ナイア「なんですか急に」
【いや、私があくせく働く理由だよ。訳も分からず侵略を完了して敗北し、抵抗戦で曇るのは今の私の趣味じゃない。そう、頭プレシャスの今の私のな】
「それは解りますが・・・つまり?」
【全面対決の方が何倍も楽しいだろう。奪われた未来を取り返す戦いもいいが、やはり自らの未来を懸けた全面戦争こそこの楽園が掲げるべき大義名分であってほしいのさ。リッカ君はもう充分に曇った、曇りすぎた。彼女の戦いは、姫の愉悦は、出来るだけ輝かしく合ってほしいのだよ。だからこうして、『何もできない』という芽を潰していくのさ】
「それは、楽園の皆様と交流しているのも同じようにですか?」
【いや、単にサーヴァントの皆様にお前を宜しくと挨拶回りした時に仲良くなっただけ】
「・・・・・・(照)」
【さぁて、次は・・・ん?】
「何か?お父さん?」
【いやな、観測になんか動いてる災厄があってな?解析してみるか。・・・あぁ、これアレだ。彷徨海】
「彷徨海?」
【アトラス院って知ってる?それに関係ある、神代研究機関だよ──多分な?】
「・・・アバウトすぎるのでは?」
【だって間違ってたら警察怖いし・・・】
「この度は、我が妻が大いに世話になった。楽園の者達の暖かさに感謝を捧げたい」
「あ、はい。ほら、皆もレクリエーション感覚でやってて楽しそうだし、いいんじゃないかな?」
ぐっちゃんを巡る愉快な催しの傍らで、彼女を案じ見守り、菓子折りを捧げる静かな巨木がごとき影が一つ。何処の縁であるのやら、人とはかけ離れた凄まじさ巨体にてロマンに皆に宛てた菓子を献上するは、誰あろうぐっちゃんの夫項羽である。彼女を気に掛けてくれるもの、それらも等しく好ましい対象であるのだ。
先のマスター能力の致命的な欠陥、逆レジェンドぶりは職員達をドン引き・・・否、戦慄させた。評価不能という点ではリッカとすら並ぶというやらかしっぷりに、このままにしておくのはまずいと更に更に団結力が増す結果となったのは嬉しい誤算、皮肉と言う他ない。
具体的な取り組みと言えば、まずぐっちゃんの自爆癖を直すためにマスターの在り方と足並みを揃える教材、その他各地のマスターの戦闘記録をぐっちゃん宛に製作し、具体的な手本や立ち回りとして教えた上でタイプを定めさせた。その上で、『自爆の前にサーヴァントと二人がかりで殴れ』『サポートサーヴァントにありったけの支援を貰おう』『自爆しません進退窮まるまでは』等といった当たり前かつ基本的なムーブを示したのである。ぐっちゃんも渋々ながらそれらを真面目に受講し、まず自爆していいか(?)声をかける事を覚えたのである。今更である。
それだけでは不安なので、特注の礼装もプレゼント。バイタルサインを把握し、それらを下回らぬ内に自爆しようとした場合ガンドを利用した行動制限をかける。体がビリっとなりそして更に耳元にとある音声が流れる素敵仕様となっている。
『虞や、虞や、汝を如何せん』
項羽様生アフレコによる辞世の句を流すことによりぐっちゃんのマルマイン思想をストップさせる妙案。彼女の死は、言うなれば爆発四散は夫を深く哀しませる事になりましょう。それでもよろしいか?という実体験の再現にぐっちゃんは涙ながらに膝を折った。
座学も欠かさず受講させる。エルメロイ先生手ずから作ったカリキュラムをオルガマリーと共に(?)レクチャー。「嫌よ小学生みたいじゃない居残り勉強なんて!」とゴネるぐっちゃんを腹パンで説得し基本的な立ち位置と戦術において大切な存在としての認識を新たに強く意識させた。弱い癖に前に出て足手まといとなり続ける者や、目も当てられぬ外道行為をし続けたり自分が気に入らないからと会話を打ち切ったりする例、何より他人の触媒を盗み自分の優秀さを思い知らせるなんてバカ極まるマスターを最底辺の愚か者と紹介する辺り、彼女がどれだけ改革を要するかの重要性を把握してもらえたらと思う。リッカと評価で並ぶということは、そういう事なのである。場にいるだけで勝利、ないし敗北を確定させるもの。それが評価不能ランクの意味なのだ。凄まじい。
「で、でも。結局倒せるなら悪い手段じゃなくない?私は何度でも復活できるわけだし」
そんな捨て鉢な思考を改善するためにマスター一同はゲーム大会を行いました。プレイするのは勿論プレイヤーの性格と人格を破壊しスキルに狂化Aランクを付与させるガンダムゲームガンダムVSシリーズ。ぐっちゃんの為にリッカが選択したのはツィマッド社が作り上げた流星のごときモビルスーツ、ヅダ。このヅダなんとチャージ攻撃でだれかさんの様に自爆特攻が可能なのだ。一人が皆に負担をかけても勝てばいいなんて思考を実際にシミュレートしたリッカが一試合六回自爆し強制的に敗北へと導く。ぐっちゃんがどれだけ頑張って戦っていても、である。
「相方ッッッ!!」
「大変でしょ?自爆のフォロー・・・」
