人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ライネス「女王達は行ったか・・・」

オルガマリー「・・・」



アラフィフ「君達!信じているよ!私は愛と勇気と絆に生きる紳士!私と君達の出会って数十分の友情は不滅だと──信じている!!」

シェイクスピア「そうですな、では吾輩は」

兵士「さっさと歩け!」

「絶対に喋らせねぇとする意志を感じますな!では簡潔に。──アイルビーバック!!」

ライネス「いや別に戻ってこなくていいが」



オルガマリー「ラモール・エスポワール」

藤丸「殺しちゃダメです!?・・・はったりかましたはいいんですが、勝算とかありますかね師匠」

ライネス「ないことはない。前向きに検討、善処しよう。いいな政治家答弁!問題の先送りには最適だ!・・・ふむ、女王、アラフィフ、作家の三人が関係者か」

オルガマリー「謎解きは二人に任せるわ。ボディーガード以外の役割を取ったら、パーティの意味がないものね」

ライネス「それはいい。では早速ボディーガードとして働いてもらおう──か!」

藤丸「!?な、ししょ、乱心ですか!?ピアノに怨みでも・・・!」

オルガマリー「──気付いていた、か。じゃあ、拷問に繋がるかどうかの尋問を始めようかしら?」

アサシン「・・・」

藤丸「・・・!気配遮断・・・!」


裁定の兆しと誘い

「どうして、解ったかな?」

 

赤きフードを被った暗殺者は、抑揚の無い声で問う。簡単な事だ、と軍師を宿したライネスは返す。

 

「周囲の魔力が妙だったんでね。周りの要素をトリムに再計算させていたのさ。そら、部屋を見渡してごらんよ」

 

床に、天井に、あらゆる場所に伸びる銀色の網にして探索の糸。トリムに指示を出し、辺りの熱量や存在認識を既に計算していたのだ。女王の前で事を荒立てては面倒であると、泳がせていたに過ぎない。──はからずも、とある世界における屈辱の一つを晴らした形になる。ここにいる者達には、知るよしもないことだが。

 

「で、だ。君が犯人であるなら、こんな簡単な事はないんだが。洗いざらい話してくれるかな?」

 

そんな簡単な話ではないんだろう、といった含みを込めながらもライネスは問う。そう、彼もまた、そんな益体の無い会話には付き合わない。

 

「申し開きをする状況ではあるまい」

 

すかさず窓を突き破り、脱出を図るアサシン。ライネスが魔弾を撃つも、それらは空しく宙を切る。塔の頂上から飛び降りようとも、サーヴァントはなんら痛打にはなり得ない。極めて合理的な判断である。

 

「オルガマリー!先んじて追い詰めろ!我が弟子とトリムは下で後詰めだ!急げ!」

 

「アイリーンさん!気を付けて!」

 

「そちらもね」

 

飛び降りるオルガマリー、駆け下りる三人。それぞれの様相を催す追跡劇が、ロンドンの地にて幕を開ける──

 

 

「逃がすわけにはいかないわね」

 

「・・・!」

 

窓から先に飛び降りた筈の落下中の自分に、信じがたい方法で追従してくる者がいた。塔の外壁を猛烈なスピードで走り抜け、自分に追い付くなどと言う常識を疑う方法で並走するのは──白髪の方の少女。冷静かつ理知的な印象を受ける女性が追い縋ってきたのだ。

 

「───!!」

 

落下しながらの迎撃に入るアサシン。高速にて振るわれる超人的速度のナイフ捌きにて躊躇いなく首を狙う──が、人の目にすら映らぬ程の殺傷の一刃を、目の前の女は易々と防いで退ける。如何なる手段を用いたか解らぬ、『神造兵装』たる鎧を、被弾部分にのみ展開し受け止めるという神業でだ。落下しながら忙しなく駆け降りていると言うのに、その正確無比な動きは正しく人間業ではない。近接戦に勝ちの目は見出だせないと、アサシンは素早く悟る。

 

「っ」

 

女性が小さく呻き声をもらしやや距離が開く。アサシンが彼女を蹴り飛ばし、自由落下の速度を上げる足掛かりとしたのだ。女性が上、アサシンが下のまま落下すると言う位置となる。

 

「終わりだ」

 

そのまま、キャリコ機関銃を取り出し一斉に撃ち放つ。秒に数百の弾を放ち散らす機関銃の攻撃を、まともな生身で受ければ当然絶命するだろう。──だが、ここにいる女性は当然ながら普通ではない。

 

「──!」

 

感情を殺し、心を鉄にした暗殺者すら息を呑む程の衝撃。女性の対処は、想像を絶していたのだ。数メートルから放たれた弾丸の嵐。それが自身に着弾するものを見極めたと同時に──

 

「───はぁっ!」

 

『弾丸の軌道と全く同じ箇所に光弾を撃ち込み、致命傷となる弾丸を排除した』。──僅かなブレや照準ミスも赦されぬ、弾丸を弾丸で回避するという曲芸めいた攻撃の防御。──いよいよもって、目の前の存在がなんなのかの思考を放棄する。

 

「──!」

 

キャリコ機関銃を投げ捨て、必殺のトンプソン・コンテンダー・・・生前の切り札たる礼装を取り出す。銃弾は戦車装甲でも無い限り防げず、だからといって魔力に関する何かを以て防げばそこで勝敗は決する。目の前に追従してくる人の形をした何者かに向けて──躊躇いなく、引き金を引いた。

 

「───、がはっ・・・!!」

 

「───!!」

 

状況打開の為の切り札を切ったアサシンだったが、それが功を奏することは無かった。『まるで起源弾を理解していたかのように』首筋をかすめる弾丸を最小限の動作で交わし、塔の壁が砕ける勢いで踏み込み放った飛び膝蹴りが、深々と鳩尾に直撃したのである。

 

(肋骨部分、粉砕骨折・・・内臓、数ヶ所破裂・・・!霊核が軋む、まずい・・・!)

