人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ロマン『カルデアとオルガマリーの聖杯の魔力シェア、完了。これで君の使う魔力はカルデアとボクが肩代わりできる。思い切り戦ってくれて構わないよ、マリー』

ダ・ヴィンチ『クラスカード、ブラックバレル、フリージアとアニムスフィアも万全かな?不調だったらすぐに言うんだよ?』

『ありがとう、二人とも』

ライネス「見たまえ弟子、新しい地形だ。バニヤンの言葉で言うなら新しいパッチワークというやつだ」

藤丸「みんな仮面つけてますね」

ライネス「どうやら地域ごとにテーマがあるらしいな。先はおとぎ話、こちらは仮面舞踏会。何かしらの意図があるのかどうか・・・」

マシュ『私達はそちらの特異点を、パッチワーク・ロンドンと呼称することになりました。そして宮殿内に、大きな魔力反応があります』

ライネス「ロンドン塔か。またいわくつきな・・・」

マシュ『すみません、機器に過大な負荷をかけているので、一旦通信を切りますね、先輩』

藤丸「マシュ」

『はい、先輩?』

「いつもありがとう」

『はい!どうか気をつけてくださいね、先輩』

「・・・あぁ。気をつけるよ」

ライネス「見せつけるじゃないか。さぁ捜査の再開だ!張り切っていこう!」

オルガマリー「行きましょう、藤丸君」

「・・・はい、アイリーンさん」


マスカレード

「宮殿に入ってみても、見渡す限りの仮面の人達ばかりね。まぁオシャレと言えばオシャレだけれど」

 

ロンドンの宮殿に招かれし一行。きらびやかなシャンデリアに照らされ、豪奢なホールにて仮面をつけた老若男女が踊り明かすマスカレード。その独特かつ壮麗な雰囲気を感じながら、三人は状況と情報を整理する。

 

「要塞の構えでありつつ、舞踏会の宮殿。さらにあちらには天文台、向こうは造幣局か・・・」

 

「世代も時期もまるで噛み合わないわね。まさに継ぎ接ぎ、パッチワークの銘に偽り無しといった所かしら」

 

「ロンドンって・・・すみません、ビッグベンエッジしか解りません」

 

「全く教養の乏しい弟子だなぁ!手間がかかる仕方ない弟子だなぁ!よし説明しよう!ロンドン塔は有名な世界遺産だ。ウィリアム征服王の作ったホワイト・タワーを始めに、リチャード一世とヘンリー三世が手を入れた要塞さ。が、なんせ歴史が長きに長いわけだ。時間と共に万物は意味と意義を変えていくものでね」

 

「途中から、身分の高いものを収監する監獄になったのよ。監獄の塔・・・あまり気軽に行きたくはない場所なのは間違いないわ」

 

うへぇ・・・と藤丸が肩を竦めた──その時だった。軽快な、そして、心を弾ませるような音が、ホール全体に響き渡る。

 

『あら。これはピアノの鍵盤を撫でた音ね』

 

(流石は一流のオペラ歌手。即座に思い至ったわね・・・)

 

『ふふっ。戦闘以外ならなんでも出来るのよ。ハワイで、お父さんに、習ったものね』

 

あ、その設定遵守してくれてるのね・・・そんな二人の軽快な会話とは裏腹に、ホール内のボルテージはあっという間にMAXまで高まる。その、ピアノの音色にだ。

 

「始まった!始まったぞ!」

 

「このピアノを待っていたんだ!さぁ踊ろう!此処からが、舞踏会の始まりだ!」

 

心に染み渡るような、しかしどこか切ないピアノの音色が満ち溢れる中、マスカレードは執り行われる。強く、弱く、優しく、滑らかに。そのピアノはまさに一流以上の腕前に他ならない。一度聞けば、例え工事現場の騒音すらも耳に入らないほどに清澄で、麗しく、素晴らしい。誰が聞いても、そのピアノこそがこの場の主役であることは明白だ。・・・明白なのだが・・・

 

「・・・ピアニストだけ、ここにいないのはどういう事だ?普通こういったものは中心で・・・ん?君?」

 

ライネスがふと、藤丸に目を見やる。──彼は、泣いていた。そのピアノの響きに。そのピアノの旋律に。涙を流し、拭うことなく聞き惚れていた。まるで、何かを思いだすかのように。そして・・・

 

「──サリエリ・・・アントニオ・サリエリ。オレは、あの人の奏でるきらきら星が大好きで・・・」

 

「(音楽家で、アマデウスではなくサリエリを思い描いた・・・)藤丸君。サリエリはどんなサーヴァントだったかしら」

 

「え?ぁ・・・、クラスは、復讐者でした。世間の【アマデウスを殺した】という風評のアーマーを着て、アマデウスを殺すという思想に塗り潰されていたサーヴァントで。・・・でも、とある場所で、オレは本来のあの人と知り合ったんです」

 

「素敵な出逢いをしたのね。じゃあ、そのサリエリの演奏と、今のピアノの演奏は同じものかしら」

 

「・・・すみません。ダメ絶対音感持ちで、声優の演じ分けくらいしか分からないんです」

 

「まぁ仕方ないだろう。我が弟子の難聴ぶりを責めないでくれ。教養も専門訓練も受けていない一般人じゃあどう足掻いても限界はあるだろうしね」

 

「・・・一般人は一般人らしく生きていけるのが幸せだと、オレはずっと思ってます。普通の生活、オレは大好きですよ。・・・ん?」

 

聞き惚れていたピアノの音が、唐突に止まる。それと同時に、浮かれていたマスカレードが中断され場がにわかに騒ぎ出す。落胆と共に。

 

