人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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──あの、方は・・・!?

《ほう・・・?影武者と見出だされながら、その実誰よりも覇者の資格を持ちし男まで参じたか。微塵も紡がれなかった未来の歴史から手を貸しにくるとは、ほとほと律儀にて勤勉な王よ。良く見ておけエア。ヤツは・・・いや》

──ギル?

《──言葉は要らぬ。目の当たりにし感じるがいい。一つの時代にて、最高にして最善の偉業を成し遂げた孤高の王の、覇道をな》

──は、はい・・・!


平成の墓守、令和への案内人

【懐かしい。民を護るための戦いは、若き日にライダー達の時代を継承する為に奔走した以来であったか】

 

目の前を埋め尽くす敵対せし生物を前に、黒と金の魔王は懐かしげに言葉を漏らした。その戦いは、喪われた歴史を護り続けるもの。自らが奪ってしまった平成ライダー達の歴史への贖罪としての墓守。今の様な『未来へ刻を進める戦い』は、長らく縁の無いものだったのだ。郷愁と、今を懸命に生きる流星がごとき生命を目の当たりにし、オーマジオウは感慨深げに呟いた。

 

【最早無意味ではない。この世界には未来がある。──最早老害であり、過去の遺物である私だが・・・力を貸す事に躊躇いは無い】

 

平成ライダーの歴史は、確かに若き日の己に託された。此処にいる自分は、平成という時代の終わりを看取る最後の意志のようなもの。間も無く来る新たな時代の前に、この星を滅ぼされる訳にはいかない。故に──

 

【後進の道を拓くが我が望み。新たな未来を描く為の礎となるとしよう・・・!】

 

戦いに、最早躊躇いも迷いもない。平成最後の仮面ライダーの覇道が、今此処に再び刻まれる事となる

 

無数の闇の者共が、一斉に尋常ならざる魔王に向けて攻撃を放った。それらは人間など蒸発して然るべき怒濤の攻撃だが、オーマジオウの肉体と鎧には傷一つ付かない。あらゆる攻撃を無意味と化すライダーの無敵の力が、その身に宿っているためだ。

 

【ぬんっ!】

 

右手をかざした瞬間、自分と民以外の全ての動きが停止した。重力により加速を制限される重圧、重加速と呼ばれる能力を持つライダーの力を解放したのだ

 

【おぉおっ!!】

 

身体から無数の蝙蝠、赤と黒の龍、クワガタの守護機械、トランプカードを解き放ち空中に飛来する邪なるものどもを片端から駆逐していく。其処に宿るライダー達、かつてキバ、龍騎、クウガ、剣というライダー達を支えた概念を、そのまま映し出し解き放ったのだ。極限まで高められた停滞により動きを封殺された有象無象は、瞬く間に蹂躙されていった。

 

【ふんっ!】

 

オーマジオウの背後に、かつてライダー達が手にしていた全ての銃器が展開され、最大出力の解放を魔王の指揮のままに解き放った。山が抉れ、海が裂け、大地が吹き飛ぶ程の大出力が、背にした民達以外の敵を薙ぎ払う

 

【はっ!】

 

右手を掲げることにより、次はライダー達が手にした全ての剣と武器が現れた。それらを手に取り、自らに時間軸を加速させた超高速移動を使用し、瞬く間に敵対者を無慈悲に切り捨てる。次々と現れる片端から、王自ら覇道を阻む者達を処断していく

 

【侮るな、ライダーの歴史を・・・!】

 

大地に、大陸全てに刻まれる巨大な紋章を蹴り込み、召喚される邪悪なる者達を叩き潰していく。戦士の紋章、光の力の紋章が力強く刻み込まれ、ただ一つの例外なく邪悪なる者らを叩き潰していく。

 

彼の力は、彼が受け継いだ仮面ライダーという存在、ひいては平成という時代そのもの。ライダーの王として、最高最善の魔王として君臨し続けたオーマジオウの力の根源は、全ての仮面ライダーの力そのものなのだ。

 

・・・だが、彼はその歴史を奪い、孤独な王として君臨せざるを得なかった。彼は歴史の管理者と一人戦い、敵の汚名を押し付けられたまま味方なき最低最悪の魔王として平成の時代を護り続けたが故に。──だが

 

【──如何にお前達が強大であろうとも、お前達がこの星にて覇を謳う事は不可能だ。何故か解るか?】

 

 

時間を止め、オーマジオウは問いかける。・・・喪われた時間、哀しき墓を護る為・・・平成の墓標の名を汚さぬ為の孤独は最早過去のもの。今を生きる時代の生命は、確かに時間の針を未来へ進めた。平成の時代より先、未来に辿り付く事は決定している。──最早、溢れだした平成の時代は止められはしない。待ち望んだ新たな世界は、すぐ其処まで来ているのだ。

 

【この星は時代を駆け抜けた仮面ライダー達。そしてそれを支え、愛した者達が紡いだ最高最善の歴史を宿す星だからだ。時代が求める限り、仮面ライダーは何度でも甦る。お前達が何度歴史を壊そうとも、仮面ライダーの歴史は不滅だからだ】

 

何のためか、誰の為の夢か。自分は何のために、誰のために王になりたかったのか?生まれながらの王では無いとしても。何故王を志したのか?その答えを、最低最悪の歴史と罵られながらも懐き、より良き世界を、未来を見続けて来た。その結実が、この最高最善の叙事詩にも訪れようとしている。ならばこそ──

 

【・・・お前達ごときに、受け止められる歴史ではない・・・!!】

 

