人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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病院

母だったもの『・・・』

父だったもの『・・・』

少女【・・・・・・】

ティアマト『・・・ずっと、いっしょなのですね』

【うん】

キアラ『残念ですわ。もう寝たきりだなんて。あれほどの存在を産めたのなら、もっとこう・・・』

【・・・】

『・・・そういえば、ゲーティアは何故あなたを見いだしておきながら、あなたをそのままに・・・?』

「利用や敵対ではなく、黙殺・・・ならば自ずと答えは見えましょうや、ティアマト様」

【わたしは、みたくないそんざいだった。それだけ】

『見たくない、存在・・・?』

【・・・こんなふうに、うまれるはずじゃなかった。もっと、たんじゅんだとおもってたんだって】

「まぁそれはそれは。ゼパなんとかさま?一部始終を」

ゼパなんとか『オオッ♥️オオッ♥️かつての記録♥️再生ッ♥️オオッ♥️』

「では、試しに見てみると致しましょう?ささ、私のお膝にどうぞ?」

【あなた、ぼせいなんてないくせに】

「なっ!?」

【ぴゅあ】

「なな、何を仰有いますか!?め、ですよ!?」

ティアマト『ゲーティアは、何を思って・・・』


もしもゲーティアが人類滅亡RTAに挑んだら

「はい皆!こんにちはー!今日も元気にしてるかな~?私の事は当然知ってくれているわよね?王子様に想いを馳せる乙女マスター、ビースト見習い!サジョウ・マナカでーす!ぱちぱちぱちー!」

 

この地球、そして人類という種の中に、ガン細胞・・・自滅機構と呼ばれるシステムがあるのは、あまり知られていない。人類の歴史が重なれば重なるほどに力を増し、人類を内側から食い破る役割を持つ七つの存在。

 

「今日はねー、なんと!クラス・ビーストを作っていきたいと豪語するゲストを呼んでまーす!マナカビックリ、獣を作るなんてそんな事出来ちゃうの?大逸れすぎた試みに、マナカドキドキしっぱなしです!」

 

文明より生まれ、文明を喰らい尽くすもの。人類を滅ぼす七つの災害。人が知恵を持つが故に切り離せない澱みたる存在。そんなビーストを、人為的に産み出そうと考案された世界があった。

 

「それではゲストをお呼び致しましょう!はい、ゲーティアさんですはくしゅー!わーいぱちぱちぱちー!」

 

【こんにちは、ビーストⅠ、憐憫の理を持つ獣、ゲーティアです。本編中では、全人類総エネルギー化計画に取り組みました】

 

その試みに、どんな思惑があったのか。どのように作り、どんな役割を期待していたのか。それらを今回は特殊な視線かつ目線にて斬り込んでいこう。そして、どんな存在を求め、どんな事態が起こり得たのか。MCの少女の気分に任せ、追及したいと思う──

 

 

「本日は宜しくお願いします鹿さん!でも、なんでそんな面倒臭い事を?」

 

【未来を見たんです。【カルデアに来訪せし一般にて平凡なる存在が、我等の計画を覆す可能性が僅かにある】と。完璧を目指す存在として、僅かなイレギュラーも私達は赦せませんでした。思えば人類を利用し終わりの頃に千里眼が捉えたので、テンションがおかしかったのもあるんでしょう】

 

「えっ!?となると楽園時空では藤丸立香の台頭を察知したかしていないかが分岐点だったってことなの!?ゲーティアがかしこいか賢くないかってはなし!?」

 

【そうなるんですかねぇ・・・で、我等は決議した訳です。【人理焼却の際に脅威となる存在を、逆に破滅の引き金にしてしまえばいいんじゃないか】と。そんな訳で、私は未来における一般人に登録されている名前、藤丸立香なる存在に逆に目星をつけたのです】

 

藤丸があっさり一般枠に入れたのはこういった理由で、レフに頼んでいたAチーム爆砕の別口で魔神達は協議に励んだという。そして、どうせなら人類が自分の手で始末をつけるべきであろう、と誰かが言ったのだ。

