人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ニャル【どうやら、終わったようです。お付き合いに、誠に感謝を】

──ニャルさま・・・

(ニャルくん・・・君・・・消えるのか・・・?)

【ま、悪役がおとがめなしと言う訳にもいきません。罰はきっちりと受けて初めて未来が来る。邪神だからこそ、そこは律儀にですよ】

ギル《フッ。諸事情から我等は傍観するのみではあったが・・・。よくぞ、我等楽園にしか越えられぬ試練を用意した。その手腕、実に見事であったぞ》

ニャル【勿体無い御言葉。このような形でしか関われぬ悲しき邪神の性ではありますが・・・充実した、素晴らしき時間でした】

──あなた様に託された二つの至宝、必ずや王は大切にしてくださいます!だから、心配することなく・・・!

【──・・・】

──どうか、また御逢いしましょう!愛を知り、王の旅路を素晴らしいと言ってくださった、あなたにワタシはまた逢いたいのです!

【──尊い・・・】

(だろう!?まだまだ語りたいんだ。永遠の別れなんて連れないこと言うなよな!)

【あぁ。──それでは!誇らしき叙事詩に祝福を!さらば!愉快なる王よ、姫よ!部員達よ!──あ、王よ】

《ん?》

【多分次にイシュタル来ますんでwww覚悟の準備をしておいてくださいwww】

《──別離の呪いを使ったのはやはりそういうことか貴様ァアーーー───!!!》


エピローグ・朝焼け

「おめでとう、楽園の諸君。そして、ラヴィニアに導かれし者達よ。──本当に、よくやってくれた」

 

登る朝日、そして晴れる闇。静かな朝日が大地を包む中・・・時空の旅人たるランドルフ・カーターが心より作戦の終了を、セイレムの無事を祝福した。七日の戦いを終え、邪神を退け。今度こそ本当に、最後の夜明けを迎えたのである。

 

『終わった、ようじゃな。かの邪神が、本格的に暗躍すると聞いたときには随分と慌てたものだが・・・』

 

「うん。・・・きっと、御父さんは満足してくれたと思う。私は、そう思う」

 

自分にとって大切な宝を二つ託し、邪神と神殿もろとも消え去ったナイアの父に想いを馳せる。・・・実の処、かの邪神が望めば今回の特異点はいくらでも残酷に、悪辣にできた。娘の意志を奪い襲撃させる事も、村人達の心証を操る事も、そもそもエイボンの書や銀の鍵すらも渡さず、作らせることもさせなかっただろう。

 

「・・・私達の旅路のファン、って。心から思ってくれてたんだね」

 

悪辣にして小賢しき手段を可能な限り排し、ダイナミックな手段にて立ちふさがり真っ向勝負を選んだ。そして、真っ直ぐな愛と絆が勝利する脚本を手掛けた。その意味は、きっと答えだ。

 

「きっと、お父さんは頭がプレシャスになっていたんだと思います。苦悶と絶望より、仲間達と朝日に笑い合う愛と希望の物語を望み、愛した」

 

だから、この結末を望んでいたのは、ニャル自身なのだろう。そう信じて・・・リッカはナイアを抱きしめた。

 

「素敵なお父さんだったね。ナイア」

 

「・・・はい。傍迷惑ではありましたが・・・お父さんが私にくれた愛は本物だと信じています。・・・そう、信じられます・・・」

 

だから、きっと必ず会いに行く。真意を伝えた父に、また必ず会うために。だからこれは、悲しみや嘆きじゃない。決意と安堵の涙だと信じて。ナイアはリッカに抱かれ、そっと嗚咽を漏らし続けた。

 

「・・・この勝利は、我々のみでは不可能だった。朝日と共に、去るであろう勇者達を見送ろう」

 

「はい、カーターさん・・・」

 

そっと顔を上げたナイアに、もう涙は見られなかった。決意を決めた狩人として、自分自身を律しているが故に。リッカと頷き合い、夜明けと共に去り行く大切な協力者達を見送らんと、一同は駆け出す──

 

 

