らさなくなるのは流石のスイッチぶりである。マニュアルや思考回路の根本的な部分で拒絶が入っているのだろう。嬉々としてイシュタルに連なる文明を滅亡させる勢いである。
「あ、あの方はイシュタル、メソポタミアの古い神よ・・・そんな方に、あんな・・・バチが、当たらないかしら・・・」
『心配しないでいい。イシュタルを庇うような神は父ぐらいしかいないから。それもかなり仕方無さげにね』
それに僕らが赦さないから、とにこやかに告げるエルキドゥにラヴィニアは静かに閉口した。この関係は修復不可能なものなのだ、と。それはともかくとして、ラヴィはリッカに向き直る。
「あ、ありがとう。リッカ・・・銀の鍵も、セイレムの様子も、とっても順調よ。あと二日を乗りきれたなら、必ず私達の努力は報われるわ」
銀の鍵も、ワープ転移を可能にしたことから本物の力を宿していることを確認し、エイボンの書も記された知識は正しかった。これまで戦い抜く事が出来たのも、これらのサポートと楽園の皆の尽力があればこそ。ラヴィニアはそう信じ静かに感謝を示したのである。
「怪しいこと、解らないことだらけだったけれど、恐ろしい怪物だらけだったけれど。勇気を以て立ち向かった皆は、とても格好良かったわ」
「照れるなぁ~。ふふん、ずっとそうやって来たからね!そしてこれからも、ずっとそうしていくよ!私達は、そうやって未来を掴んでいきたいと思っているから!」
「・・・、・・・素敵な人ね。ちょ、ちょっと待っていて」
そういって、ラヴィニアは自室へと引っ込んで行き、やがてすぐに戻ってきた。高級そうなスケッチブックを抱え、リッカへと差し出す
「お、お願いばかりして、利用していると思われてしまっているかもしれないけれど。か、感謝は本当だから。せめてもの、形に・・・」
「これは・・・」
それは、ラヴィニアが描いた三人の奮闘する様子であった。技術や技能は儀式の内に借り受け体得したのか、極めて精緻に描き書き込まれている。夜空を切り裂き飛翔するXX、光溢れる教会にて聖書を持ち問いかけるナイア、そして魔なる者共が蠢く深淵に飛び込んでいくフル武装のリッカ・・・それらを記し、ラヴィニアは感謝の気持ちを現したのである。
「たくさん、言いたいことはあるけれど、私は口下手だから・・・絵に描いたわ。良かったら、受け取ってほしい。・・・もっと時間があったら、色々描けたのに・・・」
ラヴィニアから見た今までの景色や光景、戦いが下書きのラフとして描かれている。劇の事、一緒にご飯を食べた事、景色を見た事など・・・ラヴィニア、アビゲイルが二人見上げた景色も、未完成ながら書き込まれている。海と鯨、そしてほうき星の絵だ。
「私一人では、ここまで来れなかった。皆がいてくれたから、ゴールがすぐそばにある・・・アビゲイルも、安心して託す事が出来るわ」
「ラヴィ・・・」
「ほ、本当にありがとう。私に協力してくれたのが貴女で、皆で良かったわ。もう少し、もう少しで全てが終わり、夜明けが来る。だから最後まで、よろしくお願い・・・ね」
貰ったスケッチブックを、リッカは大切に抱え込む。これがどんな価値を持つか、どんな意味を持つか。リッカには、それが痛いほどに伝わったから。・・・そして、意味も察する。スケッチブックに、自らが、ラヴィニアがほぼ描かれていない意味を。
「ねぇ、ラヴィ。未来にセイレムはどうなるか知ってる?」
「・・・?未来の、セイレム?」
「そう!実はね、魔女を全面に押し出した観光スポットになってるんだよ!グッズとか、魔女の人形とかとってもいっぱいあるんだよ!凄くない!?」
「・・・!・・・そ、そうなの。つまり、魔女はもう、恐れられる存在じゃなくて・・・」
「そう!皆が憧れるヒーロー、ヒロインみたいに、女の子が夢見る存在にだってなったの!私の国にも、魔女を題材としたアニメとかいっぱいあるんだ!・・・だから、さ」
ラヴィニアに目線を合わせ、リッカが告げる。セイレムから出るのなら、アビゲイルが出ると言うのなら、──隣には、貴女が必要なのだと。
「アビゲイルと一緒に、楽園においでよ!きっと、毎日がスッゴく楽しいよ!アビゲイルもきっと、それを望む筈!」
その提案は思ってもみないものだったのか、本当に自分はアビゲイルを送り出す舞台装置だと割りきっていたのか、ラヴィニアは慌てながら目を泳がせる。
「わ、私も・・・?だ、ダメよ、ダメだわ。アビゲイルと違って、私にはなんの取り柄も無いし、私はただ、アビゲイルが無事で元気なら、それで・・・」
『決められた自分の物語に抗う度に、歴史は築かれていくんだよ』
「・・・!」
「横から失礼するけど、なんの取り柄も無い、なんてあの姫様抱えの御機嫌金ぴかの前で言ったら怒られるわよ?『たわけ!価値や意味を決めるのは我の仕事よ、貴様が存在している以上の価値を求めるでないわ!』ってね」
緑の友、赤い悪魔が金の王を語る。白金の姫が在るかの王ならば、価値や意味は自分から見つけ勝手に磨いてくるだろう、というくらいである。
『それに、友に置いていかれた者が心から笑える日は来ないかもしれない。神に離別させられでもしないなら、傍にはいてあげた方がいいんじゃないかな?僕はそう思うな』
「・・・、・・・」
「私は、アビゲイルとラヴィニアは二人一緒にいてこそだと思うな。だから、セイレムからは二人一緒に出ようよ!どう?ラヴィ」
リッカ達が目指すのは、完全無欠の結末。其処に犠牲などは必要ない。それが聖なる献身でも、犠牲なくば戦えない妥協など不要なのだ。
「・・・あ」
自分自身、そう言われるとは思っていなかったので。ただ、アビゲイルが無事ならばそれでいいと、それだけを想っていたので。真正面から熱烈に告げられたラヴィニアは頭から湯気を出しつつ・・・
「・・・あ、ありがとう。・・・私も、見てみたいわ。未来のセイレムを・・・魔女が・・・皆に憧れを集める存在になった未来を・・・」
「良し!頑張ろうね!皆で絶対!楽園に行こう!」
差し伸べられた手を、辿々しく掴む。・・・見落としがちであった、最後のピースを。リッカが掴み取った瞬間でもあった
エルキドゥ『良かった。友と別れるなんてあまり見たいものじゃないからね』
イシュタル「たまにはいいこと言うじゃない。殺人マシーンみたいなあんたがね?そんなに懲りたのかしら?」
『ははは、だろう?全くいいところがない君とは違ってね』
『ははははは』
「うふふふふ♪」
ラヴィ「・・・あれも、友達なの?」
リッカ「多分ね!じゃ、朝ごはん食べよっか?ナイアと、XXは・・・」
ナイア「リッカ様、ラヴィニア様!こちらのチラシを御覧ください!」
XX「どうやら、招待されているみたいですよ!」
「へ?」
【六日間お疲れ様パレード開催!残る日にちも頑張ろう!1日安息の日を楽しもう! ニャル】
「・・・正体、隠す気無いんだねお父さん・・・」
ナイア「お恥ずかしい限りです・・・」
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