人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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オルガマリー(モニター)『時は来たわ・・・』

『銃を掲げる』

職員「うわぁぁあぁ!!」

「祝福!ロマニ・アーキマンを祝福!」

ムニエル(⌒‐⌒)『皆祝福の使徒だ』

「俺達は、楽園を・・・ロマシバを、祝福する・・・」

「祝福の時は今だ・・・!」

オルガマリー『すべてのラブコメ特有の引き延ばし展開は終わりを迎え、結ばれるべき存在は福音と共に祝福される・・・』

ロマン「皆!どうしちゃったんだい!?正気に戻って!?」

『『『『『『ロマニ・アーキマン・・・祝福!』』』』』』

「うぇえ!?」

『『『『『『シバにゃんはどうしたぁあぁあぁ!!』』』』』』

「う、うわぁあぁあぁぁぁ!!?」

『楽園の輝かしき一ページに、今日という喜びの瞬間が未来永劫刻まれる・・・完全無欠の結末の為の比類なき一幕を始めましょう・・・』

『しまう』

ダ・ヴィンチ(ノリノリだなぁ・・・)



マーリン「ロマニ!こっちだ!」

「マーリン!?どうなっているんだこれ!?」

「皆じれったい展開に我慢できなくなったんだ!君達を祝福する気持ちが溢れているのだよ!」

「どういう事!?」

「話は後だ、リッカ君の部屋にシバにゃんを匿っている!行きなさいロマニ、我等の叙事詩の始まりの場所へ!」

フォウ(プレシャスガーディアン・量産型)『シスベシ!!マーリンシスベシフォウ!!!』

「ここは私に任せて早く・・・!うわぁあぁあぁぁぁーーー!」

「マーリン!!まぁいいか、よし、リッカ君の部屋に逃げるんだ・・・!」

(ギル!君は今何処にいるんだ!?楽園大変な事になってるんだぞぅ!?)



ザビ「結婚式の形式どうしよ」

ギル「ふむ、いっそ総て行うのはどうか?」

「すげぇ」

──楽しみだね!スピーチとか、考えておこうか!フォウ!

(そうだねエア!ウォズを呼ばなくちゃ!)



シバ「ロマン様!こちらです!」

ロマン「シバ!良かった無事で・・・!えぇい!!」

(ダイブだーっ!!)

ムニエル(⌒‐⌒)『探すのだ。祝福の為に』

『『『『『祝福、祝福、祝福・・・総ては楽園祝福netの意思のままに・・・』』』』』


ロマシバ大婚約!総ての絶望へアルス・ノヴァ!!

「はあ、はぁ、はぁ・・・一体どうしちゃったんだ、皆・・・」

 

「御無事ですか?ロマン様。こちらで汗をお拭きください~・・・あ、勿論無料ですよぉ?」

 

突然職員達が目の色を変え、追い立ててくるなか必死に逃げ仰せ、自分を招き導いたシバと共にリッカの部屋へと立て籠る。神代時代の適応を目指して鍛え上げられた職員達から逃げ切るのは容易ではなく、既に一生分の汗を掻いたと言えるくらいにはダッシュしたロマンはシバの隣でへたりこむ。幸い、其処には誰もいない。リッカを支える相部屋入りしたサーヴァント達も出払っているようだ。

 

「ありがとう、シバ。・・・懐かしいなぁ。リッカ君の部屋は、ボクの秘密のサボり場だった。立派になったなぁ・・・」

 

白く、清潔なリビングルームとなったかつてのサボり部屋と、其処に住む少女の事を想い、ロマンは微笑む。一年くらいしか経とうとしていないのに、本当に遥か過去、昔のような感覚を覚える。本当に、始まりは些細で、その旅路は壮大で。本当に・・・楽しく、愉快で。辛かった事など無いくらいな。素敵な思い出ばかりだ。

 

「マスターと最初に出逢った方はロマン様なのですか?それはさぞロマンチックな出逢いがっ!?よろしければ、お聞かせ願いますぅ!」

 

「そんな素晴らしいものじゃないよ?ボクがサボってて、オルガマリーを煽ったリッカちゃんが部屋に来て・・・うん。本当に懐かしいなぁ。そこの扉を開いてね・・・って、うぇえ!?」