『よく頑張ったな、リッカ。駆けつけた甲斐があったぜ。俺の渡した力、大事にしろよ?』

 

崖の側に立つ、ウルトラマンゼロ。胸のカラータイマーが鳴っている事から、壮絶な戦いであったのは想像に難くない。ガタノゾーアが健在であったなら、おそらくセイレムは無事では済まずに滅んでいただろう。功労者として、彼の貢献は凄まじいものである。労いを忘れては罰当たりと言うものだ。

 

「ありがとう、ゼロ!来てくれて嬉しかった!」

 

『へへっ・・・まぁXXの頼みもあったし、カルデアの皆も心配だったしな。本当ならウルトラ兄弟の誰かが来る予定だったんだが、たまらず駆けつけたってとこだ。恩を着せるつもりはないから安心してくれよ』

 

「ウルトラマン・・・ゼロ・・・」

 

『宇宙の邪神、ニャルラトホテプの娘さんか。・・・一つだけ、言わせてくれ』

 

どんな形であれ、父が偉大で特殊である存在にゼロは覚えがある。今更ではあるが・・・彼は彼なりのエールを贈る。

 

『生まれが決められた自分の物語だとして、それを受け止め、自分の歴史をどうしていくのかは自分自身だ。──あんたの生まれは、きっと誇れるものだと俺は思う。あんたの父が託した力が、俺達に勝利をくれた』

 

「はい。私は、あの方の娘で良かったと・・・心から思っています。偉大で、邪悪で・・・だからこそ、私を自分の望むままに愛してくれた自慢の父だと」

 

『あぁ。──リッカも、寂しくなったら俺をお兄ちゃんって呼んでもいいぜ?金時にぃみたいな感じでな』

 

「ありがと、ゼロにぃ!また、必ず会おうね!」

 

『へへっ・・・じゃ、またな!XXによろしく言っといてくれ!──シュアッチ!!』

 

メッセージを残し、そして飛び去るウルトラマンゼロ。託したビヨンドカプセルは、きっと絆の証なのだろう。長い歴史の中で、カルデアは光の巨人とも絆を結んだ。王の召喚の挑戦は、決して無駄では無かったのである。

 

「ありがとー!ウルトラマーン!!楽園もいつか、光の国に行くからねー!!」

 

ナイアとリッカが手を振る中、それを見届けたが如くに朝日に向かって歩んでいく巨体。──ゴジラは言葉無く、邪神の撃退を完遂し海の彼方へと帰っていく。彼にとっては、敵の敵が味方だっただけなのかもしれない。──だが、それでも。

 

「ありがとうございました、怪獣の王!邪神とも真っ向勝負が出来たその勇姿・・・忘れません!」

 

「ありがとう!ゴジラ!人類の味方じゃないかもだけど・・・!私達は、あなたに救われたよーっ!」

 

感謝の気持ちは変わらない。心から、その気持ちを伝える。余計な御世話だとしても・・・、

 

『───、・・・・・・』

 

「・・・?あれ!?」

 

ふと、ゴジラが立ち止まり振り返りじっと見つめている。水平線と朝日が重なり、神々しく輝くゴジラの姿が映え・・・──そこで、リッカは素早く意図を察し自らのスマホにて写真を撮影した。最高に雄々しく、美しく、神々しいゴジラのワンショットだ。

 

・・・人類は宿敵であり、自然の一部。敵対することもあらば、一人一人を憎む事は無い。これはきっと、ゴジラなりの友好の証。

 

『───アンギャアァアァアァアァオォオォオォア!!』

 

その咆哮は、きっと憎しみではない。──戦い抜いた仲間に送る、激励と労りの勝鬨なのだと、リッカとナイアは受け取った。海に沈み行くゴジラを、一同はいつまでも見送り続け──

 

【──よくぞ戦った。平成を駆け抜けし生命達よ】

 

後ろから響き渡る威厳そのものな声に、リッカは慌てて膝をつき面を伏した。其処にいたのは平成の時代の化身にして王、オーマジオウその人であったからだ。

 

