人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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【だがまぁ、焦る必要はない。昼になったらまた、教会においで。君の想いを、全て受け止めようじゃないか】

アビゲイル「え・・・?でも・・・」

【心配はいらない。私は逃げないし『君も逃げたりはしない』だろう?まずは友達と想い出を作るといい。それからでも、何一つ遅くはないからね】

「・・・はい。ありがとうございます。神父様・・・」

【行ってらっしゃい。・・・そうだとも。今すぐでは些か困る】

(安心するといい。君の抱えた全てはすぐに吐き出せる。──いや・・・吐き出させるとも)

【・・・産みには痛みが伴う。陣痛がまさにそれだ。その痛みに、この罪深き地は堪えきれるのか・・・フフッ。まだまだ楽しめそうだ】


朝 パレード──安息の日──

その日、セイレムは思い出した。華やかにして艶やかな催しというものを。ハッピーやラッキーは、時に向こうからやって来ると言うことを──

 

「見て見て、お父さん!色んな楽器を持っている人達がいっぱい!劇団と同じくらい豪華だよ!」

 

子供達が歓喜を上げ、大人達が目を見開く。ボストンからやってきたパレード団【ドリームランド・ア・ザ・トゥース!】を名乗る集団は、きらびやかな見目と聴いていて心が沸き立つ華やかな演奏と共に海の向こうからやってきた。フルートやラッパを始めとした賑やかな演奏、陽気な曲を奏でながら、セイレムを悠々と歩き回り笑顔で満たしていく。その音色は見事なもので、聴いたものを片端から笑顔にし、勝手に踊り出してしまうほどの陽気さと活気を敬虔なる者達に授けたのだ

 

「わぁ!お菓子もくれるの!?ありがとー!」

 

「一緒に楽器を?やるやるー!」

 

子供達と陽気にふれあい、大人達と共に踊らせる愉快な空間を奏でるファンファーレ。それらはまるで祝福や礼賛に捧げられるかのような勇壮さ、華美さ、優雅さを放っていた。心の不安を取り払い、そして明日への希望を信じ進んでいけるような華やかで楽しいお祭り模様。それはまるで、清貧を是とし教えを護ってきた者達への褒美であるかのような。セイレムを包み込むパーティーであったのだ。そしてパレードと言うからには、楽器の演奏ばかりではない。様々な団員が様々な様子で、村を盛り上げ続けていく。

 

『・・・!』

 

「ホッケーマスクのおじちゃんすげー!」

 

「かわいいー!もっと作ってー!次はうさぎー!」

 

ホッケーマスクを着用し、子供達がリクエストした動物をチェーンソーにて自在に作り上げる職人気質の大男・・・

 

『ハァイ。愉快なピエロだよ♪屋台で食べるホットドッグは最高だぞ・・・深いぞ・・・味わい深いぞ・・・』

 

「どうせぼったくりなんだろ!騙されんぞ!」

 

「家でパンケーキ食うわ」

 

『待てや!?』

 

一人一人に色んなものを教えてくれるピエロのおじさん。それらを始めとした愉快な者達が、思い思いの方法で皆を楽しませようと笑顔を振り撒いている。そこに、何かを騙そう、欺こうといった感覚は微塵も感じられない。皆がこの日を、楽しいばかりの一日にしようと尽力している景色のみが広がっていたのだ。そのあまりにも突拍子ないサーカスタイムに、リッカらは驚きと高揚の半分ずつで事の成り行きを見守っていた。罠とも勘繰りはしたものの、皆が浮かべる笑顔は嘘やまやかしでないことは一目瞭然であった。かの邪神は、本当に楽しむためにこんな事を?

