人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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リッカ「紫様どこにでもいるー!?本当黒幕ムーヴ大好きな御方!いつもありがとうございます!サナちゃん元気かなぁ・・・」

うら「知り合いか?いやぁ胡散臭すぎてビビったが、『あなたとは敵対する事が愚か。人を愛するあなたを懐柔する以外に最適解はありませんもの』とか・・・向こうがビビっててビビったわ」

イヌヌワン『それはそうだとしか』

フワイサム『鬼神の名に偽りがないなら尚更である』

うら「考えてみるとババァはホント謎だらけだなぁ。頭を覗けば良かったんだが、ノリで握り潰したのが悪かったかぁ」

アンク『ホントそういうとこは鬼なのね。妖怪千匹食うより有益だったわよ、絶対』

うら「だってバッチかったんだもん!ヾ(*`⌒´*)ノ」

アンク『子供か!』

「だが、占い師はやってたことは知ってる。・・・或いはババァは、見ちゃいけないもんを見て頭がおかしくなったのかもしれん。世の外には、触れてはならん神もいくらでもいるというしな」

リッカ「・・・・・・」



ニャル【人畜無害の神様です♪】



リッカ「確かに・・・」


モモ「・・・理屈は、解る。自分の歴史が、行き止まり、それを、なんとか、出来るなら・・・する筈」

うら「そんなもんかねぇ。人様を踏みにじってまで生きててほしいとは思わんが、アタシは。死ぬときに死んどいた方がいいだろ」

「・・・私なら、そうする。リッちゃんや・・・ぶい、ぶぃん、ぶぃんの、みなさまが、いきる歴史が、てに入るなら、私は、・・・そうする」

うら「あー、それならアタシもやるかもなー。ま、汎人類史を知ったらどうしても欲しくなるってことだ!いやぁモテモテだな、リッちゃんよ!」

リッカ「ヒェッ、地球モタナイ・・・」

うら「だがまぁ・・・長々と語ったが、次で多分最後だ。戦いは別に面白くないから、巻きで行くぞ──」


鬼退治の物語

──汎人類史の温羅は、それはそれは見たまんま、鬼らしい鬼と呼ぶに相応しい暴虐と暴力の化身だった。力は無双、精神は残虐。見上げる程の恵まれた偉容と巨体。久し振りにアタシ様がいたゴミ溜めを思い出した。ソイツと一対一、存在をかけた戦いを行ってバトルしたわけだな。

 

(ほぉ・・・)

 

鬼の大将を張ってるだけあって、ソイツは他の小鬼とは一味違う強さを誇ってた。金棒を片手で振り回し、鬼を産み出し、踏み鳴らした大地が地震を起こす。何処までも何処までもでかくなり、一回や二回殺したくらいじゃくたばらない。首を落としたとしても、新たな首を生やすかくっ付けやがる質の悪さだ。強さ、そして生き汚さ。ソイツをまざまざと見せびらかしながら戦う生命力の塊を相手に、アタシは身一つで戦い、そして──

 

【グ、ォオッ、ガアァアァアァァアァア!!??】

 

「そりゃあ鬼の中では最強だろうな。だが──この歴史にアタシ様はいなかったが故の最強だ!!」

 

真っ正面からぶちのめした。金棒を奪い叩き付け、腕の相撲は捩じ伏せて、でかくなったら脚の小指を掴んで振り回してやった。徹底的に叩きのめし、徹底的に追い詰めた。

 

圧倒出来た理由はいくつかある。一つはアタシの『格』。頼んでもいないババァの目論見で妖怪や祟り神を片っ端から混ぜ合わせて産み出されたアタシの身体は、真っ正面からじゃ傷一つつかん。妖怪の概念、鬼神の頂点として。アタシはどんな妖怪や怪物にも無敵を誇る事になっていた。おまけに其処に喰らった妖怪の力だの元々持ってた力だので、まぁ負ける方が難しいくらいに力の差が開いていたわけだ。

 

そしてもう一つは、温羅は強かったが故に競合相手がいなかった事だ。強いが故に切磋琢磨出来る相手がおらず、自分より小さい鬼や人間相手にいい気分になり、自身の研鑽など考えもしなかったんだろう。しっかり鍛えりゃ日本を喰らう大妖魔にもなれたろうに、いいとこアタシのいた肥溜めのクソどもの中堅、或いは下の上くらいの力しか発揮できてなかった。鈍ってたってヤツだな。あらゆる総てで敗北し延びている温羅を、アタシ様はいよいよソイツを喰らう事にした。

