人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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御羅「あ!話す前にちょっといいか!そのさー、リッちゃんの声そっくりなんだよ、イブキに」

リッカ「イブキ?・・・伊吹童子・・・シュテンちゃんの事?」

「うんうん!イブキ!あいつヤマタノオロチの縁があるからそれも名前なんだよなぁ。ね、ね。一発芸一発芸!物真似やってよ~!何でもいいから!」

モモ「鬼と、友達・・・すごい」

イヌヌワン『カルデアのマスター殿は酒呑童子とまで交流が・・・!?』

フワイサム『帯刀している刀からして、源頼光殿と親しいのは予測できたが・・・』

アンク『私達の未来では、鬼も人と触れ合う時代かぁ・・・。──そっか、温羅があくせく働いてたのって・・・』

リッカ「じゃあリッカ!酒呑ちゃんの物真似行きます!!」

温羅「よっ!!モモ、クラッカーいけクラッカー!」

モモ「(ヒュパァン)」

リッカ「・・・いややわぁ・・・そないいけずせんと・・・ブチ殺したくなってまうや、あれ違った間違えた!」

温羅「wwwwwwwやwwばwwんwwwちゃwwんwww」

イヌヌワン『耳が蕩けるからの戦慄のジェットコースター・・・!!』

フワイサム『でもGIに語るまでもなくしおらしいリッカ様は可愛らしかった』

アンク『ほんとほんと!ね、リッカちゃん?ちょっとずつ自分の可愛さに慣れていきましょう?私も手伝うから♪』

リッカ「う、うん・・・。私、可愛くなりたいから・・・」

モモ「リッちゃんはもう可愛い」

リッカ「ヌッッッッッ!!!!」

フワイサム『ちなみにしおらしいリッカ様は時間にして一秒程だった』

イヌヌワン『最高のスピード・・・!!』

温羅「いややわぁwwよーし!ウチもはなしたろ!wwwめっちゃ話すわー!wwほい!」

『ムービーシアター』

「始まり始まりー!」

アンク『時代観ッ!!』


醜い歴史

【俺達は自由だ。何にも縛られない、何にも囚われない。総てが許されている!俺達を阻むものは何もない!】

 

・・・そう言って、思うがままに皆が生きる世界があった。皆が皆自由を謳い生を謳歌する世界があった。その世界は、誰もが平等で公平だった。たった一つの物差しを計りとして、富めるもの、貧しいもの、若きも老いも男も女も一同にそれを究めようと自身以外の全てを糧としていた世界。

 

『強さ』。種族として、個として、それだけが認められ、受け入れられる世界。逆に弱きものは淘汰される世界。全ての命が、強さと快楽を求める為に戦いに明け暮れる世界。ウラが産まれた世界はそんな所だった。

 

法を敷き、ルールに整備されたお前さまらの世界にはピンと来ないかもしれないが・・・アタシの産まれた世界には『自由』が満ちていた。本当の自由、即ち頼れる者は己のみ。自身以外は全てが糧の世界。

 

どんな蹂躙や暴虐を行っても、それを裁く法は無く。どんな下劣な真似をしようと介入する治安はなく、親を殺そうと子を殺めようと止める理性は無い。誰もが自分のやりたい事をするために、肉親だろうと殺し合い、親友だろうと後ろから刺す。それが完全な自由を掲げる妖怪、神秘の満ちた世界の姿。

 

──過去は忘れ去られ、未来に目を向ける者は誰もいない。刹那の快楽と今のみにて完結する先の無い退廃の歴史。それが、自分の命一つ好きに出来ない不自由極まるアタシのかつての世界の成り立ちだ。分岐点は分かりきっている。人を『弱者』と定め、種ではなく『玩具』として弄び、最後の一人までいたぶりつくしたが故の人類の絶滅。星の存続の前に、人の抑止力は無力だった。虐げられる者であった人間に、妖怪どもを討ち果たさんとする英雄はついぞ生まれなかった。

 

玩具を喪った妖怪どもは、やがて対立と殺し合いを同族にて行う。妖怪を喰らえば喰らうほど強大化し、やがては神へと至る程に強靭になれる。他者は己を満たす糧以外の何者でもない。心なき怪物が支配する世界とはそういうものだ。アタシの見た景色は、血染めの河と屍の山。鈍色の天に真紅の月・・・。もうそれだけしか思い出せん。

 

