そうだ、その通りだ。でも、オレは主役になりたかったんじゃない。世界を救いたいのは、好きになった女の子がいたから──
~
【何故、世界を滅ぼそうとする?貴様の世界に、その価値があるのか。ここで苦しむ民達を一人残らず殺戮するほどに!!】
そんな、どうして。オレは、ただ・・・未来を取り返したくて、好きな女の子との、当たり前の未来が欲しくて・・・──
【・・・お前の無知こそは、最大の罪である】
なんでだ。なんで生きたいだけなのに殺さなくちゃならない?
【故に問う!故に糺す!貴様にその権利はあるのか!?この大地に住むヤガ達に!【死ね】と!お前は命じるのか!!】
・・・──・・・・・・・・・そんな・・・・・・・・・
【答えよ!答えなければ!それが答えだ!!】
~
藤丸「・・・っ、く・・・ぉあぁあっ・・・!!」
(・・・・・・寝るのは嫌だ・・・毎日、夢に見る・・・寝ない身体になりたい、何も食べなくていい身体になりたい・・・)
グレイ「マスター?・・・よろしいですか?」
「──!」
(駄目だ、弱音を吐くな。折れちゃだめだ、オレは、オレはもう一人しかいないんだ。覚悟を決めたんだから・・・)
「大丈夫、大丈夫だ、ちゃんとやれ、オレはちゃんとやれる。大丈夫、大丈夫・・・」
「・・・マスター?」
「今行くよ!ごめん!居眠りしちゃってさ・・・!」
こうしてまた、オレは皆と進む。
汎人類史を代表する人類最後の
「藤丸。・・・どうした?夢見が悪かったかな?」
グレイに起こされ、部屋を出てみれば待っていたのは孔明・・・エルメロイ二世その人であった。グレイと一緒にいるその姿が、実に様になっていると感じる。グレイの表情も、ずっと晴れやかだ。
「良かった・・・あ、いえなんでもないです。こっちの話です。どうかしましたか、エルメロイさん?」
わざわざ呼び出すのだから、それなりの用事なのかもしれない。自分何かやったっけかなぁ、と思い悩む藤丸に対し、エルメロイ二世は真っ直ぐに切り出す。
「ロード二人は心配あるまい。鮮やかにこれより先もこの問題を解決するだろう。・・・私は君に、どうしても言っておかねばならないことがある」
「言っておかねば、ならないこと・・・?」
「『君は、この特異点を解決する必要はないんだ』」
突如放り込まれた、全ての放棄という選択肢。今抱えている問題に、これ以上関わらなくてもいいというエルメロイ二世の提案に、藤丸は目を見開いた。
「師匠・・・?」
「ちょうどいい。グレイも聞いておいてほしい。・・・マスターは分かっていると思うが、特異点で起きた事は、最後は無かった事になる」
勿論、放置すれば悪化し、深刻な影響を産み出す孔になるかもしれない。辺りを巻き込み肥大化するブラックホールに成りうるかもしれない。だが、この特異点は確実に違うと言い切った。やがて消えていく、細やかなものであると。
「記憶を食らい、自壊していく特異点など長持ちする筈もない。カルデアと連絡を取り、帰還する手段さえ手に入れれば、困難な解決に挑む理由は無いんだ。そう、飽きたゲームを終えるように手放せばいい。それだけで、君の安全が保証される」
苦しいのなら止めればいい。苦行となったゲームなど娯楽ではない。手放せば終わり、自分はまた、現実に戻ることが出来る。
そう、思えば今までの旅路の折に選べる選択肢だった。もう止めればいい、もう止まればいい。脚を止めれば楽になる。何故そんなに頑張るんだと、自分に問いかける自分はずっといた。
「・・・──」
辛いこと、苦しい事ばかりだった。それでも、歩いた先に未来があると信じていたから戦えた。死にそうな目にあっても、理不尽な困難にあっても、自分がやれることをずっとずっとやって来た。だからこそ、今の自分は此処にいて・・・
~
【うそ。ホントに知らない? 魔術属性はおろか、彼らの名前さえ?信じられなーい、藤丸クンったらはっくじょーう!】
──オレの今までやってきた戦いの全部は。
【これじゃあ彼らが目覚めた後、恨まれても仕方ないかもね? だって】
──全部、たまたま其処にいただけの小さな理由で。
【キミは彼らから、活躍の場も、その存在意義も、カルデアという居場所すらも奪ったんだから】
人生を懸けて挑んだ人達の努力と願いを、横から奪い去っただけのものだったんだ。
~
「・・・・・・・・・・・・」
・・・だけど、それでも。奪ったならば、奪ってしまったなりに。
「・・・エルメロイさん、ゲーム放置したりしないでしょ」
その居場所には、沢山の大切な荷物と想い出が詰まっているから。
「・・・!・・・勿論、可能な範囲でゲームは全てクリアする。感想は細かく感想に送るぞ。それはそうと二世を付けたまえ。私の身には、余る名前なのでね」
「オレだって同じです。下手くそでも、どんなに難しくても、みっともないプレイでも。・・・いつも傍で、見てくれる人がいるから」
~
リツカさん!おはようございます!あの・・・もしよかったら、朝御飯を御一緒に!