 

【ま、待て、待て・・・!手を、手を組もう!我と貴様が組めば日本だけではなく、世界を手中に治める事が──】

 

「笑わせんな。てめぇの部下も省みねぇ輩と酌み交わす盃はねぇ。──いるのはてめぇの魂と名前だけだ」

 

【ひ、ひっ!お、お前ら、貴様ら!助けろ、我を助けろ!早く!早くしろっ!!】

 

「──・・・。一つ聞かせろ。人の世を見つめ、人の営みを見た事はあるのか?」

 

【は?なんだと?・・・そんなもの、ある筈が無いわ!人間など、下劣で愚劣な畜生にも劣る───】

 

・・・ソイツが、汎人類史の温羅が遺した最期の言葉。人間の時代の到来を受け入れられぬならば、世の移り変わりを受け入れられぬならば。最早この世界に生き場所はない。見下している人間に退治されるよりかは、いくらかマシな幕引きだろう。弱肉強食の理のままに、弱き温羅はアタシという強いだけの鬼に総てを奪われ、喰らわれた。

 

「──。よし。・・・聞け!!鬼どもよ!!暴虐にして荒ぶる鬼たる温羅は今此処に死した!これよりは、このアタシ様こそが温羅となる!!」

 

噛み砕き、飲み干した事による同化吸収によって、アタシは温羅の霊基を手に入れた。即ち大将としての鬼の座を、汎人類史の鬼の名を獲得した訳だ。その名を存分に利用し、アタシは鬼どもに選択肢をくれてやった。

 

「これより先、人の歴史が神秘を暴き駆逐していくだろう!我等鬼はやがて消え去り、世界から放逐される日がやってくる!これは事実であり、現実だ!貴様らが奪い、殺し、騒ぐ日々を送る間に!人は懸命に進歩した!その進歩に、我等は置いていかれたのだから!!」

 

逃れ得ぬ未来、そして現実。そこに告げる選択と退去の道。

 

「これを認められぬと言うならば、鬼の世を忘れられぬと言うならばアタシの前に出るがいい!待つまでもなくアタシが引導を渡す!!人に首を挙げられるよりかはマシな終わりだろう!しかし退去を!穏やかな余生を望むものには応えよう!お前達の『これから』は、アタシが確かに保証する!!」

 

退去、あるいは幻想の中でひっそりと生きる事を願う。それを選ぶ鬼を、アタシは見捨てはしない。

 

「選べ!!歴史の表舞台からの勇退か、花火のように咲いて散るか!我が名において──貴様らの望むままの結末をくれてやる!!」

 

そう告げ、アタシは温羅として鬼どもの選択を受け入れた。──大抵の輩は、幻想の都への退去、閻魔亭や神秘の里などを見つけて引っ込んでいった。命あっての物種、わざわざ捨てる馬鹿は鬼には少ないってわけだ。

 

どうしても受け入れられない、或いは新たな世界を手に入れんとする鬼は、アタシが纏めて引導を渡した。迎合するくらいならば華々しき幕引きを。天晴れな選択に、相応しき結末を与えた。

 

「さて・・・後は最後の仕上げだな」

 

アタシが温羅になり、日本の百鬼夜行どもを世界から減らしていくことにより・・・日本の神秘は少しずつ確かに薄れていった。積極的に、歴史の転換をアタシなりに終わらせていった。そして、最後の大仕事にアタシはぼちぼち取りかかる事にした訳だ。

 

(衰退で世界から消え去れば、誰の記憶にも残るまい。華々しく、そして痛快に歴史に鬼の名を刻む必要がある)

 

その為に、アタシはアタシの計画に賛同した何十かの鬼と計画を練り、あえて人間達を脅かし続けた。被害と破壊の範囲を緻密に計算し、統率と統制を重んじた鬼の部隊にアタシが変え、人間達の畏怖と願いを絶やさぬように鬼どもを振る舞わせた。

 

