ロマン『えっ?見れないことは無いけど・・・』
『きっと其処にあるわ。今回の特異点の、致命的な違和感が』
ダ・ヴィンチちゃん『どれどれ?あー、マシュが泣きそうになりながら藤丸君を探してるよ。リツカさん、返事をしてください・・・って、ん?あれ・・・』
ロマン『・・・ちょっと待ってくれ。どういう事だ?『あちらのカルデアは、一回も通信が成功していないみたいだ』・・・!』
ダ・ヴィンチちゃん『リツカさん、だなんて名前で呼んじゃってまぁ!大分仲は進展して──あーっ!!』
『・・・わざとなのか、迂闊なのか。『ただの一度も、こちらのマシュは名前で呼んでいないわね』』
ロマン『──まさか、マシュの姿を・・・!?』
『すぐに解るわ。それじゃ、掃除を始めるとしましょうか──』
「「「「「「────!」」」」」」
紅蓮の地獄と化した集合住宅。其処に眠る最後の記憶の欠片。それを掴むために訪れたオルガマリーを阻むように、無数の敵性エネミーが立ちはだかる。それは、正しく目当てのモノがある事を証明している様なモノである。確かな手応えを感じ、オルガマリーは総ての排除を試みる。その手に、二挺の拳銃と三枚のカードを展開し、速やかに攻撃へと転じる。
「『インストール』──アキレウス!」
戦闘において最も信頼を置くカードにして英雄、ギリシャの大英雄アキレウスをインストールし、全身を黄金の鎧が包んだ姿へと変身する。軽く跳ね、そのまま勢いを付け駆け抜ける──それだけで、充分すぎる程の攻撃だった。
「「「「「「!!!」」」」」」
駆け抜けるだけ、走り抜けるだけでそれは十分な必殺技となるアキレウスの速さを再現した疾走。薄緑色の衝撃波を巻き上げて軌道上の数十のオートマタが一瞬で粉微塵に消し飛ばされる。『彗星走法』──インストールした師匠の疾走が、戦場を思うがままに走破する。それに伴い、数多無数のオートマタが粉々に吹き飛ばされ破壊されうず高く残骸が積み重なっていく。
「師匠、頼みます」
フィールド一帯を走破仕切った後、アキレウスのカードに続いてもう一人の師匠のカードをリードする。──万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチのカードをインストールしたオルガマリーは、狙い澄まし導き出した計算のままに、両手の銃が光学兵装モードへと転じ変異した万能の杖から、魔力を込めた光線を撃ち放った。─そして、それと同時に。『目の前の多数のオートマタが光線に一瞬で寸断され、物言わぬバラバラの残骸へと成り果てた』。
先に巻き上げた砂塵、同時に数多の障害物、瓦礫の様々。それらの破片などを『光線を反射する鏡面体』へと変化させ、入射角と反射角を計算し的確に光線を全方位に反射するような箇所にある障害物目掛けて銃弾を撃ち放ったのだ。魔力が変換した光線が、鏡面で無数に乱反射しオートマタ達を焼き払う全方位攻撃の一撃へと変貌したのである。本来ならスーパーコンピュータクラスの演算処理が必要になるソレ・・・脳が焼ききれるクラスの情報を、核となる聖杯の魔力と万能の天才の思考処理能力で強引に処理した故に可能となる荒業だった。オルガマリー一人では成し遂げられない、正しく天才の所業と呼ぶに相応しいインテリジェンスの一対多数の処理攻撃である。
『オートマタ、全滅を確認したわ。次は──』
【【【【【!!!】】】】】
アイリーンの言葉に呼応するかのように、蒸気機関にて産み出された蒸気亡霊が次なる相手となる。物理ではどうにも出来ぬ亡霊が徒党を組んで襲い来る。そんな状況にも、オルガマリーは対処済みである。仕込みは既に終わっているのだ。
