?「失礼、通ってもよろしいですね?」
「──そなたが脚を運ぶ意味。理解はしていような?」
「勿論。真打ちは、遅れてやって来るというものです──!」
「さて、いよいよ本題なセイバー召喚に挑む訳だが・・・粗方オカルトは試した。次なる験担ぎは何にするが最良であろうか・・・」
ふむ、と考案し玉座に座る御機嫌王。初手にて験担ぎを行う辺り割と結果は見据えている感はあるのだが、それはそれで愉快なので問題ないと割り切る王である。宴は皆で楽しむもの。それが身銭を切り自爆する苦難の行であればこそ、愉快に笑い飛ばせる儀にせねば立ち行かないのだ。主に王の胃が。
──そうですね。此処で一度、セイバーさんに理解を深め再認識し、予習と魅力を再確認というのはどうでしょう?
エアの提案に膝を叩く王。自ら意見を提出するその積極性の獲得に見定める者としての感慨を得ながら、ならばと王は天啓を得たのであった。
「ならば復習しかあるまい!よくよく考えればシリーズ絡みで長く戦ってきた我らだ、原点など今や馴染み深いものではあるまい!我も同じく、ここらで再学習と行こう!愉快な!」
「というと、何をするんだい?もしかしてセイバープレゼンでもするのかい?」
ロマンの問いに、パチンと指を鳴らす事で応える。波紋が開き取り出されたるは懐かしきハードPS2。そしてBlu-rayBOX。そこに置かれしディスクとは、fate作品全ての始まり・・・
「体験会、兼!観賞会に決まっていようが!第四次聖杯戦争、第五次聖杯戦争を映像、ゲームとして纏めたものを用意した。プレイし鑑賞し貴様らにはセイバーのグランドヒロインぶりを体感、いや痛感してもらおうではないか!」
要するにただのゲームして作品見るというエンジョイ企画であった。セイバーがパッケージを飾るゲームソフトを、興味津々でリッカやマシュが手に取りオルガマリーがモニターを用意する。
「フェイト、ステイナイト・・・!あ、これはセイバーがヒロインとして大活躍しちゃうやつだね!理解した!」
「こちらは第四次聖杯戦争・・・以前挑んだ記録とは異なるものなのでしょうか?」
「当たり前のように別世界から取り寄せてくるのは王ならではね。私も興味があるわ。楽園が介入しない事象がどんなものか、をね」
乗り気な職員達がいそいそと鑑賞とプレイの準備を行う。なんだなんだ面白そうだぞいつも面白いけど。みたいなノリで大抵はどんな事だって挑んじゃうのが楽園クオリティなのだ。
「書く神と紡ぐ神も大層未熟ではあったが、代わりに情熱と意気に満ちていたまさに荒野を駆ける少年の軌跡がごとき作品よ。我の乖離剣も、当時は小難しくなくただ強い剣であったな・・・(しみじみ)」
──アーチャーの王の作品!話には聞いておりましたが、実際に目にする日が来るなんて・・・!しましょう!プレイしましょうギル!
(攻めた事するなぁ。ま、ゴージャスとアーチャーは別人だっていうサーヴァントシステムの設定はいいよね!)
《そういう事だ。今更我の醜態の一や二を見せたところで砕ける柔な威厳と絆は持ち合わせておらぬ!見るがいいエア!慢心王と謳われ語り継がれる我の勇姿をな!》
──はい!ギル!堪能致します!それでは皆で、レッツプレイ!
そうしてfateの歴史に触れる、セイバー&英雄王の原点を知る『やれば出る』オカルトの挑戦が始まった。以下はその、プレイの記録である──
ステイナイトプレイ組
「彼がえみやしろう、だっけ?主人公で、セイバーとしてのアルトリアと契約するんだよね」
「あ、土蔵で初邂逅なんですね。先輩と私もそうでしたが、運命に場所は関係無いのです!」
「その雑種のモノローグはスキップで構わん。どうでもいい事には長々と駄弁するがプレイヤーの知りたい情報には踏み入らぬ駄主人公であるからな。それと断っておくが・・・」
「ヘラクレスから逃げたら死んだー!?」
「何故!?どう考えても撤退が定石でしょう!?」
「そやつの選択肢に意味は無いと把握しておけ。アヴァロンの不死性を打ち消して死ぬ上に最善の選択肢はほぼ道場行き故な」
(詳しいなオマエ・・・)
《当然だ。歯軋りしながら完全クリアしたのだからな》
──あ!イシュタル様とエミヤさんです!
