人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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エネミー「「「「「「「◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!」」」」」」」

ライネス「数が多いなオルガマリー!加勢したいがトリムは別件でね!君の力を心から信じている!切り抜けてくれ!」

オルガマリー「問題ないわ(ノープロブレム)

藤丸「本当に、落ち着いた所長は頼りになるなぁ・・・」

「反射からの光学光線による全領域攻撃。人間の頭ならとっくに焼ききれている程の難解な計算の産物だ。戦闘に不安は無いだろう。それでは我が弟子よ。暇潰しがてら授業といこうか」

「授業、ですか?」

「あぁ。──まず魔術師全般は、サーヴァントを『境界記録帯(ゴーストライナー)』と呼ぶ。かつての偉人や英雄を指して、そう言うのさ。君は見たところそれらと付き合いが長いようだ」

「えぇ、それなりに」

「神秘がらみの事件では、探索者は考え方を変える必要がある。何しろ魔術や神秘は究極的にはなんでもありだ。世界を塗り潰せるし、飛行だって壁抜けだって人間の複製だって可能な連中だ。シャーロック・ホームズでも無い限り、まともな捜査は無駄だろう。だから大事なのは『誰がやった』か『どんな方法でやったか』じゃない。私達が探るべきは『何故やったか』だ」

「フーダニットや、ハウダニットではなく・・・ホワイダニット、ですか」

「あぁ。都合のいい創作の世界には『そんな世界があったらいい』や『自分もそんな世界に行きたい』といった動機があり作られる。サーヴァントだろうと、魔術師だろうと同じだ。余分を削りきった生命だからこそ、動機だけには嘘はつけないものさ。どんな存在もね」

「・・・何故、やったか・・・」

「つまり必要なのは、『誰がどうやって行方不明になったか』じゃない。『なぜ行方不明か』を探るべきなのさ」

「・・・全てには理由があり、何故やったかの理由がある。・・・解りました。忘れません」

「うん。じゃあ囮の魔術を強くしようか!オルガマリー!駆除をよろしく頼むよ!」

オルガマリー「ラジャ」

「えっ!?オレを囮にしてたんですか!?どうやっ・・・いや!『何故囮にしたんですか!?』」

「そうだ!決まってるだろう、楽しいからだ!」

「アイリーンさん!此処に諸悪の根源がいます!!」

オルガマリー(・・・何故かしら。あんまり他人事のような気がしないわね・・・)


あなたはだぁれ?

「さて、戦闘は君に見せ場を譲ったんだ。賢く知的な謎解きタイムは私に譲ってもらおうじゃないか、オルガマリー?」

 

「お手並み拝見と行こうかしら」

 

博物館を周回し、ようやく目星の場所たる図書室に辿り着いた一行。無数の本棚が立ち並ぶ場所にて、自信ありげにライネスが啖呵を切るに合わせて、オルガマリーは扉に寄り掛かった。ここにいる、何かがあるのだという予感を信じて。

 

「トリム、隠し部屋の類いは見付からなかったんだな?」

 

『はい、マスター。液状になって一通り確認しましたが、隠し部屋の類いはありませんでした』

 

(フワライドみたいね・・・)

 

球体になって現れたトリムが報告する。オルガマリーが戦闘、トリムがマッピング、ライネスと藤丸が謎解きという無駄のない布陣にてこの小さな事件の解決が図られる。

 

「可能性が一つ潰れたようだ。さて弟子よ。図書室にいるかもしれない姿の見えない相手を君はどうやって探す?」

 

「そりゃあもう見つかるまで探すんですよ!気合いで!」

 

「よし、君は補習の常習犯となる事だろう。いいかい?こういう場合はアプローチの仕方一つで手間が全く変わってくるものだ。愚者の徒労は才人の手慰みにすら及ばないものだからね。まぁ具体的には・・・」

 

そうライネスが呟き、にやりと笑った──瞬間。

 

「う、うぉあぁあぁあぁあぁあぁ!!?」

 

