人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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クトゥルフ【■■■■■!!?】

【あれは何か、だって?見れば解るだろう。魔王だよ】

【──!?】

【邪神もいれば、魔王もいるだろう。不思議じゃない。最悪の人類の脅威は、此処にいるわけだしな。・・・さて】



ガタノゾーア【──■■■■!!!】

白き龍{これで何回倒したのかしら。効いていない・・・いえ、倒された瞬間に復活してしまう}

ゼロ『闇がある限り、何度でも甦るって事か・・・!俺達だけじゃ倒しきれないって事なのかよ・・・!』

ゴジラ『──グガォアァァアァオッ!!!』

ガタノゾーア【■■■■──!!!!】



【その通りだ。お前達がいくら強くても、お前たちの力だけではこの終末を変えられはしない】

(未来を切り開くのは、いつだって人間の愛と絆だ。・・・さぁ、見せてくれ。この■に・・・)

【──汎人類史が産み出した奇跡・・・他者が他者を思い遣る、愛と絆の在処を!】


魔女

『妨害とか、あっても私達に任せて。二人の邪魔はさせないから』

 

それだけを告げ、そっとリッカが距離を取る。みつめあうラヴィニアと、アビゲイルの戦いを・・・裁判を、見届けるために。

 

「・・・やっと、此処まで来れたわ。もう、貴女を一人にはさせない。アビー」

 

ラヴィニアは静かにローブを投げ捨てた。手には、銀の鍵剣を握り締め構える。

 

【残念ね、ラヴィニア。貴女なら、きっと私に並んでくれると思っていたのに。私に逆らうなんて・・・悪い子だわ】

 

アビゲイルの周囲の空間が歪み、無数の鍵穴が現れる。其処から現れしは、彼女が使役する冒涜的な触手の群れ。・・・二人は奇しくも、同じ異なる世界からの力を引き出していた。大魔導師、そして全にして一、一にして全の邪神の力を。そしてそれらは、互いのみに向けられ──

 

「あなたにただ従うだけでは、友達とは言えないもの。私は、あなたの傍で生きていきたいのだから」

 

【出来ないわ。私は、魔女を赦さないもの】

 

「──その自責に、終止符を打つわ。アビゲイル・ウィリアムズ・・・いいえ、セイレムの魔女・・・!」

 

『ッ──!』

 

一斉に放たれる触手、走り出すラヴィニア。セイレムの、この星の未来を掛けた戦いが・・・魔女への裁きの戦いが、幕を上げた。

 

【私は魔女じゃない、魔女じゃないわ・・・!皆が、皆が魔女を求めた、だから私は指を指しただけ!皆が魔女を見たいと言うから私は魔女を見つけてあげた。だから、私は魔女じゃない!】

 

触手が無数に蠢き、ラヴィニアを阻む。総てを拒絶するような怒濤にて、彼女を滅多打ちにする。魔女であることを、認められない心のままに。

 

「いいえ、あなたは魔女よ。姿形じゃない。自らの楽しみの為に何人も、何人も首を縛らせたセイレムの悲劇の引き金。自分の為に誰かを貶めるその心の形・・・。それを、魔女と言うの」

 

触手を切り裂き、アビゲイルの目を見ながらそれを告げるラヴィニア。エイボンの書から放たれたクトゥグアの火焔、ハスターの風がラヴィニアを護る。

 

「信仰や、いい子にしているばかりの退屈な毎日に飽き飽きして、何か面白いことを起こしたいとあの悲劇を起こした・・・誰よりも悪い魔女よ、アビゲイル!」

 

【私を魔女と言うのなら、総てが魔女よ!だって、みんな、みんなあんなに必死で、楽しそうで、生き生きとしていたじゃない!机にかじりついて、お祈りしている人達は皆退屈そうにしていたわ!】

 

鍵穴を閉じられ、アビゲイルは声を上げる。ラヴィニアの声や、眼差しから目を逸らせない。どんな攻撃、どんな狂気をぶつけても、ラヴィニアはじっと見つめている。それが、堪らなく恐ろしいと彼女は感じた。どんな嘘や暴力にも、ラヴィニアは惑わされないと理解させられる程に

