人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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藤丸「何故忘れていたんだオレは・・・!オレはマシュを心から愛しマシュの人生を彩るために生きる男藤丸立香・・・!オレの身体の九割を構成している要素を忘れてたとか狂ったか!オレ!一生の不覚ッ!」

ライネス「ちなみに残り一割は?」

「余計なお節介焼きと世話焼き精神です!」

ロマン『あぁ良かった!ギルが大事そうに聖杯を持って保護していたから何事かと思ったら、君の核の聖杯だったからね!混乱を避けるために皆には言ってないけど!』

ダ・ヴィンチちゃん『特異点デビューおめでとうオルガマリー!どうかな、怖いなら今すぐ呼び戻せるけれどね?』

オルガマリー『──。いえ、関わったのですから最後まで取り組みます。もしかしたら、私達が挑む戦いに、最高のアドバンテージをとれるかもしれません』

ロマン『?ロストベルト案件なのかな?』

オルガマリー『今、その戦いに挑んでいると思わしき藤丸君と合流しました。そして師匠、彼はカルデアの霊基グラフを刻んだトランクを所持しています』

ダ・ヴィンチ『本当かい?それはサーヴァントがきちんといるなら日の目を見ないものだ。・・・退去させられたのかもだ。国連辺りにね』

オルガマリー『解析したデータをそちらに送ります。そして同時に藤丸君の礼装は極地に対応した形のものでした。・・・おそらくこれは、『今までの地球の地理とは異なる世界』に対応した礼装なのだと推測します。──予測ですが・・・』

ロマン『・・・』

オルガマリー『ロストベルトの戦いにおいて、藤丸君のカルデアは敗北し、世界は終了したのだと予測されます。・・・詳しい話を聞く約束をしたので、このまま藤丸君の身辺警護に取り組もうと思うわ』

ロマン『・・・解った。ギルにはボクから』

ギル『いらん。全て把握している。お前の成すがまま、思うがままに戦い、楽園に帰参せよ。果てることは赦さぬぞ、よいな。オルガマリー』

オルガマリー『ふぁっ──は、はいっ!』

『心配はしておらぬ。だが──我はお前に期待しているぞ。ではな』

『・・・やるわ!じゃあまたあとで!』

ダ・ヴィンチ『あっ、ちょ!せめて通信は──!』

ライネス「なんだニヤニヤして。良いことでもあったのか?」

オルガマリー「最高にね!」

藤丸「???」




おとぎ話の人探し

「さて、この妙なロンドンを回るのはいいが、何処から手をつけたものやら。自分達の失われた記憶がどこまでか解らない以上、探してみる他無いんだがな」

 

ロンドンの、しかし妙なメルヘンさを湛えた町並みを三人は歩いていく。紫色のチープな空、そして歪んでいるような建物のテクスチャ。先にライネスが洩らした『おとぎ話』という指摘が決して的外れではない町並みを、世代も世界も異なる数奇な三人組が闊歩していく。

 

「まさかこの年になって自分探しとは辟易する。黒い歴史を越えた15だと言うのにな」

 

「本当の自分なんてそう簡単には見つからないものよ。それこそ、一度死ぬでもしない限りはね。・・・手掛かりは、あのダイイングメッセージね」

 

M、とだけ書かれていたメッセージ。それ以外は書かれておらず、また状況打開の手掛かりもまたそれ以外は手に入ってはいない。Mが指すものを見つけるしか無いのだが・・・

 

「マシュ、なわけないか。それにしてもなんなんでしょうね、ここ。ロンドンにしてはなんかこう、チープというかなんというか・・・」

 

藤丸から見ても違和感しか残らぬこの街、このロンドン。今一度調べてみようとオルガマリーがスキャンを開始しようとした瞬間──

 

「!?地震か!?なんだこの振動は!?」

 

世界が踏みしめられているような振動と共に鳴動する。身体の芯に響くような揺れが、一歩ずつの感覚で起きる。この現象、覚えがあるオルガマリーが空を見上げると・・・

 

