~
「だって私!まだ誰にも!一度も誉めてもらえて無かったのに──!!」
「オルガマリー所長ぉおぉおぉっ!!」
~
「くっ・・・所長・・・っ・・・」
オルガマリー(また回想や誰かの思い出で私が死んでるのね・・・)
アイリーン『新米プレイヤーさんがあなたを好きになる比率は少なくないみたい。素敵で可愛らしく、気弱なヒロインと認識させてからの・・・』
~
レフ「オルガマリー、ボッシュートとなります」
オルガマリー「何度目なの~!?」
テロットテロットテーン~♪
(カルデアスに着水する音)
~
オルガマリー(・・・ごめんなさい・・・お見苦しい醜態とトラウマを提供するなんてとんだ地雷じゃない・・・)
ライネス「おいどうしたオルガマリー?顔色が悪いぞ?」
「ごめんなさい、デスレコードを更新していたの」
「!?」
「──どうやら、お互いに現状を把握できたようね。それが大切な人の死というのは痛ましく、辛いものだけど」
扉を開け、対面したライネスの兄の立場にして本当のロード・エルメロイ二世・・・変わり果て、最早動かぬ死体に成り果てた彼を見た事が功を奏したのか、ライネスと藤丸は記憶の改竄・・・或いは認識阻害から脱した様だ。皮肉にも、魔術師からしてみれば不要とする情という不確定要素によって。
「そうだ・・・私は何故自分がエルメロイ二世だなんて思っていた?どうしてそんな思い込みをしていられた?」
自らの境遇、環境、そして人となり。それら全てをまとめて忘却する愚昧極まる失態。自分には無縁とタカを括っていた傲慢、思い上がり。それを他ならぬ自分が演じてしまった事にライネスは衝撃を禁じ得ない。
「どうして・・・兄上が・・・」
何故かも、どうしてかも解らず。いつの間にか親愛を懐いていた者の永眠。それはライネスの端正な美貌を、悲痛に歪ませるには充分だった。
「・・・ライネス」
言葉を発せず、目を伏せるライネスにオルガマリーは声をかける。友として認識されているか、今はもう解らないが。
「解き明かしましょう。『何故兄は死んだのか』『何故殺したのか』。それを今から、私達で解き明かすのよ」
「オルガマリー・・・」
「理不尽に奪われて、泣き寝入りしておしまいだなんてあなたらしくない。奪われたものは必ず取り返す。殴られたら殴り返す。──奪われたエルメロイ二世の命と尊厳に匹敵する一撃を、犯人に思い切り叩きつけてやりましょう」
動揺していない訳ではない。楽園にて見知った彼が死んでいる事実に、まだ納得も理解も追い付いていない部分もある。だが、それ以上に絆の深いライネスの胸中は荒れているだろう。だから、誰かが冷静さを取り戻させ、為すべき事に向き合えるようにフォローしなくてはならない。自分もパニックになっている暇は無いのだ。
「・・・ふん。訳が解らない事ばかりだが、これは極め付けだな。まさか窮地で、君に励まされ諭される日が来るとは。見た目に違わず随分頼もしくなったじゃないか、オルガマリー?」
「いつまでも子供じゃいられないのよ。大人になったら、独り立ちしないと。あなたも今のうちに大人の準備をしておくのね、未来のエルメロイ二世さん?」
「言ってくれる・・・!いいだろう。乗せられてやろうじゃないか!我が兄上の敵討ちに弔い合戦だ!」
所長式ケツ叩きは上手く嵌まったようだ。泣きそうに歪んでいた顔に、意地悪げにして風格に満ちた笑顔が戻る。やはりこの小悪魔系ロードはそうでなくては。
(ついでに次期当主のマジ泣き三秒前の写真もゲットできたのは幸いね。楽園に帰ったら胃薬代わりにロードエルメロイ二世に渡してあげましょう)
網膜に写った映像を聖杯でデータ化し、保存する。思わぬところで現代科との交渉材料がゲットできてラッキーである。魔術師の弱みなどそう握れない。しかし故意ではない。励ましたら可愛らしい泣き顔が網膜に飛び込んできただけである。
『ライネスちゃんは立ち直ったわ。流石、オルガマリーと同じ君主の器ね。では、次は・・・』
「所長・・・所長、なんですよね・・・!?」
次にオルガマリーは、藤丸の沈静化に着手する。問題は割と単純だ。藤丸立香という存在は、必ず物語の中心に招かれる因果を持っている。リッカがそうであるのなら、平行世界の藤丸が同じでない筈がない。エキストラやモブに収まらない役者なのだ、藤丸立香という存在は。本人が何を演じたいか、その役に見合う心身かなどお構いなしに世界がキャスティングしてしまうのが業が深いが。
『私の意見なのだけど。彼にはまだ、全てを話すのは早いと思うわ。『オルガマリーが生きている』と彼が認識すれば、間違いなくあなたの為に無茶をする筈だもの』
(そうね・・・)
目の前に、あのとき助けられなかった存在が唐突に現れたら。今度こそ、助けられるかもしれないのなら。彼は全力でそうするだろう。人が懐く当たり前の善性。彼はきっとそれだけを武器にして立ってきたのだから。ならば・・・
「・・・──残念だけど、私はあなたの思う存在ではないわ。私は『アイリーン・アドラー』。何処かで死にかけていた、或いは死んだ娘の存在を依代にして召喚された疑似サーヴァントよ」
「えっ・・・」
「この依代の記憶は特異だけれど、あなたの事も記録されているわ。──この娘はもう、死んでいるのよ」