 

致命傷こそ避けたものの、重傷が確約された手傷を負い、血反吐を吐くアサシン。オルガマリーは叩き込んだ膝蹴りから、片方の脚を使い──

 

「ライネス!」

 

挟み込み、見えてきた地表に叩き込む。クレーターが出来る勢いで蹴り込まれたアサシンが、痛恨の打撃を受けながらも受け身を取り距離を取る。其処に待ち受けていたものは──

 

「──混沌に七穴。英傑に毒婦。落ちぬ日はなく、月もなし。とくと我が策御覧じろ」

 

魔力を高め、待ち構えしもう一人のロード。その魔力の波長、間違いなく宝具の発動準備。阻止しなければ不利に拍車がかかる。くまなく内臓と骨を砕かれていても、霊核に支障はない。或いは、あえて霊核は避けられたのか。どちらでもいい、阻止しようと銃を取り出さんとした時──

 

「カルデアの技術を受けてみろ!──ガンドっ!」

 

傍にいた、脅威対象外としていた少年から強力無比な呪いを受け、全身の自由をアサシンは奪われる。効果は持続性が極めて無いものの、それを補って余りある程の強力さを誇り指一本動かせない。そして、策は成る。

 

「『混元一陣(かたらずのじん)』──!」

 

「──!何っ・・・!?」

 

宝具が展開された──海に沈む陽、水面に映る月を見た瞬間、アサシンの長所たる「気配遮断」高速移動を司る「時間制御」の二つが無力化され、『近接戦闘を余儀無くされる』。長所を完璧に潰され、同時に不得手な領域に引きずり込まれたのだ。暗殺者としては、致命傷以上の致命傷。逃げも隠れも出来ない『詰み』へと持っていかれたのである。

 

「私の宝具はいささか特殊でね。特定の形を持たない。しかし現れる陽と月は相手の得手を潰し弱点を炙り出す」

 

奇策など無用、逆転など無粋。当たり前に策を振るい、当たり前に勝つ。着実にして堅実なる軍師が得意とした戦運び。──奇策や奇想天外なる奥の手を潰す、極めて現実的観点から成る英雄殺し。

 

「アサシン、逃げも隠れも出来ず。強力なスキルや宝具に頼るクラスゆえにそれが仇となる。ジョーカーなどで役作りなどと夢を見ないことだね」

 

「っ・・・!」

 

「チェックメイトのようね。あなたが知っていること、そしてあなたが何故此処にいるのか。動機も含めて白状してもらおうかしら」

 

トリムマウがくまなくアサシンに刃を突き立て、橙の銃をアサシンに突き付けトリガーに指を置く。──最早決着はついた。アサシンにこれから先の状況を変える手札は無い。

 

「──僕は、それでもよかったが。『依頼主』がやって来た」

 

「──!」

 

『気を付けて、オルガマリー。──この感じ、カルデアに集う中でも上位の方だった筈』

 

アイリーンの忠告に従い、素早く二人を庇い立てるオルガマリー。──間もなく、青き服に身を包む淑女が、姿を現した。

 

「お疲れ様、ケリィ」

 

「その呼び名は止めろと言った」

 

「そう言われましても、あなたを見るとどうしてもそう呼びたくなるのですもの」

 

「──る、ルヴィア!?」

 

驚愕の声を上げるライネス。え、誰この人と交互に顔を見る藤丸。──オルガマリーはそんな藤丸に、声をかける余裕は無い。

 

(最悪の展開ね・・・──まさか神霊、アストライアが敵に回るなんて・・・)

 

ジョーカーを潰し、現れたオールラウンダー。冷や汗を拭うこともせず、カルデアの敵であるアストライアに油断なくオルガマリーは向き直る──




アストライア「ルヴィア?・・・あぁ、この身体の名前ですの?」

藤丸「知り合いなんですか師匠!?」

「あの体はな。──オルガマリー、どうやらあちらも疑似サーヴァントのようだぞ。しかも、とびきりのだ」

オルガマリー「えぇ。間違いなく神霊クラスね。──まともにやったら大変に面倒な相手よ。ライネス、もう一回あの宝具はどうかしら」

ライネス「ダメだ、相性が悪い。得手不得手がはっきりしているなら潰せるが、そもそも何でも出来るタイプに突ける弱点は無いのだから!」

トリムマウ『全てのステータス、B以上。魔力、計測不能です』

オルガマリー「・・・互いに切り札は見せられない、か」


アストライア「状況はお分かりのようですわね。・・・おとぎ話のパッチワークを開いた一度は看過します。しかしこれ以上の記憶を求めるようなら、私の裁定を受けていただく事になるでしょう。・・・一度目は警告。荒立ては致しません。ですので今のうちに、態度を決めてくださいますように」

藤丸「あ、待っ──!」

オルガマリー(・・・アイリーン)

アイリーン『何かしら、オルガマリー』

(あなた、実は『固有結界』も使えた筈ね?)

『えっ。──・・・えっ・・・?』

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