「パッチワーク・ロンドン!パッチワーク・ロンドンだよ!ここはおとぎ話のパッチワーク!皆が幸せ!皆がいつだって笑ってる!」

 

「バニヤン・・・ポール・バニヤンね。おとぎ話のパッチワーク・・・」

 

御丁寧に吹聴しながら歩き回っているのは、最近楽園入りしたポール・バニヤン。おとぎ話の巨人が、おとぎ話のロンドンを伝え回っているという状況に、三人は顔を見合わせる。

 

「見覚えは?心当たりはあるか我が弟子?」

 

「いえ全く(キッパリ)。オレには最愛の後輩がいることしか覚えてないし思い出せません。今思えば所長やカルデアの事を覚えていたのも、マシュと共有していたからかも」

 

「そうか・・・。しかしアレはこの場所と無関係では無い筈だ。必ず手掛かりに繋がる何かを持っている筈!モブやエキストラならあんな目立たせないのがセオリーだからな!よしいけオルガマリー!コミュニケーションは任せた!」

 

「それ本当はエキスパートがいるんだけど・・・仕方無いわ、真似て見ましょうか」

 

方針を定め、オルガマリーはバニヤンの目の前へ飛翔する。気付いてもらえなくてはどうしようも無いので、分かりやすい様に眼前に、だ。

 

「わぁ、びっくりした!」

 

「突然ごめんなさい。可愛らしい大きなあなた、Mという単語に心当たりは無いかしら」

 

「あるよ!」

 

「あるのか!話が早くて助かる、私の日頃の行いが良かったからだろうな!やはり人は慎ましく生きなければいけないということだ!見習いたまえ弟子!」

 

「トリムさん、いつもお疲れ様です」

 

『私の使命ですので、御気遣いなく。ありがとうございます、藤丸様』

 

「何故其処でトリムなんだ!?」

 

「ありがとう。良かったら連れていってほしいのだけどよろしいかしら。肩にあの二人を乗せてもらって大丈夫?」

 

「大丈夫!バニヤンはとっても力持ちだから!」

 

「よし話は決まったな!オルガマリー!私達を運んでくれ!エスコートは任せるぞ!落とすんじゃないぞ!」

 

「所長~!お手数お掛けします~!」

 

翼を展開し、二人をバニヤンの肩に乗せて共に行く。巨人と共にロンドンの町並みを進み、『M』の心当たりへ進む──

 

 

「美味しくなって、ありがとう、ありがとう・・・美味しくなって・・・」

 

「なんだそれは。新手の呪術か?」

 

「極東の生けるサムライの珈琲の淹れ方よ。ことストイックさと強靭さにおいて、日本に勝る国柄は無いわ」

 

「わ、美味しい!」

 

「うぅむ、トリムのデザインも確か日本を参考にしたものだったか・・・?兄上も秋葉原支部に入り浸っていたな・・・」

 

(あるのね、秋葉原支部なんて・・・)

 

 

「お待たせ!此処がMだよ!」

 

バニヤンが立ち止まり、辿り着いた場所。舗装された道路に庭園、格式高い街灯に建物。この様相は、辺り一帯の歴史や財を保管する形式のもの。つまりこれは・・・

 

「まぁ、確かにMだ・・・museum、博物館ね・・・」

 

なんか思ってたのと違う。そんな表情を隠さないライネスの頬をむにりとつねるオルガマリー。いふぁいなにをするはなふぇ、と脛をげしげしやるじゃれあいをする中、精悍かつ黄金の雷鳴のような声、そして愛らしい幼女の声がかけられる。

 

「おう、帰ってきたかバニヤン!ん?客か?」

 

「おかえりなさい、バニヤン!」

 

「坂田金時・・・そして、ジャックちゃんね?」

 

オルガマリーは楽園に在籍している全ての人員を把握している。当然サーヴァントもだ。その名前を言った瞬間、藤丸も顔を上げた。同じように、心当たりがあったようだ。

 

