トキ「おや、食べ過ぎかな?今消化に優しい薬草を煎じよう。そして内臓促進の秘孔を・・・」
アスクレピオス「リッカとオルガマリーの真似をしたな?全く・・・ヘラクレスとアキレウスの弟子を同じ人間の括りに入れるな。アレらは人種が最早神代の英雄クラスに魔改造されているんだからな」
ナイチンゲール「身体を楽に。吐き気を催したなら即座にこちらへ。我慢することなく。背中をさすりましょうか?」
シオン(手厚い・・・!これならすぐに活動できそう!楽園凄い・・・!)
オールマイト『素晴らしいだろう?私もあと半年で傷と疲労が完治するんだよ。いやいや我ながら無理をし過ぎた・・・後進を育てないワンマンはやっぱり限界があるようだなぁ・・・』
シオン「誰・・・!?」
「おいしーい!!やっぱり特訓上がりにはこのパーフェクト栄養バランス!カーマレモネードで決まりだねッ!」
ちなみにリッカとグドーシ以外には御売りされておりませんな逸品、リッカの体型コントロールの為に脂肪やら食物繊維やら女神の祝福やらあれやこれやを徹底的にぶちこんだ特注レモネードを飲みながら、管制室に姿を現す人類最悪のマスター。カルデアにていつの間にか戦闘能力最強になってしまった事実にも首をかしげる女の子。私はもっとこう・・・、震える脚を奮い起たせて頑張る系を夢見ていたんだ・・・まさか相手を戦慄で震え上がらせる系になるとは・・・マスターとは・・・
「来たな。カルデア最強戦力として流石の風格だ、見習わせてもらうよ。リッカ」
「カドッ、ンッ!!(絶命)」
初手できっちり討伐をかますカドックの前に牽制の絶命を見せるリッカ。塵になった後は何事もなかったかのようにアイリ、アルトリアとハイタッチをかましタブレットを弄っているぐっちゃんと挨拶を交わす。
「ホント、楽園ではスペランカーだよねリッカ君・・・まぁそれはいつもの事。マスターチーム、揃いました。オルガマリー所長」
「オッケー、ありがとう。というか私も今状況を把握したわ。ゴルドルフ副所長、説明を」
パチン、と指を鳴らし設備を全てアクティブにするオルガマリーの所作に惚れ惚れしながら、医務室よりやってきたシオンは固唾を飲み見守る。緊張さとのんびりストレッチやってるマスター達の温度差の対応に対して、である。
「おほん!えー、ギルガメッシュ王は姫と友達、ついでに自分をセイバーだと思い込んでいるアサシンとマリオカートに忙しいようなので、干渉は期待しないように!今回の特異点は諸君らの力でなんとかするしか無いのだよ!解るね?」
(マリオカート!?特異点攻略ゲーム大会以下なんです!?)
シオンは驚愕するも、一同は別に動じない。だって王は自分がやりたいことしかやらないのだ。楽園の維持も大切な財の研鑽も、友や姫達との戯れも。彼が為したい唯一無二の真理なのである。
「という訳で分析を私とロマニ君、ダ・ヴィンチ女史、観測をシバ君と・・・」
「おはようからおやすみまであなたの暮らしを見守るエジソンです!!やぁ、ステーキの後は獅子の顔!ナイステイスト!」
(エジソ──)
発明王?あれが被り物でなく?思考阻害デバフがシオンにかかるが皆は気にしない。慣れである。
「このダ・ヴィンチちゃんが結論から言おう。この楽園カルデアは先程別のカルデアから攻撃を受けたがロマニの神殿があっさり弾き返した!」
「「「「「お疲れさまでした~!!」」」」」
なんだぁ楽園が挑む前に終わってたよー。スイーツじゃんぬでお茶会しませんか?イリヤ達も呼びましょう!あーマッサージ受けたい。なんて解散オチがつきかける・・・がそうは問屋が下ろさない。カドックが素早く出口をカバディし続ける。
「が。どうやら微弱な特異点反応とぐだぐだ粒子や魔法少女反応とも違う反応が検出されているんだ。放っておけばまた人類史の危機に繋がるかもしれない。ここは僕達新生カルデアチームが頑張るところだと思うんだが、どうだろう」
「カドック君がこんなにアグレッシブに・・・!ポニテおじさんは嬉しいなぁ!」
「そこのポニテおじさんはスルーしてくれ。北米にそんな意味不明な特異点が作り出されている。カルデアからの逆介入というのも気になる。マシュ好き好き藤丸立香時空の、リッカとは違う藤丸だとは考えにくいが・・・」
「ブフッ・・・ww」
糞真面目に変なワードを読み上げるカドックにダ・ヴィンチちゃんが噴き出したが、オルガマリーのアキレウス仕込みの肘打ちで事なきを得る。霊核が軋んだが死なないので軽傷である。リッカとオルガマリーは全身凶器。テストにでます。
「その真実を確かめるため、リッカ、並びにサブマスターたる僕達が協力して解決に奔走すると言うわけだ。・・・説明はこれでいいかな、副所長」
「君ホント、コンプレックス無かったら優秀なんだねぇ・・・シオン君?」
「────あ、え、はっ?は、はい!すみません、どこから何を切り込めばいいのかさっぱりで!特異点!あぁはい特異点ですね分かりました!私も一スタッフとして協力させてもらいますとも!」
