人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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世界の果て

マルドゥーク『・・・・・・』

シドゥリ『ロンゴミニアド、人類史の固定継続。さしたる問題は見当たりません』

エレシュキガル『・・・御兄様の、神としての権能・・・御兄様は御母様を引き裂き、天地として世界を『始めた』神。それ故に・・・』

ティアマト『マルドゥークがいる限り、そこに生きる生命がいる限り、人類史そのものへの攻撃、漂白や汚染を無力化する力・・・ロンゴミニアドという楔がなくば、発動はしませんが・・・』

マルドゥーク『・・・』

シドゥリ『条件さえ揃えば、マルドゥーク神は人類史最後の希望として神威を示す。今は、ソレほどの時なのですね・・・』

エレシュキガル『こうなったらマルドゥーク御兄様の損傷を抑えるために出撃は控えなきゃだから、イシュタルに任せなきゃなのだわ・・・大丈夫かしら・・・』

マルドゥーク『──心配は要らぬ』

シドゥリ『!マルドゥーク様!』

『あれも、我が妹であり母の娘だ。だろう、母上』

ティアマト『・・・はい。きっと──』



イシュタル「やった!リッカがうまくやったみたいね!よーし、なら私も最後のスパート!纏めて一気に・・・!」

【あぁ、その前に・・・】

「!?──、かはっ──!?」

【お前に、譲ってもらいたいものがある】


我等は今、聖約を果たす

『ナイちゃん!XX!大丈夫!?』

 

ルルイエの中枢から壁を突き破り、セイレムへと帰還せしリッカ。そしてアビゲイルとラヴィニアが裁きを終え仲間たちの下へと降り立った。二人は未来視と対話を終え、リッカに抱えられながら眠りについている。仲間を思慮していたリッカの懸念は、健在であるナイアとXXの姿にて霧散する。

 

「ご無事でしたか!良かった・・・!お帰りなさいませ。──いえ、それよりも大変です、リッカ様!私の内に、お父さんが仕込んでいたものが目覚めました・・・!」

 

『やけに光ってるの気のせいじゃなかったんだ・・・!どうしたの!?何があったの!?』

 

ナイアの身体が光り、そして煌めき、遥か天まで光が立ち上る。その光の中心はナイアの胸・・・心臓より放たれている。それは、邪神であり子育てを通じて見出だした邪神の、最後の御守りにして祝福であった。

 

『トラペゾヘドロン・・・輝くトラペゾヘドロン!邪神達の宇宙を封じた、異なる宇宙そのものにしてニャルラトホテプの力の根源そのもの!我がデモンベインの最大武装なのだ!』

 

第零封神昇華呪法。ねじ曲がった神性、狂った神樹。刃の無い神の剣。多面結晶体を核とする、函が変質したかの邪神の最終兵器。その正体とは、『邪神達の住む宇宙を封じた平行世界の結界』であり、唯一無二の歴史そのものと言っていい究極の神器であるのだ。

 

「えぇ、ロンゴミニアド、エクスカリバーと同じ扱いのアーティファクト・・・邪神ニャルラトホテプが所持する秘宝の中の秘宝と銀河警察に極秘情報として集められていたと聞き及んでいました。今では喪われた、あるいは邪神が隠したというのが通説でしたが・・・」

 

【まぁ、隠したと言うよりは託したんだよ。初めて出来た娘の息災と無事を祝って、心臓に埋め込んだ。不老にして無病息災、肉体の劣化が起こらない永久機関としてな】

 

拍手を行いながら補足を加えやって来たのは件の邪神、ニャルラトホテプだ。溺愛と贔屓と寵愛にて、娘が決して滅びぬように無許可で埋め込んでいたという。愛は本物でも、手段はやや邪神めいているその混沌の表情は晴れやかであった。

 

【おめでとう。君達の、楽園の、人間の勝ちだ。愛と絆を示し、誰も欠けない結末に辿り着いた証として、ソレを振るう資格と担う栄誉をプレゼントしよう】

 

「お父さん・・・この力を、リッカ様達が振るえると信じて、私に・・・?」

 

その為に、ナイアを案内人として仕向け、絆を紡がせ、そして友という概念を学ばせたのかとナイアは告げ、邪神はそれに頷いた。娘を大切にすると証明するには、どう具体的に顕すべきかと。

 

【まぁ手放しで託していた訳でもない。お前が殺された瞬間、ソレは暴走し宇宙ごと消滅させる爆弾になっていたし、お前一人でソレを使おうとすればやはりお前は死んでいた。──マスターと契約し、魔力を貰う事で初めて行使が可能となる。ピンチになった時のちゃぶ台返し、リセットボタンとしてお前には意識させていたが・・・使わなくて良かったな】

 

