人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ゴルドルフ『待て待て!貴様はサーヴァントなのだろう!?なぜ我々の記憶や記録を欲しがる!?目的を話なさい!』

オルガマリー「疑似サーヴァントなので記憶が曖昧なのです。アイリーンは幻霊、召喚された事が無いので」

『座に還り!ロストベルト側に喚ばれないとも限らん!危険すぎる!許可できん!』

「なら、此処で藤丸君を仕留めるけれど」

『!?』

「契約の履行違反は死を以て。──知らなくてはならない理由があるの。私には持ち帰らなくてはならない情報があるの。・・・邪魔をしないで。新所長」

ゴルドルフ『ひ、ひっ・・・』

マシュ(・・・こんなに、冷徹な態度・・・。本当に、何もかもが違う・・・んですね)

藤丸「大丈夫です。全部話しますから。それに──」

オルガマリー「・・・」

「・・・無いでしょ?殺すつもりなんて」

「──甘いわね、相変わらず。・・・美徳だけれど」

ゴルドルフ『こ、殺されるかと思った・・・』

ダ・ヴィンチちゃん『相手見て喧嘩売ろうね~?』


追憶・序章

『──・・・俺達の戦いは、確かに報われました。世界の未来を取り戻す戦いは勝利に終わり、焼き付くされた人理は、この手に帰ってきたんです。皆の力を借りて・・・こんな自分でも、何とかやることが出来たんです。

 

そして・・・2017年、12月26日。オレの・・・カルデアの仕事は終わったんです。特異点は皆消えて、人類の危機が去った後、カルデアのレイシフトは凍結されて、召喚されたサーヴァントも役目を終えて、皆・・・座へと還っていきました。所長の代行をしていたダ・ヴィンチちゃんを除いて、サーヴァントは皆いなくなりました』

 

『・・・』

 

2017年。今こちらの時空の四月。まだ、何ヵ月の猶予があるとはいえ実際に何かが起こる時間は、もう今年という時期に迫っていた。其処で藤丸は日常に戻り、それぞれの次の未来へと向けて歩み出す・・・だが、その前に成すべき事がある事は予想が付く。そう──

 

『査問会。カルデアが今までやった事、今までの情報や戦果を詳しく確かめる為に、ゴルドルフ新所長と国連からたくさんの魔術師がやって来たんです。其処で、最後の引き継ぎを兼ねて・・・』

 

引き継ぎ、とはいうがそれは体の良い乗っ取りなのだろう。協会の連中は観測所と軽視していたが、有能となれば即座に掌を返す事は想像に難くない。ガストン辺りがぼやくだろう。手際が悪く、怒鳴り散らす性格を毛嫌いしていたし。無理もない話である。

 

『無理もない話だがねぇ。前所長は学生上がりの小娘。アニムスフィアの家系なら甘えは許されん。結論から言って、彼女は所長には相応しく──』

 

『新所長!!』

 

『ひえっ・・・ま、マシュ。君って怒鳴るタイプだったっけ・・・?』

 

まぁ無理もあるまい。自身だけで、その状況になったら躊躇わず新所長に席を譲っただろう。誰が所長かは問題ではない。誰がカルデアを存続させるかの話である。

 

「カルデアの被害状況と引き継ぎ内容は」

 

『う、うむ。カルデアのスタッフの八割を損失、新しいスタッフを補充し、私がカルデアの大半を買い取った。他の科目のバラ売りを避けるためにね。私も、カルデアに懸けていたんだよ』

 

「・・・新しい所長として、ね」

 

そうだろう。カルデアを足掛かりにして再起を図ったのだろう。没落しかけの家柄と聞いていたし。旧スタッフを解雇し、新スタッフのみで運用するとの意志を示したのだ。だがまぁそれは構わない。死んだ人間に悼みはしても重んじ過ぎるのは良くはない。・・・問題は、査問会だろう。

 

「魔術協会に無断での人事異動、一般スタッフへの機密知識の開示。七騎までだったサーヴァント召喚の多用。国連許可なしのレイシフト敢行。連中からしてみれば重罪ね」

 

どんなに記録が素晴らしくとも、どんなに偉業が素晴らしくとも。それは俗物からしてみればただの記録。寝ていたら世界が終わり、起きたら元通りだったというだけの話。事実は数多のマスター候補の障害、禁側事項の違反というだけ。作為的か、意図的かを知らなくてはならないため、査問会は開かれたのだろう。──世界を救済した組織は、端から見れば犯罪者集団というわけだ。

 

「でも、ダ・ヴィンチがうまくやったんでしょう?あの人はしくじらない筈よ。書類の記録にて、あなた達の安全を確保した筈」

 

──『楽園に来てからの資料は全部作ってあるよ。記録の閲覧が必要な時に対応できる様にしているからね!』。そう言った彼女あるいは彼は、どんな場所でも変わりはしないだろう。

 

『それの結果の一つが、こちらになります。退去したサーヴァントの皆さんの記録が記された、トランク。これはダ・ヴィンチちゃんが精緻に刻んでくれた情報が詰まっていて、召喚された記憶を全て引き継ぐ事が出来た優れもので・・・、・・・っ』

