人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
自然の力はあまりにも強く、人はあまりにも無力。ただ無事であることを祈ることしかできないのが、歯がゆい気持ちとなります。
そんな中、自分が出来るのは小説を更新し、変わらぬ物語をお届けし、この物語を愛する皆様に健在を示すことと信じております。
どれだけ厄災が阻もうと、王と姫の旅路は潰えない!その事実が、細やかながら皆様の心の不安を打ち倒す助力になると信じて!
どうか、皆様の心と人生を彩る娯楽で、この物語が在り続けられますように。どうぞ、毎日更新することしか出来ない雑種の『書きたいもの』な物語をお楽しみください!
小説で解るFGO~序章~
綺羅星のごときマスター達の輝きを紹介してきたが、研鑽を積んできたのは決してマスターだけではない。決して見せはしなくとも、昨日の自分、今日の自分よりも前に進もうとしている者は確かに存在しているのだ。
「うん、こんな所かな。マシュ、お疲れさま」
「は、はい・・・!ありがとう、ごさいました・・・!」
睡眠時間三十分前の21時30分。『毎日』の日課である全方位防御訓練シミュレーションを終えたマシュが床へ倒れ伏す。もはや魔力も枯渇寸前な程に疲弊している状態に対し、涼やかにしてケロッとしているたおやかな緑の人、エルキドゥがにこやかにタオルを差し出す。そう、彼女の秘密の特訓の相手に選ばれたが為に、自らの研磨も兼ねて徹底的に特訓を行っているのである。
「あ、ありがとうございます。王は疲弊しているので、エルキドゥさんの全方位攻撃は大変理想的なシチュエーションです・・・!」
そう、マシュはエルキドゥの持つ多種多様な変容能力を借り、自らの腕前と反応能力を高め、あらゆる状況に対応する為の訓練を毎日みっちり行っているのだ。三次元全ての空間から襲い来る神々の兵器を、自らの判断のみで受け止め、後ろにあるマシュ手作り製のリッカ人形を守り抜くという訓練だ。最新武装、オルテナウスのフル武装を使い、極限まで高めた防御能力を自らのものとするため、毎日欠かすことなく、誰にも内緒の訓練をずっと繰り返している。エルキドゥも入念に口を固く、マシュのスパーリングパートナーを請け負っているのだ。
「初めの頃から見違えるくらいに反応が良くなったね。リッカに傷の一つもついていない。君は良く、マスターを護れていると思うよ」
エルキドゥは御世辞を言わない。それは心からの称賛だった。数多無数の兵器を振るいながら、ターゲットを傷つけられていない。それは即ち、マシュの防御が磐石であることを雄弁に示していた。殺意と敵意を抜いた攻撃が故の手緩さは考慮しないとはいえ、これは素晴らしき功績と言っていいだろう。
「大抵の害は排除できる筈だよ。もう十分以上に君は頑張っている。まだ上を目指すのかい?」
「はい!私の目標は、あの未熟だった頃から変わっていません!先輩を完全に守護し、守り、そしていつか・・・ギルガメッシュ王の宝具を防ぐ事が目標です!その為には、まだまだ歩みは止められません!」
ギルガメッシュ王の一撃、即ち乖離剣の最大出力、『天地乖離す開闢の星』。王の至高にして無二の一撃を受けきり、防ぐことこそが楽園におけるマシュの変わらぬ目標であり指針。世界そのものを切り裂く一撃から先輩を守り抜けたなら、それは即ちこの世の全てからマスターを護りきれると言うことの何よりの証左であるとマシュは信じているのだ。だからこそ、もっと上へ、もっと堅固に。いつか届くと信じて、真っ直ぐに手を伸ばし続ける。それこそが自分の戦いだと、マシュは真っ直ぐに懐き続けているのだ。
「───あぁ。それは、なんて素晴らしい目標だろうね」
一瞬、言葉を失い目を白黒させた後、エルキドゥは心からの想いを言葉にし笑みを浮かべた。自らの有する至宝、覇者のみに赦されると豪語する友の輝きを仰ぎ、目指し、そして手を伸ばすことを赦していること。それだけで、彼がどれだけ素晴らしき心持ちで、期待を寄せているかが手に取るように解ったからだ。正確には、改めて解ったが正しいのかもしれない。
(ありがとう、エア。君がいてくれたお陰だよ。比類なき英雄王でありながら、その在り方を僕が停止した後のものにしてくれている。君が宿ったが故に)
成長した彼の姿を見れないのは、少なからず寂しくまた哀しく思っていたから。誰よりも孤高な彼が、笑い、楽しみ、痛快な日々を過ごしている事実が何よりも救いとなる。孤高であった彼の矜持に、傷をつけた自分の、遥かなる過ちを。・・・かつていなかった無二の宝が傍に有る限り、最早彼の笑顔は絶える事は無いのだろう。
「エルキドゥさん?もしもーし、大丈夫でしょうか?」
「・・・あ。ごめんね。少し考え事をしていたんだ。そして、願いを新たに浮かべたよ」
どうか、この輝かしきあの日々の続きが長く続きますように。この世界がいつまでも、愉しみに満ちたものであることを。いつか庭巡りに飽きた王が、傍らの姫の敬いと愛に応えるままに星を飛び出すその日まで。そして、彼の楽園を彩る財宝が、決して曇ることがないように。