「メディア女史。力を御借り致します」
インストールするは神代の魔術師にして魔術の師、メディアのクラスカード。深くローブを被った姿へと変化し、──軽く踵で地面を打った。
「◼️◼️」
現代の魔術師が生涯と心血を捧げて執り行うであろう大魔術。それらの起動詠唱をたった一詠唱で行う高速神言。現在の言語ではないソレを口にし、『先に一帯に書き記した魔法陣』を展開し、亡霊達を一斉に浄化魔術で昇天させた。
【【【【【───!!?】】】】】
一斉に光の中へ消え去る亡霊達。何故、と思う暇も無い。とうに仕込みは終わっていたのだ。最初のアキレウスの疾走にて辺り一帯を駆け回った理由は此処にある。先んじて『魔法陣を書き上げるため』にフィールドを疾走していたのだ。ロンドン一帯を瞬間に浄化する大魔術を一瞬で行使する事も出来なくは無いが、敵は亡霊だけではない。オートマタも存在していた為、展開の隙や魔力を練る隙を衝かれない為に順序立てて障害を排除したのだ。科学で出来たものには科学で、魔術に関わるものには魔術で。適材適所の効率を求めた手段を順次行使していったのである。
「これで粗方の排除は──、・・・!」
『見て、亡霊から蒸気が抜けて、一ヶ所に集まっていく・・・!』
アイリーンとオルガマリーが目を見張る。浄化されていく亡霊達から、詰め込まれた蒸気が抜け出て再構築され、巨大なる一個の亡霊へと変貌する。それは先の集合住宅のビルよりも尚巨大な、まさに怪獣めいた亡霊の様相と威風を示す。
【───!!!!!】
そして即座に超巨大亡霊は行動を起こす。全身を震わせ、辺りを覆い尽くす程の水蒸気を一帯に撒き散らした。そして、それに伴い超巨大亡霊の形成魔力が加速度的に膨張していくのを感知する。
『オルガマリー!これは水蒸気爆発の──!』
アイリーンがそれを口にするのと──辺り一帯が、一切万象の区別なく吹き飛ぶのは全く同時だった。猛烈な魔力の膨張を爆発のエネルギーとし、オルガマリーを吹き飛ばすための最終手段として使用したのである。地面は抉れ、瓦礫は跡形もなく消し飛ばされ、オートマタの残骸すら残らぬ程の超絶威力の大爆発が、巨大なクレーターが刻み込まれる凄惨な爪痕となって周囲一帯を消し飛ばした。勿論、人間大の存在等堪えられよう筈もない規模の威力と範囲であり。離脱の暇すらないオルガマリーを排除するに相応しい威力の──
「『
【!?!?!?】
上から降り注ぐ、先の爆発を遥かに上回る威力の魔力の一斉放射。銃撃が生温い児戯のごとき魔力の激流が、有り得ざる反撃が亡霊に叩き付けられる。先の爆発で、消し飛ばされた筈の──
「残念。所長はしぶとい生き物よ」
確かに吹き飛ばされた筈のオルガマリーが、三頭の馬に引かれし戦車の上で魔術を存分に行使している。完全に消え去った──そう『認識』させたのはアイリーンの宝具である。『あなたに告げる、ただ一度の挨拶』。世界一の名探偵を完全敗北させたソレは、転じて世界の現象、自らの存在や視覚を世界レベルで欺く事が出来る認識・概念詐称宝具。それを使えば、自らが死んだ、或いは吹き飛んだと認識させるなど造作もない。
「決めるわ。お願い、クサントス、バリオス、ペーダソス」
「ブヒヒン!(所長の為なら何処までも!筋肉ニンジンの時より五割増し!)」
「ヒヒン・・・(コイツ・・・)」
「ヒヒン?(ただの名馬って誉め言葉なの?)」
瞬間、先のオルガマリーの疾走が稚拙な千鳥足に見える程の加速と疾走──紅蓮の空を駆ける流星が如くに煌めく緑の軌跡と共に、無限大の加速となって流星が如くに亡霊に叩き込まれる!