 

【最低でもカルデアに止めを刺し、良ければこちらが手綱を握れる人類の悪性。加えて私達はサンプルが欲しかったわけです。生命創造の際、失敗しないための【悪】というサンプル。可能性の排除と次の命題への対策が、製作した大まかな理由ですかね】

 

「なるほど~。人類悪は人類を守るという願いそのもの!当然それを担うべき主人公を料理しちゃおうと考えたのね?うわぁ、えげつなーい」

 

そうすることでどんな獣にするか議論し、【人間の積み重ねてきた悪性、救世主が持ち去った七つの大罪を呼びもどせし獣】と結論づけた。最初に火を崇めた教にこの世全ての悪神がおり、そこから産み出された龍がいるという。それらをイメージした存在を作り上げようと思い、彼等は行動に移した。

 

【まず、名前から因果を特定します。そして彼女を産み出す存在に遺伝子の呪いをかけ傀儡にする・・・つもりだったんですが不要でした。肉体と遺伝子配列的には上等だったのですが、精神的と道徳、魂に捻れを抱えていたので別に手を加えなくても良かったのです】

 

「うん、まぁそうしようと考えたってことは初めから資格ありだったのかも知れないし。不思議じゃないかも?」

 

【その両親から産まれた子供、藤丸立香の名前と存在に呪いをかけ、名を剥奪したあと、かつての宗教にて行われた生け贄の概念、『好きに貶めていい誰か』というレッテルを付与しました。彼女が周囲に人間扱いされず、おぞましいまでに迫害されたのはこの呪いが原因ですね】

 

それと同時に、肉体がカルデアでの活動に堪えられる成長を遂げる日数ギリギリまで悪性を集中させる環境を手掛けたという。同じ年代に産まれ、同じ適性を見出だした存在。要するに『あり得た人類最後のマスター』達に呪いをかけ、藤丸立香の周囲に配置したのだという。人間的な人格は元々救いようが無かったもの、実験の最中で壊れてしまったものを悪性の負荷に使用したのだという。中学生や小学生の際、彼女が人間扱いされなかったのは、魔神達がこぞって【語られなかった誰か】を歪め、配置においたのが原因だと語る。

 

【どうせ焼却で皆燃え尽きるわけだから、薪を煽る為に使おうと。ここで怖かったのが手を出したのは【あの存在を苛め抜け】という指示を私達は下しただけで、後はその方法を自分達で考え、エスカレートさせていったという事実でしょうか。藤丸立香の持つ人類を救うという可能性の因果を反転させる為に、彼等は自分達で考え、自分達で行動したんですね】

 

「うわぁ・・・」

 

好き勝手に貶められる生け贄を放り込んだら、想像を遥かに越える速度で悪を貪り始めたという。一日たりとも同じ手段が起こらない地獄。悪性の定向進化を続け、そしてそこから産まれる存在とはなんなのか。

 

この時点で中止したほうがいい、我等に進化し続けるこの悪性の坩堝を御するのは不可能だ、との意見が魔神の間で上がり始めたのもここだった。我等は本当の意味で人間の悪を理解していない。我々は、ともすれば最悪の試みをしているのではないか。人類最後の脅威に、取り返しのつかない牙と爪を与えているのではないかと。

 

【ですが、ゲーティアとしては杞憂だと判断しました。悪性のサンプルとして、製作を中断することはできない。そもそも我等の事業に失敗などあってはならない。失敗するという可能性を容認してはならないと】

 

我々は克服し、征服しなくてはならないのだ。あの無能の王とは違う、悪性の克服を。反対を押しきったと同時に、このタイミングにて光帯を回し始めた。エネルギーの統括と、星の生誕に辿り着く燃料を束ねる事業に集中した。悪の熟成から、目を離したのだ。

 