藤丸の断末魔が響き渡る。目の前で背中を見せていたライネスと『目があった』からだ。そう、首だけが、頭だけがぐりんと藤丸の方向を向いたからである。要するに、ネジ切れるレベルでライネスの首が回転したということだ。

 

「師匠っ!頸が!だってよ、ライネス・・・!頸がっ!!」

 

「直してくれるか我が弟子~」

 

「うわぁあぁグロい!グロいです師匠ッ!そういうの、そういうのホントダメなんです!幼い子が酷い目にあうのホント嫌なんですってば!!」

 

微笑ましい師弟の戯れの喧騒に──起きた変化をオルガマリーは見逃さなかった。『とある本棚』が、かすかにカタリと揺れたのだ。

 

「藤丸君。其処の本棚の右から三冊目よ」

 

「えっ!?あ、はいっ!」

 

「あ、こら!口出しは無用だぞオルガマリー!」

 

ホラーな師匠から逃れるように、本棚に飛び付く藤丸。ことりと本を抜き出すと、そのタイトルは『不思議の国のアリス』。そして手にとった瞬間──

 

『きゃっ!な、なにするの!』

 

「!──ナーサリー!」

 

喋る本。魔力反応。間違いない。探し人は此処にいた。そう──誰かの為の物語、ナーサリー・ライムである。

 

「大当たりね」

 

「半信半疑だったが・・・本が本体だったのか!サーヴァントというのは実に面白いな!」

 

そして、藤丸の記憶も断片的に思い起こされる。そう、第四特異点にて出会ったサーヴァントである、ナーサリー・ライムだ。同時に、名前を呼ばれた物語も自分が何者かを思いだし、形に現れる。

 

「え、わ、わたし・・・」

 

しっかりとした人の形を取り、自我を取り戻す。喋れるし、動ける。『さっきまで自身ですら忘れていた機能』を、思い出したのだ。

 

「喋れて、動けたんだ・・・」

 

「うん、そうだろう。『きっと忘れてるだろうと思っていた』。何故か解るかな我が弟子?」

 

「解らないという事しか解りません!」

 

「頭の弱い回答大変結構。──そんなのは決まってる。三人とも誰がいなくなったか忘れていたろう?おまけに忘れたタイミングまで不明瞭と来た。それがナーサリーとやらにも起こっていたらどうだ?」

 

『あぁ、成る程。自分が本であること、本から人になれることすらも忘れていたら・・・』

 

記憶こそが人格や魂を形作る。それがすっぽり抜け落ちれば自我を保てず、他人の記憶の比率が自身の比率を占めれば他者との境が曖昧なものになる。特殊能力を発動したまま、したということも戻れる事も解らなかったとしたら。

 

「そうすると単純な話。博物館でいなくなったと認識が違っているか、博物館でぼんやりしているのが気付かれていないか、だ」

 

「トリムに隠し部屋を探させたのは、監禁や悪意ある隠蔽の線を消し去る為だったのね」

 

「そういう事だ。なら透明人間だとか別の何かに化けてるのが定番だろう。なら、ビックリさせれば反応は起きると踏んだのさ。二度も三度もやりたくはなかったんで助かった。美少女の沽券に関わるしな」

 

そうして、探し物はしっかりと見つかる。あとはナーサリーが、あの三人の下へと帰れば万事解決だ。

 

「・・・わたし、バニヤンや金時・・・ジャックに思い出してもらえるかしら。皆が探してくれていたのを見ていたのに、思い出せなかったから・・・」

 

「大丈夫さ。友達っていうのはちょっと離れたりいなくなったりしたぐらいじゃ絶交になんてならないよ。君の事、一生懸命探していたからね」

 

「・・・あなたも迷子なの?」

 

「え?」

 

「『自分が何をしているか解らない』・・・そんな顔をしているわ。あなた」

 

ナーサリーの言葉に、藤丸は小さく笑った。その言葉は、鋭く心を打つ言葉だったからだ。

 