 

【それの何がいけないの・・・!?皆、皆望んだ事じゃない!】

 

「いいえ、それはあなたが望んだ事よアビゲイル。皆、皆と言うけれど。あなたはあなた以外の総てが魔女だと言ったわ。あなたは、都合良く周りの事を使い分けている。何故、魔女という人達の言うことを聴いているの」

 

ラヴィニアは揺らがない。友達の総てを、偽りを剥ぎ取り受け止める。エイボンの力は、アビゲイルの空間を繋げるヨグ=ソトースの力を打ち消していく

 

「あなたが一番良く解っているのよ、アビゲイル。あの場に楽しみを求めていたのは、刺激を求めていたのはあなた。楽しみを待ち望みながら、自分はいい子でいたかった。そんなずるくて、悪くて、いけない子があなたよ!アビゲイル・ウィリアムズ!」

 

【いや、いや!止めて!私は魔女じゃない!私は魔女じゃない!】

 

「何故、魔女が嫌なの!あなたは何故、其処まで魔女であることが嫌なの!」

 

【いやぁあぁあぁっ!来ないで、来ないで──!!】

 

より無数の触手が無理矢理現れ、ラヴィニアを叩き伏せた。彼女の言葉が、アビゲイルの取り繕った心を切り裂く。魔女である事を、彼女は忌避して拒絶しきっている。

 

【私はいい子よ、いい子なの!神に愛され、神を愛している!魔女の誘惑に負けない、誰よりも神を信じているの!だって、そうしないと──!】

 

「──そうしないと、自分が出した犠牲者から逃げられない。自分の罪に押し潰されてしまう。背負うなんて出来ない。醜い魔女が積み重ねた罪は、どうしようもできないから・・・!」

 

【いや、止めて・・・!私を魔女と呼ばないで!いや、いや、テュテュバ、レベッカ・・・!私を、そんな目で見ないで!】

 

悪が善を認め、改心してしまえばそれは地獄への道に変わる。悪である事で見なくて済んでいた罪が、踏みにじった命が業火となって償いとなるからだ。アビゲイルは、怯えていた。罪が、犯した罪があまりにも、重く大きいが故に。

 

【私は悪くない、私は魔女じゃない・・・!だって、だってそうじゃないと、私、私・・・!】

 

「魔女だと、失ってしまうものがある。自分が魔女であると認めてしまったら・・・」

 

【そう、そうよ!だって魔女だと私が私を認めてしまったら、皆が私を嫌う!『あなたが私を嫌う』の!いや、いや・・・!それだけは、それだけは堪えられない!『あなたに魔女と言われるのが堪えられない』!】

 

友達・・・罪に苦しみ、怯えるばかりだった彼女が願った友達。お前が魔女だ、魔女だと責められる罪悪感と逃避する自分への嫌悪から救ってくれた、かけがえのないラヴィニア・ウェイトリー。

 

【いや、いや!ラヴィニア、私は魔女じゃないわ、いい子なの!だから嫌わないで、魔女と言わないで!私から離れないで、私の手を離さないで、捨てないで・・・!】

 

魔女は醜い、魔女は悪い。だから、絶対にラヴィニアにだけは魔女である自分を見せたくない。好きだから、大好きだから拒絶する。本当は解っている。解っているのだ。でも、それが受け入れられない

 

【私は・・・魔女なんかじゃない・・・!!だから、ラヴィニア・・・!ずっと私の傍にいて・・・私を、私を魔女と呼ばないで・・・!いい子でいるから、ずっとずっと友達でいて・・・!】

 

認めてしまっては、離れてしまうから。罪に焼かれ、目を背けてばかりだった自分に舞い降りてきた運命が、自分を嫌ってしまうから。友達が・・・いなくなってしまうから。

 

【私は・・・!魔女なんかじゃないの───!!】

 

より強く、拒絶するしかなかった。いい子でなくちゃ、誰も自分を受け入れてくれない。必死にいい子でなければ、誰も自分を愛してくれない。【だって私は、あんなに酷いことをしたのだから】。アビゲイルの心は、ラヴィニアを求め矛盾し、拒絶したのだ。

