人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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マルドゥーク内・置換空間ラボ

ロマン「シャイニング・トラペゾヘドロン・・・これさえあれば、ロストベルトをそもそも『無かった事』、つまり汎人類史に組み込む事が出来るかもしれない・・・!」

オルガマリー「ロストベルトには剪定される転換点、可能性が絶たれたポイントが過去にあり、そこから続いた歴史を差す。・・・カルデアのレイシフトでそこに遡り、その原因をトラペゾヘドロンで排除できれば・・・」

ロマン「今回の一件で、ロストベルトを定着させる要素を排除すれば、切除が可能と解った。現代に根付こうとしている行き止まりに、姫様の宝具で道を拓き、同時にロストベルトそのものの要因をトラペゾヘドロンで排除できたなら・・・!」

「そもそも、ロストベルト自体が成立せず。切り拓かれた歴史に未来が示されることで、また繁栄か剪定かの定まらない状態に移行できる・・・?」

「あくまで理論はね。やってみなくちゃ解らないけれど・・・資料と実例はある!研究を重ねればきっとなんとかなるはずだ!見えてきたぞ、ロストベルトの対策が・・・!」

【それは光栄だ。じゃあ・・・ロストベルトのアドバイザーとして、一人職員を雇う気は無いかな?】

オルガマリー「!?」

ロマン「き、君は──!?」


賑やかな宴の中で

「者共、此度の暇をもて余した邪神の遊興、突破大義であった!その健闘と奮闘に免じ、我が酒蔵大解放の栄を与える!我が不在であろうとも、困難に挑み乗り越えるその輝きと意地らしさに我胸いっぱいである!新たな財の獲得を祝し!我等の旅路の更なる快進撃を奉り──乾杯!!

 

「「「「かんぱーい!!!」」」」

 

豪華客船マルドゥーク・・・。人類が手掛けたもの、建築物建造物であるならばなんだろうと再現、変身を可能とするマルドゥークの能力をちょちょいと活かした宙の方舟の大気圏活動版。あらゆる豪華客船の二倍のスペックを持ち空間歪曲とステルスにて超居住性、超隠密性、おまけにカルデアの楽園の空間も置換することにより移動式要塞拠点として使える最高の英雄神の内部、テラス、甲板にて行われるゴージャス☆特異点攻略祝賀会兼新たな財いらっしゃいパーティーが御機嫌王の名の下に行われる。招いたら即座に歓迎、時の観測者も膝を折るであろう祝いっぷりにアビゲイル、ラヴィニア、並びにナイアは目を白黒させるばかりだ。

 

「これが、楽園の、歓待・・・?」

 

「パレードの、何十倍も大きな規模・・・」

 

並べられた豪華絢爛の食事、華やかな英雄達が笑い、歌い、頑張った者達を労う空間にただただ圧倒される二人。そんな彼女らに、魔の手が忍び寄る・・・

 

「あんたたちね?魔女だったり大魔導師だったりする将来有望な闇と邪気を抱えるロリッ娘たちは」

 

「あ、あなたは・・・?」

 

「ほっぺたが落ちる、マジ卍、三ツ星評価。それら全ては私の為にある最高の魔女・・・スイーツ魔女!じゃんぬと呼びなさい!そしてこちらは魔術以外はなんでも出来るおっさん」

 

「ゴルドルフね!?ま、まぁ君達。若い、というか幼い身空で本当によく頑張った。楽園入りするからには歓迎を欠かすわけにはいかないだろう?食べなさい。食べなさいよこのカリッカリのベーコン&パンケーキを!カルボナーラもあるからね、おかわりも構わん!」

 

お近づきの印と早く馴染めるようにまずは食から近付く。結託したスイーツの魔女(笑)と魔術以外はなんでも出来るおっさんの心遣いにて、ふわっふわのパンケーキにカリッカリのジューシーベーコン。とろっとろのカルボナーラをお出しされたアビゲイルとラヴィニアはごくりと喉を鳴らす。お祭りでしか食べられないようなキラキラの食べ物が、ジャブがわりにお出しされたからだ。おそるおそる食べてみると・・・