「『
【───!!!!!】
中心部分を抉り取る一撃必殺の疾走。究極とも言える加速と質量の一撃──その戦車から、オルガマリーは飛び立つ。
「決めます、『教授』」
最後に展開するは、彼女が最も信頼する火力と威力を持つ、物理的な威力を、計算と砲撃として叩き付ける単純明快にして効果的なフィニッシュ担当。──過剰武装搭載棺桶、ライヘンバッハを担いだオルガマリーが、中核に穴を穿たれた巨大亡霊の脳天に着地し、そのまま眼下目掛け、棺桶を最大展開、フルバーストモードにて撃ち放つ──!
『
教授──ジェームズ・モリアーティが望む究極の破壊。力を増せば対国宝具へと進化すらする超絶威力の必殺技にして最終式。それを自らの聖杯に直結させ、最大最強の威力にて叩き込む。脳天に銃口をブチ込まれ、そのままモリアーティが望む最大破壊を叩き込まれた亡霊は本来の体積の何倍にも膨張し───
【!!!!!!!!】
──大爆発を起こし、最後の輝きが如くに四散する。数瞬速く離脱し、宙に投げ出されたオルガマリーを・・・
「ブヒヒン!(ハイナイスキャッチ!貴女を助けし紳士の馬はただ一頭、私です!)」
「ヒヒン(ふざけんなお前)」
「ヒヒン?(不死って誰でも持ってる訳じゃないよね?)」
「ありがとう、皆。そして──アイリーン」
『ふふっ。今日も素敵な講演だったわね?』
素早く転身し、爆発にも怯まずオルガマリーを回収した不死戦車が離脱を行う。──所長が信頼する師匠達の力を借り、この窮地を乗りきったのだ。
「──さて、それでは見聞と行きましょうか」
そして、かの亡霊が辺り一帯を吹き飛ばした時に発見した、最後の紙片。それを回収したオルガマリーは、其処に仕込まれた──
──悪辣な、罠を見聞する。
~~~
ロマン『流石だ!オルガマリー!また一つ特異点を救ったね!』
ダ・ヴィンチちゃん『あぁ、流石だ!カルデア職員として、これ以上無い理想の活躍だ!見事だよ、オルガマリー!』
・・・・・・
ムニエル『マスターとしても、所長としても完璧だ!やっぱり所長は最高だぜ!』
『流石だ!』『凄い!』『最高だ!』
・・・・・・
レフ『見事だ、アニムスフィアの末裔。やはり君こそ、人理を背負うに相応しい』
キリシュタリア『君こそ、人類の至宝。誉れ高き最高のロードだ』
──・・・これが、私の望んだ記憶だと言うの?
???『望んだ、というのは誤りだ。もう君は、『この未来を望んでいる』。これは、君が見ている夢と記憶だよ、オルガマリー』
・・・成る程ね。漸く解ったわ。私が何故呼ばれたのか。藤丸君が記憶を回収するのに誂えたように、私に幾多の山場が用意されているのか。
『後は、君が受け入れればいい。そうすれば──』
ごめんなさいね。──私はもう、
~
オルガマリー「・・・記憶の紙片を回収させ、『受け入れさせ』、防衛本能を誤魔化してから・・・都合のいい捏造した記憶を藤丸君に植え付ける。悪辣な手法ね、『マシュ』?」
マシュ『・・・!』
「一足遅かったわね。或いは、私も獲物だったのかしら。──この特異点の核に、燃料を与える為の。マシュ、いいえあなたは・・・」
『──!』
アイリーン『・・・通信、途絶えちゃったわ・・・今のマシュは・・・』
「偽物よ。藤丸君に近しい人間に成りすまし、彼に偽りと本物の記憶を回収するように仕向けたダミー。でしょう?『エルメロイ二世』」
呼び掛けると同時に、ゆっくりと歩み寄る・・・死んだ筈の、エルメロイ二世。
二世「・・・・・・何処まで把握していたのかね?」
オルガマリー「基本、成り行き任せよ。さぁ、真相を説明していただきましょうか」
ライネス「オルガマリー!」
グレイ「無事ですか・・・って、師匠・・・!?」
藤丸「あれ!?死んだはずじゃぁ・・・!?」
「あなたの為に頑張った、彼女達にね」
事件簿の謎は、核心へと一同を運ぶ──
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