 

【これは面白おかしく生きる■の趣味ではあるが、同時に君らの奮闘を祝う行事である。──大奮闘お疲れ様、楽園の使者達よ。此処にゲームマスターとして、君達を祝う場を設けさせてもらったよ】

 

そんな一同の前に姿を現せし、スマートで絶世の美貌を湛える褐色の神父が現れる。ラヴィニアはその姿に、何よりも見覚えがあった。かつて自分に、使命を託したあの時の・・・

 

「神父様・・・!?」

 

「我が神・・・お父さん・・・?」

 

「出ましたね最低最悪の愉快犯!まさか本当に姿を現すとは驚きです!ここで──!」

 

【ストップストップ、■は戦いに来たわけじゃない。労いに、祝いに、そして・・・君達の奮闘への評価を告げに来たのさ。我が娘よ、君なら■が嘘を言っていない事は解るだろう?いたいいたい】

 

そういって脇腹にブスブスフォークを刺す娘を制止し、かの邪神は告げる。この特異点は、『真なる結末』を歩み始めている。素晴らしい選択を選び続けていた。間違ってはいなかったのだと。

 

【このパレードはいくつか用意していた催しの一つでね。本来なら私も含め、この六日目に君たちの前にた立ちはだかる者達だったのさ。その為に痴呆症の老人の楽屋から楽団を拝借し、それなりに戦闘に長けた輩を集わせた。君達の劇の出来映えと、セイレムの心証次第で変わるイベントとしてね】

 

『劇の・・・?まさか貴様、我等がつまらない劇を繰り返したりセイレムの者らの心証を損ないすぎていた場合に・・・』

 

【あぁ、そういうことだ。六日目に至るまでにセイレムの闇の払拭が滞りすぎる、あるいは本来の歴史通り魔女裁判が起こっていたなら、■は本気でこのセイレムを消しに来ていた。失望と侮蔑を兼ねてね。だが・・・その逆。劇に手を抜かず、セイレムを救わんと懸命に奮闘し、常に最高の一手を求め進み続ける君達の旅路を、セイレムを通じて■に見せてくれたというならば、だ。こういった催しをしようと決めていたのさ】

 

それはつまり、自分を楽しませ全力を尽くし、己のベストを尽くし六日目までにセイレムの状況や様々な要素を探索し、力を合わせ皆でたどり着いたのならば。

 

【今までの奮闘、そして戦い。実に見応えに満ち痛快極まるものだった。言うなれば想像以上というヤツだ。誰かを信じ、力を合わせる。人間ならではの困難の挑み方。君達の旅路そのものという輝かしい物語に触れさせてもらったよ。銀河警察と我が娘が並び立っている事、そこの白い肌のお嬢さんも決意を固めているのが何よりの証だ。──君は真なる結末(トゥルーエンド)を臨む資格を得ているんだよ、リッカ】

 

真なる結末。残りの日にちにて挑む戦いの果てにあるものを掴む資格を得たが故の激励だと、かの邪神は語る。掛け値なく、心からの気遣いと謝礼であるのだと。その途行きは素晴らしいものであったと

 

「・・・つまり、貴方にとってバッドであったらこの場で特異点そのものを潰し、ノーマルであったら貴方を含めた全てと戦っていたと?」

 

【そういう事だ、ナイア。■は■の期待を裏切ったもの、退屈と感じたものにかける容赦は無いからね。アビゲイルをホルマリン漬けにするか脳髄だけ抜き取ってセイレムから出る事も考えていたさ。・・・だが、君達は■の予想を越え、あるいは期待通りの輝きを魅せてくれた】

 

ただの一度も手を抜かずセイレムを良くしようと戦い、セイレムを護った。その健闘こそ、自分が見たかった楽園の旅路の足跡・・・最新の叙事詩の足取りであると満足げに頷いた。

 

【■の娘を預けたのも正解だった。■の最高傑作を、君は重用し大事にしてくれたしね。技術や生きる術はいくらでも用意できたが、心を通わせられる存在というのは縁だから、■にとってもドキドキものだった。銀河警察や旧神と殺し合わないかが懸念だったが・・・きっと君ならなんとかしてくれると信じていたからな。君が、■を信じてくれたように】

 

「お義父さん・・・」

 