【年甲斐もなく、重き腰を上げた甲斐があった。弱きを助け強きを挫く・・・礼を言うぞ。仮面ライダーの、ヒーローの在り方を思い出させてくれた事を】

 

オーマジオウは、何処かの時代にて自らの継承が終わる未来を知っている。新しき時代の到来を確信しているのだ。此処にいるのは、王でありながら隠居生活を見据えているという、穏やかな老人でもあるが故に苛烈さは見られない。

 

【一つ聞きたい。──平成の時代は、どうであった?生きるに値する時代であったか?】

 

平成の時代。今この時代にて、もうすぐ新たな時代を迎える時代。その到来の前に、もう対話が叶わなくなっていた民に訪ねたかった。オーマジオウの問いに、リッカは答えた。即座に、迷い無く。

 

「はい!私、平成に生まれることが出来て良かった!平成ライダー、大好きです!もちろん・・・オーマおじいちゃんも!」

 

【・・・そうか。──そうか・・・】

 

それを聞いたオーマジオウは、静かに俯いた。王にとって最上の喜び。オーマジオウとして君臨して以来ただの一度も見ることが無かった孤独の王に与えられた最大の報奨・・・民の笑顔に、感じ入ったが為だ。

 

【ならば、平成の民よ。お前達に一つ教えよう。これから来る、時代の名だ。私が待ち望んだ、未来の名だ】

 

オーマジオウは消えていく。だが、心配は無用だった。力の証たるウォッチは、縁と共に託してある。これは、別れではない。時計の針は元に戻るが、確かに未来へと進んでいくのだ。

 

【──令和。これから来るべき時代の名だ。私は祈っているぞ。平成を愛したお前達が、かの時代を祝福と共に迎える事を】

 

「お、オーマジオウ様!私も、平成らいだーなるものを見てみたいのですが!おすすめはあるでしょうか!」

 

ナイアの言葉に、オーマジオウは穏やかに返す。

 

【友とならば、どんな物語も素晴らしきもの。強いて言うならば・・・ダブルか、龍騎を勧めよう。どちらも、平成の歴史の転換点だ】

 

祝え。永遠に生き続けるライダー達の歴史を。未来へ進む未来、素晴らしき現在、善き過去の総てを称え・・・オーマジオウ。平成の墓守りは消えていった。

 

──新なる新しき未来は、すぐそこだと。令和の導き手として、民達に希望を託して。

 




白き少女「オーマじぃも感無量みたいね。新しい未来が来ること。それこそが彼が祝うべき最高最善の未来だもの」

ナイア「祖龍さま・・・!」

「いいの、楽にして。威厳は十分におじいちゃんが示してくれたわ。私への感謝は、美味しいパンケーキで結構よ。あ、モロコシや龍殺しの実は止めてね?」

リッカ「モロコシ砲・・・」

「黄昏の女神や、超越せし円環の理にも話がついていたみたい。このセイレムは、発狂した探索者の為の療養特異点にしてほしいそうよ。・・・アフターケアも万全ね、あの邪神」

ナイア「・・・お父さん・・・」

ルー「ふふっ、じゃあ帰りましょう?・・・あ、その前に・・・」

XX「待ちなさいスペースイシュタル!!貴女を放置していては後々ギルの邪魔になります!人類の脅威、此処で裁ち切ります!!」

イシュタル「何よー!!私がいなかったらセイレムは終わってたのよ!?此処は平伏して楽園に招くところでしょーがー!!」

ルー「・・・あれを、なんとかしなくちゃね?」

リッカ「いないと思ったら・・・!」

カーター「船が来るまで、時間がある。最後の滞在を、皆でセイレムで過ごすとしよう。・・・勿論、皆とね」

アビゲイル「ん・・・」

ラヴィ「ん・・・」

ナイア「はい!──皆で!」

誰も欠けない、完全無欠の結末。その得難さを噛みしめ・・・

リッカ「行こっ!ナイア!楽園についたら、色んな場所を教えたげる!」

「お願いします、リッカ様!」

──邪神の娘は、輝くように微笑んだ。


アル『一件落着、か。・・・というか九郎は何をしているのだ・・・?』

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