 

「あぁ、神様・・・!」

 

「こ、これが神の恵み・・・そうなの・・・?」

 

一口口に運べば美しき多幸感。口に広がるアツアツとふわふわの歓待。それまさに天上の料理に二人は涙すら溢す。今まで食べてきたものはなんだったのか・・・最高の職人(一人レーサー)が最高の食材と共に作られた料理を口にし、舌鼓がフルコンボを刻む二人。そんな様子を見て、ガッツポーズを取る二人。まだまだ美味しいものがあるからと勧めようとした瞬間・・・

 

「はい、お姉ちゃんですよ!ラヴィニアちゃんもアビゲイルちゃんも、よく頑張りました!お姉ちゃんとして私は嬉しいです!」

 

姉なるものが現れた。親愛MAXなハグを二人にかます姉なるものの抱擁を二人は受け取り、なんだかよくわからない姉の愛を受け取った。ボーイの格好のジークがすまないと言いつつ、概念的なものだと受け取ってほしいとジェスチャーを送る。

 

「姉のように慕ってほしいとの彼女なりの気遣いであって、血縁上の繋がりはなく」

 

「お姉ちゃんの自慢の妹と弟です!スイーツは美味しかったですか?後でお姉ちゃんと楽園を回りましょうね!」

 

「リッカ!気をつけて、姉を名乗る不審者が現れたわ!!」

 

「なんで空想をなんの揺るぎもなく真実と口に出来るのこの聖女?そもそも聖女なの?」

 

「聖女です!頭にフワッと浮いた啓示をビビっと受け取って、がーっと夜襲と奇襲で敵を蹴散らした聖女です!」

 

「あぁそっか、サイコパスだったね君って!」

 

「おぉおセイレムの聖女よ!!愛と絆たる輝かしき概念にて狂気を退けたお二方!!神は・・・神はあなたがたを愛しておられたぁッ!!」

 

「誰!?」

 

「イ、インスマスの系譜かしら?目が飛び出て・・・」

 

「こうやって引っ込めます!えいっ!」

 

「ファーーーーーー!!!!!!」

 

「あ!じゃんぬ店長がまた世話焼き姉ちゃんムーヴしてんぜ!皆ー!スイーツじゃんぬよろしくなー!」

 

「言いふらさないで!?こういうのは然り気無くやるものなの!子供に気を遣わせちゃ悪いでしょ!?」

 

「先生、私は思うのです。リッカが女ヘラクレスだとするなら、私は男藤丸リッカ・・・つまり、人類最後のマスター(♂)ではないだろうかって」

 

「はい、突然何を言っているのでしょうかヘラクレス。あなたが仮に藤丸立香だとして、力の無い一般人という設定にどう足掻いても無理が生じるでしょう」

 

「問題なのは・・・手を握ってくださいと言われた時にマシュの手を握り潰さないようにするのと、私の身体に見合う制服があるのかという懸念でしょう」

 

「大分疲れているようですね、ヘラクレス」

 

「同じふぉおりなぁが二人も増えた!めでたきゃおこわの赤まんま!是非是非二人サン、絵映えするぬらぬらな触手絡みで夏のふぇすのMVPを」

 

「ガウ」

 

「はいっごめんなさいの五体投地!ぜ、全年齢にするから許してほしいサアマテラスさま・・・」

 

「ワフ」

 

「えぇえ将門様に談判!?かかか、勘弁してくれよアマテラスさま!かの神様の怒りは買っちゃならねぇのは日本人の常識さぁ──!?」

 

なんやかんやの大騒ぎで、アビゲイルとラヴィニアをノータイムで迎え入れるカルデアの財達。二人はその騒がしさに圧倒されつつも、自分達が招かれた場所の楽しさに顔を見合せ笑い合う。

 

「そうそう、それよ!楽園にいるなら、心からの笑顔の浮かべ方は忘れないようにね。俯いてたらスゴいわよ?皆心配してくるんだから」

 

「あ、ありがとう。じゃんぬさん。・・・優しいのね!とっても!」

 