《・・・時代の流れは早い。よもやこやつらの名が別の認識、そして顔を見るだけで明かされる日が来ようとはな・・・》
「兄貴だ!あ、槍が当たってない!」
「不馴れなマスターを庇い獅子奮迅する・・・!流石は騎士王です!・・・操られてマスターを殺しにやって来ました・・・」
「え?断食やカニでも使える必殺剣を選んだら即デッドなの?シビアね・・・」
ちなみにプレイする際は、超高速の時間制御宝具を使用しているため端から見れば驚異的なスピードである。セイバールートだけでも大ボリューム。紡ぐ神が書いたストーリーの厚さは電話帳クラスだったという。そしてこちらは、第四次聖杯戦争の記録を鑑賞しているチームである。
「んー、気持ちは解るけど会話をしてくれないって困るんだよね・・・いやまぁ最初からマスター狙いだしいいのかな?」
【割とZeroは勢いとノリと作画で見る所ある。セイバーと互角なディルムッドとか割と憤飯ものだしな】
「征服王イスカンダル・・・世界で一番友達いっぱいな王様ですね。私もいつか、友達いっぱい固有結界を使ってみたいものです」
「私気になるんだけど。Zeroに至る物語って事は未来は決まっている訳で。・・・誰も幸せにならないんじゃない・・・?ゴッフ不幸の臭いには敏感だからね?」
そうしてプレイし、鑑賞していく事数時間。兄貴だったり最強農民だったり別にアレを倒しても構わなかったり、死んだり死んだり死んだり慢心だったりするステイナイト。やることなすことバッドエンドに行ったりウェイイスコンビに癒されたりバーサーカーがバーサーカーだったりケイネスが切嗣のサンドバッグだったり退場が惜しまれたりする中、セイバーの活躍も著しい。突進突進また突進。罠にはまったり初見で不覚を取ったり酒に酔ったデタラメ論破おじさんに王道揺るがされたり金ぴかストーカーに求婚されたり鞘を見つけたり自分の望みの聖杯を自分の手で叩き壊させられたり
『やめろぉおぉおぉお!!』
『ごめんなさい・・・私が・・・私なんかが・・・』
【流石ウロブチ容赦が無い】
「ほらやっぱり!全裸になったギルガメッシュとウェイバーくらいしか幸せじゃないじゃないかね!?」
「聖杯の泥・・・リッカ様が振るわれている泥でございますね。いえ、今は似て非なるでしょうか」
『ではなセイバー。──いや、中々に楽しかったぞ?』
──ぐすっ、ひぐっ・・・えぐっ・・・カッコいいですギル・・・
《そう泣くな、エア。お前といる我は、お前に一粒の涙も流させぬ。安心せよ。そら、ハンカチで涙を拭え》
(ここまではカッコいいくせに次からのルートは崖落ちレベルでネタになるよなぁ・・・)
《ふはは、そういうな。我等の旅路で理解していよう。慢心せねば話にならぬのだ。そのままの意味でな》
『シロウ。あなたを愛している』
「あぁあぁ・・・あぁあぁあぁあぁあぁあぁ!!」
「先輩!私の胸で存分にお泣きください!」
「じゃんぬぅうぅうぅう!!離れるのやだぁあぁあぁ!!」
「先輩!?」
「効いたわね、早めのアヴァロン・・・とりあえず選択肢なんてなかったのよ。セイバーと最後の時間を過ごしたら死んだなんてなかったのよ・・・」
そうして一先ずプレイと鑑賞を終えた一同。思い思いの鑑賞を得ながら、召喚の作業に移る。
「どうであった?セイバーはまさに地上の星であろう?」
「ゴージャスがゴージャスで本当に良かったなって・・・名前聞いたら殺してくるとか怖すぎっすよムニエル的に」
