人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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冒涜的な声【■■■■■■■、■■■■■■】

ニャル【急かすな急かすな。この星を手に入れられるかはお前達次第だ】

【■■■──、■■■■・・・】

【好きにするといい。■は支配や君臨に興味は無い。この星を手に入れられたなら、■はこの星から去るだけだ】

【■■■■■──!】

【そうだな。・・・さぁ、我が娘、そしてカルデアの者達よ。最後の総力戦を始めよう。軽く計算して、平均のカルデアなら軽く十は潰せる大盤振る舞いだ】

【■■■■──!】

【・・・フッ。愚かな人類、か】

(その愚かな人類は、今の今まで自分の脚で歩んできた。故にこそ、今の歴史がある。さて──真に愚かなのは人なのか、神なのか・・・)

【魅せてくれよ、人間。──鍵も、光も、宝石も、絆も。全て君達は手中に収めているぞ──】


逢魔ヶ時──ルルイエ──

「いやぁー!楽しかったねパレード!パレードっていうかもう村を挙げてのお祭りみたいな事になってたけど!もう皆パーティーしてたけど!」

 

「はい!中でもマグマの溜まった井戸にXXがサムズアップしながら沈んでいく様子は涙無しではみられませんでした・・・」

 

「いや沈んでませんよ!?どんなハーブキメたらそんな危ない光景が見えると言うんですか!?」

 

パレードも終わり、帰路へとつく夕暮れの中の三人。ニャルの用意したパレードは想像以上に力が入っており、フォークダンスやミサ、そして屋外レストランなど極めて豪勢な面子と催しが振る舞われリッカらを含めた村の人々を満面の笑顔にて満たした。帰路につく者達は一様に笑顔を浮かべ、子や妻、夫と感想を述べていた程である。その催しは、労りと労いに満ち溢れていた事をそれが何よりも証明していた。

 

「お父さん・・・まさかあの方がこんな気遣いが出来る方だったとは知りませんでした。改めて驚いています。アメイジング的に驚きです」

 

「どんな外道にもいい所はあるのですね!叩き潰す事は確定していますが、其処だけは評価してもいいかなと思います!レストラン最高でした!」

 

最初は余りにも至れり尽くせりな為、やっぱり裏があるんじゃないか?なんて思っていた懐疑的なXXもレストランで無事陥落。物心つく前から狩りの環境に身を置かされ殺意と野性を磨き上げられたナイアの、初めての思いきり遊べた空間。それらを見守り、凄い、おっ凄い、しつつお尻や太もももいいぞリッカァ・・・とピエロと語り合い続けたリッカ。皆、得難き時間を得たと満面の笑みを絶やさない。

 

「私ピエロのお陰でお尻やウェストのくびれとか太ももの魅力を知れた!」

 

「それは何よりです。もしよろしければ入浴に同伴し、私の身体を検分なさいますか?」

 

「いいの!?」

 

「リッカ君本当に思春期男子みたいな思考回路ですね・・・月の王はオヤジ魂らしいですがやはり主人公はそんな感じなのですか?」

 

「いいの!私はとにかく包容力とか慈愛とかが感じられるものが大好きなの!豊か、豊満、ふわふわ、あまこー・・・最高だよねっ!」

 

三人の距離感はもうすっかりパートナーとして深まっており、この六日間の激闘を乗り越えた成果が表れている事は明白だった。顔を合わせれば殺気をぶつけ合っていたナイアとXXは、仲良くリッカの持つクトゥルフたこ焼きをつつき合っている。元々不理解とコミュニケーション不足だっただけであり互いを殺す理由は無いわけで。共闘の理由さえきっかけに出来れば真面目同士仲良くなるのにそう時間はかからない。世界とはこんなにも簡単なのである。

 

「仲良くなって良かった・・・あれ、そういえばラヴィとアビーは何処に行ったのかな?」

 

リッカの言葉に、そういえばと辺りを見渡す二人。二人の世界に水を差さないと暗黙の了解でそっと二人きりにさせ、別行動をとっていた。いつかひょっこり会うかもしれないとも考えていたが、ついぞ出逢う事は無かった。先に帰ってしまったのだろうか?