生者ではなく、死人の影として。嘘と真実を織り混ぜた言葉にて立場を明かし、真相は伏せながらも彼の無茶に繋がる望みを断つ。
「オルガマリー所長を、依り代にした疑似サーヴァント・・・」
「アイリーン・アドラー・・・!ホームズをただ一人出し抜き敗北させた女傑じゃないか!そんな大物にあのヘタレが選ばれただって!?君もなのか!?」
「(君も・・・)幻霊で、霊基が足りないところを器で補ったの。一話限りのゲストだから、ね」
「・・・判定が良く解らないな。アイリーン・アドラーが幻霊なら、作者の都合で出されたぽっと出の極みであるモリアーティ教授もその括りなのか・・・?」
(『ブフッ──www』)
二人して、ライネスの酷い言い様に吹き出してしまった。犯罪界のナポレオンとまで言われ、巨悪と名乗るに相応しい彼の新たな渾名。ますます楽園に帰還しなくてはいけない理由が出来た。リアクションが非常に楽しみなぽっと出黒幕おじさんの名前を手土産に届けに行こうと所長は固く決意したのだった。
「・・・そう、ですか。でも、良かった。こうしてまた、どんな形でも所長に会えて。・・・その、アイリーンさんは戦闘に長けていたんですか?」
「それだそれだ!さっきの戦闘のこなれ具合はどうだ、オルガマリーのカタログスペックであれほど巧みに立ち回れるはずがない!だってオルガマリーだぞ?有能さのほとんどをメンタルで打ち消してる勿体無いの極みといえる性能だぞ?あのスタイリッシュの出所は何処からなんだ?」
「あぁ、実は私バリツを極める課程で神代魔術を修めたの」
『!?』
「突然変異で神代の英雄レベルの肉体を生まれもって所持していた私は、ハワイでお父さんに神代魔術と道具製作術を学んでロンドンでオペラを習い、護身術代わりにパンクラチオンを初めとした世界中の格闘技術を習い変装術を駆使して歌手として生きてきたのよ。ちなみにホームズにバリツを教えたのは私で、ライヘンバッハに落ちたモリアーティに止めを刺したのも私。死にかけていたホームズを助けたのも私よ」
『!?!?!?』
大切な相棒が突然自分の設定を盛りに盛ってきた・・・その驚愕の盛りこみっぷりにいつもの落ち着いた女性としての在り方を崩しガビーンとなってしまうアイリーン。オルガマリーの研鑽を、全て受け持つ形となってしまったのだ。
「し、信じられない・・・」
「当事者が言うのよ、間違いないわ。それとも何?あなた、私の波乱の人生を疑うのかしら?」
「め、滅相もありません!よろしくお願いいたします!アイリーンさん!」
「・・・それも、ワトソンが語らなかった真実ってヤツなのかい?アイリーン?」
「そういう事よ。私の中の少女の記憶に、あなたは残っているわ。意気投合できた、距離の近い親しい人。・・・とね」
その評価を受けたライネスは、静かに帽子で目元を隠した。今目の前にいるのはアイリーンだと伝えられても、なお。
「・・・ふん。あのヘタレめ。友人、と呼ぶんだ。そういう関係は」
友達のいなさそうな彼女らしいがな!と、照れ隠しにアイリーンを名乗るオルガマリー・・・ややこしいので、これからはオルガマリーと呼称させていただくが・・・の背中をぺしぺしと叩く。その嬉しい言葉に・・・
「──ふふっ」
付けた悪の仮面が、ちょっとずり落ちるオルガマリーであった。
『あわわわ・・・楽園に帰ったら頑張って色々学ばなくちゃ・・・』
そして、自分自身の存在の肥大化に戦々恐々なアイリーンであった。
オルガマリー「とりあえず、現状把握に努めましょうか」
ライネス「あぁ、私は変わらず君をオルガマリーとして扱うぞ。思い込みとはいえ、さっきの気安い掛け合いはとても新鮮かつ楽しかったからな」
「御自由に。私も同感だもの」
ライネス「気持ちが通じているようで何よりだ。何を隠そう、実は私も」
立香「師匠!アイリーンさん!此処に何か書いてあります!」
ライネス「・・・弟子ぃ~!」
『M』
「・・・M・・・?」
~
神『ホウジョウエムゥ!!』
アイガッダビリー
~
「関係無いか・・・M・・・マスター・・・マシュ・・・」
(記憶改竄、認識阻害・・・記憶・・・メモリー──)
~
ムネーモシュネー『私は、もっと知りたいです。楽園の楽しい記憶。皆様の、笑顔に満ちた物語。それを、私は永遠のものとしたい──』
~
「・・・藤丸君。ムネーモシュネーってご存知?」
藤丸「え、・・・すみません、あまり・・・」
ライネス「記憶の女神、確かギリシャ辺りの女神だったか?なんだ、神の悪戯とでも言う気かな?」
「・・・いえ。そうね、『
オルガマリーとして知る事は、アイリーンが知っていてはおかしい。そういう事にして、思案を打ち切る。ホワイダニットから考えて、『楽園のムネーモシュネーがこの様な事をする理由がない』考えられる線はいくつかあるが──
ライネス「ッ!下がれ二人とも!」
オルガマリーの思考を打ち切るかの如く、忌むべき訪問者が現れる。
オートマタ「「「エルメロイ二世・・・?」」」
急転直下の事件は、真相を求める探索者を翻弄し続ける──
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