カドック「あぁ、そうか。あんたからしてみれば誰も彼もが若造か。不死なんだもんな、あんた」
ぐっちゃん「そうよ。魔法少女特異点平均年齢爆上げさせてるのは私よ!悪かったわね!?」
「なんで怒るんだ・・・」
ゴルドルフ「やっぱり顔かぁ・・・ふくよか体型ってやっぱりニッチなのかね?ん?」
トゥール「自己管理できない無様な肉塊とアピールなさる主、素敵です」
「それぜんっぜん誉めてないよねぇ!?」
ぐっちゃん「あいつらも今回をきっかけに連絡してくるでしょ。同窓会になるのも時間の問題ね」
「キリシュタリア達か。・・・頼もしいな」
「何よ、卑屈になると思ったのに」
「今更劣等感に苛まれ、無い物ねだりする程暇じゃない。自分に出来る事を見つけて生きていくんだよ。一生・・・僕が僕で有る限りな」
「・・・・・・」
「そして君は、見る目が無いんだな」
「あぁん!?」
ゴルドルフ「煽らない煽らない。・・・ん?そういえば所長とシバはどこに・・・?」
「ふぅ・・・本当に、此処まで来るまで長かったわね」
そっとテラスにて、再現された星空を見上げる影が一つ。喧騒よりちょっと距離をおき、アイリーンに仕込まれた着こなしのドレスの裾をはためかせる美少女が息を吐く。
『えぇ。モリアーティとホームズがやんちゃしていた新宿の出来事が、遠い昔のよう。とても楽しい日々の果てに、今日という日があるのね』
傍らには、自分の相棒たる幻霊サーヴァントなるアイリーン・・・即ち、オルガマリーが夜通し続くパーティーよりそっと抜け出し、夜風に当たりに来たというシチュエーション。優しい風が吹き抜ける月のテラスは、火照った体と湯だった頭を冷ますのにちょうどいい。
「・・・良かったわね、ロマニ」
扉一枚隔てた向こうでは、新郎新婦に瀑布のような祝福が叩き込まれているだろう。その渦中にいるであろうロマニに、改めて一人祝辞を贈る。
『彼、あなたをドクターとして支えてくれていたのね。メンタルケアやヘルスの面で御世話になったのでしょう?』
「えぇ。ヒステリーやノイローゼを回避・・・回避?出来たのはロマニのお陰ね」
もうヒステリーやノイローゼ・・・どころか、真っ当な病気や寿命にも縁が無くなった自分の過去を、懐かしげに振り返る。あの頃は何も見えておらず、自分の事しか見えていなかった。重責に押し潰されていた自分に味方はいないと思っていた。
だが・・・気が付けば、ずっと傍にいて自分を見捨てずに味方でいてくれたのがロマニだった。自分がどれだけ癇癪を起こそうとも、真っ向から自分を見つめてくれたのが彼なのだ。
「そんなロマニが結婚かぁ・・・なんというか、本当に遠いところまで来たという感慨があるというか、実感が無いと言うか・・・」
「はははっ、マリーもやっぱりそう思いますか?ボクも幸せ過ぎて全部夢じゃないかと思ったり・・・」
どこかにテロップとか無いですよね?なんてとぼけた事を言いながらテラスに現れたのは今回の主役にして件の男性、ロマニ・アーキマン。主賓との予期せぬ出逢いにあやうくワインを落としかけるも、なんとか優雅さを取り繕う。
「・・・何をしているのよロマニ。シバにゃんや皆はどうしたの?」
「いやぁ、実は王様の皆が盛り上がっちゃって。飲み比べが始まっちゃって自動的にここに追いやられたと言うか・・・」
ロマニらしい、とオルガマリーは思わず笑ってしまった。主賓を取られるゆるふわさは、微塵も変わっていないらしい。
「しっかりなさい。これからあなたは伴侶の人生を背負うのよ?そんな覇気が無くてどうするのよ」
「面目無い・・・でも、名だたる王様に威張れるほど心臓に毛は生えてないというか、背負うというより二人で歩んでいきたいというか・・・」
ドメスティックバイオレンスの心配は無さそうね、と胸を撫で下ろす所長。むしろ尻に敷かれる未来しか見えないが、それはそれで平和かつ平穏な夫婦の在り方だろう。そう、喧騒とは無縁な・・・
「・・・どうする?ロマニ。あなたとシバにゃん、退職という形にも出来るけど」
夫婦の時間は大切で、心休まる時間は必要だろう。いい加減彼は、彼だけの為に時間を使うべきだ。もう自由なき自由、走り続けるしかない地獄からは解放されているとしても。
「業務の引き継ぎはこちらがやるわ。二人で世界一周にでも・・・」
「何言ってるんですか、所長。ボクもシバも、自分の仕事から逃げ出すつもりもほっぽりだすつもりもありませんよ」