(鬼は人を脅かし、畏れられる存在。ならば人は願う筈だ。鬼の抑圧からの解放、鬼を退治する存在・・・即ち、『英雄』をだ)

 

鬼は恐れられ、しかし最後には人の歴史に不可欠な存在でなくてはならない。即ち、英雄を引き立て、最後には退治される怪物・・・──英雄譚の敵役としての一面を世界に誇示し続けた。鬼はやがて人の手で退治されねばならぬものと、英雄が求められる願いの土壌を育て続けた。

 

「大将、俺たちは最後まで共に在ります」

 

「姉御に面倒見ていただいた恩、末代まで忘れません」

 

鬼達の労りを受け、アタシは鬼の存在をけして絶やさぬよう・・・人の歴史が途絶えぬよう考えに考え続ける。やがて自身を華々しく倒すであろう『英雄』が来る事を信じて妖怪や神秘の勇退を推し進めた。

 

「フン。アタシの任はもうすぐ終わる。身の振り方を間違えないようにしとけよな」

 

そして──。最早平安は遠く過ぎ、顔馴染みの鬼はほぼ消え失せ、鬼ヶ島に幾ばくかの物好きが残り。いくつか解らぬ年号の変化の末・・・アタシの、まつろわぬ者らを討ち果たす『運命』が現れる。

 

「──私達は桃太郎一行!世の為、人の為!邪悪なる悪鬼羅刹の鬼の首を討ち取りにやってきた!!」

 

一目見れば解る。星が産み出した世界を護る為の願いの結晶。神々しき神威をみなぎらせる、鬼退治の一行を目の当たりにし、アタシは心から歓喜した。

 

「──世の為、人の為か。随分いい人に拾われたな──!」

 

これが、歴史の終焉。穏やかなる終わりを告げし鬼退治の英雄。きっと彼女は終わらせるだろう。アタシを退治し、討ち果たす事で総てに決着をつける。

 

・・・・・・言葉もそこそこに、アタシ達は一週間飲まず食わずで戦い、お互いの総てをぶつけあった。本来の力を振るうペットどもと桃太郎は、それはそれは強かった。なんとしてでも鬼を倒すという意志の下、決して挫けず、折れずにアタシ様に刃向かった。

 

「───!」

 

戦えば戦うほど、アタシは桃太郎に魅せられた。励まし合い、助け合い、弱さを補い、平和と愛の為に戦う姿がとても美しく、とても雄々しい。自身の為ではなく、誰かの為に戦う。平和を願う意志・・・心を宿した、兵器ではない人の姿に。

 

勿論、あっさりやられては何の記憶にも歴史にも残りはしない。アタシは全力で、かつ鬼以外の総ての力を封じて戦った。後の伝承に必要なのは鬼という概念。アタシを表す記号も伝説も残す必要はない。アタシが歴史に刻むのは鬼の在り方・・・『強さ』だけと決めていたからだ。鬼として、一匹の鬼として。風より速い犬を、無双を誇る力の猿を、巧みなる雉を、剣を担う桃太郎を何十、何百、何千と返り討ちにし続けた。

 

(──諦めはしない、か。そうだ、それでいい)

 

何度叩きのめそうと、何度ぶちのめそうと立ち上がる不撓不屈、決して諦めないど根性、平和を願う仁愛と平穏への渇望。アタシという存在への恐怖を乗り越える、誰かの為に戦う英雄の姿。一週間の夜明けの瞬間に、アタシは強く強く確信した訳だ。

 

(あぁ・・・。人間の歴史は、大丈夫だな)

 

英雄は人の願いを受け立ち上がる。そんな人間に護る価値を英雄が見出だす限り、決して人は滅び去りはしないだろう。やがて未来にいつか・・・人が歴史を紡ぐ日が必ずやってくる。

 

ならば──最早自身は不要だろう。最早強さは不要だろう。人はもう、しっかりと自身の歴史を紡ぎ自身の願いを持っている。そう感じると同時に、総てに幕を下ろす腹の音がなり、概念的にすべての妖怪の集合体であるアタシ様が敗けを認めた事により──

 

「──あー!腹減ったぁ~~~!!」

 

──鬼と妖怪の神秘は、決定的に終焉を迎える。鬼は、妖怪は、完全に役割を果たしたとの確信があった。

 

