人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ニャル【はい、はい。こちらも接触は完了しました、今面接に移ります。恐らく・・・え、改築?御自愛くださいよ、わざわざ出張なさるものでもありません。あくまで第二基地なのですから、此方で勧めさせていただきます。それと、所長にペーパームーン、シャドウ・ボーダー、霊基グラフトランクを此方に転送するようお願いいたします】

シオン(スッゴく報連相を徹底してるのね、あの人・・・)

キャプテン(理不尽や不条理に見えて、自分の決めたルールには徹底的なタイプなんだね。船乗りや海賊は皆あんな感じだよ)


【それでは・・・え?ナイアが心配している?嬉しいなぁ!なんて言っていました!?・・・【無礼千万な狼藉を働かれた相手方】?私ではなく?そんな~。しょんぼり】

(すごくテンション上がったり下がったりしてる!?)

(娘さんかな・・・)

【解りました。ナイアにはいい子にして、楽園の皆と仲良くして健やかに過ごすようにお伝えください。王様もあまり無理はなさらぬように。そちらにはキチンと戻ります。それでは】

((終わった・・・))

【さて、面接始めようか♪】

(軽い!?)

キャプテン(さっきまでの威厳と威圧はどこに・・・)


楽園カルデア

ナイア「ありがとうございます、王様。我が父が大変御迷惑と御手数を・・・」

「構わぬ。奴は楽園を、我等の旅路を汚す真似はすまい。故に出張を許可したのだが・・・なぜ貴様はフル武装なのだ?」

「確信があります。我が父は必ず客人に無礼を働いていると。新しいお友達にお話を聞き、無礼の度合いに応じてシバき倒そうかと」

XX「やはり邪神討伐ですか。いつ制裁します?私も同行します」

「XX院」

──素晴らしきは親子の絆!・・・なの、でしょうか?

《うむ、フォーリナーとは解らぬものよ。あまり考えるな、エア。我も考えぬ》

──はいっ。それでは、マリー達とのおやつ作りの味見役をお願いしてもよろしいでしょうか?

《なんだそれは赦す!我を存分に唸らすがよい!さて、どの様な甘味が我を待つのやら──》


邪神が求める資格

「それで、面接の評価内容とはなんですか?個体としての優秀さを見せつければ、貴方は納得してくださいます?」

 

鼻唄混じりにベースを物色する邪神・・・そう形容するしか無い存在に声を投げ掛けるシオン。面接をするとは言ったものの、それほど入れ込むつもりもないのかさっさとモニターのベース地図を食い入るように見つめながら作業に没頭しているニャルと自称する職員。彼は最早、ここの扱いを定めているようだ。

 

【やっても構わないが、多分時間の無駄だぞ。私は余程の事が無い限り個体を評価などしない。君が魔法使いや悠久を生きる大賢者とかでも無い限り、私にとっては有象無象と変わらんさ】

 

「それはスケールが大きいお話で・・・あ、ちょっと何データブッこ抜いてるんですか!?」

 

【・・・つまらん。こんな程度の未来で絶望に囚われるとは。何が哀しくて悲劇や滅亡を物語で求めねばならん。毛色に合わんな】

 

なんと、彼は独自にアトラス院が見てきた滅亡の未来を一通り閲覧していたのである。多種多様にて滅亡へ繋がる未来の群れに、ニャルは侮蔑混じりに鼻を鳴らした。口と毛色に合わんと吐き捨てながら、空間を引き裂き小さな文庫本のセットを取り出す。

 

【こんな下らん陰気な未来ばかり見ているから悲観的になるんだ。まず第一の条件として、今まで積み重ねてきた観念や常識を全て捨ててもらう。私の秘蔵の文庫本に編纂した、カルデアの旅路を完全に読破してもらうのと同時にな】

 

読み耽り、年季の入った様子でありながら手入れは完璧である数十冊の文庫本には、カルデアの活動の記録が記されているという。まさか、からかっているのかとも思ったが。一冊手に取ったページには、解りやすくも濃縮された物語が認められているのである。

 