其処では様々な妖怪が勢力を作り戦争を行っててな。鬼・・・つまりアタシを産み出した同族は、知恵ある鬼のババアが指揮する強靭な鬼の集団。百鬼夜行を組む鬼どもの集まり。其処で、アタシはババアが選び交配させた鬼二匹により産み落とされた。──不吉にして、出来損ないの忌み子として。

 

【こやつは角が四本も生えており、蝋のように肌が白く、牙が既に生え揃っておる!両の眼は別色に輝き、『朗らかに笑っておる』!】

 

【殺せ!忌み子だ!】【笑うなど、こやつはおぞましい!】【死体の肌だ、長くは保つまい!】

 

【これは違う!我等が望んだ鬼の首領ではない!見ろ!『おなご』だ!おなごに首領は勤まらぬ!殺せ!!】

 

──強き首領ではなく、死体めいた忌み子とされた赤子は、集落の鬼どもに刃で滅多刺しにされ、崖から投げ落とされ、徹底的に殺された。やがて世界を滅ぼす存在となる。長老のババァに従う鬼ども。誰よりもアタシを害したのは、アタシを産み落とした両親だったものだった。奴等は忌み子を産んだ責として角が折られていた。

 

だが、ウラは死ななかった。忌み子のアタシは、鬼どもの誰よりも頑丈だったわけだ。アタシは、アタシの体から流れる血が口に入って目が醒めた。肥溜めに落ちたアタシは、酷いクソの臭いがこびりついたままに生を受けた。

 

鬼は成長・・・即ち戦えるようになる期間が早い。全身から流れる血が止まる頃には、アタシは少女と呼べる見てくれに育っていた。行く当てもなくさ迷うアタシは、世界の仕組みと残酷さを叩き込まれた。

 

【なんだ、鬼かお前?青白いが喰えばやわっこくて旨そうだぁ・・・!】

 

【オレはもっと上に立つんだ!オレの為に喰われろってんだよぉ!】 

 

【うへへ・・・女の体の皮を剥ぐの、夢だったんだぁ・・・!】

 

アタシを見るヤツは皆が皆きたねぇ息と共に糞まみれの言葉をぶつけてきた。華奢だったが、胸も尻も飛び出てきた頃合いの女だ、妖怪どもは股ぐらをいきらせて飛びかかって来たよ。

 

『・・・・・・くい』

 

【あん?なんか言っ──ぐぎゃぁあぁあぁあぁ!!!魔羅が!オレの魔羅がぁあぁあ!!】

 

『みにくい』

 

アタシの初めて口にした言葉がそれだった。アタシはどういう訳か、子供の時点でその時代のあらゆる妖怪や神秘よりも強大な存在に作られててな。群がる妖怪を喰らい、引きちぎり、殺し、命を繋ぐために皆殺しを繰り返した。

 

『強さが法なんだろ。なら、あたしが全部喰ってやる』

 

喰らえば喰らうほどに、力は増すし腹は満たされた・・・ような気がした。総てが敵なら、総てが糧なら遠慮なくアタシは喰らい尽くした。山を縄張りにする猿どもは纏めて殺し、湖を牛耳る河童は尻児玉をブッこ抜き、幅を利かせる神霊も精霊も食い散らかした。

 

そして喰らう度に奴等は色々な反応を見せ付けてくる。慈悲を乞うヤツ、泣き喚いて逃げるヤツ、命を繋ぐために殺そうとしていた相手にへりくだるヤツ。力こそが正義とほざく輩は、どうしようもなく生き汚く無様で愚かな奴等しかいなかった。慈悲を見せ見逃せば仲間を連れて襲撃し、背中を見せれば躊躇いなく寝首を掻こうと飛び掛かってくる。

 

『そんなに生きたいのか。そんなに命が惜しいか。小娘の脚を舐める程に、媚びへつらう程に』

 

──力の、なんと脆いものか。なんと、世界は・・・この歴史は『醜い』のだろうか。

 

人間にして14才くらいのアタシは、そんな風に世界を理解した。誰も頼れる相手などいない。誰も信じれる相手などいない。返り血を水浴びに、虐殺を食事とし、血に染まりきった身体で月を見上げる。花は血で枯れ、鳥は戯れに食い散らかされ、風は血の臭いと疫病を撒き散らし、月は血染めの不気味な姿。修羅や羅刹が蔓延り、神や仏は自身が喰らった。妖怪の満ちる世界を、アタシはひたすらに疎み、嫌い、喰らっていった。