思うがままに、ただ強いままに君臨し、そして圧倒的な存在としてある。それを乗り越えた人間が、あらゆる苦難を乗り越える可能性を秘めた存在だと示す為に。

 

ただ強く在り、そして静かに消えていく。鬼という最悪の敵を越え、人間の可能性を証明する形を示した事により・・・

 

「天晴れ!──人の歴史よ!!」

 

──アタシの歴史の表舞台の仕事は、確かに終わった。人間に、完全に後進への座を譲る事が出来た。

 

人の勇気と祈りを示し、鬼の力と恐怖を示す物語。

 

『桃太郎』・・・──そう、後の世に呼ばれる物語へとなる事で。アタシ様の仕事、大願は・・・成就することが出来たんだ──




ウラネキ「以上!クソ長昔話終わり!ご清聴ありがとーぅ!」

リッカ「(割れんばかりの拍手)」

イヌヌワン『我等、鬼への想いはあまりに短絡的であったのだな』

アンク『考えてみれば当たり前よね。人にだっていろんな奴がいるもの。鬼にだって・・・』

フワイサム『歴史の転換が滞りない真実を、GIに新たにインプットした。歴史とは、奇跡の織物であること』

リッカ「ウラネキ、本当に、本当に・・・本当にありがとう・・・!!」

ウラネキ「お礼を言うのはこっちだ。よくぞ飢えに苦しまぬ世界を作ってくれた。よくぞ戦で死ぬことのない世界を作ってくれた。よくぞ、鬼を愛する心を育んでくれた。リッちゃん、そしてリッちゃんの時代の総てがアタシ様らの誇りだよ。──ありがとう。本当に。鬼を忘れないでくれて、ありがとうな」

リッカ「~~~~・・・(つд;*)」

モモ「・・・・・・・・・うら」

「?」

「・・・・・・角無し・・・ううん、人間・・・そんな風に分けるのは、もう、止める」

『『『!!』』』

リッカ「・・・モモ・・・!?」

「角無しは、怖い。騙すし、裏切るし、恐ろしい。今でも、未来も。ずっとそう。・・・でも・・・」

うら「・・・」

「角無しの歴史が・・・リッちゃんを、産み出すなら。リッちゃんが生きる未来に、繋がるなら。・・・殺すのは、だめ。壊すのは、だめ」

リッカ「───!!」

「・・・しんじる。角無しが・・・未来に、産み出す・・・リッちゃんに、つながる、歴史を。そして・・・とうげんきょうの、人達が、愛した、あなたを。うら」

うら「────ッ、くくく、ははははは!!はーっははははははは!!!(バシッバシツ!)」

モモ「いたい」

リッカ「モモ!!!!!」

「やわらかい」

イヌヌワン『あぁ、ついに!ついに・・・!』

フワイサム『長い長い放浪、大変お疲れ様でした・・・』

アンク『素敵よ、モモ!なら早速座に戻って本体に記憶を持ち帰って・・・!』

うら「──いいや、まだだ。最後の仕上げが残ってる。──立て、桃太郎」

モモ「・・・!」

うら「リッちゃんに手を貸すには、ちっとばかし汚れが溜まってらぁな。──供を含めてかかってこい。お前の穢れ、アタシが喰らう」

リッカ「え、ちょ、え・・・!?」

モモ「・・・私が、信じているのは、リッちゃんだけ。角無しは、まだ、信じていない」

「だからまだアサシンっていうのは理解してるみたいだな。・・・来な。お前の胸に巣食う鬼、『アタシたち』が退治してやるよ」

リッカ「アタシたち・・・!?」

イヌヌワン『お下がりを、リッカ殿!どうやら、我等と一戦交える様子・・・!』

うらの声(すまんな、リッちゃん。いい所になるまで、信じて見ていてやってはくれないか?──桃太郎がああなったのは、アタシにも責任がある。今からその責任を果たす)

(そ、それはいいけど・・・!)

(飛び出すタイミングは勝手に解る。──聞かせてやってくれ。モモの心に届く言葉を。詫び代わりのまてりある、お前さんに託すからな)

リッカ「・・・!!」


温羅(異聞帯) 

クラス グランドバーサーカー(資格保有)

「・・・・・・うそ・・・!?」

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