 

「・・・辛いなら口にしなくていいわ。感傷はあなただけのもの。必要なのは事実だもの」

 

『はい。・・・そして、翌日の27日に、44人の新カルデアメンバーがやってきたんです。ゴルドルフ所長の選んだ魔術師のスタッフ達と、国連の使者達が・・・新しいカルデアのスタッフとして』

 

「・・・まぁ、カルデアに着目したゴルドルフ新所長のホワイダニットは理解できます。大方何も上手くいかなくて、降って湧いた再起のチャンスをモノにしようとした腹でしょう。そのたぷたぷのお腹に詰まったのは人並みの野心だけでしょうし」

 

『辛辣過ぎない!?何が気に入らないの!?』

 

「そして藤丸君。・・・査問会も気にはなるけれど、こちらの疑問をいくつか提示させてもらってもよろしいかしら」

 

そう、いくつか浮かび上がった疑問がある。ここはライネスの言うホワイダニットの概念のお陰で気付く事が出来たと言っていい。そう。ゴルドルフの性格は良く解っている。一言で言ってしまえば『魔術師にだけ向いていない男』である。彼は気回しや気遣い、そして細やかな配慮が心を多く占めている。心の贅肉があるというヤツだ。楽園でも定期的に休息を勧められ、差し入れの数は数えきれずこっそり作ってくれた料理は計り知れない。だからこそ、だからこそだ。

 

「ゴルドルフ所長。あなたがカルデアを有効利用しようと横入りや掌返しを思い当たりアニムスフィアの功績を奪おうとしたとは考えられません。──あなたに、入れ知恵を行った誰かがいたのでは無いでしょうか」

 

『・・・!』

 

「そして、カルデアの吹き飛んだマスター達の蘇生処置が行われた筈。2017年の一月から12月までマスター一人一人を蘇生したとしたなら・・・『Aチームはいつ蘇生されたのですか』?」

 

新しいカルデアのマスターとして選ぶならば、全うな魔術師ならば一般人のマスターではなく、Aチーム選抜のマスターから選ぶだろう。最高候補はキリシュタリア、或いはデイビッド。まぁぐっちゃんやカドックは論外として・・・。少なくとも、それらから選抜されるのは間違いないだろう。となれば、予測できるのはAチームの解凍処理であるだろう。

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

「・・・新所長?」

 

なんだか、青ざめ震え始めた新所長。余程トラウマだったのだろうか。そして図星だろう。誰かが彼に告げたのだ。カルデアの有効利用を。カルデアの掌握を。内部から切り崩すことを。

 

「Aチームの皆は、その事態に弁明の一つもしてくれなかったと?彼は曲がりなりにも世界を救ったマスターであり、マスターとして敬意を払われる立場にある筈です。まさか其処まで恥を知らない筈が無いでしょう」

 

一体、何が・・・。その疑問に応えたのは、マシュだった。沈痛な面持ちで、その事実を告げたのだ。

 

『──Aチームの皆さんは・・・人類を裏切り、カルデアのコフィンより何らかの方法で消え去っていました』

 

「・・・──なんで、すって?」

 

『えぇい!私も解った事を言ってやる!六月から活動を開始したロシア辺りの軍事組織、そのトップであるコヤンスカヤ!そしてコトミネと名乗った謎の神父によりカルデアは壊滅に陥り!そして──世界は漂白されたのだ!』

 

・・・漂白・・・?カルデアが、壊滅・・・?

 

『レイシフトは凍結され、カルデアのスタッフは大半が抹殺された!我々はカルデアを追われ、戦いに挑んでいる!人類が、世界が全て漂白された地球を駆け回り!『行き止まりの歴史』を滅ぼす戦いにな!!』

 

行き止まりの歴史・・・Aチームの、世界への反逆。──裏切った?キリシュタリアが、カドックが、皆が・・・?

 

「行き止まりの、歴史・・・」

 

『はい。・・・空想樹と呼ばれ、復活したロストベルトを・・・滅ぼす戦い。それが今の・・・』

 

『オレ達の、戦いです。オルガマリー所長』

 

・・・告げられた事実に、オルガマリーは思考が混乱しているのを知覚した。

 

目の前にいるカルデアのメンバーは、本当に最後の生き残り。

 

修復は覆され──

 

Aチームが、世界の敵となった事実が・・・比類なき衝撃として、オルガマリーを打ち据えた。




オルガマリー「・・・6月に、軍事組織が接触し。12月に世界が漂白された・・・そういう事ね」

藤丸「はい。・・・滅ぼされた未来が、復活して。空想樹を楔に、地球に甦り新たな歴史になろうとしています」

オルガマリー「・・・・・・ごめんなさい」

マシュ『所長?』

「少し、整理させて。・・・衝撃的に、過ぎたわ。ごめんなさい・・・ごめんなさいね」

ダ・ヴィンチちゃん『・・・構わない。君がオルガマリーならば、その衝撃は計り知れないだろうしね』

「最後まで、聞くわ。大丈夫」

(・・・何故。何故なの。Aチームの皆。何故なの、キリシュタリア──)

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