【私達が人類史を一から燃やした様に、産まれた時から一日欠かさずに悪性によって藤丸は磨かれていきました。本当なら、自分の存在があるかぎり余程の事がなければ獣になんかなりません。ですがその『自分』を、私達は最初に奪っていました。藤丸立香ではなく、有り得た獣としての存在を課した訳です。・・・思えば、これが最初にして最大の失敗だったのでしょう】

 

異変が起きたのは千里眼の不調だった。人類を焼却してからの自分達の未来が見えなくなっている。そもそも自分達の未来すら見えない。事業の後を成した未来が無いのだ。何事かと魔神は決議し、我々が産み出した人類の悪はどうなったかと協議した。誰も見ていなかった、見ようとしなかった、誰かが見るだろうと『見たくなかった』その悪がどうなっているのかと。

 

【・・・我々の目論見は形を成しておりました。人類の悪性の総てを受け止め、自殺すらもせず生存していたその存在は、我々の目が無くなった頃にも肥大化を続けており、再び我等が見た頃には誕生寸前だったのです。我々の見せ付けられた、人間の悪意総てを司る獣として】

 

精神を喰らい、人間を未知のまま愛する悪として孵化寸前となった存在に魔神達は戦慄した。同時に、かの誕生を阻むのは最早不可能であり、我等の存在はかの獣の手によって──

 

【悪性という、我々が一番見たくなかったものを司る存在を産み出したのが善くなかった。当然のように我々、人類、残す獣達を貪りし存在として肥大化してしまった訳です。人間の悪意という癌細胞が、末期のレベルで人間の身体に散らばったイメージですね】

 

魔神達は決議した。そしてどうしようもない事実と現実の前に責任の追及が始まり、排除という形式で接触すらも拒まれる程に成長した獣を、どうすることも出来ないと結論づけた。故に、目を逸らしたのだ

 

【必ずカルデアに来るんです。本能的に人類が其処にしか残っていないと気付きますから。そんな中で我々の取った行動は、無かった事にする、でしたね】

 

自分達の過ちではなく、人類が産み出した最大の抵抗として事実を改竄した。そして廃棄孔にかの存在を処分する場所を製作させ、フラウロスに管理を丸投げしゲーティアは不干渉を決め込んだ。とにかくもう、見たくはなかったのだ。

 

【そして、事業に戻ろうとしたところフラウロスから連絡が。なんと、顕現が止まったというのです。カルデアに到着した存在はまだ孵化していない奇跡的な状態。まだ利用は可能だと告げられたのです】

 

まだ獣として未完成。完成してカルデアに来たならば終わっていたが、未完成ならば本来の用途が可能だ。自分達を親として利用できれば──

 

【そして、カルデアを壊滅させた後に覚醒をさせるため、魔術師や職員の悪性を喰らわせつつ特異点へと飛ばした・・・これが、一連のあらましですね】

 

ある意味で言えば、有り得た獣にはシンギュラリティが起きたのだろう。悪と悪が混ざった結果、天井知らずに進化が起きた。それが、最悪の獣への適解となった。

 

敗因があるとすれば・・・獣の覚醒を阻んだものがあること。彼女には呪いがかけられているため、精神干渉を打ち消す『悟り』でもない限り彼女に歩み寄る存在などいないはずだとゲーティアは語る。その存在がどのようなもので、なんであったのか・・・

 

【以上、──我々が行った、獣の作り方の大筋でした】

 

獣として討ち果たされる最期まで、理解には及ばなかったという。




マナカ「は、はい。ありがとうございました。もう言いたいことは一つ!獣だろうとなんだろうと、よくわからないのに手を出しちゃダメ!ですね!」

ゲーティア【はい。人間を侮るのは止めましょう。楽園時空でなかったら我々もろとも詰んでましたからね、あの世界】

「じゃあ今日はこの辺で!ばいばーい!・・・いやあのさー、本当にさー・・・」

少女【よんだ?(飴もぐもぐ)】

マナカ「ヒェッ!アジ・ダハーカ先輩!?まずいですよ!?」

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