そんなわけで、アニムスフィアとライネスのダブルロード珍道中、お楽しみください!
藤丸もいるよ!ここの藤丸は、セラフィックス藤丸と同一人物だよ!
いや―――いや、いや、助けて、誰か助けて! わた、わたし、こんなところで死にたくない!
──懐かしいような、あっという間に過ぎたような声がする。
だってまだ褒められてない……! 誰も、わたしを認めてくれていないじゃない……!
それは最期の、誰にも言えなかった叫び。
どうして!? どうしてこんなコトばっかりなの!?
誰もわたしを評価してくれなかった! みんなわたしを嫌っていた!
もしも、この出来事が変わっていたなら。もっともっと、いい未来があったなら。旅はきっと、良きものに変わっていたかもしれない。
やだ、やめて、いやいやいやいやいやいやいや……! だってまだ何もしていない!
いや──変わった筈だ。もっと、もっと素敵な。きっと素敵な旅になった筈だ。
生まれてからずっと、ただの一度も、誰にも認めてもらえなかったのに―――!
もしも『彼女』が、主役であったなら──
二人の君主と一人の弟子
「──おい。おい、オルガマリー。起きないか。辿り着いたぞ。全く。君主にあるまじき隙の多さだ。大丈夫か?君は自分の立場を理解できているかい?」
「ん・・・ん・・・?」
微睡みの上から声をかけられ、うっすらと目を開ける。──自分は確か、転た寝をしていた筈だ。楽園カルデアにて、キリシュタリアの礼装を手がけて・・・
「悪かったわ、ロマニ・・・今起きるからちょっと待って・・・」
「ロマニ?誰だいそれは?君、夢遊病の気もあったのか。なんでそんなオモシロ病気を今になって此処で披露したのか、逆に気になって来るじゃないか」
『オルガマリー。どうやら私達も、リッカちゃんと同じ体験をしてるみたいよ?』
身体の内から聴こえてくる相棒、アイリーン・アドラーの言葉に今度こそ覚醒する。リッカと同じ体験。それは即ちレム睡眠からの夢を経由した──
「特異点・・・」
「おい、本格的に大丈夫か?シンギュラリティがどうかしたのかい?いや、まぁ確かに今の状況はそうだろうな。『二人の
そして目の前でオルガマリーの頬っぺたをムニムニしてくる可愛らしい金髪と青き瞳の幼女・・・いや少女。カルデアのメンバーではない。確かに気品な風格を残すその存在を、オルガマリーは知っている。
「ライネス・・・!?ライネス・エルメロイ・アーチゾルテ・・・!」
「・・・本格的に大丈夫なんだろうな、君?何だってそんな不思議なものを見るような目で辺りを見回したり私をお化けか何かのリアクションで出迎える?列車の長旅はそんなに堪えたのかな?」
ライネス。幼少の頃・・・自分が家庭教師を兼ねていた側近を喪った忘れ難い事件。魔眼蒐集列車事件を『ロード・エルメロイ二世』とそのお供と共に解決した後、個人的に交流を持ったエルメロイ家の君主、ライネス・エルメロイ・アーチゾルテ。アクセル・ゼロオーダーにて忌々しくもアニムスフィア家の活躍を奪われた(設定)ケイネスの姪だった筈だ。色々在りすぎて時系列がごっちゃになっている。
「・・・あなた、君主になれたのね・・・」
「は?当たり前だろう。私はとっくに『ロード・エルメロイ二世』だとも。君だって23の若輩ながらも、君主の椅子に座ってるじゃないか。いっぱいいっぱいな様子がオモシロ・・・こほん。健気で胸を打っているさ」
・・・?不審に思い、体内の聖杯から情報を引き出す。確かライネスは、自らが相応しい年齢となるまで君主の代わりを用意していた筈。それがウェイバー・ベルベット。即ちロード・エルメロイ二世な筈だ。目の前にいるライネスは年齢からしてみても、まだ相応しい外見とはいい難い。金髪貧乳の、ギルが好きそうな見た目である。