【魔術師の下らん観点は捨てることだ。楽園に行くために必要なのは・・・おっと、これはまだ早いな。それは置いといて、次の条件を提示しよう】

 

それらは特に難しいことではなかった。この場所を第二のカルデアとして再編する事。礼装製作、そして装甲車といったものを改造する際には協力する事。技術的な協力要請の契約が書かれた書類が、シオンの前へと提出される。

 

【楽園入りが決まれば君は技術者として重宝されることになるだろう。その時に迷わず力を貸してくれることを約束し、契約書にサインしてくれればソレでいい。簡単な話だろう?あとついでに、私の仕事にも協力してもらえると凄く喜ぶ】

 

「え。あなたカルデア職員なのに技術開発とかも兼任しているんですか?」

 

【別に何かが得意な訳じゃない。出来る内の何かをピックアップして腕を振るうまでの事だ。楽園にもマスターが増えたからな。楽園は基本とあるマスター専用の開発と準備に慣れ親しんでいるから、こちらでサブマスターの開発を受け持ち技術者の負担を減らしてやろうと思ってね】 

 

それだけじゃない。虚数空間の掌握、ペーパームーンのテスト、シャドウ・ボーダーの駆動テスト。楽園が用意する数多無数の磐石の次、次善の策を万全にするための場にしたいのだという。転ばぬ先の杖。使わないならそれでよし程度のものなのだ。

 

「・・・ボーダー?君達、船を持っているのかい?」

 

キャプテンの言葉に、ニャルは静かに頷いた。こちらに邪神改造する為に持ってくるのはスペアのようなものであると。

 

【とびきりのが一つ、小回りが利く奴が一つ。私が弄るのは小回りが利く奴さ。船を進ませる躁舵手として、色々力を貸してもらいたいものだな。キャプテン?】

 

「・・・断る、って言ったら君は何をするか解らない。いいよ、出来る限りの事はやってみせるから」

 

酷い言われようだな、などと宣いながら楽しげな姿勢は崩さないニャル。要するにこれらは、至極真っ当な協力体制の構築でありなんの難解かつ難題なものではないと邪神は告げる。

 

【まぁいいさ。信頼できない、胡散臭い、嘘臭いといった要望や意見はまぁその内慣れてもらう他ない。これから挑むであろう困難は、準備しすぎるという言葉はないものだからね。君達の出来る範囲で協力してくれるならそれでいい。どうやら、協力や友好的には接してくれるようだな。なら・・・一番大事な心の在り方を問い掛けていこうか】

 

そうして邪神は手を止め向き直り、シオンに向け最後の問いを投げ掛けた。それらは実力より、個体差や性能差というものより大切なもの。これの返答次第で合否が決まる、本当の意味で問いであり確認であるとニャルは告げる。

 

【これから先、楽園に籍を置く中で君は様々な不理解や不条理、非常識と出逢う事になるだろう。楽園が挑む戦いは、人類の命運や行く末を決めるものばかりだ】

 

「・・・・・・」

 

【そんな事象に挑む中で、君は信じていられるか?『何もかもを乗り越え、最高の結末を手に入れる』事を。誰もが夢物語だと笑い飛ばし、不可能だと諦める事象に対し、『そんな未来はつまらない』と笑い飛ばせる事が出来るか?──嘘や曖昧な答えは赦さん。深淵に堕ちるか楽園の門を叩くかどうかはこの答えで決まる。心して答えるんだな】

 

誰もが懸命に足掻き、挑む中で。一人であろうと悲観し、絶望し、或いは懐疑的な疑念を懐く様な者は楽園の戦いにいるべきではない。誰もが無理だと諦め、誰もが不可能だと目を逸らすどんな物事ですら楽しみ、挑み、乗り越えてやると奮起する人間こそが楽園に相応しいのだ。

 

「・・・それって要するに、めっっちゃくちゃポジティブでいろ。諦めるな。って事ですよね?」

 

【端的に言えばそうなるな。やれば出来るのがお前達人間だ。ならやらない人間は必要無い。つまらない存在は嫌い・・・でもない、むしろ好きだな。【面白くさせてやりたくなる】】

