人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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アラフィフ「見張りの警備はこんな所だネ。どうかな?私としては変装か火事場泥棒的などさくさ紛れを・・・」

オルガマリー「厳しいところとそうでもないところがありますね。ですがまぁ無力化を狙わないのなら三秒あれば制圧は・・・今回は潜入・・・」


藤丸「凄く楽しそうに話してる・・・」

ライネス「悪巧みしている時のあのイキイキぶりはどうだ。君はああなるなよ、弟子。・・・時に我が弟子、君は今の私達をどう思う?」

藤丸「どう、ですか?」

「そうだ。私達は記憶を取り戻したかもしれないが、それが全体のどれだけなのか未だ不明瞭だ。レテの川の水を飲んだようにね」

「アエネーイスに書いてある転生する前の魂が飲む忘却の水ですね?」

「少しは勉強しているな、弟子。高校生は金を見ればギルガメッシュを思い起こし、ゾロアスター神話に詳しいと兄上が言っていたがあながち間違いでもなさそうだ!・・・あぁそうだ、思い出しついでに紹介しておこう。私の中にいるサーヴァント、司馬懿殿だ」

ライネス(司馬懿)「別に覚えなくてもいい。非効率だからな。人理の揺らぎがある以上、英霊として協力する。しかし融合は非効率であり、意識の表にいるのも面倒でな。現代に詳しい娘に操作は任せている」

藤丸「孔明さんと考え方が似てますね」

司馬懿「一緒にするな」

藤丸「はいすみません!!」

ライネス「もう孔明に走らされるのは御免なのだそうだ。・・・なんの関わりの無い私に司馬懿殿が組み合わされた理由も、いずれ解き明かせるといいんだが」

オルガマリー「二人とも、スリリングな旅は好きかしら」

ライネス「あぁ大好きさ!」

「よろしい。じゃあ登る方法は決まったわね」

「登る、方法・・・?」




ブラッディ・タワー・トゥーサムタイム

ブラッディ・タワー・・・血まみれの塔。その物騒な名の通り、この塔は多くの血を吸っている。その塔は貴族専用の幽閉塔であり、細やかな豪華さかつ贅沢と引き換えに、二度と出ることは許されなかったとされる終身の流刑地でもある。

 

今も観光地として伝わるブラッディ・タワー。エピソードとしては15世紀後半にエドワード四世の二人の息子であるエドワード五世幼王とその弟リチャードが幽閉された後行方不明となった事件が有名だ。エドワード五世の後に王座に就いたリチャード三世が、地位のために二人を暗殺したとの説もある。二人の遺体は、ホワイトタワー付近で白骨化した姿で見付かったという。現代に通ずる今でも、手を繋ぐ者達や子供をブラッディ・タワーで見かけたとの噂が堪えない、本物の曰く付きスポットなのである。

 

「私もピアニストが気になっててネ。一度お目にかかりたいが一人だけでは難しい。するとほら!ちょうどいい所に君達がやって来たじゃないか!これぞ恩寵蜘蛛の糸。是非是非協力していただきたい!」

 

『ろくでもない事に躊躇いなく引き込み声をかける辺り、貴方は何処でも変わらないわね。ジェームズ・・・』

 

呆れるアイリーンに反応したのかくしゃみをこぼすM。気を取り直し動機を伝える。ちょっとした好奇心、幻のピアニストに会ってみたいだけ。アラフィフは好奇心でいっぱい!身体はいっぱいいっぱい!などとジョークを交えてオルガマリーにローキックされたのはご愛嬌だ。

 

「で、具体的にはどうするつもりなんだい?」

 

「話は簡単、そちらのオルガ君と話をつけた。私が警備を引き付ける。君達はそこの壁面からするするっと登っていく!グッドプランニング!!」

 

「オレ達がめちゃくちゃ力業じゃないか!か弱い師匠と女傑の所長だからって無理があるだろ!」

 

「君は老人虐待のケがあるのかナ?君達はうら若い。若さに溢れエネルギッシュだ!疲れは一眠りで抜ける!シャワー浴びたらさっぱりする!筋肉痛はすぐに来る!アラフィフは違うの。適材適所なのだよボーイ?」

 

ムカつくゥ!歯軋りする藤丸をなだめ、オルガマリーがライネスと藤丸に風除けの魔術と隠蔽の魔術をポンとかける。

 

