人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「最終回になるかもしれない。覚悟して読んでほしい(フォウ)」


女神を誅する、開闢の星

「そら、洞窟の果てに行ってやったぞ。証を受けとるがいい、性悪」

 

 

心臓を穿たれたキメラの死体を、乱雑にステンノの前に投げ置く器

 

 

――先程から器の制御の効きが悪い。何か、したいことがあるのだろうか

 

 

「・・・お見事ですわ、勇者の皆様。私の用意した洞窟を突破するなんて」

 

「下らぬ世辞はよい。よもや――この畜生が宝等と戯れ言を抜かすまいな。その自慢の美しさ、地べたにぶちまけてやっても良いのだぞ」

 

「・・・・・・」

 

「すみません、英雄王。姉の不始末は、私が全霊にてお詫びいたします」

 

深々と頭を下げるメドゥーサ

 

「ハッ、自らの不始末を良くできた妹に拭わせるか。大層な姉もいたものだ。どちらが駄目か解ったものではないな」

 

器の言葉に、ギリギリと歯噛みするステンノ

 

「――貴方は嫌い。えぇ、大嫌いよ」

 

「ハッ、真なる王を振り向かせられぬ美しさなど塵屑同然。貴様の美しさは、凡夫雑種にしか与えられぬ程度の空しきものと知るがいい」

 

「――・・・っ」

 

女神のプライドをズタズタにされるステンノ

 

――今回ばかりは庇護する気にはなれない。洞窟に兵とキメラを用意し、マスター達を陥れた彼女に同情の意は沸いてこない

 

マスター達を危機に晒すのならば、それは自分にとっても、相容れない存在なのだ。彼女は、その線を越えたのだ

 

――物見遊山で見に来た以上、決定的な害は差し向けはしないが

 

 

「なによゴージャス。死体持ってきたわけ?」

 

「あはははははは!」

 

いつのまにやら、二人のサーヴァントがこちらに近づいてきていた

 

「キャット!?それとエリザベート!?」

 

 

「ハァイ、子ジカ。二匹の子ジカにまた会っちゃったわね。・・・思ったけど、被ってるわね。よし、じゃああんたは子ネコ・・・って感じでもないか。いっか子ジカで!」

 

一人はエリザベート・バートリー。オルレアンにてこちらを助けてくれたバラエティーアイドル

 

 

「あはははははは!」

 

『むむ、そちらにもキャットがいるのか。数奇な運命だ。早急にコミュニケーションは諦めるがよい。野生のキャットに知恵はなし』

 

「そうか、イヌ言葉がよいか?」

 

『飼い主がいないキャットなどこんなものか。あいきゅーが低いのだな。他人事ではないゆえキャットは恥ずかしい。だがどうすることもできん。ショッギョムッジョ。南無』

 

「そうか、ネコ言葉がよいか?」

 

もう一人はタマモキャット。マスターの身の回りを支える頼もしいキャットの同位体だ

 

『ちょ、訳がわからないぞ!フランスより酷い!』

 

「あ!生ネロがいるじゃない!」

 

「生ネロだと?貴様、美少女ベースでなければ切っているぞ?」

 

「・・・キャット、何故宝箱に入っていなかったの?そういう約束でしょう?」

 

「報酬にニンジンをいただこう!」

 

「食べてしまったのね・・・」

 

 

「エリエリ久しぶり!元気?」

 

「あたりまえじゃない?アイドルは身体が資本よ?あんたも頑張ってるみたいね、子ネコな子ジカ」

 

「彼女ら二人は、あの洞窟を掘るために姉さまが引っ張ってきたようで・・・」

 

「なるほど、テストプレイヤーか。・・・随分と下らぬ催しであったが。駄女神の企みなど所詮は児戯にも劣ろうな」

 

「・・・酷いお人。息をするようにこちらを傷つけますのね」

 

――未だ読み進めていない叙事詩。そこに、これほどまでに神を嫌う理由があるのだろうか

 

 

「神に慈悲は与えぬ。殺さぬだけ温情と知れ。そも――」

 

器が、真理を吐き捨てる

 

「――悪戯に人を惑わし、害を成す神など。存在すら認めぬわ」

 

 

――あぁ。そうか。そうなのか

 

彼がここまで神を嫌い、拒絶する理由

 