 

シオンはその言葉を聞いて、決意と共に返答を返す。アトラス院の変人ぷり、嘗めてもらっては困るとの主張だ。

 

「いつだって足掻き、なんとかしようとするのが人間です。絶望の未来を見て、それでも尚なんとかしようと苦しみつつ四苦八苦している連中だらけなのが、私の知るアトラス院の変人達です。そんな中で私は学を修めて来たので・・・」

 

【・・・・・・】

 

「──むしろ望む所ですよ!それってつまり、『数多無数の行き止まりや滅亡に向き合える』って事ですよね!人間の底力が試される絶好の機会に世界を救うプロフェッショナル集団に抜擢され、そんな環境で諦めるとかナイナイ!だって私達はいつだって、見えない明日を形にしながら生きているんですよ?それをワールドスケールでやるだけじゃないですか!」

 

「・・・きっと、七つの海の嵐より遥かに厳しい苦難に挑むんだろう。なら、それを乗り越える事が出来るかどうかの戦いを皆で挑むことが出来るなら、それは拒否する理由が見当たらないと僕は思う」

 

【──・・・・・・】

 

「楽園のえらーい人に伝えて貰えますか?『アトラス院のすごーい技術と、すごーい知識は必ず役に立ちます』ってね!これを逃したら・・・」

 

どやされるのは、貴方ですよ!そういって笑う頭のネジの飛んだ痛快な答えに、ニャルはにんまりと裂けた笑みを手で隠し・・・

 

【──良いだろう。合格だ。私も、見る目のない海のニャルなどと噂されたくはない。君達を、アトラス院を。世界を愉しむ旅路に必要な要素であると認めようじゃないか】

 

面接とはいいながら、答えは半ば分かっていた。そもそも自分がこうやって現れている時点で、不合格になるようなボンクラであるなど有り得ない。

 

ますます楽しくなりそうだ──。更なるカルデアの磐石に胸を踊らせながら、ニャルは二人分の契約書に王より借り受けた合格判子(フォウの肉球スタンプ)を押すのであった──




ニャル【さて、無事に人材確保を行い、楽園カルデア第二支部も手に入れた。こちらはこちらでしか出来ない事を始めるか】

『霊基グラフトランク』

『ペーパームーン』

【楽園カルデアにいるサーヴァント一人一人分の聖杯探索に、万が一の際の不慮の退去の際、記録や記憶がリセットされないための霊基記録に登録。おまけに虚数潜航テストに領域の掌握、追加されていくであろうAチームのマスター達用の礼装製作、シャドウ・ボーダーのテスト・・・】

(今や楽園カルデアの要員全てがリッカ君やエアちゃん、我が娘に欠かせないファクターだ。それらが欠けてしまう事への対処はしておくべきだろう。『やらなくても大丈夫』と『やる発想がない』というのは大分愚かさに差が出るスタンスだ)

【楽園の皆は何かあったりすると皆で一丸になるから、あんまり仕事を見せちゃうと休んで貰えないからな。細かい地味な作業は、こちらで私がコツコツ終わらせるとしよう】

(・・・しかし、悩むな。かつてのAチームの連中、まだ招いていない連中はどちらの方が面白い?)

【『共に戦う』のか、【異星の神とやらの尖兵とさせる】のか。・・・どちらが王と姫の旅を鮮やかに彩る・・・?】

(一応、Aチーム連中を捕捉はしておくか。どちらに転ぶにせよ・・・)

【──蘇生か眠りか。そんな狡い取引など持ちかけるのはフェアじゃないだろう?】

こうして、邪神は二人を楽園へとスカウトし、自分は楽園が取り組むには微妙な些事と楽園そのものを支えるバックアップ業務を遂行する基地デスクを手に入れた。そしてその基地にて始めにやった事は・・・

ニャル【よしよし、ナイアは楽園でも上手くやっているようだ。キチンとコミュニケーションは取れているようでなにより。いやぁ、本当に最高の就職場所が見つかって良かったなぁ・・・】

娘の楽園での記録を、そっと保存する事でありましたとさ。

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