人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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いつものように更新しようと思ったら、明けないメンテナンスで愕然・・・

ギル「未だメンテが明けぬ」

エル「明けないとどうなるんだい?」

「知らぬのか。叙事詩が紡がれぬ(更新する場面を必ず見返してから更新するため)」

公式がメンテナンスしてるから今日は更新しないなどとは雑種根性なので、今日だけ楽園サイドのお話しを更新致します。

不手際、誠に申し訳ありません・・・どうかメンテナンスにやきもきする皆様の心の癒しになっていただければ幸いです。

明日からは普通に本筋を進めます!大変申し訳ありませんでした!


メンテナンス対策楽園こそこそ噂話~ぽっと出黒幕おじさんはどうしてモリアーティなのか~

『と言うわけで、なんでもできるスーパーオペラ歌手アイリーンは素敵な相棒オルガマリーとその愉快な仲間達と頑張っているわ。どうか心配しないで待っていてね』

 

「君がいるんだ、私には何の憂いも心配も無いよ。これで安心してキメられると言うものだ」

 

「君ナイチンゲール女史にフルボッコにされていたのにまだ懲りていないんだネ・・・」

 

時を同じくして、こちらは楽園カルデア。オルガマリーが特異点を攻略していることは楽園の中でも上層メンバーの一部に情報が統制されている。今回選抜されたのがリッカではなくオルガマリーであること、同時に藤丸立香であることの特異性を崩さぬためだ。楽園が総出で解決に臨めば、それは楽園の痛快無比かつ万全磐石の結末が約束された一ページ。平凡な一般人が懸命に走り続ける別のカルデアの旅の旨味が薄れてしまう事への配慮であった。楽園の旅路は絢爛であり孤高。磐石であるが故に比較対象など存在しないのだから。

 

「まぁいいサ。我が助手にして最高の生徒であり娘たるオルガマリー君がいるんだ。1000%攻略は可能だと私の計算が導きだしているよアラフィフの脳細胞が!」

 

「何色かな?当ててみせようテムズ川のドブ色だろう?」

 

「そんな汚ならしい色をしているものか!薔薇色だとも!まぁそんな事はいいんだ。問題は別にあるんだよホームズ。そう──」

 

楽園のモリアーティはふぅ、と深呼吸し、深刻な己のアイデンティティークライシスについて糾弾する。つまりこれがどういう事なのかと言うと・・・

 

「───私!ジェームズ・モリアーティは君を名誉毀損と事実隠蔽罪で訴える!!理由は勿論お分かりだよネ!君とワトソンの情報統制で!私というラスボスをぽっと出おじさんにランクダウンさせたからだ!!裁判も起こす!事情聴取も問答無用でうけてもらおうじゃないか!!」

 

そう、犯罪界のナポレオン・・・モリアーティのホームズ伝記における扱いである。彼は設定の割にはあまりにもキャラ描写が少ない。回想に出て、相対して、滝に落ちて終わりである。こんなに愉快なキャラクターであることは、シャーロキアン諸兄には知るよしもない真実なのである。

 

『私も気になっていたの。ぽっと出黒幕おじさんはどうしてぽっと出なのかしら?ジェームズの実力とネームバリューは見ての通りだというのに、コナン・ドイルの著書では描写が不釣り合いではなくて?』

 

「解ってくれるかアイリーン君!でもぽっと出黒幕おじさんは止めて!アラフィフの心が軋み!砕けてしまいそう!」

 

「案外私がトリップした際に見た幻覚という線も捨てきれない。今尚私はこの説を信じている。私達の目の前のモリアーティは実在しているのか?」

 

「してる!から!ここにいるんだぅおっちぃ!!腰が!叫んだら腰がッ!!」

 

アラフィフは死んじまった。腰をやっちまって。勝手に撃沈したモリアーティを見下ろし珈琲を飲みながら、やれやれとホームズは老人に腰を下ろす。

 

「そうだな、ならば答え合わせと行こう。私達をあくまで創作のキャラクターと考え、コナン・ドイルの所感に当てはめた種明かしだ。モリアーティとは、私の物語でどのような役割を持つ人物であるのか。コナン・ドイルの思惑は何処にあったのか。──聞き込み捜査の息抜きがてら、拝聴を願うとしよう」

 

「降りろ、降りろホームズ・・・!腰に響く・・・!」

 

「ちなみに今の状態は、私がライヘンバッハに落ちた際に助かった際のポジショニングだ。皆も真似するといい」

 

出来るものか!叫ぶモリアーティをよそに、ホームズは一人の作家の所感にトリップしていく──

 

 

実はコナン・ドイルは、私シャーロック・ホームズの物語を記すことは本意では無かったのだ。作家として彼が望んだジャンルは、重厚なSFだった。緻密な設定、独自の理論。Mr.アンデルセンの言葉を借りれば『書きたいもの』がこちらだったと言える。

 

『そうだったの。でも、コナン・ドイルがSF部門で成功したという記録は目にしたことが無いけれど』

 

それは当然だ。まっっったく売れなかったからね。書けども書けども、彼の情熱の世界観は鳴かず飛ばず。見事なまでの三流作家街道を邁進していた。そんな鬱屈したドイルは、自分のジャンルを展開する為の小遣い稼ぎとしてとある作品を作り上げた。それが誰もが知る『シャーロック・ホームズ』シリーズ。世界で文学に触れるものなら知らぬものはいない推理探偵物の金字塔。永遠普及の文学におけるストラディバリウス。人類の至宝とも呼べるシリーズだ。

 

