人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
騎士王「マーリンですか。・・・いえ、別に、何も」
マーリン「またまたぁ。私とアルトリアシリーズが逢うときといえば、必ず何かが起こるものなのさ。何か気掛かりな事があるのかい?話してごらん?」
「・・・。仕方ありません、引っ掻き回されるよりは・・・実は、相談なのですが・・・」
マーリン「ふむふむ。・・・素性を隠す衣装が欲しい、だって?」
騎士王「はい、実は──」
「ふぅ・・・こんなところ、ですか」
楽園における一室にて、ほっと一息つき、ひょいととある研鑽の成果を見て胸を撫で下ろす者がいる。それは小さく、そして可愛らしく出来上がった獅子のぬいぐるみ。それを縫い上げた当の本人の名は・・・楽園のNo.2、騎士王である。
「プリンセスの生誕のプレゼント・・・気に入っていただければ良いのですが」
先のエアの誕生日、参加し祝ったはいいものの。騎士として手ぶらと言うのもよろしくはないのでは・・・とこっそり部屋に籠ってチクチクと編み物に勤しみ、自分なりのプレゼントを用意したいと思い立ったのが始まり。楽園の余りあるアーカイブから裁縫の手段のデータを自分なりに学習し、こっそりチクチク編み込み、指をプスリと刺すこと数回。なんとか形にする事が叶ったライオンのメス人形。しんなりとしたなんとも言えない表情の獅子を持ち上げ、心持ち誇らしげな面持ちにてふんすと胸を張る騎士王。
(出来映えは・・・市販のものに劣りはしますが。それでも精一杯作った事をプリンセスは汲んでくださる筈。彼女に渡すになんの躊躇いも無い。・・・しかし・・・)
しんなりと笑っているような、泣いているようななんとも言えないライオンの表情。これはちょっとシュール過ぎるかもしれない・・・いやこれはこれで世の儚さや繊細さを顕しているようで・・・いや、ライオンとは雄々しいものでは無かっただろうか。なんだか自分が言うのも憚られるが非常に・・・可愛らしい。
「い、いや。プリンセスも非常に可愛らしいですし、可愛らしい獅子だっていてもいい筈。・・・獅子の在り方だって多彩です。可愛らしい獅子こそ、プリンセスには相応しい・・・筈・・・」
なんだか自信が無くなってきた・・・のを振り払い、一大決心を行い見ているだけであったかい気持ちになる獅子のぬいぐるみを握りしめ騎士王はそっと英雄王と共同であるエアの部屋へと向かう。自身の手で、自身の選択で行った誰かの為への贈り物を持って。
(プリンセスこそは楽園の要。これからも息災でありますように)
そんな願いを込めて歩き出した騎士王・・・ではあるが、其処は楽園、すんなり行くのは問屋が下ろさなかったりするのである──
~
「おや、騎士王。その獅子のぬいぐるみは贈り物かい?」
「──!?あ、アーサー。これはですね、その・・・」
内密にして隠密のつもりで身を包んだヒロインXの衣装で偽装したというのに、通り掛かったアーサーにあっさり見抜かれてしまう騎士王。ぬいぐるみを後ろに隠すも、あっさり見抜かれてしまう事を驚くと同時に感嘆を告げる。
「さ、流石ですねアーサー。隠密の衣装に身を包んだ私を瞬く間に看破するとは・・・」
「あぁ・・・。くれぐれも謎のヒロインXに見つからない方がいい。確実に波が立つからね」
見るものが見れば一目瞭然な変化を知らぬは騎士王のみといった物言いをやんわりとアーサーがいなし、彼女の道行きをそっと後押しする。
「あちらに数多の君がいたのを見かけた。無用な困難を避けるためにも、あちらの通路とワープを使えば穏便に行くことが出来るだろう」
「なんと。それは助かります・・・やはりその、プレゼントを贈るという行為は気恥ずかしいので。出来る事なら、誰にも・・・」
「あぁ、残念だが僕には見つかってしまっているけど・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・そ、それでは」
「武運を祈っているよ、騎士王」
帽子を深く被り、白色のX衣装に身を包みこそこそ挙動不審ぎみな騎士王を、アーサーは静かに見送る。その、人らしい在り方に知らず微笑みを浮かべながら。
「・・・それにしても、その身体でヒロインXは無理がある。ヒロインXXXくらいにしておくべきではないだろうか」
そんなみょうちきりんな感想を浮かべながら、アーサーはそっと手を振り、絶え間無く感じる背中の重圧を気のせいと思い込む心構えに戻るのであった──
~
「あ!お前!!父上モドキ!!」
「!モードレッド・・・」
隠密に勤しんでいた(つもり)の騎士王、あっさりエンカウント。その呆気ない隠密ミッションの終幕に慌てながらも、騎士王は平静を装い帽子を深く被る。何とかして自身の存在を誤魔化さなくては・・・。