平行世界のカルデア、謎の粒子の反応。もうお腹いっぱいな超常ワードの連続にシオンの灰色の脳細胞が楽園祝福netへと接続されていく。常識なんて、そんなものは井の中の蛙が見上げた景色より狭い。時代はワールドワイド・ないしユニヴァース。おまけに初体験イベントがこんなとびきりカオスなリヨめいたイベ。あわれなるかな、これが終わった頃にはシオン女史の頭は立派なプレシャスになっていることでしょう。これにはニャル様もにっこり。ちなみに彼は披露宴は生放送で楽しんでいました。邪神がめでたい席にいちゃまずいと。
「よし話は決まったね!このボク、ロマニ・アーキマンがバックアップするよ!そう、ソロモンパワーはね!魔術分野において最強なんだ!(集中線)」
「アインツベルンのお爺様が言っていたわ・・・「キャスターとか数合わせの雑魚クラス。対魔力のいいカモ。やはり時代は三騎士の力押しこそ正義」って」
「ソロモンクラスじゃないと勝利を望めないとか鬼門も鬼門よね、キャスターって・・・」
「えー?霊脈掌握して大聖杯掌握してサーヴァント全員自害させるだけの簡単なお仕事じゃないかなぁ。ハマったら一番楽だよ多分!」
(お父さんはそういうことする・・・)
「はい!ブリーフィング終了!十分後にレイシフトを始めるからリッカ君は準備!サブマスターは管制室の自分の席にてモニタリング、魔力譲渡、術式付与の準備!」
「「「「了解!」」」」
「ふぁっ?術式付与?どゆこと?皆で一緒に行くんじゃないの?」
聞き慣れない配置に困惑するリッカに、カドックが説明を行う。これは、カドックが考案したフォーメーションの一つでもある、指示と戦術の一極化だった。
「いいか、リッカ。この楽園で一番経験を積み、一番生還率と戦闘力が高いのは君だ。だからそれを活かし、君をメインマスター、僕らをサブマスターとして扱う」
「えっ?そんな、皆立場は一緒に・・・」
「勿論心も足並みも一緒だ、これは指揮系統の単純化の便宜に過ぎない。まず、君達がやってきたように君が単独でレイシフトし、君の判断でどのマスターをどこで呼ぶか決めるんだ。呼び出したマスターは現地で君を助け、待機しているマスターは魔術師として君に持てる魔術の全てを付与する。最大戦力である君を、最大限活かした配置を考えて今回から試してみたいんだ」
それはカドックが今までのカルデアの頑張りとスタイルを変えず、同時に方針の違いによる軋轢や仲間割れを未然に防ぎ、リッカを活かす事による特異点攻略の可能性を追求した試みであった。それは、カドックの貪欲な『証明』の手段。
「僕や皆がでしゃばっても君の経験と直感の邪魔になるだけだ。『僕は君よりうまくできない』からね」
「──」
「悲観してる訳じゃない。続きはこうだ。『僕らでなら、もっともっと上手く出来る』。何人増えようと、どんなに規模が大きくなろうと、楽園で一番戦ってきたマスターは君なんだよ、リッカ。だから、君が僕らの先頭で走り続けろ。脚を引っ張る奴等が追い付けないくらいに速くだ。──僕らはその背中に、ぴったりついていく」
カドックは真摯に、誠実に、リッカの実力と楽園のやり方を認め、自分達に出来ることを考え、この手段を考え、他のマスター達の同意を得た。嫉妬や功名心で自分達を前に置く無様ではなく・・・
「君は、誰にも出来ない事をこれからも出来る。それが、僕達の勝利に繋がると信じている。──もう一人では戦わせない。安心して突っ走れ、人類最悪のマスター」
「直感には自信ありです。任せてください」
「治療と猛獣退治が必要ならお任せ!」
「しっかりやりなさいよ、後輩」
「──うんっ!ありがとう、皆!!」
最も勝算があり、そして自分達の最善としてリッカと力を合わせる事を選んだのだ。誇り高き狼がごとき男は、龍の少女と笑みと拳を突き交わした──
シオン「・・・カドックさんって、あんな熱い人だったんですねぇ・・・見た目に反して」
オルガマリー「憑き物が落ちて落ち着けば、人は本来の力を発揮するものよ。私が言うんだもの、間違いないわ」
シバ「はい!冷静に株価を見極め、上がるかさがるかを・・・ロスカット!?ヒワワワワワワワ」
オルガマリー「シバにゃん?バイナリーは禁止よ」
シオン(・・・潤沢な環境は、人を最高のパフォーマンスに導く、か・・・)
「──よーし!じゃあ私も万全パフォーマンス見せちゃいますよ!レイシフトの際!魔術術式のパワーアップは任せてくださいね!」
リッカ(もう私は、マスターとして一人じゃない・・・かぁ・・・!)
カドック「お役御免かと思ったか?残念だったな。これからも、王様やマシュと一緒に先頭を駆け抜けてもらう。Aチームなんて立場は関係ない。──世界を救ったのは、君なんだからな」
リッカ「──ありがとう!カドック!一緒に戦えるようになって、嬉しい!」
カドック「──僕もだよ」
アナスタシア「うんうん・・・それでこそ、私のマスターに私の玩具よ・・・」
エジソン「どこから湧いたのかね・・・」
そして、レイシフトが始まる。謎の特異点、舞台は北米──
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