人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
――・・・
「――ふん。部員どもが好き勝手抜かしおって。・・・だがよかろう。まだセイバーはおらぬ。予行演習がてら、あの何かの間違いで実験するか」
――それがよろしいかと、英雄王
「歓喜である!!」
剣が振るわれる。僅かに動き回避する
「恭悦である!!」
剣が振るわれる。僅かに退き回避する
「君という圧制者の存在に感謝を――!」
剣が、振るわれる――!
「黄金なりし圧制者――!!さぁ――」
剣が振り上げられ、振るわれる!
「我が愛を、受け取りたまえ――!!!」
――何故そこで愛――!?
「フン。これではネロめも苦戦しような。此方の手駒が復讐者崩れに肉達磨・・・いや反逆達磨では話にならぬわ」
呆れと溜め息を露に器が呟く
「愛、愛、愛!!圧制者の頂点に位置するものよ、王の中の王よ!!さぁ、我が歓喜と躍動を君に――!!」
「ギル!!」
「あっちゃー・・・もしかしてあのお兄さん、すごい有名な王様だったりする?」
「は、はい!彼は英雄王ギルガメッシュ!人類最古の王です!」
「あ、ダメだこりゃ。スパルタクスが刃向かわないわけないよねそりゃあ」
『納得してないで止めなくちゃ!仲間割れなんて笑えない、共倒れでもしたらローマは御破算だ!』
「だよね!ギル!援護を――」
「いらぬ」
刃と気迫を流しながら、それだけを伝える
「この狂犬に近寄らずともよい。万が一に噛み殺されては事だ」
――そうだ。彼の意識はこちらに向いている。わざわざ火中の栗を拾わなくてもいい
マシュとリッカの頑張りどころはここではない。余計な労力をかけてほしくない
「でも、ヤバイ感じだよ!?大丈夫!?」
「ハッ、我が危機を感じるは泥のみよ。昔も今もな。そこでワインでも飲んでおけ」
――相手は幸いバーサーカー。理のある戦術はとる気配がない。ただ全身全霊でぶつかってくるのみだ
――正直笑顔で向かってきて怖いのだが、やりようはある――!
「圧制者よ!我が勢力をみよ!傲慢は潰え、慢心は倒れ、世界は平等なる鬨の声が木霊せし闘技場!」
剣が振り下ろされる度に大地が震え大気が裂ける。力任せゆえの絶対なる一撃
直撃すれば砕かれる――!気を入れ直して財の選別に入る!
「我を頂点と定めたのはよい眼の付け所だ。この霊基の我はまぎれもなき暴君、未熟な幼年期たる具現ではないからな」
「然り!我が眼、我が愛は欺けぬ!砕けよ、潰えよ!我が愛に抱かれ眠るがいい――!!」
大地を砕く一刀。最低限の動きでかわしていく
財を選別。ノーマルな剣、槍、戟を装填
砲口設定。辺りの被害を考慮し、五門
――設定完了。後は放ち、返り討ちにするのみ
「はははははははは!!我が愛、圧制者に捧げよう――!!」
「――」
放つ――瞬間――とある疑問が魂をよぎる
ここで誅を下すべきなのか?
「ちょ、ギル!?」
武器を展開しない自分を見て、マスターが声をあげる
「危ない――!!」
「スパルタクス!待ちなさい――!!」
王であるならば間違いなく誅を下すだろう。間違いなく王ならばそうするだろう
だが――その決断は魂と器を備えた英雄王の決断であり、自らが選びとるべき決断ではない。そんな予感がよぎったのだ
彼は、正統なりしローマにて戦っている英雄。こちらを見て剣を向けてきただけで『人理にあだなす者』ではないのだ
言わば、人理を正すための刃。フランスで戦った皆と同じ、肩を並べる同胞なのだ。怖いけど
今は正しきローマは劣勢。ありとあらゆる手段を使い逆転しなければならない。無論、彼もだ
フランスでそうしたように――全ての力を結集しなければ、時代を取り戻すことは叶わない
何より――王が下すであろう裁定を、異なる魂たる自分が我が物顔で行うのは筋が通らない。それでは、器の強さにはしゃぎ思考放棄し、王の身体を操り、威光を汚す狼藉者に過ぎない。
王が下す決断であるならば、自分が介入する必要がない。ならば自分はこの器に不要になるだろう
――それでは意味がないのだ。この旅は、自らを研鑽する旅でもある
王の威光にすがるばかりでは、自分が転生した意味がない――!