【自分で言ってて歯が浮かないのかナ、その自画自賛のレパートリーは】

 

事実を口にしているのだ、嫌味に聞こえようともそれは真実に他ならない。ウェットに富み、紳士然としあらゆる謎をスマートに解決する名探偵。鹿撃帽とパイプ煙草の探偵のイメージを確立させたこのシリーズは超絶的大ヒット。シャーロック・ホームズは世界中に愛される探偵となり、コナン・ドイルに莫大な富と名声をもたらした。コナン・ドイルは歓喜したろう。これで自分の書きたいものを書けると。・・・だが、過ぎた名声や富は必ずしもいいとは限らない。富や名声が人を食い潰す事も、ままあるのだ。

 

『作家として、大成功した筈のドイルがかしら?』

 

あぁ。評価されたのはコナン・ドイルではなく、その手腕ではなくシャーロック・ホームズシリーズのみだった。彼が手掛けたSFシリーズは見向きもされず、求められるはシャーロック・ホームズの続きばかり。顔を見れば次の展開を催促され、熱心なファンがトリックや推理を好奇心のままに暴き立て、出版社はホームズシリーズの為にのみドイルの存在を礼賛した。──彼が軽い気持ちで記した探偵は、やがて彼に自らを活躍させるように独り歩きし始めたのだ。

 

『まぁ・・・』

 

強要される創作活動ほど苦痛なものはこの世に無い。彼は舞い込む富や名声、金の卵を産むニワトリにすら嫌気が差したのだろう。一生をこの低俗な文学作品に捧げるのを疎んだドイルは、いよいよホームズという記号を抹殺する事にした。その為に、相応しい巨悪が必要になったのだ。

 

【ちなみに今風に言えばラノベのようなものかナ。『超天才の名探偵が謎をたちどころに解決してみたんだが初歩だよ初歩』みたいな!産みの親にすら疎んじられるとか実に君らしいなホームズ!偏屈にして自意識過剰な探偵に相応しいじゃないかあいだだだだ腰が!!】

 

ここの肉シートの言うように、崇高な理念たる自身のSF作品が評価されず、末代までの恥がごとき幼稚な作品が誉めそやされる状態をドイルは一刻も早く終わらせたかった。そしてその為に用意した存在、それこそ。

 

【ロンドンを裏から牛耳る犯罪コンサルタント!複雑なクモの巣がごとき邪悪なる叡智にて悪を行う犯罪界のナポレオン!つまり私モリアーティな訳だネ!】

 

設定だけ立派で描写がまるで見合っていない。ドイルらしからぬキャラクターの杜撰さだ。それほどまでにホームズが疎ましく、一刻も早く消し去りたかったのだろう。自身をも蝕む、シャーロック・ホームズという巨大な幻影を。そして──

 

『証拠不十分で立件すら叶わなかったモリアーティと直接対決し、ライヘンバッハの滝へともろともに落ちていった・・・』

 

その通り。シャーロック・ホームズという物語を殺し、消し去るために産み出された舞台装置。或いはデウス・エクス・マキナとも言えるやも知れぬ存在。作者が自らの都合のみで産み出した、ある意味で禁忌の存在・・・それが、ジェームズ・モリアーティ。彼が描写されないのは当然だ。何故なら──

 

・・・『ホームズを抹殺する』。それ以上の役割を、彼に持たせるつもりも愛着も無かったのだから。そういった意味では、あまりに哀れな存在と言えよう──




ホームズ(バイオリン演奏を始めるホームズ)

モリアーティ「勝手に考察して勝手に哀れんで勝手に演奏しないでくれないかこのヤク中は!・・・まぁそうだネ、大体あってる。ある意味では、私は神の悪意から産み出されたと言っていい。最近リッカ君がハマってる漫画でいい台詞があったネ。『頼むから死んでくれ。お前の様なものは生まれてすらこないでくれ。お前がいるとこの世の理が狂うのだ』。・・・狂おしいまでの情に焦がれた鬼の言葉だが、当時のドイルにピッタリな名言だネ」

『ジェームズ・・・』

「ま、実際は暴動寸前までにキレたシャーロキアンと出版社の熱意に負けて実は生きてた扱いで日和んだがネ。・・・まぁ、なんだ。私の物語なんて、あってないようなものなんだヨ。そういったもの、役割だけを果たす記号でしかなかった訳だ」

『・・・でも、今は。そんなことはないんでしょう?』

「あぁ勿論。現代でリメイクされ、こうして英霊となり、超絶可愛く素敵な助手と娘をいっぺんゲット!・・・ある意味、私は死んでからが本番と言えるのだろうネ」

『・・・えぇ、きっと。今のあなた、ちゃんとあなたとして輝いているもの』

「フフン、そうだろうそうだろう!どうだホームズ!ワトソンと共謀した稚拙な印象操作にアラフィフは負けない!負けないんだからネ!」

ホームズ「ちなみにワトソンの記した伝記ではモリアーティの暗躍は全てカットした。無論、私の指示でね」

「いけしゃあしゃあと・・・!!」

「分かってくれたかな?アイリーン。君の疑問は解けたかい?」

『ありがとう、ホームズ。やはりあなたは名探偵ね』

「止してくれ。当たり前な言葉でも、君に囁かれては照れると言うものだ」

「私の助手に色目を使うな!気を付けるんだヨアイリーン!我が娘に心からよろしく!」

『えぇ。・・・それと、相談なのだけど・・・』

「「ん?」」

『どうやったら、パンクラチオンと神代魔術をハワイで習得できるのかしら・・・』

「「???」」

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