「ん。テンション上がってきた。マシュ、もう何セットか行こうじゃないか。もう少しやれるよね?ね?」
「えっ、今からですか!?も、もう就寝時間が迫っています!首切り徘徊バニーが出現する時間帯です!素早く部屋に戻らないと・・・!」
「大丈夫大丈夫。僕は逃げ切るから。それに彼女は死の線を視てそれを切り裂く事で『殺す』みたいじゃないか。面白いよね、マシュなら防げると僕は信じたいな」
「極めて希望的観測が入っているような!?」
振り返れば、静かに穏やかに思考を巡らせている時間がとても多い。兵器としてではなく、友として彼を想ったり、まだ一歳な姫に色んな昔話を聴かせたり、フォウの毛並みを整えたり。それをリラックスというのなら、ここを居心地良く感じているのは人間の皆だけでは無いらしい。兵器として、或いは・・・ウルクの民が接してくれた『人』として。自分はこの場所が好きなようだ。
「流石に虹色の瞳だからってくり貫いちゃまずいよね。イシュタルにあげるのも勿体無い。よーし、じゃあ後三十分僕も全力全開で行こうかな。マシュ、堪えきってね?」
「ままま、待ってください!王と対等なエルキドゥさんの全力は今の私ではとても・・・!?」
「ネバー・セイ・ネバー。略してネバネバ。出来ないと言わないでやってみれば何とかなるものさ。さぁマシュ、──受け止めておくれ・・・!」
「これがウルクの切れた斧・・・!こ、困りますエルキドゥさん!困ります!こ、こまっ、あーっ!あーっ──!!」
・・・その後、興が乗りまくったエルキドゥの大盤振る舞いモードを余すことなく堪能したマシュはデミ・サーヴァントモードすら保てない程に疲弊しきり、その凄まじい反応からエルキドゥのやらかしが王にバレ、呆れ交じりの厳重注意をいただく事となり・・・
『私は加減や自重を知りません。取り扱いに注意されたし』
「うわぁ、これ知ってる。日本の学校の『廊下に立ってなさい』だよね?石板を持たされるのかぁ。本格的だなぁ」
「・・・お前、ひょっとしたらこの場所で一番ヤバくて危なっかしい奴なんじゃないか?」
「フォウ、キュウ、フォウ!(同じエア推しとして、君のそのアクティブモンスターぶりは頼もしいけどね!これからもエアを護っていこう!)」
「わざわざ付き合ってくれてありがとう、フォウ」
(うわぁ~)
式の見張りにて廊下に立たされるエルキドゥ。重い自縛の石板を持たされながらフォウをさするその表情は、鼻唄交じりのとても爽やかなものでしたとさ。彼の喜びは、決して尽きる事は無い。これからも予測不能なウルクのヤベーやつとして、その名を轟かせていくだろう。
ただ、その日の夜にスピーカーを通して流れた絶世の歌声は安眠を促すと共に、『突然部屋のオーディオから美しすぎる声が聴こえてきた』と怪談のような広まり方をしたとかなんとか。それを広めたのは・・・
「おはようから御休みまで、あなたのサポートお任せ。ウルクチェーン・エルキドゥがお送りいたしました♪」
・・・未だに誰かは、解っていない(事になっている)、楽園の不思議な一幕でしたとさ。
マシュ自室
マシュ「は、ハードです。いえルナティックでした・・・まさか目の前が兵器で見えなくなる体験は初めてでした・・・」
(でも、自分にぐぐっと自信がついてきたのを感じます!先輩の剣となる方は数多あれど、盾となり最高の後輩であるのはただ一人!この、マシュ・キリエライトです!)
「・・・」
『各特異点で撮った写真』
「・・・これからも先輩が、いっぱい笑って。素敵な毎日を送れますように。私のイキりっぷりを見て、愉快な気持ちになってくれますように」
(大好きです、先輩。どうかこれからも、あなたの傍にいさせてください。一番じゃなくてもいい、あなただけの後輩でいられたなら、私は・・・満足で──)
「・・・むにゃぁ。おやふみなひゃい・・・」
バタッ
「ぐぅ・・・・・・」
~
【・・・・・・なすび、私のではない天然無農薬栽培なすび・・・】
『・・・だ、誰ですか・・・?その声は、先輩・・・?』
【私は先輩であって先輩ではない。ただ私はあなたのカルデアとフレンドになりたい人類最後のマスター・・・】
『やっぱり、先輩では!?』
【いいから聞きなさい、なすび。・・・楽園の、楽園の私に危機が迫っている。このままでは、あなたの
『アカウント!?』
【藤丸龍華はリッカガチャのSSRに選ばれた。それを狙おうとI・K・リツカがやってくる。夢の中でそれを助けられるのは、あなただけだよ、なすび】
『わ、私が・・・先輩を・・・!?』
【楽園アカウントを売買させてはならない。藤丸リッカを便利なフォロワーにさせてはならない。頼んだよ、マシュ。あなたがいるという事実を武器に、あなたを失ったリツカに打ち克って──】
『せ、先輩!?先輩なのですか!?先輩!先輩──!?』
そうして舞台は、マシュの意識は突然の、楽園の存亡をかけた夢の中へ──