ナイアも、奥の手があるということだけは聞いていた。だが、それはニャルから止められていた。【使えばお前は死ぬ。本当に使いたいなら、担い手と共に振るえ】と。故に、ナイアはもしもの時にはと胸を抑えていたのである。

 

【本来ならば、それは我等邪神の封印全てを吸収する兵器ではあるが・・・これから戦うであろう相手の為にチューンしておいた。英雄姫の宝具とは真逆。【異なる歴史を伐採切除する剣】としての効果を持たせている】

 

そのロストベルトがあまりにも救いの無い場合。あまりにも磐石に過ぎた場合。それらが根付く歴史ごと・・・紡がれた紋様ごと断ち切り、薙ぎ払い、打ち砕く無慈悲の刃。断罪にして究極の歴史の終焉、最悪の対界宝具。【無価値なものを終わらせる】という悪辣にして傲慢極まる・・・そして、【邪神が世界を滅ぼした】という、楽園の財に、娘に余計な業を背負わせぬ為のおぞましき祝福を、戦い抜いた楽園の皆に礼として託したのだと、ニャルラトホテプは告げたのだ。

 

【その効果は折り紙つきだ。試しに目の前の歴史を伐採してみろ。【おぞましいだけの深淵の歴史

】をな】

 

『無茶を言うな、邪神!妾と九郎、デモンベインが揃ってようやく振るえたこの剣を、生身でなど・・・!』

 

【いいや、出来る。この結末に至った者達ならな。そうだろう?リッカ。君なら解る筈だ】

 

ニャルの問いに、リッカは頷いた。人類悪としての無限の魔力。そしてアル、ウルトラマンゼロという神と光の巨人の力。リッカと契約したナイアの負担を受け止められるに相応しき力と資格。そして、ヒロインXXという『聖剣と聖槍の担い手』が存在することによる正しき力の行使。──初めから、ニャルラトホテプが夢見て望んでいた結末とは、『誰も欠けず七日を戦い抜く』という条件のみ。誰かが倒れても不完全であり、誰かが欠ければこの力は振るえない。この輝きと光こそが、邪神の楽園の財達への祝福と感嘆の祈りそのものなのだ

 

【さぁ、引導を渡せ。邪神と狂気、深淵と蒙昧を貪る者共に告げてやれ。『此処は、私達の星だ』とな。──最後の仕上げは、頑張りに頑張った君達にしかできない。■の作った作劇に、最高のエンドマークをくれてやれ】

 

邪神は笑った。心から、愉快で愉しげで。自分の願いと望みは残らず果たされたと言葉なく告げる『貌』だった

 

「お義父さん・・・」

 

【よく文句を言わずに頑張ってくれた。娘をよろしく頼むよ。君になら、彼女とその力を託せる】

 

リッカへ、彼は託した。人類の未来を、愛娘の未来と幸福を。

 

「・・・娘への愛は、本物だったみたいですね。少なくとも、その一点だけは認めます」

 

【らしくないと笑うか?おかしいだろうな。だが・・・人間に肩入れし、深く愛するバグまみれな神をこそ、人は邪神と呼ぶのさ】

 

彼は皮肉った。多彩な顔、根底に情を基準とする己の在り方・・・邪神たる自分の生き方を

 

「お父さん・・・私は・・・」

 

【もうお前は、闇の狩人じゃない。何処へ出しても誇らしき英雄王の財だ。輝くといい、光射す世界の中で。王を唸らせる程に価値を魅せてやるがいい】

 

彼は祝福した。娘の門出を、新たな夜明けを。それは共に過ごすうち、真に芽生えた感情を。それもまた良しと捉えていた・・・

 

 

・・・──笑わずに聞けよ、ナイア。お前を拾ったのは気紛れだが、たまごっち感覚で育てたお前を通じて人間の懐く、愛というルーチンが解った気がする。

 

嘲笑い、貶し、嗤って楽しむのもいいが・・・日に日に大きくなるお前の姿や、自分の教えた事をものにしていくお前を眺めるのも面白い。

 

これをきっと、親心と言うのだろうな。甘ったるくて、座りが悪いが・・・

 

──好ましい。貴重な体験をありがとう、我が愛娘よ。

 

 

「お父さん!・・・今まで、本当にありがとうございました!そして・・・乱暴な事ばかり言って、ごめんなさい・・・!」

 

【フッ、反抗期は誰にでもあるものだ。気にしていないさ。・・・さぁ──】

 

そっと、三人の背中を押し、闇から光へと送り出した邪神の・・・

 

【──いってらっしゃい。善き人生を】

 