~
どうか、良い旅を。私は此処までだ──
~
そうか・・・そうだな・・・ズルかったかもな・・・ごめんよ、最後まで気が利かなくて・・・
~
今までだってただの一度も!誰かに認めてもらえた事も無かったのに──!
~
オレは、テメェを。絶対に許さない──
~
「だから、もう少しだけ頑張ってみます。エンディングまで、とはいかなくてもせめて・・・指が折れるまで」
もう、投げ捨てて逃げるには。荷物は重く、多くなりすぎた。だから、後は死ぬまで抱えて歩くだけだ。意地を張ることくらいしか出来ることが無いならば、せめて最期まで張り通そう。
「だから、もう少し・・・もう少しだけ、頑張ってみます」
もう少し。いつか脚が動かなくなり、心が何も感じなくなり、自分が何者か、何のために生きてきたのか分からなくなる、その日まで。
それがきっと・・・【生きたい】という人達の願いを世界ごと切り取った自分に相応しい生き方なんだと信じている。・・・そして、願いが一つ叶うなら・・・
「・・・ここもちゃんと乗り越えて、待ってるマシュに、ただいまって言いたいから」
自分を心から慕ってくれているあの娘、たった一人だけ、幸せで素敵な未来に連れていきたい。その気持ちだけが、真っ赤に染まっている死体まみれの道に、脚を踏み出す力になるのだから。
「・・・まぁ、君がそういう覚悟ならいい。野暮な忠告だった。未熟だろうが、無謀だろうが、きっとそれは君の力だ。サーヴァントとして、マスターに最後まで尽くそう」
それに、悪いことばかりじゃない。こんなちっぽけな一人を支えてくれる人は、ちゃんといる。
「拙も、よろしくお願いいたします。マスターのサーヴァントとして、最後まで頑張ります!」
だから、その人達の想いを背負って、また一歩歩き出そう。それがきっと、自分が出来る戦いだと信じている。信じるしかないんだから。
「よろしく頼むよ、二人とも。・・・オレも、出来る限りやってみせるからさ」
そう、意地を張り、胸を張り、今も自分の戦いを続けよう。まだ戦っていると、自分自身の行動で示していこう。
「頑張って、この特異点を解決して!皆でカルデアに帰ろう!」
それだけが、自分の出来る戦いだから。それだけが、消えていった命に報いる為の戦いだから。
今さら止めるなんて、出来はしない。今さら誰かに、任せるなんて出来はしない。
これからも、自分は世界の未来の為に頑張り続ける。皆の未来の為に、もう少しだけ歩み続ける。
未来を掴むために。生きたいと願う世界を滅ぼして。これからもずっと・・・
~
リツカさん。私、一人の人間として、リツカさんの事・・・──
~
・・・これからも、ずっと。
そして・・・
エルメロイ二世「なんだ、あれは・・・」
グレイ「あれは・・・」
三人もまた、時計塔だったものを目の当たりにする。藤丸の記憶の中で、最も強固な記憶として汲み上げた最固の防壁としての顕現を果たしたソレ。
オルガマリー「対策のため、玉座に戻りましょう。目視の通り・・・アレは、星の槍。ロンゴミニアドよ」
偽りの星槍が、最後の舞台として現れる。そして其処からは・・・
「ゴーストに、オートマタ・・・!?」
決戦を要する、無数の端役が湧き出行進を開始する──
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