 

・・・そんな折、喰らった妖怪どもの記憶に何度か出てくる生き物がいる。痩せていて、群れていて、喰われる最後の瞬間まで自分ではなく誰かを庇う不思議な生き物。化け物どもが口にしていた生物が。

 

『人間・・・どのような生き物だったのか』

 

絶滅して久しい人間。アタシは興味を持って人間が作ったとされる痕跡を探して回った。其処で、村落の跡地らしき処や寺院の跡地などを見付けたんだが・・・

 

『・・・・・・』

 

糞尿まみれの写経本、引き裂かれた安全祈願の御守りや、踏みにじられた骸達。杯代わりに使われた髑髏に、叩き壊された家だったもの。蹴鞠に、茶碗に、ひっかけられた小便。

 

妖怪の享楽に・・・完膚なきまでに凌辱された人という存在があった痕跡。無慈悲なまでに辱しめられた尊厳を前にし、アタシは頭が真っ白になった。面白半分で踏みにじられた人の歩み。この世界にいた痕跡すら塗り潰す、野蛮な畜生ども。

 

『──あぁ、そうか』

 

そこで、アタシは理解した。──強さに任せ、誰かを傷付け、懸命に積み重ねた歴史を嘲笑う魑魅魍魎が溢れるこの世界。この世界に・・・妖怪に。最早未来等無い。

 

『こんな醜い歴史は、こんな愚かなる恥の世界は滅ぶべきなのだ。──醜い。醜過ぎて吐き気がする』

 

自身の血が、存在が、世界の総てが間違っている。恥だ。生きている事が恥だ。この世界のあらゆる総てが存在してはならないものだ。そして、一番醜いものは。

 

『【強さ】の。・・・なんと醜い事か──』

 

・・・そして、アタシは決心した。この世界に、生き延びていいものなど何一つ無いと。一刻も早く、この世界を、この醜き生き恥の歴史を終わらせねばと。

 

アタシは自衛から、狩りへと転換しあらゆる総てを喰らい尽くした。弱きも強きも男も女も関係無い。ただ、目の前の世界は一刻も早く捨て去られるべきだ、滅び去るべきだという決心。それに呼応したのか、角は四本とも捩れ狂い、見る者を震え上がらせる偉容を放ちいつしかこう謳われるようになった。

 

『白き夜叉来るなら希望を捨てよ、血に飢えし羅刹来るなら命を捨てよ、憤怒に狂いし鬼神来るなら──己の総てを投げ棄てよ』

 

皮肉な事に、妖怪の争いは終わっていた。自身達の存在が、存続が、たった一匹の狂える鬼に絶滅の危機すら懸念させたからだ。

 

【あのおぞましき鬼神を討ち果たし!我等の歴史を正しき歴史に当て嵌めるのだ!総てのあやかしよ、一つとなりて──あの鬼神を!討ちとれぇえい!!】

 

【【【【【【───◼️◼️◼️◼️◼️!!!】】】】】】

 

『上等だ、かかってこい。どの道貴様等畜生共、遅かれ早かれ皆殺す腹積もりよ・・・!!!』

 

ババァの号令により地平を埋め尽くす百鬼夜行、魑魅魍魎の群れにアタシは一人で決着をつける為に暴れ狂った。ヤマタノオロチ、ぬらりひょん、だいだらぼっち、ぬえ、カマイタチ、堕落した麒麟、応龍、トウテツ、牛頭、馬頭・・・己の存在を駆逐される事を恐れた輩を、アタシは片っ端から喰らっていった。忌み子とされたアタシは、恐らくこの腐りきった歴史に幕を引く為に産み出されたのだろうと戦いの中で理解した。

 

いや・・・或いは。『こんな歴史を、汎人類史と関わらせる訳にはいかない』という、大いなるなんかの意志だったのか。世界中から集う神秘の塊どもを、何年も何年もの戦いの中で喰らい尽くした後に。見知った角無しの鬼のメスとオスを喰らい、最後に残った総大将のババァの首を締め上げ、アタシは一人立っていた。

 

・・・もう、その世界の命はアタシとババァしかいない。完全に、その世界の滅亡は確定した。これで良かった、とアタシは心から安堵した。醜い、強さを履き違えた歴史は、此処で──

 