「人のツラを見りゃ襲い掛かってきやがって・・・!今日もまたオレの躾だのなんだのって斬りかかってくるつもりなんだろ!」
「い、いえ違います。私は今はあなたに用はありません。今日のXは紳士的なXなので・・・」
「あぁん!?そいつぁ何か・・・?オレなんぞ狩るまでもねぇっていう侮辱ととっていいんだよなァ!?」
なんでそうなるんですか・・・騎士王は我が騎士にして不徳の子(客観的事実)のネジくれた精神構造になんとも言えぬ感情を懐くことを避けられなかった。構ってちゃん?構ってちゃんというんですかこういうの・・・
「上等だ・・・飯食ってたら机の下に潜むわシミュレーションしようとしたら物陰にいるわ部屋に戻ったら天井から落っこってくるわでうんざりしてたんだ。此処で決着つけてやらぁ!」
「ま、待ちなさい。廊下で剣を抜くのは騎士道に・・・」
「るっせぇおはようから御休みまで奇襲してくるアサシンのほざく台詞かよ!くたばりやがれぇ!!」
一息で武装し、兜と鎧を装着したモードレッドが一直線に襲い来る。騎士王としては本当に戦う必要もない無益な争いであるが故に、最短で決着をつける必要がある。その手段は最短かつ端的だった。
「なっ──!?」
モードレッドの驚愕の声が上がった後の展開は一瞬だった。ヒロインX?が空中にヒョイッと『何か』を放り投げた事は把握したが──次の瞬間の行動に思考は集中せざるを得なかった。
「・・・っ」
白刃取り──。両の手で刃を挟み取り、それを無力化する絶技。クラレントの勢いを完全に殺したアナザーXはそのままクラレントを奪い取り・・・
「ぎゃんっ!?」
刃を兜に叩き打ち、内部のモードレッドの頭をぐわんぐわんと衝撃に晒し、動きを封じた後に瞬時に離脱する。いつものヒロインXならば取らないであろう、鮮やかな対騎士への護身術による切り抜け方にモードレッドはまんまとしてやられた形となる。
「それではまた。あまり他人に噛み付く事はしないように」
そのままマフラーを靡かせ、そそくさと走り去るヒロインX?を追うことも出来ずモードレッドは膝をつく。・・・いつもならばそんな隙を見せ付けていては嬉々として始末にかかるXらしからぬ選択に、逆に面食らったからだ。
「いつつ・・・!・・・なんだアイツ、腹の調子でも悪いってのか?色もなんかいつもより白いし」
いつもと違う、とまで気付いたはいいものの。それがどんな違いかは微妙に読み取れなかったモードレッド。毒気を抜かれ、おっかしいなと首を捻り・・・
「・・・ま、いっか。オレも変人な父上に用はねーしな!よっし、さっきのすげぇ刃の防ぎ方オレも練習しよーっと!」
アーカイブに参考画像あっかなぁ!と怒りと気難しさと溜飲を一気に忘れ去り童心に返るモードレッド。怒りはするがいつまでもそれを引き摺らないのが、モードレッドという騎士なのである。
(・・・ふぅ、アッ君やベディヴィエールでなくて助かりました。モードレッドの様に察しは悪くないでしょうから、弁明にすら一苦労だったでしょう)
そんなこんなで、幸運にも恵まれ。いよいよプレゼントを渡すべき相手の部屋の前へと辿り着く。
「・・・えぇ、本当に。おめでとうございます。遅くなって、申し訳ありませんでした」
メッセージカードと共に、なんとも言えない表情のライオンのぬいぐるみをそっと入り口の前へと置き、謎の騎士王は任務を果たすのだった──
フォウ(エアー!騎士王からプレゼントが来てるよー!)
──本当!?
『プリンセスへ 不出来ですが、あなたをイメージして作りました。獅子でありながら、癒しを与えるあなたを表情で表現したつもりです』
フォウ(おぉ・・・アルカイックスマイルを浮かべたライオンなんて新しい・・・!)
『二歳の誕生日、おめでとうございます。これからも英雄王の傍らで、世界の美しさを存分に堪能なさってください 騎士王より』
──ありがとう、騎士王・・・!このライオン、ずっと大切にしますからね・・・!
~
騎士王「・・・フォウくんが運んでくださいましたね。プリンセス、気に入ってくだされば良いのですが。・・・さて、私もこの場より・・・」
ヒロインX「年始に召喚などと張り切っているギルですが、そんな結果はアルトリアがメインヒロインだと解りきっているくらいに解りきったものになるでしょうし!慰めとしてこの手製の♂ライオンぬいぐるみをあげましょう!この細やかな気遣い、もう二度と人の心が解らないなんて言わせませんとも!~♪・・・ん?」
「あ・・・」
「・・・どちら様です?XXさんですか?」
「・・・その・・・えっと・・・謎の、騎士王・・・XXXです」
「XXX!?」
~
『爆死労しプレゼントをどうぞ! アルトリア』
ギル「余計な気を回すヤツよな・・・だがよい、ちょうどつがいだ、収まりもよい」
──~♪
「部屋の飾りには、ちょうど良かろうさ」