 

そこの扉には、何かが書かれていた。キュートなフォウの顔と肉球と共に、『ラブラブ夫婦のみ通るがいい』などと、これ見よがしに書かれている。

 

「マーリンだな!こんな愉快犯はマーリンしかいない!ニャル君も愉快犯だが楽園在住の相手にはしないという確信がある!よし、後で麻婆奢ってやるぞぅ!」

 

「ひわわ・・・夫婦・・・」

 

夫婦、その言葉と共にロマンが硬直する。部屋に二人きり、それもシバと。意識した途端、平気だったシバの表情が見れなくなる。決意した日から、シバを意識してから、どうしても自分が自分らしく振る舞えない。

 

「あ、その、シバ、そのだね。これは、その・・・」

 

愛しています。智恵の覇者、愛多き王。ソロモン王。かつて、熱の灯った吐息と共に、潤んだ瞳と共に数多無数に贈られた言葉。

 

『私も同じだ。私も愛している』

 

そう、何度訪ねられてもそれしか告げなかった。躊躇いも、淀みもしない。流れる水のような美辞麗句を美女達に告げてきた。その言葉に感慨はなかった。ただ、『返してほしい言葉を選んだだけ』。・・・その言葉を、同じようにシバに言えばいいだけなのに。

 

彼女にだけは、彼女にだけはそんな薄っぺらな言葉を吐きたくない。それがどうしてかはまだ解らない。でも、それが偽らない気持ちなんだ。

 

(彼女はサーヴァントだ。かつてのソロモン王との約束を胸にやってきた。・・・そこに、人間となったボクが入る余地なんてあるのかな・・・)

 

サーヴァントは当然、生前の思い残しややり残しを以て英霊となった英雄達の写し身だ。シバは、ボクがソロモンと明かす決意をした時にカルデアへとやってきた。なら、彼女が見ているのはソロモンで・・・ボクじゃなくて・・・

 

(だからって、だからって・・・今さらソロモンとして人間を辞めるなんて出来ない。だって、ボクはボクの人生を生きると願ったんだから)

 

だから、ロマンを捨てられない。ボクはロマニ・アーキマンだ。リッカ君が、マシュが、所長が、──姫様が。あの神殿のその先へボクを導いてくれた。本当なら、あの場所でボクは死ぬはずだったのに。

 

だから、絶対に自分の生命を、人生を捨てたりしない。誰がなんと言おうと、ボクはロマニ・アーキマンなんだから。だが、それだとシバの想いを、ソロモンへの想いを邪魔して横恋慕する事に・・・

 

「──ロマン様」

 

「あぁ、う・・・うぇ!?ど、どうしたんだいシバ!?大丈夫かい!?」

 

シバには幸せになってほしい、邪魔したくない。でも、ボクは献身的に支えてくれたシバに、時を越えて逢いにきてくれた、ただ一人の女性に惹かれているのも事実で・・・そんな思慮に囚われているロマンに、彼女が・・・シバが声をかける

 

「・・・。ロマン様。あなた様の不安はよく解ります。婚姻、婚約。それらは史上の誓いと共に、多くの苦難や困難を迎えるもの」

 

「シバ・・・?」

 

「その困難や苦難に・・・私ごときでは釣り合わないことは重々承知しております。人間としての生命を得たロマン様に、ソロモン王を求めてやってきた私は、邪魔である事も充分に理解しております」

 

・・・何を、何を言っているんだ。シバ、君は何を・・・

 

「一目、そう・・・一目見るだけで良かったのです。ソロモン王が遥かな時代で、どのような姿を、生を選んだのか。──今一度、お側にありたかった。出逢いたかった。それだけで、私は満たされたのです」

 

シバは、ロマンの悩みをそう受け取ったのだ。かつて問いかけをした程度の縁で、ソロモン王の焦がれた自由を、生を私物化しようとしてしまったと。そう彼女は考えたのだ。だから・・・それは、とても烏滸がましい事であるのだと。

 

「申し訳ありませんでした、ロマニ・アーキマン様。・・・私は、それでも私は・・・」

 

「・・・!」

 