 

「バイタルサイン確認・・・あ、ラヴィニアちゃんが走ってきますよ。こっちに!・・・あれ?アビーは一緒じゃないのでしょうか?」

 

XXの言葉に、ナイアの表情が引き締まる。たこ焼きをほふほふ口に含め思案し・・・、思い至る。【別れて以来、姿を見ていないのはアビーだけではないことに】

 

「さ、三人とも・・・アビーを、アビゲイルを見なかった・・・!?家にも帰っていないみたいで、誰も姿を見ていないって・・・」

 

「一緒じゃなかったの、ラヴィニア?」

 

「お昼になったら、神父様がやってきてアビゲイルは付いていったの。今日の御祈りは、娘が忙しいから私がやろうと言った・・・ナイ神父様と一緒に」

 

ナイ神父とアビゲイルが行方知れず。その嫌な予感しかしない組み合わせのコンボに弾かれたように三人は頷き合い行動を起こした。アーヴァロンに乗りXXは天空へ。ナイアは即座に探索を開始し目星聞き耳アイディア聞き込みをフル稼働させる。リッカはラヴィは肩車し即座に走り出す。アビゲイルの捜索が、即座に始まったのだ。

 

「り、リッカさん・・・何処に、何処に行くの・・・!?」

 

「しっかり摑まっててね!ロマンスにあんまり縁が無かった私だからこそ、エモいシチュエーションとかフラグ管理とか凄いイメージしてたし得意だから!」

 

そう言って砂煙を上げ猛ダッシュするリッカ。最早その身体能力は人間であるかどうかすら怪しい超人クラスの脚力にてセイレムを駆け回る中、アルもまた眠りより目覚め助言を送る。

 

『リッカ、その先だ!その先に何やら不可解な気配がするぞ!』

 

「不可解な・・・やっぱり!しっかり摑まって!ペース上げる!」

 

「あわ、あわわわわ・・・」

 

最早重機関車、リトルヘラクレスなリッカが地面を抉りブレーキをかける。数百メートルを全力ダッシュしながらも微塵も乱れない呼吸をそっと行い、顔を上げる。其処は・・・アビゲイルとラヴィニアの、秘密の地であった。夕日が海の向こうへ沈もうとし、波の音が静かに響いている。

 

「此処から、変な反応・・・アビーがきっと待ってるんじゃないかな?」

 

リッカはこういう場合、特別な場所にこそヒントがあると判断した。何か、大事な事を伝えるなら女性は特にそういうシチュエーションを大事にするものだと。そしてラヴィニアに、変化が起こる。

 

「待っている・・・、・・・!」

 

瞬間、首にかけ肌身離さず持っていたラヴィニアの『銀色の鍵』が輝きを放ち始めた。それはまるで、同じ力に共鳴し、呼び合っているようだ。そしてそれはふわりと浮遊し、──海の方角を指した。その先にいる存在を、だ

 

「・・・アビー・・・?」

 

【──来てくれたのね。座長さん。ラヴィ。本当に嬉しいわ】

 

アビー・・・アビゲイル・ウィリアムズは微笑んだ。いつものように朗らかで、優しい笑みだ。──リッカがかつて、浮かべていた笑みと同じような。

 

『──!待て、リッカ!ラヴィニア!その娘、何かがおかしい!』

 

アルの警告は、視覚を通じて伝わっていた。崖の向こうに広がる海。その中心・・・海面に、アビゲイルは立っていたのだから。

 

【もうすぐセイレムを出て、私達は素晴らしい旅を始めるの。その日が本当に楽しみで、待ち遠しいわ。あなた達もそうでしょう?リッカさん。ラヴィ。私に、色んなものを見せてくれて。友達になってくれて本当にありがとう】

 

「ど、どうしたの?何があったの・・・?アビー・・・?」

 

アビゲイルの雰囲気は普通では無かった。そこにいるのか、いないのか。あまりに鮮烈のような、ぼやけて不確かなような。その笑みだけが、不気味に鮮明に浮かんでいる。

 

【──でも、ダメだわ。ダメなの。どんなに最善を尽くしても、どんなに素敵な想い出を重ねても。・・・罪は、私達の犯した罪は私を逃がさない】

 