「再召喚なんて絶対ダメね。割とゴージャス敗北が人類の終わり説あるわよねこれ・・・」
「やっぱりサーヴァントと仲良くする楽園カルデア方式は、間違いなんかじゃ無かった──」
「うんうん、僕らの他にも、沢山の物語がある。僕らの物語もグランドフィナーレと言える結末を迎えたいものだね・・・ん?」
所感を告げていると、突如サークルが回り出す。金色の、輝かしき光が即座に周りを満たし始めた。その予感に、ギルが身を乗り出す。
「来たか!ついに来たか!やはり懐古と振り返りは大事であったか!とうとう来たのだなセイバー!」
「おや、もしかして、もしかすると・・・!?」
「触媒になったのかしら・・・!」
固唾を飲み、見守る一同。やがて光が収まり、其処には・・・待ちに待ち詫びた、金髪碧眼の──
「遅かった!遅すぎたが総て許す!参戦、大義であ──」
「こんにちは!アーチャー・アルトリア!楽園に来るに相応しき装いでやって来ました!笑顔のアルトリアを、宜しくお願いします!」
「ガ────!!!?」
ニアピンの極み、アーチャーのセイバーという意味不明な事態に・・・いつものように王は、膝を折るのであった──
NG召喚・ウォズ
「楽園の方々、初めまして。我が魔王の忠実な家臣、ウォズともうします。・・・そちらの王が傷心中な為、短縮版にて」
リッカ「えっ、何々?なにす「祝え!!」
「ふぁ!?」
「人類悪に貶められながらも、奇跡の出逢いと自らの宿命に屈せず人理を取り戻せし最高のマスター!その名も藤丸龍華!その輝かしき魂を!」
リッカ「お、ぉお・・・えへへ・・・」
「祝え!勇気を奮い立たせ、マスターに寄り添いその心を護り続けた儚くも強き雪華の少女!その名もマシュ・キリエライト!その自我と人生、比類なき勇気を!」
マシュ「あ、ありがとうございます!・・・お祝い・・・嬉しいですね!」
「祝え!オルガマリー・アニムスフィアにロマニ・アーキマン!」
オルガマリー「わ、私も?」
ロマン「僕もかい?何を祝ってくれるのかなぁ!」
「──あなたたち二人が、こうして此処にいるという比類なき事実を。こちら、御祝いの時計となっております。この時計が、これからも二人の未来を刻み続ける事を」
オルガマリー「あ、ありがとうございます・・・。──此処にいる、か・・・」
ロマン「まぁ、ギルや姫様がいない自分はきっと・・・だからね・・・」
ウォズ「今日は此処まで。また、王が起ちし時にお逢いしましょう。それでは・・・」
ゴルドルフ「まだ祝辞あるのかね!?」
「──祝え!この物語を支え、新しき未来へと進める筆を決して絶やさぬ至高の読者!叙事詩を読み進めし──部員達の一万を越える輝きを!・・・どうかこの先も、変わらぬ御愛顧を宜しくお願い致します」
『ウォズ、一時退場』
ゴルドルフ「・・・私は!?」
NG召喚 円環の理
ニャル【?手紙か】
『永続的狂気に陥った人達の治療は順調です。そちらは大丈夫でしょうか。悪巧みは程ほどになさってください』
【フン、余計な御世話だとも。・・・ん?】
『もしかしたら、そちらに遊びに行くかもしれません。その時は、リッカちゃんに宜しくお願い致します』
【・・・試練に挑む人間だからか?神様に大人気じゃないか。なぁ、リッカ君?】
水銀の蛇『我が女神に仕事を押し付けすぎないように。責任は全うしなさい』
【・・・次に託す為に奮戦したヤツは重みが違うな・・・】
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