人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
おもにぐっちゃんのお陰で!もしアトランティスのあのお方と此方のあのお方に矛盾があった場合は・・・
『こっちはそういうもの』として、割りきっていただければ幸いです。だってもう原作では、オルガマリーとあのお方の絡みはどうしても・・・
・・・彼女が生きていたルートの開拓の果ての金鉱に辿り着いたと思い、楽しんでいただけなら幸いです(泣)
「カドック・・・想像以上の成果ね・・・」
特異点攻略終了の後日。報告書を纏め上げ、カドックから提出されたレポートに目を通していたオルガマリーはそう感嘆を口にした。彼・・・カドック・ゼムルプスが楽園に来てからの奮闘と成果を目の当たりにし、その新生と言っても差し支えない程の八面六臂の活躍に舌を巻いたのだ。
かつてAチームにいた頃の彼は温和・・・言ってしまえば消極的で受動的。チームの和を保とうと奮闘はしていたものの、キリシュタリアやデイヴィッドと言った本物の天才、非才の前に卑屈な面が見られ、其処から来るポテンシャルの発揮の鈍りが大いに散見された。彼は繊細かつ、どうしても家系の歴史の浅さや非凡でない凡人であるとの思い込みが実力の妨げになっている箇所が見られたのだ。
「まぁ、あんまり人の事は言えないけど・・・それにしたってここまで伸びる・・・?」
ヒナコは元々の土台が違いすぎるため置いておくとして、Aチームの中では平凡、末席とまで自称していた彼はもう何処にもいない。マスターとしては勿論、職員のオペレーター業務、雑用の清掃員などといった事も率先して行う程の自主性と積極性を魅せている。文字通り、己のやれることならなんでもやるの体現だ。その真摯かつ熱心な姿勢は、職員達の口からも称賛と共に届けられている。マスターとしてだけではなく、『楽園全体に貢献できる便利、万能さ』を突き詰めた研鑽を遂げている。今ではマスター達の親睦を深めるレクリエーションの計画とリハーサルがてら、交流を行っているのだ。そして、そんな彼が意見の提出書としてオルガマリーへ献策したものがある。
『君に人選を任せる。もう何人かAチームに声をかけてみたらどうだろう?今の君ならきっと出来る』
今までやろうとしていた、でも心の何処かで二の脚を踏んでいた所長としての人事。Aチームの誰か、いずれかを呼び戻す事・・・それをしっかり真正面から突き付けるその鋭利さと真っ直ぐさはまさに狼の牙が如くだ。──かつて自分の意志で排斥したAチームを、である。
「・・・」
初めは自らの責任から逃れるための延命処置であり、結果的な英断になっただけ。そして人理修復の間は魔力を生成して貰いながら効率よく使用し、修復の際は五体満足で返却した、レフの・・・ゲーティアの毒牙にかかったかつての『協力関係者』達。自らの判断で、生命と尊厳を左右させた者達。
此処に来て、身に付けた悪意のツケが突き付けられる形となる。楽園の、リッカやマシュ達のいらぬ軋轢や確執の回避の為の決断とはいえ、ただ生かし、彼等の活躍の機会を奪い放逐した事実は変わらない。所長として彼等を『無能』と送り返したのは自分の判断である。それを、今更もう一度チャンスをやると声をかける様な真似は、本当に良き判断なのだろうか。楽園の中で存分に育んだ良心と価値観が、オルガマリーの判断を鈍らせる。
(────いえ。私の感傷など些細なものね。楽園の利になるものなら、躊躇いなく行うべきだわ。例え、どんな悪印象や恨みを買おうとも)
だが、もういつまでも悩むほどに精神や判断力は未熟では無かった。善心や善性をオフに切り替え、合理的で、非情な判断を下す君主としての顔を表層化させる。
(何も出来なかった無能に、もう一度挽回の機会を与える。魔術師としての関係や同盟なんてそれでいい。私情を挟まず、合理的に全体の利益を追及する)
そう自らの心を冷厳にコントロールし、ハイライトが消えた瞳をそっと細め、今Aチームが何処で何をしているかを検索し突き止め、再び挽回の機会を与えるという体で交渉を持ち掛けんとする。
(・・・──)
胸が軋むような、心に棘が刺さる様な痛みと不快感を受け止めながら、適当に無造作に連絡を取ろうと端末を操作しようとした、その時──
『──やぁ、オルガマリー。そちらは頑張っているかな?』
「きゃあ!?」
何と先んじてメッセージウィンドウが端末を通じて送られ、出鼻を挫かれ慣れない非情モードを解除されたオルガマリーが普段上げないような声を上げ飛び退いた。そしてそれを送ってきた相手に二重に驚いた。それは、誰あろう近縁にて知る限り最も苦手な目の上の瘤・・・
『驚かせてしまったかな?いや申し訳ない。だがサプライズは驚かせてこそという。無事に目論みは果たせたというものだよ』