「──そうだね。オレもずっと迷子だよ。帰る家も、何処に住んでいたかも、何があってどうしていたっていう当たり前も・・・もう見つからないんだ。何処にあったのか、そもそもあったのかも、ね」

 

「つらいのかしら?」

 

「どうだろう。そんな弱音を吐ける資格は、もうオレには・・・無いと思うな」

 

「おーい、弟子!幼女との楽しいお喋りもいいが、本懐を忘れるなよー!」

 

「はーい!──さ、君を待ってる人達がいる。送っていくよ。今度こそ見失わないで、安心させてあげよう」

 

「・・・うん!」

 

藤丸はナーサリーを肩車し、入り口へと戻っていく。一部始終を聞いていたオルガマリーは、敢えて何も言わず何も考えなかった。彼の旅路が、生半可なものでないものを理解しただけで十分であったからだ。

 

「初心者向けの事件だったな。ロードが雁首揃えて解決するような問題でも・・・」

 

「そうでもないわ。──手懸かりの断片が見付かったわよ」

 

ピッ、とオルガマリーが紙片を投げて寄越す。そこには英語のスペルで『記憶』と書かれていた。その紙片を手にとったライネスは──

 

「・・・っ、ぐ・・・!・・・そうだ、そうだった・・・!思い出したぞ!私も君と同じだ、オルガマリー!私も君と同じ疑似サーヴァント!器に英霊を憑依させた存在だ!」

 

あのとき、ライネスが『君も』と口にした理由はこれだった。アイリーンの境遇が一時的な鍵となり、彼女の本質を一時的に引き出したのである。

 

「どうやらこの紙片、記憶を思い起こさせる媒体・・・或いは結晶の様なものみたいね。きっと藤丸君に見せれば何か思い出す筈よ」

 

「ほう・・・やはりお使いクエストには報酬があったということか。世の為人の為に人助けをした甲斐があったというものだ。よし!なら此処に用はない、ロリコンの弟子の下へ急ぐぞ!」

 

颯爽と駆け出すライネスの後に続き、オルガマリーも部屋を後にする。もう本しかない図書室を。

 

『夢や希望に満ちている筈の少年が『何もない』だなんて。本当に、彼の世界では何が起こったというのかしら』

 

(あくまで情報、事実として客観的に処理しましょう。彼が辿った旅路は、例えどんなものであろうと彼以外が変えてはならないものだろうから)

 

自分達なら変えられた、変えられるなどと思い上がらぬよう、自身を戒め、律しながら。この特異点の間は彼を支えようと決意したオルガマリーは、静かに図書室の扉を閉めて歩き出す──




マシュ『先輩!よかった、先輩が無事で本当に・・・!』

藤丸「マシュ・・・良かった。安心したよ。なんであれ、君の声が聞けて。状況を説明するから、整理してもらえるかな」

『はい!お任せください!』

オルガマリー「・・・」



『今回のレイシフトは、19世紀末のロンドンに特異点反応が起きたからです。そこに、先輩とエルメロイさんを連れてレイシフトしてもらったところ・・・』

ライネス「ロストし、死んだと言うわけか・・・」

『そうなります。ミス・ライネス。・・・特異点攻略がなければ、先輩は帰還できません。どうか・・・』

ライネス「あぁ、任せておけ!師匠たる私がいるんだ、大船に乗ったつもりでいるといい!」

『頼もしいです!それでは、よろしくお願いいたします!』

ダ・ヴィンチ『最早あの健気さには懐かしさすら感じるねぇ・・・すっかりリッカ君に調教されたものね、こちらのマシュは』

ロマン『ボクらがいなくても立派にやれているんだなぁ・・・。あ、オルガマリー。特異点に変動が見られた。向かうだろう?くれぐれも気を付けるんだよ』

(えぇ、勿論よ)

ダ・ヴィンチちゃん『あちらのマシュと、仲良くしないのかい?』

(えぇ。『その必要は無いでしょうから』。──また、何かあったら連絡します)

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