その未来への案内人として、消え行く魔王はやって来たのだから。超自然発火能力・・・原子を移動させる究極の力にて、眼前の総ての敵を焼き払った。圧倒的にして絶対的。その王としての自負が、彼の力を最大最強足らしめている理由だ。目の前の敵は、全て踏み潰した。──だが。

 

【・・・──まだ、戦うというのか?】

 

更なる闇が蠢き、先の何十倍もの怪物がセイレムに向けて押し寄せてくる。この魔王はいくら強くともただ一人。量にて押し潰さんとの選択を邪神は取ったのである。・・・愚かな、と魔王は忌々しげに呟いた。自らの、仮面ライダーそのものの前に尚も抗うその愚昧さをオーマジオウは哀れんだ。

 

【ならば思い知るがいい。ライダー達の、平成という時代の総てを・・・!!】

 

厳かに、彼は金色のベルトの両端に手を翳す。背後の針のパーツが展開し、雄々しくその刻を告げる。

 

<終 焉 の 刻 ・ ・ ・ !>

 

オーマジオウがゆっくりと天に昇る。そしてその姿が十人、百人、否・・・【敵の数と等しき数】に分身し、一様に脚撃の態勢を取る。同時に天空に超巨大なブラックホールがごとき擬似的な引力の力場が生成され、問答無用で敵対者のみを吸い上げていく。彼は覇道を邪魔する者に容赦はせず、灰塵に帰すまで徹底的に叩き潰す。千を越える敵であろうと、絶えず湧き出るおぞましき相手であろうと下す審判は変わらなかった。そしてそのまま、魔王の一撃が無数の存在一つ一つに叩き込まれる。その裁定の名は──

 

<逢 魔 時 王 必 殺 撃 ! !>

 

【───ぜぇえぇえぇえぇえあああぁあぁあぁあぁあぁ!!!】

 

天地を揺るがす気迫と咆哮と共に、魔王の一撃が放たれた。一体一体に300トンを超える必殺の一撃が無数に放たれ、漆黒の夜闇を爆発の焔で染め上げた。その必殺に、堪えられるものなどただ一人として存在している筈も無く。荘厳なる刻が終幕を迎えた時。──立っているのは、オーマジオウただ一人のみであった。増援もまた、力場に片端から吸い込まれ塵と化していく。

 

【・・・王道の極みに立つ王と、王が誇りし財よ。お前達の未来は、すぐ其処までやってきている】

 

遠くにて邪神と戦う巨人、龍、女神、怪獣の王。そして友を助ける為に駆け抜ける少女達を見つめ、墓守から、新たな未来への案内人へとなりし最後の仮面ライダーは厳かに告げた。

 

【その未来は・・・お前達の手で掴み取るのだ。心から祈っているぞ。お前達の新たな時代の到来を】

 

それこそが、それだけが願い。愛する民達が、より良き未来へと笑顔を紡ぎ進んでいく事こそが、自らの王としての責務に対する報酬そのもの。

 

【・・・夜明けまで、まだ時間がある。・・・余計な世話だが、見守ってやるとするか】

 

静かに頷いた魔王、オーマジオウはセイレムの眼前へと陣取り、今を生きる民達を守護する選択を選んだ。・・・それは、皮肉にも・・・

 

【──フッ。今を生きる、生命を護る・・・か】

 

逢魔の日から、果たせずじまいにいた正しき王の勤め。図らずとも己の願いが思わぬ形で叶った事に・・・

 

──魔王は仮面の下で、微笑んだ。

 

 

 

 




オーマジオウ【・・・・・・】

XX(スリープ)「むにゃむにゃ・・・」

ナイア(スリープ)「ん・・・」

【眠りを取らねば身体は保たぬ。自愛をせねば、守れぬものも守れぬのだぞ。『最後の仕上げ』の為にも、此処は鋭気を養うのだ】

魔法にて仮眠を取らせた二人を、そっと木にもたれかかせ立ち上がる。友・・・己にはいないものをもった二人を、さまざまな想いで見つめながら。

(・・・そうか。若き日の私も、ウォズも楽園と縁は結べていなかったか。王として生きるならば、かの英雄王との邂逅を経ぬのはあまりにも惜しい)

【・・・縁と手土産を、残しておくか】

そう告げ、そっと二人に布を被せ高々と魔王は手を翳した。それは、自らの歴史を再び形とするもの。かつて継承したものを、縁として託すもの

ギル《──フン。歴代のライダーどもが力を託したのも頷ける。その人柄は、生き地獄においても微塵も揺らぎもせぬとはな》

──これは、オーマジオウ様の時計・・・?

《確かに預かった。やがてこれは在るべき所に戻るだろうよ。──楽園に訪れし、若き日のそなたにな》

【オーマジオウライドウォッチ】

圧倒的な威厳と力を持つ、平成の終幕を告げる魔王からの縁、若き日の自分とを繋げるウォッチが、王と姫の手に託されたのであった。

──そして。

『あの魔王が道を拓いた!突撃するぞリッカ!』

『う、うん!凄い、あの人が・・・オーマジオウ・・・!』

ラヴィニア『いまが、チャンスよ・・・!』

一気にルルイエへと突撃し、リッカが壁も何枚も突き破り最速最短にて真っ直ぐ最奥へと辿り着く。邪神と無数の存在は、想定外の援軍にて阻まれた。故に・・・

ラヴィニア『──来たわ。あなたを、裁きに』

アビー『・・・ラヴィニア・・・そして、リッカ・・・!』

遂に、魔女へと──辿り着いた。

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