 

「あぁっ・・・!」

 

ラヴィニアは触手に弾き飛ばされ、地を這った。アビゲイルの痛みや、哀しみが響く。誰も彼女を疑わなかった。誰も彼女を裁かなかった。魔女を、必死になって探し続けた。だから、何をどう償えばいいかも解らない。

 

『ラヴィニア!』

 

「大丈夫・・・!・・・アビゲイル・・・」

 

【いや、いや、いや・・・助けて、助けてお父様・・・!私を、私を赦して・・・私は悪くないと、赦してください・・・】

 

アビゲイルが、最も苛まれている事実。それは──『誰にも裁かれていない』ということそのものだ。罰なき罪が、彼女を永遠に苦しめている。

 

誰も彼女を赦す事は出来ない。彼女が巻き起こした悲劇は、永遠に消えはしない。この人類史が、ある限り。

 

「・・・・・・アビゲイル・・・」

 

それでも、ラヴィニアは立ち上がり。アビゲイルへと歩んでいく。彼女は・・・勘違いをしているから。

 

「あなたは、魔女よ・・・悪い子よ。裁判でたくさん、人を殺した最悪の子よ」

 

【いや!いや!止めて!止めて!】

 

「自分の、楽しみの為に・・・たくさんの人を犠牲にした、セイレムの魔女・・・!」

 

触手が、ラヴィニアを叩き付けていく。何度叩きのめされても、何度地に這いつくばっても、ラヴィニアは歩みを止めない。歯を食い縛り、リッカがそうしてきたように進み続ける。

 

「あなたの罪は、決して消えない・・・!あなたは、これからもずっとあなたの罪と向き合うの・・・!」

 

【いやぁあぁっ!誰か、誰か私を赦して・・・!そんな、そんなの・・・!】

 

目を閉じ、耳を塞ぐアビゲイルに、傷つきながら、ボロボロになりながらも歩み寄るラヴィニア。魔女に、もう目と鼻の先まで近付いていた。

 

「あなたは──セイレムの魔女!アビゲイル・ウィリアムズ!あなたは決して、赦されない!」

 

【あぁ、あぁあぁあぁあぁぁ──!!】

 

ラヴィニアは、銀の鍵を振り上げる。心の強さと精神の同調は、ラヴィニアが完全に上回っていた。振り下ろせば、魔女は霧散する。発狂寸前のアビゲイルに、ラヴィニアは──

 

「───でも、あなたは・・・一人じゃない。あなたは、決して一人じゃないのよ、アビゲイル・・・」

 

【・・・──え・・・?】

 

そっと、ひざまずき泣きじゃくるアビゲイルに、ラヴィニアは目線を合わせる。そのまま、ラヴィニアはアビゲイルを抱きしめた。

 

「あなたは魔女よ。魔女で、悪い子よ・・・でも、そんな悪い子でも、魔女でも。私は、貴女の友達なのよ。アビゲイル」

 

【ラヴィ、ニア・・・?】

 

「私は、本当なら此処にはいない。私は、かつて何処かで貴女を犠牲にしようとしたの。醜い白い肌で、皆から嫌われものだった私を、あなたは友達として迎え入れてくれた。『白い妖精』と言ってくれた。──魔女の貴女に、私は救われたのよ・・・」

 

アビゲイルは、自分を救ってくれた。そして、かつての誰かに言われた事。『その肌は立派な個性』だと言うこと。醜い自分を、彼女は受け入れてくれたのだと。

 

「だから、私はあなたの友達でいたいの。許されない罪はない。罪は消えない。でも・・・一緒に背負って、歩いていけるのよ。アビー」

 

【ラヴィ・・・でも、でも・・・私は、赦されないわ。私の傍にいたら・・・悪い子の私の、傍にいたら・・・】

 

もう、彼女の中では認めていた。いや、とっくに認めていたのだ。どうしても、それは受け入れられなかった。大事な友達を、巻き込んでしまうからと。だって、自分は本当は──

 