「またか・・・君達も聴いたかい?この舞踏会の中で、一番栄えあるのがあのピアノさ!だけど最近、始まってからすぐ終わるようになってしまってね。・・・誰もがあの音楽を待っているんだ。最後まで、あの音楽を聴ける瞬間が待ち遠しい・・・」

 

情報を提供してくれた者に礼を言い、そしてライネスが考えをまとめる。これはまるで、誂えたような事件だと。

 

「師匠!あの人達の為にピアノの演奏者の安否を確かめにいくんですね!」

 

「は?そんな親切にもピアニストにも興味はないぞ?」

 

「あれっ!?」

 

「謎が養殖臭いという奴よ。『解ける筈がない』という自信と確信のもとに構築した謎や事件と、『さて、これはどうやったでしょう』というものでは熱意や仕組みに雲泥の差が出るわ。今回や前回といい、後者の線を見ているのでしょう?ライネス」

 

「そういう事だ。・・・これはもしかしたら、兄上を殺した輩からの挑戦状なのかもしれない。あくまで勘だが、こういう時の勘は大事にしているのさ」

 

そこに、どんなホワイダニットが隠れているか・・・そんな風に思案しようとした、その時であった。

 

「ちょっとちょっと君達ィ!」

 

スライディングめいた速さで、唐突にフレームインした胡散臭さに胡散臭さをブレンド、そして真心を込めて胡散臭さをぶちまけてミキサーに漬け込んだ胡散臭さのシュールストレミングがごとき仮面の老紳士が三人に慌てて声をかけてきた。

 

『あら、ぽっと出黒幕おじさんじゃない』

 

(親の声より聞いた声ね、今となっては)

 

『そうよねぇ。カルデアのジェームズはあなたを最高の美少女助手兼生徒兼娘と大絶賛しているけど・・・犯罪よねぇ』

 

まぁ正体なんてその内解るだろうと思うので。この知り尽くしたお爺さんの正体をアイリーンコンビはスルーすることにした。カルデアのお爺さんは座に還っていないので、楽園のあれやこれは知らない筈である。

 

「君達!ここではきちんと仮面をつけておきたまえ!この場所ではマナーではないかネ!?」

 

「すみません、マスカレードメモリは絶対使うなってとある子からキツく言われてるんですよ・・・」

 

「何の話!?仕方無い、アラフィフの親切でこれをあげよう。はい、金髪のお嬢さんにはこちらを」

 

「おやありがとう。どうだい似合うかな?似合うだろ?似合うだろぉう?」

 

「かわいいです!師匠!」

 

「だろうね!(o^-^o)」

 

「ボーイにはこれを。きっと似合うヨー」

 

「ありがとうございます!仮面かぁ・・・」

 

「はい、そこの聡明そうな少女には」

 

「あ、結構です(クロコダイルインローグ!!)」

 

「まさかの全身仮面!?最近の娘は変わってるんだネー・・・」

 

ダ・ヴィンチちゃんが悪ふざけで投射した仮面・・・ライダーの姿で一発芸をかますオルガマリー。なんなら決め台詞も言いたかったが脱線するので普通の仮面を着け直し、本題に入る。

 

「なんだか腰が弱そうでその実あざとげなお爺さん。あなたは一体誰ですか?」

 

「んー、君からは初対面めいた感じがしないナー。此処では名前を明かすのは御法度でね。そうだな・・・私の事は・・・」

 

目の前の老紳士は、自分の事をこう名乗った。名称を避け、しかし認識を共有するために口にした名は──

 

「『M』。・・・そうとでも呼んでもらおうか」

 

「エムゥ!?」

 

何故孔明が死んでいたのか。何故ダイイングメッセージを残していたのか、何故Mとだけ書き残されていたのか。そんな答えがただ一つしか無いような問いを投げ掛けてくるような超ド級のコードネームに、藤丸は思わずそう叫ばずにはいられなかった──




M「ん、どうしたのカナ?随分な反応をして」

ライネス(君、少しは反応を抑えたまえ!せっかくの手がかりだぞ?万が一、このアラフィフが兄上を殺した犯人だったらどうするつもりだ!)

藤丸(す!すみません・・・!彼が・・・)

オルガマリー(いいえ、それは無いわ。彼が本気で殺人を行うのなら、証拠や手がかりなど残す筈がないもの。彼はホームズですら証拠を突き付けられなかった犯罪界の・・・あ、コホン)

ライネス(もしかして、目の前のお爺さんに親交ありかな?まさか彼がモリアーティとかいうオチじゃないだろうな)

オルガマリー(アイリーンからの、受け売りよ。モリアーティを裏から操っていたのもアイリーンなの)

アイリーン『またハワイで習う科目が増えたわ・・・』

藤丸「さっきの演奏者の事、ご存知なんですか?」

「気になるだろうネ!しかし誰も知らないのだヨ!偏屈なピアニストでね。決まった時間に弾く以外は、一切の詮索が無用。おまけに住まいがブラッディ・タワーだからね」

ライネス「よりにもよってブラッディ・タワーか・・・!・・・姫様のようにとらわれたピアニストの異常・・・か。興味はあるな」

M「おやおや、会いたいのかね?それはよくない。・・・よくないが、よくない事はやりたくなるのが人の性!よーし!ついてきたまえ!特にそこの綺麗な銀髪の君!」

オルガマリー「!」

「『君とは仲良くなれそうだ』。ここでお互い、いい関係を築こうじゃないか?」

「喜んで。蜘蛛のようなお爺さん?」

アイリーン『やっぱり、自分の仕込んだ教え子の在り方は間違えない、か』



???『こちらも、行きますわ』

???『・・・解った』

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