ぐっちゃんがやっていたことを返した結果猛烈にブチキレるぐっちゃん。ここに至ってようやく自分の戦法がどれだけあかん事なのかを深く受け止め、自省することを静かに誓ったのでした。うん、勝てばいいってものじゃないのね・・・と十連敗を喫した辺りで完全に悟ったようである。因みに二対二の立ち回りの教材として優秀なゲームでもあるので、結局そのままプレイし通しでしたとさ。スマブラやっている世界観から、ようやく抜け出せたといっていい。
そんなこんななリハビリと意識改革も相まって、ちまちまとぐっちゃんの姿勢は改善してきている。あまりにも目も当てられないおバカっぷりから、『単純に指揮がヘタクソ』のレベルまで落とし込めたのは快挙と言っていいだろう。蘭、えんまちゃんの辛抱強い協力により、今日もぐっちゃんはシミュレーションに明け暮れている。
「我が妻は孤高で在りすぎたが故に臆病であった。不死なる身にて何者からも迫害され、人そのものを憎み、社会そのものを恨み、恐れていた。それが今では、あれほどまでに自由と触れ合いを謳歌している・・・」
我、嬉しき。そう告げ静かに見守りし項羽。永き時を経て、彼の思慮と想いは確かに報われたのだと確信を持つ。我が妻よ、そのまま多くの笑顔に包まれてあれ。遥かな未来にて見出だしたこの安住の地で。そなたを見ているものもまた、数多の笑顔に彩られている。色んな意味で。
「いやいや、元はと言えばマリスビリーが見出だしたカルデア職員だからね。楽園に来てから馴染めなくなりましたなんて辛いだろう?僕らは見てみぬフリはしないと決めているからね。誰かが困っているなら、手を貸すのはそんなに仰々しい事じゃあ無いのさ」
「──かの王は、そなたらを財と呼ぶ。成る程、それは敵よりも恐ろしき『無能な味方』を排するという意味合いでもあったのだな」
互いが互いを完全に信じられる。不信と欺瞞を心に懐く人間社会でそれを実現せしめる事の何と難しき事か。かの王は知っていたのだ。人類、星を護る戦いにて懸念すべきは、それらに挑む者達の心であると。
「感服した。それではこちらを受け取っていただきたい。我が妻の受講料に育成料、500万QPである」
「あぁこれは御丁寧に・・・ってこれ桁が違いすぎないかな!?奨学金一括払いって中々できないよ!?」
「我が妻を愛した楽園の者たちと分け合ってほしい。それでは、私はこれにて失礼する」
「いやいや待ってほしい!別にお金が欲しくてやってる訳じゃないからいいとおもうんだけどなぁ──!?」
こういう限度と相場を知らない辺り、やっぱり項羽さんもポンコツ風味があったりするのでは?あらゆる意味でお似合い夫婦なんじゃないかな?
後にそう冗談混じりにてオルガマリーや職員達に話すロマンに、微笑ましげな視線が向けられる。誕生してから年齢一桁の三十路が語りおる、と。ムニエルはそこら辺でせっせとランドセルを作っていた。
「リッカ!私とシミュレーションに付き合いなさい!今度こそあんたに、先輩として完全勝利してやるわ!」
「おー、大きく出たね?楽園の皆に成し遂げさせてもらったとはいえ、世界を救った実績アリなマスターにマウント取るのは早いと教えてあげるわ!」
苦難と忍耐の育成で、変わったことはもう一つ。楽園のマスター、特にリッカとぐっちゃんの距離と気安さが、ぐぐっと近くなった事である。
楽園はいつだって完璧にして磐石。どんな苦難だって、痛快無比に楽しみながら蹴散らし乗り越えるだろう。
「そういえばギル、ぐっちゃんのマスターとしての腕前を認可していたのは何故なんだい?」
「決まっていよう、面白いからだ!!」
──ぐっちゃんさんが、いつか水にぷかぷか浮きませんように・・・
そう。王と姫が世界を楽しむ限り。人類史が行き止まりに到達することは決して有り得ない──
ぐっちゃん「くっ、今日も負けたわ・・・やっぱりリッカの強さは半端じゃないわね。恐ろしい経験と実力が私を襲ったわ・・・」
(でも、自爆はしなくても意外とやれるのね私。ふふっ、こちとら虞美人よ?やれば出来るのは当然じゃない?じゃないかしら?)
「このままいけば楽園最強マスターの道も夢じゃな・・・ん?手紙?」
兄貴『リッカがモテない?良く言った。屋上へ行こうぜ。嬢ちゃん推しの猛犬がプレゼンしてやっからよ』
スナフキンオルタ『言動には気を付ける事だ』
黒ひげ『んー、拙者哀しいでござる。人妻に先立たれるより未亡人の方が好みでござるよ』
カッコいい王『決闘だ!表出ろコラァ!』
ぐっちゃん「───(あんぐり)」
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項羽「妻よ、それは自業自得と言うのだ。言葉の刃の鋭さを忘れていたそなたの落ち度である」
「そ、そこをなんとか・・・!」
このあと夫婦で滅茶苦茶謝罪した。それを知ったリッカが真っ赤になってベッドで足をパタパタした。
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