「キリシュタリア・・・!」
Aチームのリーダー、今ではアニムスフィア家の名代として家督を取り仕切ってもらっている父の一番弟子、キリシュタリア・ヴォーダイムである。麗しい美貌に、優雅かつ悪戯げのある笑みを浮かべながら豪奢な椅子に座り足を組んでいる。
『そんなあからさまに嫌そうな反応は傷付いてしまう。君は私が嫌いかもだが、私は君を妹の様に思っているつもりだよ、ロード?』
「あっ、はい。ありがとうございます」
『固くならないでくれ。大丈夫?紅茶飲むかな?』
「私は珈琲派です!」
『知ってる。ははは言ってみただけー』
この人は・・・!なんだか妙に上機嫌なのはどういう訳だ。私この人苦手。何故かって比類なき実力者でありながら嫌味さが微塵もない完璧ぶりが眩しいからである。何度思ったことか。あなたがロードやってよと。
『元気そうで何よりだよ、オルガマリー。所長としての業務、もう重荷では無いようだ』
「・・・解るの?」
『解るとも。今の君は生き生きとしている。良き環境に恵まれたね、そうだろう?』
悔しい、当たっている・・・二の句を告げずに困惑していると、キリシュタリアは楽しげに言葉を送る。
『君にAチーム代表として、言い忘れていた事があってね』
「──!」
覚悟を決め、表情を引き締めた。次の言葉に備えてだ。弾劾か、非難か。はたまた軽蔑か侮蔑か。悪意の因果応報に備え、静かに目を細めたオルガマリーに・・・
『我等Aチームの生命を救った英断に感謝を。そして、君達の成し遂げた偉業に祝福を。藤丸リッカ君にもそう伝えておいてほしい』
「えっ──」
『非難されると思ったかな?どうやら気の小ささは簡単に変わりはしないようだね。あ、これは君の美徳を誉めたつもりなんだ』
何故?とキョトンとするオルガマリー。何故このタイミングでお礼・・・?放逐し、利用し、追放したも同然なのに?
『敵が我等の想定を上回り、我等は敗北した。それは君が背負う負い目ではない。予測できなかった我々の責だ。君は所長として、職員の命を救い組織を再編するという責務を果たした。責められる謂れは何処にも無い』
「キリシュタリア・・・」
『君の事だ、何かを切り捨てる事は出来ず抱え込むだろうからね。此処ははっきりさせておこう。人理修復において、私は無能であり。君は比類なく賢明だった。──だから、そう張り詰めた表情は止めなさい。君には似合わない、痛々しいからね』
キリシュタリアは見越したのだ。いつまでもつまらない失態を恥として抱え込むであろうオルガマリーの性根を。彼女は落ち着き、誰かに支えられれば君主として有能である事は解っていた。マリスビリーに言われていた彼女の欠点を、改めてフォローしにメッセージを用意したのである。
『一度死にかけて色々肩の荷が下りてね。私も気楽に生きてみようと思っている。君もそうしなさい。君の重荷は私が受け持とう。世界を救ったのだから、次は自分の幸福を求めてみるといい』
「・・・・・・」
『余計な世話かな?だがまぁ、心配されるというのも悪くないだろう?話は以上だ。あまり無理はしないようにね。アニムスフィア家や時計塔の異分子は私が粛清しておくよ』
彼は、自分を純粋に心配してくれた。──責めて当然の存在を、見事と称え、気を配った。その度量と、眩しいばかりの風格に・・・
「──ありがとう。キリシュタリア」
彼女の、胸の最後の刺が抜け落ちた。
「ところで、モノは相談なのだけれど──」
アーネンエルベ
オルガマリー「──来た来た」
オフェリア「・・・こんな喫茶店があったのね。知らなかったわ」
ペペロンチーノ「キリシュタリアから呼び出されて何かと思えば!お久しぶりオルガマリーちゃん!元気そうで何よりだわぁ!んー!しばらく見ない間に素敵になっちゃって!」
~
キリシュタリア『ほう?Aチームを少しずつ呼び戻したいと?』
「カルデアのメインマスター、リッカの負担を緩和し・・・何れ来る数多の危機を今度こそ皆で乗り越えたいのです。力を貸してくれますか、キリシュタリア」
キリシュタリア『ほう、また挽回のチャンスをくれるのかな?』
「次は、もっと上手くやれる筈です。皆で、同じ方向を向けたなら」
『──同感だ。よし、なら君が会話しやすいだろうオフェリアとペペロンチーノに連絡を取ろう。ベリル、デイヴィッドは私がなんとかタイミングを伺う。任せてほしい』
「・・・あなたはどうお考えですか?」
『愚問だ、オルガマリー。妹分の奮闘に、力を貸さないヴォーダイムではないさ』
~
「待っていたわ、二人とも。お話の前に──御茶会でも、しましょうか?」
オフェリア「!」
ペペロンチーノ「・・・ホント、素敵になったのね。オルガマリー?」