オルガマリーの不器用さをビジネス的にアウトプットした優しさを噛み締めつつ、ロマニははっきりと意見を口にした。これからも夫婦、力を合わせて楽園の力となることをはっきりと宣言したのである。面食らったのは、今度はオルガマリーの方であった。
「・・・いいの?気を遣っているなら要らない御世話よ。今度こそ、あなたはあなたの為に生きなさい」
「ありがとう、マリー。でもこれはボクが決めていた事で、シバと話し合った末の決断なんだ。──ボクはもっと、カルデアの皆の力になりたい。支えになりたいんだ」
それは誰に問われた訳でもない、誰に頼まれたわけではない。自分が考え、自分が決めた末の答え。
「君も含めて、楽園の皆は家族のようなものだと思ってる。誰一人失いたくないんだ。一応、ボクも王をやっていた事があるからね。護りたい民や、護りたい国がある。それが楽園の皆で、それが楽園そのものなんです、所長」
そう断言するロマニに、かつての悲観的な観点や白々しさはない。揺るぎなく、間違いなく。躊躇いなくはっきりと告げたのだ。『皆と未来を迎えたい』と
「ロマニ・・・」
「別に、家族か楽園かなんて選ぶ必要も無い。ボクは今度こそ、自分の意志で護りたいものを護ります。王は最善を尽くし、目につく総てを護るもの。・・・もうボクは王でなくても、どう振る舞うべきか、どう生きるべきかは分かっています。どう生きたいのかは、皆が教えてくれました」
それは、カルデアの皆を支え、一緒に生きる事。自分だけの『浪漫』を追い求め。自分自身の手で生き方を決めることこそが、これからの自分に課せられた・・・いや、違う。
「今度こそ、ボクは自分だけの為に生きてみせる。それが・・・皆と一緒に生きるという事で、皆に自分の意志で寄り添うという事だから」
だから、これからも変わらず。これからも、頼りないかもしれないけれど。
「だから・・・ボクら夫婦共々、よろしくお願いされてくれるかい?オルガマリー所長」
「──・・・」
・・・全く。自分自身の為に生きろというのに、誰かと生きたい、誰かを支えたいだなんて。そうだ、彼も紛れもなく・・・
「・・・有給や産休の際には必ず一週間前に告げる事。必ず夫婦としての時間を優先する事!」
「は、はい!」
「夫婦関係で困ったら、必ず誰かに相談すること!だけど夫婦としてではなく、一人のプライベートな時間を確保すること!育児は必ず共同で行い、楽園の皆の手を借りる事を躊躇わない事!」
「はいっ!」
楽園の一員。フォウが認めた、カルデアの善き人々なのだ。そんな人達が集まったからこそ、これまでの旅路があって・・・
「よろしい。──じゃあ、遠慮なくカルデア職員一同!あなたに頼らせてもらうからそのつもりで!」
これからの旅路を、善きものだと信じられるのだろう。皆がいる限り、これからもずっと。賑やかで騒がしい毎日が待っているのだろう。
「うひゃあ・・・これは責任重大だぞぅ・・・ギルじゃあるまいし、楽園の精鋭達に頼られるなんてハードル高いなぁ・・・」
「男に二言は無いでしょう?所帯持ちとして、私とあなたの死に損ないコンビとして頑張っていくのよ。はいはい、そうと決まったらこんなところで油を売らない!」
「ひぇえ、ごめんなさい!やっぱりもう少しお手柔らかにお願いしてほしいなぁ──!」
お尻を叩かれ、背中を押され。ロマニはいつものように騒がしくパーティー会場に戻っていく。
「マリー、気付いてますか?」
「何よ?」
「──とっても、素敵な笑顔ですよ。楽園になってからのマリーの表情!」
「・・・──ばかね。嬉しいときは笑うのよ。人間はね」
そうして宴は続いていく。──三日三晩夜通し続く披露宴にて、幸せと喜びを噛み締めて。
「子供も当然、生前の妻の数だけ作るのよね?」
「ええっ!?こ、腰とシバの体調が大変な事に・・・!?」
最高にして最善の今を生きる、二人の財もまた、この喜びの中に
ダ・ヴィンチ「・・・立派になった。あぁ、本当に、立派になったとも」
ムネーモシュネー『成長・・・』
ロリンチ「それはどっちだい?自我に目覚めたロマニかい?オルガマリー所長かい?」
「──どっちも、さ」
・・・そうして、騒がしい宴は終わり、日常へと戻っていく。
時は──若葉が芽吹く春の刻──
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