・・・それは、神が己の裁量で、人を害するからなのか 

 

――彼の愛する人間という種を、勝手に害し、殺め、遣い潰す神という存在を・・・赦せないからなのか――

 

 

『ちなみにグロテスクという言葉の意味は本来おぞましいものという意味ではない!よくわからないもの、という意味だぞ!余がよく言われたからな!』

 

「誰も聞いておらぬわ。――さて、汚物よ。我等に無駄骨を折らせた罰の話だが――」

 

 

『ちょっと待った!そこにサーヴァント反応が近づいてくる!』

 

 

「アタシ?」←サーヴァント

 

「ンン?」←サーヴァント

 

「なんですか?」←デミ・サーヴァント

 

「・・・侵入者ですか?」←サーヴァント

 

「あら・・・」←サーヴァント

 

「ほう、汚物の島に廃棄物でも流れ着いたか?」←ゴージャス

 

 

『あぁゴメンゴメン!君たち以外のサーヴァント反応!海から来るぞ!』

 

 

報告と同時に、海より狂乱が現れる

 

「ネロ――!!捧げよ、その命!捧げよ、その身体!」

 

「叔父上――!」

 

 

カリギュラ――はじめて交戦した皇帝だ!

 

 

「なに、なに?ネロの叔父様?」

 

「気を付けてください!彼はバーサーカー!意思の疎通は不可能です!」

 

 

「あぁ、美しい、美しい・・・!お前は美しい!」

 

狂乱の中、愛を紡ぎだすカリギュラ

 

「我が妹の子、ネロ・・・!捧げよ、女神がごとき美しさのすべて――我が全身で蹂躙してやりたい!!――お前を愛している――」

 

・・・だが

 

「ネロ――ォオォオォオォオォオ!?」

 

空間跳躍(物理)宝具で、カリギュラを遠くへ吹き飛ばす

 

 

「飛んでった~!?」

 

「マスター、マシュ、ネロ。貴様らであの皇帝を討ち取ってこい。――我はこの汚物に用がある」

 

――ぞわり、と魂が震える。この器、何をするつもりなのだ・・・?自分が害したいと感じてはいない以上、殺害などはしない筈だが・・・

 

 

「姉様、私もいきます。姉さまの住み処を荒らす者は、私が排除を」

 

「・・・解ったわ、行ってきてちょうだい、メドゥーサ」

 

「はい。・・・英雄王、どうか、温情を」

 

「悪いようにはせぬさ。よく護れよ」

 

 

「よし!皆、行くよ!」

 

カリギュラに向けて、走っていく一同

 

 

砂浜に、二人が残される

 

 

 

「さて――二人になった意味、当然理解していような」

 

返答を待つより速く、ステンノの口にくつわが嵌められ、鎖にて全身を拘束される

 

「――!」

完全に囚われし女神。王が口を開く 

 

「貴様は我にいくつもの無礼を働いた。我の赦し無くして我を一瞥した事。我等を欺き、財宝があるなどと抜かし、死地に追いやったこと」

 

ゆっくりと、絡め取られし女神に歩み寄る

 

「――我が目をかけるものを、我の赦し無くして害した事。査定する間もなく有罪だ」

 

紅き瞳が、ぬらりと動く

 

「本来ならばここで貴様を死なぬ程度に八つ裂きにし、汚濁に投げ捨て、徐々に腐り行く貴様を肴に、酒を飲んでも良いのだが・・・」

 

「――!!!」

 

自由を奪われ、尊厳をにじられ、矜持を傷つけられた女神。英雄王の怒りの前に、涙を浮かばせているのは見間違いではないだろう

 

 

――処断。言葉がよぎるその瞬間・・・

 

「――だがよい。特に赦す」

 

「――!?」

 

王は、慈悲を口にした

 

「マスターはあらゆる手段にて鍛えなければならぬ。キメラも雑魚も、それなりに砥石の役目を果たした。アサシンの使い道も覚えたようであるしな」

 

「・・・?」

 

「それに我は機嫌がよい。この召喚の間、大抵の無礼は笑って赦すと決めている。――そう、大抵は、な」

 

ふはは、と笑う英雄王

 

「――」

 

「赦すという割には何故縛るのか、とでもいいたげだな。当然であろう。赦す、とは言ったが罰さぬ、とは言っておらぬ」

 

――あっ。この流れは、この語りは、無銘知ってる

 

「・・・、・・・!?(何を・・・するつもり!?)」

 

「貴様は美を語っていたが、我からすればお笑い草だ。貴様は真なる美を知らぬにわか女神。だからあの程度の輝きを以て女神などとほざけるのだ」

 

「――!!」

 

――この流れは・・・フランスの・・・

 

「故に――今から我が」

 

 

あのときの・・・

 

「貴様に――真なる美を見せてやろう――!!」

 

キャストオフのアレ――!!