「真っ先に声をかけてくださり、ありがとうございます。おじさんも・・・」

 

「フン、所長代理としてメンタルケアは当然だろう。フォーリナーは余りにも情報に乏しいクラス、洗いざらい1日一時間教えてもらうから覚悟してなさいよ!」

 

「「はいっ!」」

 

そんなやり取りを、楽園のマスター達が微笑ましげに見つめている。古きも新しきも、英雄も人類の脅威も変わらず受け入れる楽園の度量と、人間性という多様さについて所感を漏らす。

 

「・・・こういうところ、本当凄いよな。魔術師の観点が馬鹿馬鹿しくなるよ」

 

「人間って不思議よね。同種で殺し合ったりする癖に他者を労る慈愛が備わってるのだもの」

 

「ふふっ。心は多様だもの。作り物にだって心が宿るくらい、人間の可能性は解らないことだらけなのよ?」

 

「マスター組ー!こっち来て食べよーよー!寿司があるよ!ウニもー!」

 

「大トロと中トロとサーモンと海老とアナゴとブリとはまちを予約します。ガリは譲ります」

 

「・・・感傷に浸ってる場合じゃない。とりあえず・・・僕達の寿司の取り分を取り返そう!」

 

「後輩ッ!私の軍艦を死守しなさいッ!」

 

そんなこんなで、歓迎の歓待は続く。一芸にて盛り上げるもの、手品やサーカスを行うもの、聖杯が無いか訪ねるもの。ダンベル何キロ持てる?と聞く聖女・・・様々な形にて、勝利と新規の参入を祝う。

 

「美しい・・・まさにあなたは闇の中煌めくトラペゾ・・・なんとか。今日は、貴方だけの騎士に立候補させていただいても?」

 

「感謝します!えっと、お名前は・・・私は、ナイアと申します」

 

「ナイア・・・なんとふわっと柔らかな名、私は円卓最強にして無敵の騎士。女性の味方、ランスロ・・・」

 

「御覧ください、ガレスさん。あちらが楽園の恥さらしことまずはナンパに勤しむ我が忌まわしき父擬きにしてランスロオルタです」

 

「ランスロット様・・・」

 

「おおっと私急用を思い出してしまいました!!すみません、甘き二人の時間は、またいずれ・・・ではっ!!」

 

「は、はぁ・・・?」

 

「■■■■・・・」

 

「?これは・・・楽園の、3Dマッピングとナビアプリのスマートフォン・・・?ランスロットメーカー最新型?楽園来訪祝いに無料プレゼント&保険・・・?」

 

「■■■■(ぐっ)」

 

「こちらが!!楽園の最高の騎士にして私のお父さん!ランスロット卿ですっ!!

 

「あ、ありがとうございます!マシュ様のお父様でしたか!御丁寧に・・・!」

 

「ぎゃはははははははは!!バーサーカーの方がよっぽど騎士様じゃねーかおもしれー!!」

 

「モードレット!だから口調は改めなさいって言ってるでしょー!」

 

「明日は晴れます」

「私は嬉しい(ポロロォオン)」

 

「卿ら、個性で殴り付けるのは止めよ」

 

「アッ君、言っても無駄です。私達円卓は個性の殴り合い集団ですから。ですからこのようにスイッチオンして諌めましょう」

 

「エクストリームベディカッターは死者が出かねんだろう・・・」

 

「退きなさい円卓の有象無象騎士!ナイアは私のフレンド!私が最初におもてなしするのです!カップラーメンで!!」

 

「流石は王、庶民的ですな」

 

(王称賛bot・・・!?)

 

それぞれがそれぞれの喧騒に熱狂する中、件の英雄王は友と姫、そして獣と共に甲板の玉座にて優雅に・・・

 

《エア!なんとかしてイシュタルの良いところをプレゼンせよ!部員間でも真っ二つに意見が割れ我も殺すべきか捨て置くべきか割と悩みに悩んでいる!お前が背中を押せばワンチャン血迷い容認でき・・・でき・・・前向きに対処するやもしれん!!》

 

──はい!えっと、憑依した方の素晴らしさのお陰で何かをやらかしても必ず失敗する華麗極まるオチ要員として最適解・・・!