でも、だからこそ。其処には損得も利益も無い、一人の人間としての、『心』があって。

 

「貴方が手にした『人生』を・・・心から、祝福している一人でございます。例え、貴方に疎んじられようとも。・・・あなたがどのような姿に、どのようなあなたになろうとも。あなたへの想いは、変わることはありません」

 

だから、報われなくてもいい。あなたが、幸せでいてくれればそれでもいい。そう告げるシバは・・・

 

「・・・──問題です。人間となりしソロモン王を。手にした自由を謳歌するロマニ・アーキマンを。分け隔てなく愛し、叶うなら・・・」

 

「───・・・」

 

「・・・ずっと、ずっと。お傍においてほしいと願う、厚かましく、面倒くさい女は・・・だーれだ?」

 

自分の存在が、かつての神のように最愛の人を縛っている悲しみと後悔に満ちていて。それでも、暖かく揺るがない愛を、涙として流していて。まっすぐと、自分を見つめていて・・・

 

「───、何を、やっているんだろう。ボクは」

 

その涙を見て・・・自分が何も変わっていない事に想い至る。そう、そして・・・変わるときは今なのだとも。

 

(ボクはあの旅路を、皆と共に歩んできた。ソロモンであることを明かしもした。それだけの事をしながら、何を今更怖じ気づいているんだ・・・!)

 

リッカ君の旅路を見てきた。死んだ方が遥かにマシ。誰にも祝福されず、呪いと欲望を背負わされ生きてきた。そんな彼女は、今誰よりも輝く楽園の顔になった。

 

マシュの旅路を見てきた。閉じた世界で幸福のまま消える筈の彼女は、自分自身をこれ以上なく確立させ、楽園の比類なき盾となった。

 

オルガマリーの旅路を見てきた。閉塞と自虐に苛まれていた彼女は、自分自身を肯定し、誇りを持ち、楽園を束ねる比類なき女性になった。

 

彼女達だけじゃない。絶望的な世界の滅亡に立ち向かった総てが、英雄王に財と謳わせるまでに成長した。

 

(彼女達は自分自身で変わることを選び、変わった自分を受け入れた。──ボクはそれを見て、彼女達を信じたんじゃないか!)

 

そして、自分にだってそれは出来る筈だ。いいや、絶対に出来る。だってもう、自分はロマニ・アーキマンなのだ。自分が最初に望んだのが、ロマン溢れる自分だけの人生なんだから。

 

そんな自由で、すべきことはなんだ?かつての自分に怯える事か?逃れる事か?また悲鳴のような、誰かに追われるような自由を送ることか?

 

(違う・・・!自分の人生は、自分で選ぶんだ!そしてその人生に、寄り添ってほしい人だって、自分で・・・!)

 

自分に誇りを持つ。それがリッカ君の教えてくれた決意。傷つくことを恐れない、マシュが教えてくれた勇気。決断を、誰かに委ねない。それがオルガマリーの教えてくれた決心。

 

それらを見ながら、それらを知りながら・・・『何も選ばない』なんて!それでは同じだ!

 

 

あなたは何も感じないのですか!

 

あなたはこの悲劇を見て、何かをしようとは思わないのですか!

 

【いや、まぁ・・・別に何も?】

 

 

あのときのような過ちを、また犯すわけにはいかない。大切な人を泣かせる様な真似をするために、ボクは人間になった訳じゃない・・・!

 

「ひわっ!?ど、どうやらやって来たようです・・・!」

 

ボクはソロモンで、それでいて・・・

 

「・・・もう、ヘタレやチキンなんて自分を護るのは止めにしよう・・・!」

 

一人の生命として、生きることを選んだロマニ・アーキマンだ!そうとも、人間は愚かだ、愚かだからこそ・・・

 

「ボクは・・・誰でもない!ボクはボクだ!ロマニ・アーキマンだ!」

 

自分のエゴを貫き通すんだ!そうだとも!人間ならば──!

 

「──シバ!本当にごめんよ!だけど今、告げたい事があるんだ!」

 

『自分の幸せ』を、『自分自身の手』で掴みとって何が悪い──!!