【ヒ、ヒヒ、完成した・・・完成した・・・!よくぞ、よくぞ総ての妖怪を喰らい尽くした!疎ましき忌み子よ!】

 

『──何がおかしい。殊勝な句など詠ませると思うか』

 

【ガ、グ・・・!!これで、これでよい・・・産まれた、産まれ落ちたぞ・・・!総ての妖怪を喰らい、取り込みし【超統合鬼神】・・・!総ての妖怪の力を、魂を呑み込んだお前こそが!我等の歴史の生き証人!──キヒャアァア!!】

 

『・・・!!』

 

瞬間、ババァは命を捨てアタシに呪いを掛けた。世界から弾き出す呪い・・・最早帰る場所なき『放浪者』としての呪い。

 

【忌み子よ、比類なき鬼神よ!お前こそは世界を喰らう真なる鬼神!我等の世界の王!!思うがままに世界を巡れ、思うがままに暴れ、喰らえ、そして殺せ!!世界の総てを我が物とせよ!その行いこそ!我等の歴史の正しさの『証明』となるのだから!!】

 

アタシは世界をさ迷う事となる。汎人類史に辿り着くまで。死ぬことも、負けることも赦されない。

 

世界の総てを引き換えにして造り上げた、最強にして最高の『鬼神』。それが敗れる事など有り得ない。総てに打ち克ち、新しき神秘を拓くだろう。汎人類史の王として、勝利する事で。

 

『・・・・・・・・・』

 

【お前こそが、我等の歴史の【王】よ!汎人類史に轟かせるがいい・・・!そのおぞましさを!その恐ろしさを!我等の歴史は健在なり!我等の歴史は健在なりぃいぃい!!ヒャハハハハハハ!!ヒーッヒヒヒヒヒヒャハハハハハハハハハァ!!!】

 

・・・初めから、ババァの狙いはそれだった。汎人類史を侵略し、支配する存在を造り上げ、いつかその歴史にて自身らの【王】を擁立させ統治させる。それがババァの『剪定』された世界に未来をもたらす【福音】にして、汎人類史に仇なす【呪い】であった。

 

『・・・・・・・・』

 

実際のところ、もうアタシはどうでも良かった。この世界が滅びる。それだけが、アタシの願う結末だった。

 

後は適当に野垂れ死ぬだけだ。後は適当に滅びるだけだ。もう疲れた。自分以外の全てを捩じ伏せる生き方は、もうどうしようもなく疲れたのだ。だから──

 

『──強さなど、もううんざりだ』

 

ババァの頭を握り潰し、アタシは目を閉じ倒れ伏した──。




・・・そんで、アタシは漂流する呪いのままに漂流する羽目になったわけだが・・・案外、その旅は短かったりする。アタシはどこぞの世界にほっぽりだされ、一歩も動けず倒れていた。

・・・腹が減ったのだ。妖怪どもの肉など、食っても食っても満たされなかった。思えば、これは心が絞り出した弱音だったんだろう。

親の温もりも知らない。友達の大切さも知らない。知っているのは、血肉が砕け飛び散る感触と、魂を喰らった時のかきむしるような慟哭と破壊衝動。そして喰われた『人間』という生き物の絶望と嘆きだけ。

『・・・おなか・・・へった・・・』

心が、産まれた時から一度も満たされていないから。身体も動かない。死ぬのは歓迎だ。でも・・・

『・・・だれか・・・ごはん・・・あったかい・・・ごはん・・・』

・・・寒い。凍えてしまう。ずっとずっと、胸の奥が寒いんだ。

──誰か、一口でいい。あったかいご飯を・・・食べさせて・・・。

はなよ「──わぁ!大丈夫!?おなかがすいてるの?おむすび!食べて!」

温羅『・・・ふががっ・・・!』

「もいっこ!わぁとうさま!かあさま!倒れてる!おっきいおねえさまが倒れてるー!」

『・・・にん、げん・・・?』

角が無く、華奢で、肌色の生き物。記憶にしかいなかった、人間の姿。・・・そしてなにより・・・

母「まぁ!傷だらけ・・・!あんた!このままだと死んじまうよ!」

父「解ってる!おまえさま、しっかりしろ!今助けてやる、助けてやるからな!」

はなよ「食べてー!おむすび!食べてー!」

『・・・、・・・・・・』

・・・──そのおむすびの一口は、とてつもなく。暖かかったんだよなぁ──

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