ならば、この場を切り抜けるに必要なのは武器に非ず
必要なのは――!
「圧制者ァアァアァアァア!!!」
剣が、振り下ろされる――!!
「いやぁあぁあぁあ!!」
「英雄王――!!」
「――何故だ、圧制者」
――すんでのところで、剣は止められていた
「何故我が身を害せぬ。何故武器を取らぬ。丸腰の存在を手にかける汚名を着せるか、圧制者」
武器は出さない。何も迎撃はしない
ただ、器と魂のみで向かい合う
「手をかけぬ、だと?当然であろう。貴様はまだ、我に手をかけられるに値せぬからだ」
「ぬ?」
「貴様が口にしたのであろうが。『我は圧制者の頂点』とな。そうとも。我は貴様らを虐げ、害し、君臨する暴君、その頂点である」
「ならば」
「順序が違おうが、バカめ。我を頂点としておきながら、世界に『我以外の圧制者』を残し我に挑むとは見当違いも甚だしい」
「――――」
固まるスパルタクス
そうだ。あなたにとってこちらが受け入れられないのは仕方無い
だが、自分達が戦うのは今じゃない。正しき歴史、正しきローマを害する『圧制者』はたくさんいる
今は力を合わせて、その圧制者を打倒するべきなのだ。その剣をこちらに向けるのは、その後にしてほしい
「我の首が欲しくば資格を示せ。貴様が我が手にかかるに相応しき『反逆者』と認めさせてみよ。――この時代に関わる全ての圧制者を蹴散らしてな」
「ぬぅ・・・」
「その責を以て、我に反逆を行う無礼を許す。――剣を下ろせ。その刃を向けるは、まだ我では無かろうが、肉達磨め」
――どうか、伝わってほしい
あなたは反逆の英雄だという
ならば――紛れもなく、滅びという圧制に歯向かう英雄であるのだから
「――道理」
剣が、下ろされる
「それも道理。君は頂点である圧制者。闘技場の最奥にて待つ最も位高き王」
「うむ」
「であれば、挑戦には数多の試練を乗り越えなければならない。人を、獅子を、刃を乗り越え、証をつかまなければ」
「であろう。我の視界に三流は赦さぬ」
「――君の想いは受け取った、黄金なりし圧制者よ。ならば私は、この世界に蠢く圧制者を蹴散らし証をたてた後、君の前にまた立つとしよう。――楽しみにしていたまえ。その時の私の躍動せし歓喜、打ち震える悦びは、愛となって――」
「うむ」
「――君を、抱擁するだろう。その瞬間を信じ、私は愛を溜め込もう!!君に、捧げる愛を!!」
「バカめ!我を愛する事ができるは我が認めた者のみだ!精々無益な自慰を続けるのだな!!」
「うむ、うむ。君に、感謝を!!我が生涯最高の圧制者よ!!」
「はははははははははは!!」
「ふははははははははは!!」
「――う、そ。スパルタクスが、王様を見て刃を下ろす、なんて」
愕然とするブーディカ
「よがっだぁあぁ!ぎるがぶじだぁあぁあ!!」
「先輩、顔が大変なことになってます!」
『す、すごすぎる・・・うそだろ?あの王様、武器も使わずスパルタクスを納得させたっていうのか・・・!?どんなカリスマだい!?』
『――なんと・・・惚れ惚れする輝きよ・・・』
――王の力強い言霊で、スパルタクスを説き伏せる事に成功した
スパルタクスは『面白い奴だ、気に入った。殺すのは最後にしてやる』とこちらを認識したらしい
この時代を修復するまでは、共に戦うことを認めてくれたらしい
――自分はガリアにいる間、ヴィマーナで寝ることにした。とてもじゃないが、あの笑顔を見ながらくつろげる自信がない
――英雄王だからこそ出来た芸当だ。本当にありがとうございます
――しばらく筋肉は見たくありません。
――愛、怖いなぁ・・・
「あいた!?」
「だれですかまったくポイ捨てなんて!ゴミ拾い同盟に言いつけますよ!隕石の追突すら避ける私に当てるなんて逆にすご」
『着任祝儀・差出人、匿名王』
「?」
『宛先。何かの間違いの貴様へ』
「・・・?」
パラ
『ラピスラズリのブレスレット』
『ローマのりんご』
「――――」
『我の視界に入らぬ様に』
「・・・――なんですか。ラスボスからちょっといい感じのゲストキャラにチェンジですか」
「――そんな自分本意だから、見向きもされないんですよ。――英雄王」