「ゴールデン・・・、ジャック・・・」

 

「二人を知ってるの?ねぇねぇジャック、この三人なら見つけられるかもしれないよ!」

 

「探し物かしら?」

 

「そう!私達の友達が行方不明でね!見つけてほしいんだ!」

 

複雑そうに二人を見つめる藤丸に、バニヤンからの声に答えるライネス。そして、うんうんとライネスが頷く。

 

「子供の迷子か・・・。子供の狭い見識で迷子は苦しかろう。で、誰がいなくなったんだ?」

 

「それがさっぱり分からねぇんだ、ガール」

 

「はぁ?」

 

いなくなったのは解るが、誰かは解らない。健忘症な筈は無い。となれば、要因は絞られる。

 

「記憶の欠落・・・」

 

「いるべき誰かがいるのは解る。だがそれが誰かなのかは分からねぇ。鍵が博物館の中にあるって予想はつけてあるんだが・・・」

 

「邪魔がいっぱい博物館の中にいて、ジャックや金時だけじゃきりがないの。私は入れないから、助けを探していたんだけど。そしたらあなたたちがいて・・・」

 

となると、彼女らに協力すれば情報が手に入る・・・といった思案より前に。

 

「解ったわ。協力します」

「解った!この二人とおまけのオレに任せてくれ!」

 

力強く決断した声音が重なる。困っている人を助けるのは力あるものとしての義務と名誉。ノブレス・オブリージュを学んだオルガマリーと、一般的にほっとけない精神の藤丸の答えがシンクロしたのだ。

 

「所長・・・!」

「あなたなら、そう答えるわよね。解っていたわ。『濃い付き合い』だもの」

 

「ふふん、この仲間達の言う通りだ。友がいないのは辛いだろう。私達に任せておけ!」

 

二人に乗るように、ライネスも同意する。当然、善意からではない。結果的に善行になるだけで、目論みは自らの目的に準ずるものだ。

 

(神秘には因果がある。彼らと出会ったのが偶然とは言い難い。協力者は多い方がいいだろう)

 

人助けは、情けは人の為にするものではない。自分の利に繋がるからこそするものだ。ライネスは決断し、二人の腕を引き博物館へと連れていく。

 

「よぉし、では遠足と行こうじゃないか!任せたぞ二人とも、か弱き私を守ってくれたまえ!」

 

「師匠はか弱いんですね。オレはなんだと思います?──儚いんです」

 

「嫌な例えは止めなさい。大丈夫よ、死なせないわ。私が、二人ともね」

 

「アイリーン所長・・・!」

「オルガマリー・アドラー!」

 

「混ざってる混ざってる。・・・ジャック、バニヤン、ゴールデン。あなたたちの友達は、必ず見つけ出してみせるからね」

 

「頼むぜ、ビューティーガール!」

 

「気をつけてね。よろしくね」

 

「いってらっしゃーい!」

 

三人の友達と情報を集めるため、三人は博物館へと挑む──




博物館内部

ライネス「広いな・・・大英博物館の半分くらいはありそうだ。真面目に探していたら何日かかるかどうか・・・ん?何をしている、弟子?」

藤丸「彼女達の友達、心当たりがあります。まだ、誰かはハッキリしませんが・・・多分、合ってる筈」

オルガマリー「場所はわかる?」

藤丸「・・・図書室、或いは本がたくさんある場所。いなくなった友達は、きっとそこにいるような気がします」

ライネス「ほう。なら行くとしようか。弟子の直感を信じてみよう!」

エネミー「「「「「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!」」」」」

「ゴミ掃除も兼ねてな!さぁ頼んだぞ、ロード・アニムスフィア!トリム!」

オルガマリー「はいはい。推理はライネスに任せるわ。私は・・・そうね、ボディーガードやエージェントと──」

「ガァア、ァ──!?」

『即席クレジットカード型護身銃』

「行こうかしら」

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