「はい、じゃあ私から離れないように。サクッと登るわ、離したら多分死ぬわよ」

 

「え?死ぬって何が・・・──」

 

「弟子、喋るな。舌を噛むぞ──!」

 

そう二人が言うか早いか──オルガマリーが二人を抱き抱え、塔へと最大速度でダッシュをかます。減速を微塵もしない、激突確定の超高速走行をだ。

 

「ぶつか───」

 

「◼️◼️」

 

ぶつかる瞬間にオルガマリーが脚部にアキレウスの鎧を限定召喚し、同時にメディア譲りの高速神言を発動し重力制御、同時に重力と反重力と接地圧の計算をダ・ヴィンチちゃんのクラスカードと聖杯を掛け合わせ算出。問題を全てクリアした事を確認し──

 

「いってらっしゃーい!」

 

そのまま塔の外壁を駆け上がって行く。アキレウスばりのダッシュをすることにより最大限の時間短縮とスリリングさを追求できて一石二鳥だ。精神をシャットアウトしたライネスと、断末魔の絶叫を上げる藤丸の対照的な態度が初々しい。塔を駆け上がるなど得難い体験だろう。外壁を駆け抜け天辺に付くなど特に、だ。

 

「おぉ、僅か数秒で天辺だネ!はやーい!よし、私もなんとかして入るとするかな。ちょっと君?」

 

「ん?」

 

迅速すぎて置いていかれ、あれもしかして私が引き付ける必要微塵もなくない?なんて所感を懐きつつも手筈通り兵士に声をかける。適当に撒いてしまえば後はどうにでも──その時だった。

 

【──!!】

 

「ち、また亡霊どもか!」

 

兵士が速やかに戦闘体勢を取る。辺りを取り囲うように現れしは仮面を付けし亡霊、洒落たゴーストの類いだ。ロンドンは亡霊を好む土地柄だが、仮面をつけたシャレオツな亡霊はここだけぐらいのものだろう。名物にしたら売れそうだネ、などといった他愛の無い所感の即座に、魔弾搭載の棺桶が火を噴いた。瞬く間に幽霊が霧散していく・・・が、消した分だけ幽霊は涌き出てくる。

 

(大したことはないが数が多い・・・やだナー。長期戦や持久戦とかアラフィフが一番嫌うやつだよネ!)

 

応戦しながら、数に押され始めるM。ミシミシと言い始める腰。大分まずい状況である。引き寄せるつもりが無限リポップゾーンだった時のアラフィフの気持ちを答えなさい。ハハッナイスジョーク。オーミステイク。どうでもいい所感を並べながら、打開策の見えない応戦を続けていくアラフィフ。

 

(最悪兵士を囮にするのもありだが・・・いや、止めておこう。絶対オルガ君やあの少年そういうの好きじゃないよネー)

 

躊躇いなく他人を犠牲にするアラフィフでは、これからの関係に傷が入るだろう。彼らは恐らく、この『特異点』のジョーカーに成りうる存在だ。妙な所で切りババになるのだけは避けたい。ファイブカードの決め手になってもらうのが最大の理想だ。・・・とは言っても、現実は非情な訳で。

 

(援軍頼もうにもナー!遥か彼方だもんネ、期待もしちゃいけないよネ!仕方あるまい、こうなったら採算度外視、消滅覚悟で宝具でも──、!?)

 

瞬間、『異常に膨れ上がった魔力』を感知しアラフィフが真上を見上げる。塔への門を背にし戦っているので、丁度真下から塔を見上げる形だ。──外壁から一直線に落ちてくる、橙と白の流星をアラフィフは見た。

 

「──オルガ君!?」

 

なんと、オルガマリーが高速で塔の頂上の部屋からダイブし、外壁を駆け降りながらアラフィフの加勢にやってきたのだ。銃を構え、狙いを定めながら──外壁を蹴り、戦場の真上へと躍り出る。

 

「伏せて!」

 

叫ぶと同時に、空中に展開した魔方陣の足場を蹴り、勢いを付けて身体を猛烈に回転しながら銃を放ちまくる。回転を加えられながらも、銃弾は数多犇めく幽霊達を正確無比に撃ち貫き、瞬く間に全滅の運びとなる。オルガマリーは対幽霊用に、銀の弾丸を大量に生成かつストックを行っているのだ。それら総てを使いきり、幽霊らを総て討ち果たし、アラフィフの目の前にふわりと着地する。