最後の、祝福の言葉であった。




アル『──行くぞ!リッカ!妾が招かれた意味、汝に力を貸した意義!此処で果たす!』

三人がセイレムの崖へと立ち、手を合わせる。ロマンより授かった、特注の令呪が輝き、その最終必滅兵器を呼び覚ます力となる。

『妾に続け!起動と発動の祈りを、共に放つのだ!』

アル・・・デモンベインの力とリンクし、リッカは告げる。それは、考えずとも浮かび、示される言葉であった。

『──荒ぶる螺旋に刻まれた、神々の原罪の果ての地で。我等は今、聖約を果たす──』

その言葉と共に、総ての闇を切り裂く光が溢れだし、奔流のように叩き込まれる。セイレムのやみを飲み込み、増していく耀き。その光は、最後の勝利の鍵となって力をもたらす。



ゼロ『リッカか!?この、光は・・・!』

変化はたちどころに現れた。ゼロビヨンドカプセルと繋がったゼロにその光が流れ込み、かつての奇跡の再演を果たす

シャイニングウルトラマンゼロ『───セァッ・・・!!』

ゼロを光輝の姿、シャイニングウルトラマンゼロに覚醒させ・・・

ミラルーツ{あら・・・思い切りやれと、言うことかしら?}

彼女をより強く、より神代に近付けた姿・・・{雷槌}を振るうに相応しき姿に変え・・・

シャイニングゴジラ『ゴギャァアァアァアァアァアァアァアオ!!!』

光を取り込み、黄金のゴジラへと進化させる。そして同時に、邪神の力が、能力が弱まり霧散していく。邪神を封印する光に、触れたが為に。

ガタノゾーア『・・・・・・───■■■・・・』

ゼロ『終わらせるぞ・・・同時攻撃だ!』

{えぇ。退屈なんて──させないわよ?}

ゴジラ『ギャアァアァアァアァアァオォアァアァアァアァア!!!』

シャイニングワイドショット、雷の裁き、そして膨大な輝きを叩きつける光輝熱線を重ね合わせた必殺にして勝利の一撃。それらを弱体化したガタノゾーアが堪えられる筈もなく。

『~~~~■■■■■■・・・・・・』

成す術なく、跡形もなく消え去り爆散する。これで、残るは邪神が封印されしルルイエ神殿のみとなる。──そして、歴史に幕が降りる。

ナイア「・・・その切実なる命の叫びを胸に!祝福の華に誓って!」

ナイアが、邪神の愛娘が最後の認証を行い扉を開く。邪神が獲得した奇跡と運命が、最後の結末を導く。

「我等は──世界を!紡ぐものなり・・・!──決めてください!XX!!」

ヒロインXX「任されました!やっぱりfateのグランドヒロインは、アルトリアです!!」

その言葉に応え、左手を掲げる。右手のロンゴミニアドに光が宿り、同時に左手に、光の粒子が集い束ねられる。

「今こそ、必殺の!!シャイニング!トラペゾミニアド──!!」

邪神の力たるシャイニングトラペゾヘドロン、そして秩序の力たるロンゴミニアドの力を、卓越した魔力コントロールにて操り、今邪神達の歴史を切り裂く──!!

「カリバーーーーッッッッッッッ!!!!!」

ルルイエに叩き込まれた光の螺旋と斬撃ら、ルルイエとそれに連なる混沌の全てを別次元へと追放、切除されていく。封印されし邪神に、成す術は何も遺されていなかった。

クトゥルフ【■■■■■!?!?!?!?!?!?】

ニャル【せっかくお膳立てしてやったのに敗れるとは。人間達の土壇場の強さを嘗めすぎたようだな】

【■■■■■───!!!!】

邪神は憤慨した。お前は言った筈だ、今度こそ、正しい歴史の到来の瞬間が訪れると・・・

【───ははははははははっ。そういえばそんな事を言っていたな。だがもう少しよく考えてみろ】

【!?】

【──正しき歴史とは言ったが。『我等の歴史』だなどと言った覚えは無いぞ?】

【───!!!!!】

クトゥルフは激怒し、冒涜的な言葉を放つ。が、真なる最低最悪の愉快犯はクトゥルフに呪いを刻んだ。金星の邪神に押し付けられていた、離別の呪いだ。

【もうこれで、お前は二度とこの世界には来れん。王と姫が紡ぐ叙事詩に、我等のような染みはもう不要だ】

【!!!!!!!!】

【ありがとう、封印されし道化の邪神よ。──新たな星の覇者を夢見るお前の妄言は、最高に滑稽だったぞ】

【─────!!!!!!!】

激怒に身を捩る間も無く、邪神の封印は光となり、冒涜的な全てを覆い尽くし──

【・・・元気に、楽園の皆様と仲良くやるんだぞ。ナイア】

世界に混沌をもたらした罰として・・・ニャルラトホテプは、愛すべき星へと永遠の別離を告げた。

ナイア「・・・──お父、さん・・・」

──光の道へと歩んだ愛娘へ、偽りなき祝福を遺して。・・・そして、八日目の夜明けを告げる陽が昇る──

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