「おい、なんだその凄く失礼な頷きは」
『色々と見てみたけれど、何だか変な感じがするわ。少なくとも、楽園カルデアがある世界とは違う世界の運びみたい』
(その様ね。目の前のライネス然り、何かしら認識のバイアスをかけられているのは前提みたい)
冷静にアイリーンと状況を把握し、素早く立ち上がる。少し前なら泣きわめきからのレフコールであったが今は違う。楽園での経験は、オルガマリーを君主に、所長に相応しき女傑へと成長させた。
「ごめんなさい、ライネス。少し居眠りし過ぎたみたい。車掌を困らせてはいけないわ、すぐに降りましょうか」
「あぁそうだとも。外で弟子を待たせている。放置しているのは憐れで可哀想だとも。すぐに我が陰気臭いロンドン・・・その集合住宅へと向かおうじゃないか」
ポケットに手を入れれば、ロンドンへの乗車チケットが入っている。それを係員に渡し、颯爽と列車を降りる。
「待たせたな、我が弟子!お詫びに私の荷物を持つ喜びを与えよう!ほら持った持った!」
「またそんな無茶ぶりするんですからもう・・・!」
列車を降り、ライネスと親しげに話す少年を見て、オルガマリーは動揺と多少の安心を同居させた複雑な感嘆を漏らす。
「・・・藤丸、立香・・・」
「あ、お疲れ様です。ロード・オルガマリー。いつも師匠が御世話になって・・・」
「余計なおべっかをいつの間に覚えたこの弟子は。私も彼女もロードだ、自分の面倒は自分で見ている!口より手を動かせ、君は男としての腕力があるだろう!」
トランクやら何やらを持たされる立香を見て、思い至る。今回は楽園カルデアの取り組む特異点ではなく、自分は一人のプレイヤーとして呼ばれたのだと。そして、彼もまた。
「───・・・」
ロンドンの澱んだ空気。そして遥か彼方に聳え立つ『漆黒の塔』。ロードを名乗る未成熟なエルメロイ、いつの間にか弟子になっている藤丸。そして、そんな中で正しい歴史を、記憶を保有している自分。この特異点の目的は、一体なんなのか。いや・・・──
「・・・大事なのは、『何故やったか』だったかしら。ライネス?」
「?その通りだが・・・なんだいきなり」
進んでみれば解ること。サクッと現状を割り切り、オルガマリーは今を受け入れる事にした。単純に、懐かしい顔に出逢えた事は嬉しくもあり、ロンドンに脚を運んだのも久々なので。成り行きに任せるのも悪くはないと開き直り。基本、成るようには成ると信じて。
「なんでもないわ。ほら、案内ヨロシク」
「解っているさ。行くぞ、我が弟子!」
「解ってま・・・うわ重い!」
二人のロードと、一人の弟子。不思議な組み合わせの三人は住宅へ向けて歩き出す・・・
~~ロンドン・街道
「あの塔、大きいですね。あれはなんです?」
藤丸が声を上げる。其処にあるのは時計塔・・・なのだが、黒く聳え立つ全くの別物を時計塔だと認識しているのか、ライネスは説明を行う。
「魔術師が誇る知識の精髄、妄執が作り上げた白亜の塔。根源を求めると言いながら、ほとんどが権力抗争に明け暮れるクズどもの巣さ」
「十二の君主とそれに連なる魔術師が構成する、聖堂教会やアトラス院と合わせて三巨頭の勢力の一つね」
オルガマリーも補足を行い、話を合わせる。難しい顔をしてばかりでは怪しまれてしまうし、何より現状の把握が第一である。
「じゃあ、二人ともロードだから偉いんですよね?」
「オルガマリー、見たまえこれが我が弟子だ。皮肉と嫌みたっぷりに解りきった質問を投げてくる。師匠ながら嘆かわしい。誰に似たのやら・・・」
「育成は完璧のようね」