 

「ひ、ひわっ!?ロマン様・・・!?」

 

(オルガマリー、マシュ、──リッカ君!皆、ボクに勇気をくれ!エア姫を見出だしたギルのように、ボクも今・・・!『楽園だけのボクになる』!)

 

そうしてロマンは、手袋を取り・・・指環を、外す。この時ばかりは、この瞬間だけは楽園ではなく。『自分が護りたいもの』を、『自分の手で』護るために!

 

「ボクは──君を!愛している!!──結婚しよう、ずっと一緒に生きよう!シバ!」

 

「ろ、ロマン──様・・・?」

 

「ごめんよ、遅くなって!王もソロモンも関係無い、一人の人間として・・・ボクは、ボクは・・・!」

 

そうだ。自分を、ソロモンを、ロマンを愛してくれた女性を愛している。愛されたからじゃない、生前も、自分も関係無い・・・

 

「一人の人間として・・・!君を、君と!幸せになりたい!ボクが手にした総てで、君をもっと幸せにしたいんだ──!」

 

自分がそうしたいから愛する。それがロマン、それが自由!自分自身の決断、自分が選んだ人生という戦いなのだから──!




シバ「ろ、ろまっ、ロマン様・・・!」

ロマン「君はボクが護るよ!ソロモンとしてじゃない!一人の男として!えっと何かないか、何か・・・あ!新聞紙!よし・・・!」

神殿内の魔力を凝縮させ、新聞紙を丸めた神代兵器武器を造り身構える。指環を外し(でも無くさないように大切にくるんである)、自分の意志で。シバを庇い。

「か、か、かかってこい!怖くないぞ!怖くなんか・・・」

ガチャリ、と扉が開かれ入ってきたのは・・・

リッカ『・・・・・・』

マシュ「・・・・・・」

オルガマリー「・・・・・・」

ロマン「うわわわわも、もうダメだ・・・!もう無理だぁ・・・!」

職員達と、その前に歩み寄る三人のカルデア元祖メンバー。扉が開いた事を確認し──

「「『───ロマン!おめでとーっ!!』」」

高らかに、クラッカーを鳴らす。同時に割れんばかりの、職員達の祝福が響き、轟く。

ムニエル「クソァアァアァ!!未来永劫幸せにクソァアァアァ!!クソァアァアァ!!クソァアァアァ!!」

「おめでとう!ドクター!シバにゃん!」

「遅すぎるくらいだよ!お幸せに!」

「すっかり頭リッカになりましたね!最高にカッコよかったですよ!」

「お子さんはサッカー出来るくらいは揃えてくださいよ!」

「こう見えて俺達、育児の勉強もしてたんですよ?」

「子育て、出来る限り協力しますから!」

ロマン「み、皆・・・」

オルガマリー「茶番めいた寸劇で、後押しした甲斐があったわね。・・・はい、これ。王と師匠からの預かりものよ」

託されたのは『聖杯』と、『エルサレム神殿を模した結婚指環』。互いがロマンの為に用意したものであり。そして──

リッカ「良かった!人生リッカにならなくて!本当に、本当におめでとう!」

「ドクター・・・本当に、本当にお疲れ様でした・・・!こちらを、お受け取りください!」

渡される花束。そして大量のラピスラズリ。あらんかぎりの祝福が、彼と彼女を祝う。

ロマン「みんな・・・、皆・・・!」

ギルガメッシュ『ふはははははははははははは!!この様に祝うならば半年前から機会を狙うがゴージャス流よ!遅きに過ぎるが総て赦す!さぁ者共、祝い、謳い、感涙するがいい!我等の旅路が、二年の節目を迎えた事。そして──!!』

シバ「ロマン様」

ロマン「シバ・・・」

「───喜んで・・・!」

エア(タブレット)『ロマニ・アーキマン!そして、シバの女王の時代を越えた婚姻の瞬間を!せーの!

「「「「「「「祝えーっ!!!!!おめでとーっ!!」」」」」」」

ロマン「み、皆グルだったのかい──!?」

シバ「ひ、ひわ・・・ヒワァ」

「シバ──!?」

誇らしき旅路の節目。この上ない祝福と共に、歓喜の祝福が木霊する──

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