【見事だ、リッカよ。楽園の使者達よ。・・・誓おう。これより先、君達が乗り越えられぬ理不尽や試練は決して用意されていない。【どれ程不可能に思える試練であろうとも、乗り越えられる】ものであり、ちゃぶ台返しはしない展開が待つとね】

 

残り二日。それを全力で挑んでもらうための準備と労いのパレード。今日ばかりは、のんびり羽根を伸ばしてもらいたいが故に劇も戦いもお休みの安息の日を過ごして欲しいとの、邪神の気遣いであったのだ。

 

【さぁ諸君。明日がセイレムを越えるか否かの最後の日だ。それまで存分に鋭気を養ってくれ。そしておめでとう。君達は私が求める以上のものを見せてくれた。──六日目の試練、ニャルラトホテプは此処に敗北を認めよう。これはその報奨だ。存分に楽しんでくれたまえ!】

 

「──うん!じゃあ皆!今日はお言葉に甘えて!思い切り休んで遊ぼー!」

 

「はい!いいですね、きちんと安息日を護るとはいい邪神です!殺すのは後です、行きますよナイア!屋台の食べ歩きは祭りの醍醐味です!」

 

「は、はい!・・・よろしいですか、お父さん」

 

【構わん構わん。そもそも■は立場とかどうでもよろしい。汝、したいようにするがいいということさ。友達は大事にな】

 

「──はい!リッカ様、ラヴィニア様、アル様もどうか!」

 

「おー!じゃあまた明日・・・いや明後日かな!またねお義父さん!ありがとー!」

 

元気にパレードへと駆けていく娘達を笑顔で見守る邪神にしてトリックスター。そう、これまでの戦いはとても満足のいく催しであった。

 

【いやいや。君達なら信じているよ。【魔女】を正しく裁き、受け入れる事をね。鍵も、宝石も、光も手にした君達なら・・・ね】

 

──そして、心から期待している。残りの日に待ち受ける、最後の試練をも、乗り越えていくのだと

 

【さぁて。忙しくなるぞぉ。我が娘の履歴書を楽園に送らなくちゃだし、最後の仕込みもあるしなぁ!】

 

これより更なる素晴らしき物語が見られることに、邪神は一層心を踊らせた──

 

 




アビゲイル「ラヴィ!」

ラヴィ「あ、アビー?どうしたの?どこに・・・?」

アビゲイル「ごめんなさい、私神父様とお話ししていたの。でも、まずはセイレム最後の思い出をあなたと作りなさいって・・・」

ラヴィ「・・・そう、ね。最後・・・だものね」

カーター「確かにセイレムでは最後かもしれない。だが、君達はこれからも共に進むのだ。悲しまなくてもいいのだよ」

ティテュバ「ですので、顔をおあげください。別れは楽しく、笑顔でなくては。旅路とはそうやって結ぶのですから。どんな方でも、ね?」

アビー「・・・そうね!ラヴィ、行きましょう!パンケーキ、食べても食べても無くならないくらいあるのよ?素敵なお祭りが終わるまえに急ぎましょう!」

ラヴィ「え、えぇ!」

カーター「・・・君達の未来は、きっと希望に溢れている。信じているよ。我が娘達よ」

射的場

XX「なんでこんなにうつ伏せにならなきゃいけないんでしょう!?(ムニュゥ)」

ナイア「姿勢安定の為、でしょうか?目指せ、景品ゲットです(ムニュウゥ~)」

リッカ「おっ──射的!凄いッ!!」


アル『おい、貴様を追った旧神がいたはずだ!九郎はどうした!?』

【あぁ、ベガスで身ぐるみひんむいてやったよ。ホテルまでパンイチで駆けなきゃならんようで、捕まってなければいいがなw】

『き、貴様ぁ──!?』


ベガス 路地裏

『御丁寧に能力封じまでしやがって、クソ・・・!やるしかねぇか、ダッシュ・・・!ナイアの野郎!覚えておきやがれ──!!』

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