 

「殺しても胸が痛まない。エレシュキガルがいれば大丈夫。存在自体が面白い」

 

(バストが話にならないね。おまけにそれを補う貞淑さも無いと来た。でも、イシュタリンとしてのアイツはまぁ・・・)

 

『王よ、決断の時です。私見を述べさせてもらえば、年貢の納め時かと。頼みの離別の呪いも消え去った事ですし。おもしろ・・・いえ、縁を越え更なる成長の時かと』

 

《面白いと!面白いと口にしたなシドゥリ!流石我が放浪の旅の帰還祝いに横っ面に拳を叩き込んだ女よ!えぇい、物事の好き嫌いと我が所感と仕事は関係無いと告げたのは我だったか・・・ッ!いや、待て!まだ諦めるな!何か、何か妙案よ閃け我ファイトシンキング──・・・!!》

 

『・・・マルドゥーク。イシュタルは招かれると思いますか?』

 

『(´・д・`)』

 

甲板で、頭を捻る、ウルク王。イシュタルを招く方面で、なお納得できない自分を姫や友、獣と共に大騒ぎしながら酒を飲む王でしたとさ──




ナイア「・・・・・・」

(此処が、楽園。父がいつも言っていた、王と人類の最後の希望・・・)



【今は暗くて苦しいかもだが、お前には必ず光ある世界を歩ませてやる。プロット書き上げるまで待っていてな】



「・・・あなたは、招かれるつもりはなく。私だけを此処に・・・」

(・・・一言も交わせなくなってから、真意を悟らせて。本当に意地悪で、質の悪い邪神ですよ。あなたは・・・)

「・・・・・・馬鹿・・・誰よりも楽園に来たかったのは、きっと・・・」

?【バカとはなんだバカとは。親にはせめて、ばーかとか可愛らしく言うものだぞ】

「その無駄な拘りはいったい・・・──、・・・!?」

其処にいたのは・・・カルデアの黒い制服に身を包んだ、褐色の男。見間違える弾もない・・・

「──お父さん・・・!?」

【よう。やっぱり曇ってたか。まったく、身体だけエロくなっても情緒はまだ少女だな】

「あ、あなたは封印され、別離したのでは・・・!?」

【まぁな。別離の呪いを代表格たるクトゥルフの名前に押し付け、邪神を纏めて切り離した。神化格は封印されたとも】

「なら、どうして・・・?」

【神格を置いてきたんだよ。邪神としてじゃなく、一人の人間としてこうやってカルデアに招かれた。これテストと会員証な。カルデア職員、ニャルとして働く事にしたわけだ】

「メチャクチャなのでは!?」

【それくらいの無茶は通すだろう。例え無力になり、神の力を喪ったとしても・・・娘を見守ることは出来る。暗い顔をしている娘を元気付けるのに、神の力なんていらないしな】

「・・・そんな理由で・・・邪神の力を・・・?」

【そんな、じゃない。簡単な話だ。邪神としての名誉と、お前。私はどっちを選ぶと思う?】

「──・・・ッ・・・~・・・っっ・・・」

【そういう事だ。泣くな泣くな、図体は大きいんだから、罪悪感ヤバイだろ。ほら、顔を上げろ】

リッカの声「おーい!」

XX「ナイアー!まずは湯麺からですよー!」

【見守っててやるから、笑顔で生きろ。お前を育てた報酬、笑顔の人生を私に捧げてもらおうか】

「・・・──はい!二人とも、聞いてください!私のお父さんが・・・!」

【フッ。──結局のところ、最後に勝つのは愛と絆。いい結末だったな。いいや・・・】

(この物語は、ずっと続くのだろう。王と、姫と・・・物語を愛するものが、いる限り)

【──ははははははははははははっ!!最高だ!面白き物語をありがとう!願わくば・・・──!】


【──この奇跡が、変わらず続きますように!】

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