 

「無事ですか?M」

 

「オルガ君!助けにきてくれたの!?わざわざ!?」

 

「あなたは見捨てた方が世のため人の為でしょう。あなたが死んだら九割九分九厘は大喜びするでしょう。──単純な話です」

 

薬莢、マガジンを排出し交換しながら、さも当然とばかりにオルガマリーはアラフィフの肩に手を置く。

 

「私は、あなたが死ぬと深く哀しむ一厘側の人間なので。ライヘンバッハ以外で死なないでください、Mさん」

 

「────」

 

「兵士は気絶してしまったようですね。好都合です。このまま頂上に行きま・・・、・・・どうしました?」

 

何か信じられない様なものを見た。そんな目線を送ってくるアラフィフに、オルガマリーは言葉を返す。何か変な事を言っただろうか。どんな悪人にだって悼む人はいるだろうといった意味合いでもあるのだが・・・

 

「いや。なんでもないさオルガ君。・・・この誠実なる助け船には、いつか真っ当な形で返礼をするとしよう。素敵なアクションを見せてくれた、礼がわりにもね?」

 

「期待しています。で、どうします?魔法陣で転移か、内部を登っていくか。もたもたしているなら後者を」

 

「オルガ君!一刻も早く転移しようじゃないか!仲間を待たせてはいけないからネ!」

 

「はいはい、そう言うと思ってました」

 

同時に魔法陣に入り、転移魔術にて先にいるライネスの魔術回路を目印にワープする二人。無事に、塔への侵入作戦は成功である。

 

「私の目に狂いは無かった・・・!どうかなオルガ君。君さえ良ければ私が君を巨悪のボスにしてあげるのも」

 

「間に合っています。あなたにもう仕込まれ切ったあとですから」

 

「その言い方は止めよう!?弁明しようもなく生々しい悪の響きだから!腰が痛いって最悪の意味になっちゃうから!?」

 

ワープする寸前まで、やかましいアラフィフなのでしたとさ。

 

 

 

 

 




ライネス「お帰り・・・そこの生まれたての子鹿みたいな弟子を護りながらのオートマタとの戦闘は堪えたぞ・・・」

藤丸「ここ、腰が・・・世界が高い・・・」

シェイクスピア「いやはや見事見事!我々の勝利ですな!我輩応援していただけなのですが!あ。改めまして。吾輩ウィリアム・シェイクスピア。好奇心でピアニストに会いに来た作家でございます!」

オルガマリー「うわっ」

「そんな露骨に面倒臭げなリアクションをなさらずに!引用は多分そんなにしないでしょう!」

ライネス「ちっ・・・私達が来た後には拐われた後か・・・む!?」

兵士「「「動くな!」」」

女王「・・・なんの騒ぎだ」

オルガマリー(セイバー・オルタ・・・!?彼女もまた、役割を担っているのかしら・・・)

M「これはこれは、女王陛下にはご機嫌麗しゅう」

女王「お前にはここに近寄るなと言った筈だが」

オルガマリー「顔が悪人だからでしょうか」

女王「いかにも」

アラフィフ「擁護!カバー!フォローしてよオルガマリー君!?仲間の絆は!?」

女王「・・・ピアニストも消えているか。お前達が拐かしたのでは無いのだろうな?」

アラフィフ「滅相もない!疑うのならこのアラフィフのみに!この娘達特にオルガマリー君は清廉潔白と保証いたしましょう!」

オルガマリー「教授・・・」

藤丸(・・・よし。二人とも、ここはオレがハッタリをかまします!)

ライネス(ハッタリ?何を──)

藤丸「女王!オレ達なら、消えたピアニストを必ず取り戻してみせましょう!オレはともかく、こちら二人は魔術師の頂点に位置する名門の君主なのです!」

女王「・・・ほう。あの痛快な塔登りの魔術は見応えがあった。──悪党を処刑するのも面倒だ」

M「アラフィフ死ねども娘は死なず!!やったね!」

「ならば申し付けよう。この事態を解決した末には褒美を与え、しくじれば死を賜す。構わぬな」

ライネス「──えぇい!請け負いましょう!弟子と我が友が、見事解決して御覧にいれる!」

オルガマリー「Yes, Queen(はい、女王陛下)・・・」

???【・・・】

(──事を構えるのは、また後にしましょう)

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