「心配無いわ。心配無いのよ。──これを、見て。アビー。リッカさんや、皆が教えてくれた、あなたへ告げる未来よ・・・」

 

そして、エイボンの書と、銀の鍵を重ね、彼女は力を解き放つ。過去、今、・・・そして、未来の光景を求め。アビゲイルと手を繋ぎ・・・

 

「──魔女は、もう。恐ろしい存在ではないの──」

 

そっと、額を重ね合わせ。二人の意識は遥かな未来へ──

 

 




【・・・こ、こは・・・】

其処は・・・遥かな未来。セイレムの場所にある、小さな都市としての未来の姿。それらを、ラヴィニアとアビゲイルは見詰めていた。遥かな未来の姿を、彼女に見てほしいが為に。

「見て、アビゲイル。魔女は、色んな場所にいるわ」

そっと指差すラヴィニアの先には、たくさんの・・・可愛らしい魔女がいた。魔女のグッズ、魔女の衣装、魔女のぬいぐるみや装飾、店も魔女を取り扱っている光景。未来の、魔女の在り方だ。

「セイレムは、悲劇と罪を乗り越えて・・・こうして、魔女を受け入れたの。これは、楽園の皆が教えてくれた未来なのよ、アビゲイル」

【・・・ラヴィニア・・・この為に、儀式を・・・エイボンになってまで・・・?】

「そう、なるのかしら。あなたの考え方が古いって、教えてあげたかったの。──もう魔女は、可愛くて素敵な存在なのよ。アビゲイル。あなたのように・・・ね」

そうして、ラヴィニアは銀の鍵をそっとアビゲイルへと渡した。この未来へ、辿り着く為の大切な大切な、彼女の為のプレゼント。

「罪は、消えない。私も、あなたを最初は利用しようとしていたわ。でも・・・みつめて、受け止めて。心から信頼できる誰かと、一緒に背負っていけるのよ、アビゲイル」

【・・・ラヴィ・・・】

「あなたは魔女よ。魔女で、悪い子で・・・私の、大切な大切な友達よ。いつまでも、ずっとずっと変わらない。大切な、あなたよ」

だから、自分を受け入れていい。あなたが誰であろうと、何者であろうと。絶対に受け止めてみせるから。一緒に、償い背負っていくのが・・・友達であるから。

「教えて、アビゲイル。あなたは・・・本当のあなたは。私の友達は、どんな人?」

アビゲイルは、静かに頷いた。・・・もう怯える必要はない。自分は魔女であっても、罪は赦されなくても。もう・・・一人じゃないから。

「・・・私は、アビゲイル・ウィリアムズ。セイレムで生まれた、貴女の友達。そして・・・」

だから・・・もう、残酷な罪から目を背けるのは、終わりにしよう。どんな自分でも、きっと・・・

「・・・魔女。あの悲劇を巻き起こした・・・セイレムの魔女よ。ラヴィニア──」

・・・この友達は、受け止めてくれるから。そして、この未来に必ず・・・辿り着ける筈だから

「・・・セイレムを、出ましょう。あなたには、見てもらいたいもの・・・見てほしいものが、たくさんあるから・・・!」

「うん・・・!」

──此処に、魔女は罪を背負った。でも彼女は、一人じゃない。傍に、大切な友がいる。きっと、罪に向き合いながら進むだろう。

・・・その言葉は、アビゲイルの決意は・・・

ニャル【・・・──それで、いい。・・・結末は、此処に定まった】

静かに、邪神に悟らせた。──自らの、完全なる敗北を。

ナイア「──う、っ・・・!?胸が、熱く・・・!」

XX「ふぁあーぁ・・・!あ、あれ!?ナイア!?キラキラ輝いてますよ!?」

そして──完全無欠の、勝利の来訪を。だが、それこそが・・・

『シャイニング・トラペゾヘドロン』

ナイア「──お父さんの・・・必滅兵器・・・!?」

XX「む、胸から出てきましたよね!?あの邪神、自分の娘に自分の宇宙すら託していたんですか──!?」

──かの混沌が、待ち望んだ結末に他ならなかった。

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