どういう意味だそれは!?ぷんすこ怒るライネスをスルーし藤丸に更なるレクチャーを行う。そういえばリッカも、魔術師の概念には疎かったわねと思い出しながら。
「アニムスフィアは天体科の眉唾変人部門、そしてそちらのロード・ライネス様は最下位の現代魔術科。どちらもロードとしては微妙かつ鼻つまみの立ち位置よ。まぁそれでも特別と言えば特別だけど」
「楽しい毎日だぞぉ?後継者の末席な私だったが、幼い頃から食事に毒を仕込まれていた。非常食を持ち歩くようになったきっかけだがこれがまた不味くてね。安全かつ美味しい菓子店に目がなくなったのもそれが原因さ」
頂点の椅子となれば、必死になり誰もが座りたがるものである。ライネスはそうだったかもしれないが、今も昔もオルガマリーにはどうでもいい事だ。昔は父が座り、勝手に死んで勝手に座らされたものだし。今はそんな椅子よりずっとずっと素敵な家と家族があるのだから。
「あなた、開位は持っているのよね、藤丸?」
「そんな・・・気がしていたような・・・」
「おいおいオルガマリー。過大評価にも程があるぞ?開位は上位でこそ無いが、自分の魔道を確立したロクデナシ証明マークだ。こいつのどこを見たらそんなまともな魔術師に見える?」
ちなみに色位を獲得しているのはケイネス、最高位の冠位を獲得しているのはダーニックである。世界的な背景から見て、ダーニックは基準繰り上げや魔術師の不足から任命された所もあるが・・・ケイネスは紛れもなく、魔術師として優秀かつ有能であったのは間違いない。
藤丸は恐らく人理焼却を乗り越えている筈だ。魔術師未満でありながら、人らしさを忘れない魔術師。自分だけの魔道を確立したに相応しい称号だろう。自分の所にいる尊みクソザコドラゴンは置いておくとして。
「ごめんなさい。まともな魔術師=ロクデナシだものね。これからもライネス師匠の下で学びなさい。素晴らしい教師よ。反面が枕詞につくけれど」
「はははは。一眠りしたら随分弁舌にキレがあるじゃないかオルガマリー。たすけてやだやだロードなんてできっこなーい!なんて喚く新米ロード様も偉くなったねぇ?」
「そんな時代もあったわね・・・」
「なんで君そんなに風格あるんだい?寝て根源にでも繋がったかな?」
(仲いいんだな、この二人・・・)
荷物持ちの藤丸から見て、愉快なやりとりをする二人はそう見えた。そしてそんな愉快なままに、三人は集合住宅へ脚を踏み入れる──
集合住宅
オルガマリー「──静かすぎるわね。音声封鎖もしていたの、ライネス?」
ライネス「いや、そんな覚えはない。結界は張っているが・・・むっ」
静寂の住宅街に、奇怪な足音が響く。三人の前に現れし、豪奢な作りの操り人形・・・
立香「オート・マタ・・・!?」
オルガマリー「良かったじゃない。ファンからのプレゼントよライネス?」
ライネス「骨董品集めは趣味じゃない。むしろ私は買う側だ。ヘイトという商品をイヤと言うほどな。──丁度いい、藤丸。『ロード』の腕前を見ていきたまえ」
ライネスが言葉と共にオートマタの前に出る。そして、オルガマリーも当然のように、太もものホルスターからオレンジと白のカスタム銃を抜き放つ。
「君もいてくれるなら全力に問題はないな。私を護りながら戦ってくれるだろう?」
「トリムがいるでしょう?あなた」
藤丸「二人とも!前──!」
藤丸が言い切る前に、ノズルフラッシュと銃声が響く。瞬きのうちにオートマタは額を撃ち抜かれ、倒れ伏す。
オルガマリー「
『気をつけてね、オルガマリー』
目的は解らずとも、友と平行世界の親友を護るために。オルガマリーは決意の銃弾を撃ち放つ──
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