「罪・・・?」

 

【そうよ。でも・・・【私は悪くないわ】。だって──退屈だったのだもの】

 

アビゲイルは、それを名乗る少女は。そう口にした。

 

【魔女が誰か、魔女は何処にいるのか・・・そんなものはどうでも良かったわ。誰が魔女でも構わない。ただ、私が楽しければそれでよかったの。皆、面白いくらいに踊ってくれたわ。おかしいの】

 

「・・・ニャルに何を言われたの?」

 

【私の罪よ。私の罪・・・罪は私を捉えて離さない。私を、このセイレムから出してくれない。セイレムは、私を魔女と蔑み続ける。──私は、セイレムに縛られている。・・・だから、だからね?私は思ったの】

 

静かに、少女は告げた。

 

【──セイレムなんて、消えてなくなればいい。魔女はみんなみんな、消えてしまえばいいの。私以外の全てが魔女ならば・・・『魔女が紡いだ歴史』なんて、おぞましくて仕方ないでしょう?】

 

・・・──人類史の、抹消宣告を。

 

「あ、アビー・・・何を、言って・・・」

 

【人間は愚かよ。清廉であれ、敬虔であれと言いながら心は堕落を求め退廃を願う。罪なき生を送りたいと願い、苛んでいい存在を作る。それが魔女。それがこの世全ての悪。矛盾に満ちて、醜いと思わない?】

 

「思わないよ。人間は、醜いところがあるから美しいんだって知ってるから」

 

【そう。なら、貴女も魔女ね。私のいいなりにならない人は、皆魔女なの。魔女じゃないのは、私だけ──】

 

彼女は嘲笑い、静かに右手を上げ・・・それを招いた。空は暗く澱み、海はヘドロのように漆黒となり、闇が瞬く間にセイレムを覆い尽くした。

 

【終わりにしましょう?アダムとイヴより罪を抱いた人類は、初めから赦されない罪人なの。罪が赦されないなら、この世界に生きていい人間はいない。──あぁ、『御父様』・・・】

 

『──、バカな。この反応は・・・!?』

 

──海の底より、それは現れた。それはあまりにも冒涜的で、廃れきった忘れ去られし神殿。遥かなる太古に封じられ、浮上を待ち続ける『異なる世界の邪神殿』。それを、アビゲイルが呼び寄せたのだ。

 

【この星を、新たなる歴史を貴方に捧げます。この星にて、新しい外なる歴史をお築きください。今度こそ、罪のない──いえ・・・『赦し』の溢れる世界を・・・】

 

・・・それは、最果ての塔と存在を同じくするもの。地球という星に打ち込まれ、生命の紋様を定着させるアーティファクト。失われた歴史にて、正しき歴史を駆逐する【異なる神】の侵略。人類史の漂白・・・否、【汚染】。

 

【──私の仲間達。此処に集まって。皆の新しい歴史を始めましょう。この・・・ルルイエに・・・】

 

 

ルルイエ。──恐ろしき邪神が封じられし、星に打ち込まれし軛となる神殿である。そこから放たれた闇は、より強く吹き出し・・・

 

『ラヴィ!アル!!』

 

『わかっておるっ──!!』

 

・・・セイレムの全てを、瞬間に飲み込み尽くした。生命は、微睡みの中へと堕ちていった。そして、夢に囚われぬ一人──

 

【さぁ・・・最後の夜を始めましょう・・・】

 

外なる降誕者・・・人類の脅威となりしアビゲイルは、邪悪なる微笑みを浮かべるのだった──




【座長さん。今まで本当にありがとう。色々世話を焼いてくれて。あなたは、女の子達皆の憧れよ。勿論私も、ね?】

【だから・・・素敵なもしもを見せてあげる。きっと、気に入ってくれるわ。あそこで生きたいと言ってくれる。あなたは素敵な女の子で、傷つくことも哀しむこともない。普通の女の子として生きていけるの】

【リッカ・・・ううん。当たり前で、普通な。『藤丸立香』として。──きっと、気に入ってくれるわ。そうでしょう?だって・・・】

【──かつてあなたが憧れた、当たり前で、平凡な。何処にでもいる一人として生きていけるのだもの・・・】

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