 

 

「――!!!」

 

待って!!待ってください!!いくら無礼を働いたとはいえそれはあまりにもあまりなんじゃないでしょうか!?罰にしてもくすぐるとかおしりペンペンとかそういう可愛らしいものを!お仕置きに核爆を使っては何も残りませぬ!!まだ心の準備が!!待ってください!!

 

 

「その魂、その霊核に刻むがよい!真なる美、真なる芸術!真なる王の輝きというものをな!!」

 

 

止めて――!!女神さまが死んじゃう――!!無銘神殺しの銘を背負っちゃう――!!もっと穏やかな名前がいいです――!!

 

「!!!??(め、メドゥーサ!助けなさい!メドゥーサ!!)」

 

 

「助けなど来ぬわ!!しかと見よ!」

 

――あ、これ駄目みたいです

 

「A・U・O――!!」

 

――不幸中の幸いとして

 

「キャスト・オフ――!!!」

 

 

――マスターとマシュがいないでよかった・・・

 

 

 

「――!!!!!!(め、メドゥーサ――!!!!??)」

 

弾き飛ぶ黄金の鎧、唸りを上げる股間の王律鍵(意味深)――!!

 

 

「ふははははははは!!貴様のような汚物に見せるのには勿体無いが!!身の程を弁えさせてやろう!!これが!最高水準のダイヤに勝る我が裸身である!!」

 

「!!!!(メドゥーサ!!メドゥーサ!!助けて!私を助けて――!!)」

 

 

「目を閉じることは許さぬ!我に働いた数々の狼藉、その眼でこの姿を焼き付ける事にて免責とする!!さぁ、見よ!!」

 

くいっ、とポーズを取るはだかのおうさま

 

 

「!!!!!(ごめんなさいメドゥーサ!私はあなたを愛しているの!日頃いじめてしまって本当に悪かったわ!優しくする!今度から優しくするから私を助けて!この黄金の地獄から連れ出して――!!)」

 

「ゴージャスー。子ジカたち苦戦してるけどアンタいかなくてぶは――――!!!!??なーんでーまーたーぬーいーでーるーのー!!!!??」

 

「ふはははは!!つくづく運が良いなエリザベート!!我の裸身を何度も拝謁するなど!さては幸運EXであるな貴様!!」

 

「そんな高くてたまるもんですか――!!Eでも生ぬるいわ――!!!」

 

 

「――!!!!(メドゥーサ、メドゥーサ!!お願い、このおろかな姉を助けて――――!!!)」

 

 

「賛美せよ!貴様らに許された意思はそれのみだ!賛美せよ!ただ賛美せよ!!ふははははははは!!ハーッハハハハハハハハハ!!!」

 

 

 

 

――そのあとマスター達はなんやかんやでカリギュラを倒し

 

 

 

「私が悪かったわ、本当にごめんなさい・・・貴女を、貴女を愛しているの、メドゥーサ・・・」

「は?え?――はい・・・?」

 

こころをいれかえた ステンノは涙ながらにメドゥーサを抱き締め

 

「あなた方に無礼を働いたお詫びとして、連合ローマの首都の位置をお伝えします・・・私はここで、あなた方の勝利を祈っております・・・」

 

良き女神となったステンノから、価千金の情報を手にいれたのであった

 

「うむうむ。姉妹同士、美しい光景よな」

 

「エリザベートが伸びてるんだけど・・・何かあったの?」

 

「格の違いを知ったのだ。ふははははははは!ではいくぞ!ローマへと凱旋だ!」

 

「仕切るな馬鹿者ー!」

 

――今回は二人か

 

――被害が少なくて、良かった

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